1 今週米国株を取り巻くブル・ベア材料 9月7日 森 崇 ブル材料 1.セントルイス連銀のプール総裁が以下の通り発言。 (要旨) ★インフレが金融当局者の心地良いとする水準を上回っている現状でも、 FRB は忍耐強く、インフレが鈍化するのを待つことができる。 ★インフレの状況は十分に抑制されている。向こう数カ月、あるいは数四半 期後にはインフレが低下に向かうと予想している。 2.米連邦住宅公社監督局(OFHEO)が5日明らかにした米住宅価格統計による と、一戸建て価格は 2006 年4−6月(第2四半期)に前年同期比で平均 10%上昇した。伸び率は2四半期連続で鈍化した。 3.リーマン・ブラザーズ(LEH) 証券大手のリーマン・ブラザーズは、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ国 際金融センター(DIFC)に事業所を設立するライセンスを取得。中東で 初めて事業を手掛ける。貸付業と金融商品に対する助言業務が可能となる。 4.メリルリンチ(MER) 米証券大手3位のメリルリンチは5日、ナショナル・シティーの住宅ローン部 門、ファースト・フランクリン・フィナンシャルを 13 億ドルで買収すること に合意。住宅ローン証券化事業に注力する。 5.インテル(INTC) 半導体最大手のインテルが 5 日遅く、1万 500 人の人員削減計画を発表。モ ルガン・スタンレーは先週、少なくとも1万人(全従業員の 10%に相当)の 削減になるだろうとコメントしていた。インテルにとっては過去最大規模。 6.AMR(AMR) アメリカン航空の親会社 AMR はオンライン旅行会社のセイバー・ホールデ ィングス(TSG)と5年間の航空券販売契約を結んだと言う。1 日引け後に 発表。 7.ノースロップ・グラマン(NOC) 米国防総省によれば、防衛大手のノースロップは、最大で6億 8610 万ドル相 当となる技術サービス契約を米軍から受注したと言う。1 日引け後に発表。 2 8.シェブロン(CVX) 石油大手シェブロンは5日、メキシコ湾で、世界最深地点での油層を発見し たと発表した。同油層には 30 億−150 億バレルの原油が埋蔵されている可能 性があるという。シェブロンは同業のデボン・エナジーとノルウェー最大の 石油会社スタトイルとともに今回の油層探査プロジェクト「ジャック・ナン バー2」を進めていた。同プロジェクトのうち、シェブロンが 50%権益を保 有し、残る2社はいずれも 25%を保有。 9.キャタピラ(CAT) メリル・リンチが同社株の投資判断を“中立”から“買い”に引き上げた。 エンジン類を 7%、機械類を 5%それぞれ値上げすると言う。 10.アドバンスト・マイクロデバイシーズ(AMD) トマス・ワイゼルが投資判断を“ピア・パフォーム”から“アウト・パフォー ム”に引き上げた。 11.ラムバス(RMBS) アメリカン・テクノロジー・リサーチがポジティブ・コメント。 半導体メーカーや、FTC に対する訴訟で勝つ確率が 40%∼45%あると言う。 12.フォード(F) フォードは 5 日、ウィリアム・クレイ・フォード・ジュニア氏が CEO を辞任 すると発表。ボーイング幹部のアラン・ムラリー氏が社長兼 CEO に就任する。 13.9月1日までの1週間の住宅ローン申請指数は、前週比で 1.8%上昇し 566.3 となった。住宅ローン 30 年物固定金利が平均 6.31%と前週の 6.39%から低下 し、3月以来の低水準となったことが刺激材料となった。 (その他主要指数動向) ★購入指数…前週比 3.7%上げて 389.7。 ★借り換え指数…同 0.9%低下して 1594.7。 14.ゼネラル・モーターズ(GM) ゼネラル・モーターズは、2007 年モデルの乗用車およびトラックに対する品 質保証を走行距離 10 万マイルに延長すると言う。7日から実施。エンジンや 伝導部品を対象とした同保証期間は、従来の走行距離3万 6000 マイルから延 長される。新制度はすでに販売済みの 2007 年モデル車にも適用される。消費 者に対してGM製品の価値を強調し、販売奨励制度への依存度を低めようと している。 3 15.FRB が 6 日、地区連銀経済報告(ベージュブック)を公表。 (要旨) ★8月の米経済では一部の地域で成長ペースが減速するなか、企業がエネル ギー価格の上昇を消費者や顧客に転嫁するのは困難になってきた。 ★住宅市場が一様に悪化している状況で、個人消費の伸びはほとんどの地区 で鈍いペースにとどまった。 ★一部の連銀管轄地区では、テクノロジー部門やトラック輸送などの職種で は労働力不足が散見され、それに伴い賃金の上昇圧力もみられた。 ★原材料のコストで継続的な上昇を示す広範な報告があったにもかかわらず、 製造業では、エネルギー価格の上昇を製品価格に転嫁することはほとんど 不可能だった。 ★12 連銀のうち5連銀が経済成長は減速したと指摘。7連銀は前回(7月) の報告以来、ほぼ変わらずとした。 16.マスターカード(MA) 世界2位のクレジットカード会社、マスターカードは 5 日までに、加盟店に 課している手数料の一部を開示することを明らかにした。加盟店がマスター カードとクレジットカード世界最大手のビザ・インターナショナルが価格操 作にかかわっているとの申し立てを行ったことを受けた措置。 17.フォード・モーター(F) 大手自動車メーカー、フォード・モーターは、ウィリアム・クレイ・フォー ド・ジュニア氏が CEO を辞任すると発表。ボーイング(BA)幹部のアラン・ム ラリー氏が社長兼 CEO となる。 18.ネットフリックス(NFLX) JPモルガンが、DVD の郵送レンタルサービスを提供するネットフリックス の株式投資判断を「アンダーウエイト」から「オーバーウエイト」に引き上 げた。 19.7月の米卸売在庫は前月比 0.8%増加(前月も 0.8%増)と、予想(0.6%増) を上回った。7月の売上高は前月比 0.4%増加し、前月の 1.2%増から伸びが 鈍化した。在庫比率は 1.15 で、前月と同水準。在庫比率は過去最低水準にあ る。 20.10 月の FOMC では、退任するアトランタ連銀のジャック・グイン総裁に代 わり、セントルイス連銀のウィリアム・プール総裁が投票する。FRB のスミ ス報道官が7日明らかにした。アトランタ連銀のグイン総裁は 10 月1日付で 退任する。 4 21.ルーセント・テクノロジー(LU) 仏通信機器大手アルカテルと同業のルーセント・テクノロジーの株主は7日、 それぞれの総会で、アルカテルによるルーセント買収計画を承認。アルカテ ルは4月、ルーセント1株に付き、アルカテル ADR(米国預託証券)0.1952 株を支払うことで合意。両社は経営統合後、3年間で 17 億ドルの経費削減の ため、9000 人を削減する計画。 22.イランのホセイニアン石油次官は7日、同国の核開発問題に関して国連が何 らかの行動を取ったとしても、石油や天然ガス産業に制裁を科すことはない だろうとの認識を示した。イランのウラン濃縮問題に関しては、安保理の常 任理事国5カ国(ロシア、中国、フランス、英国、米国)とドイツが7日に ベルリンで協議する予定。 23.アップルコンピュータ(AAPL) UBSはアップルコンピュータの株価が1年以内に 92 ドルに上昇するとの見 通しを示し、従来見通しの 80 ドルから引き上げた。アップルが来週、新しい コンピューター製品を発表すると期待されていると指摘した。 24.デジタル・リコーダーズ(TBUS) 警察向けデジタル通信システムを開発するデジタル・リコーダーズは、2007 年から 09 年にかけて売上高が採算レベルに達するとの見通しを示した。 25.GFIグループ(GFIG) 金融派生商品(デリバティブ)ブローカーのGFIグループは、7−9月 (第3四半期)決算のブローカー収入が前年同期比 30%強増加するとの見通 しを示し、従来見通しの 20%増から上方修正した。 ベア材料 1.欧州委員会はEU加盟 25 カ国とユーロ圏 12 カ国、ドイツの 2006 年経済成長 見通しを、それぞれ従来予測から上方修正する見込み。ドイツ紙ハンデルス ブラットが6日付の速報版で報じた。欧州委はEU加盟 25 カ国の経済成長率 見通しを 2.7%と従来の 2.3%から引き上げ、ユーロ圏についても 2.5%と従来 の 2.1%か ら上 方修 正。 また、 ドイツの 経済成 長率 は 2.2%(従 来予測は 1.7%)となる見通し。 5 2.欧州中央銀行(ECB)のスマギ理事が以下の通り発言。 (要旨) ★ユーロ圏の経済成長とインフレの加速が続けば、追加利上げの必要性が生 じる可能性があるとの見解を示した。 ★欧州の経済成長が米景気の小幅鈍化による悪影響を受ける可能性は低い。 アジアが主要な貿易相手国として浮上してきたからだと言う。 3.バイアコム(VIA/B) 資産家サムナー・レッドストーン氏が経営するメディア大手バイアコムは5 日、同社のトム・フレストン CEO が辞任し、その後任に取締役のフィリ ペ・ドーマン氏を起用したと発表。今年はじめに CBS をスピンオフして以来、 株主からバイアコム株価てこ入れの圧力を受けていた。 これを受け、メリル・リンチがバイアコムの投資判断を“買い”から“中立” に引き下げた。経営陣の交替により、先行き不透明感が強まったと言う。 4.タバコ株 CSFB がタバコ株の投資判断を“オーバー・ウェイト”から“中立”に下げた。 株価が高いこと、リーガル・リスクを背景にしている。 5.マイクロソフト(MSFT) ライバルのソニーが年末までに、プレステ 2 を 20%程度値下げすると発表し たことがネガティブだった。 6.プロクター&ギャンブル(PG) 第 1 四半期の EPS が 76 セント∼78 セントになると言う。予想は 78 セントだ った。 7.2006 年4−6月(第2四半期)の非農業部門の労働生産性指数(確報値)は、 前期比年率 1.6%上昇(前四半期は 4.3%上昇)し、速報の 1.1%上昇から上方 修正された。これは予想値と一致した。 一方、第2半期の単位労働コストは、前期比年率 4.9%上昇(前四半期は 9% 上昇。速報の 4.2%上昇から上方修正され、予想値(4%上昇)も上回った。 4−6月期の単位労働コストは前年同期比で5%上昇(速報は 3.2%上昇)し、 1990 年以来で最大の伸びとなった。前期は 3.6%上昇した。労働生産性は前 年同期比で 2.5%上昇(速報は 2.4%上昇)した。労働者の時間当たり給与は 前期比年率 6.6%上昇と速報値の 5.4%上昇から上方修正された。前年同期比 では同 7.7%上昇(速報値 5.7%上昇)した。価格指数は、前期比年率 3.4%上 昇し、速報と同じだった。 4−6月期の製造業の生産性は前期比年率 2.6%上昇(前期は 3.7%上昇)。 金融機関以外の生産性は年率 2.2%上昇した。 6 8.マイクロソフト(MSFT) ①欧州委員会は、独占禁止法違反に関したパソコンソフト最大手マイクロソ フトに対する1日当たりの制裁金引き上げをめぐり、同社が十分に情報を 提供しているかどうかを向こう数週間以内に判断すると言う。欧州委は7 月、マイクロソフトに対し、独占禁止法違反に関する 2004 年の是正命令に ついて順守を怠っているとし、2億 8050 万ユーロの追加制裁金の支払いを 命じた。さらに、マイクロソフトが情報を提供しなかった場合には、制裁 金を引き上げると警告していた。 ②5日、ウィンドウズの次期バージョン「ビスタ」の開発を指揮した勤続 19 年のブライアン・バレンタイン上級副社長が退社し、アマゾン・ドット・ コムに移籍することを明らかにした。 9.8月のISM非製造業景況指数は 57.0(前月 54.8)と、予想(55.1)を上回 った。 10.オートデスク(ADSK) 設計ソフトメーカーのオートデスクは、2006 年5−7月(第2四半期)の財 務報告を期限までに当局に提出できないと発表した。ストックオプションの 付与をめぐる調査が理由。 11.インテル(INTC) 半導体メーカー最大手インテルは、従業員1万 500 人の削減計画を発表。 2008 年から経費を年 30 億ドル減らす計画と言う。 12.バレロ・エナジー(VLO) シティ・グループがバレロ、及びサノコ(SUN)の投資判断を引き下げた。 それぞれ“買い”から“保有”に。利益率低下、及び下半期の業績が予想を 下回るだろうとの見通しに基づく。 13.リッチモンド連銀のラッカー総裁は、インフレが定着するリスクがあると話 した。同総裁は8月8日の FOMC で唯一、金利据え置き決定に反対票を投じ た。6日付のUSAトゥデイ紙が報じた。インフレ高進の危機を脱したとは 思わない。インフレ鈍化を示した7月の指標は、必ずしもトレンドを示唆し ないと語った。 14.フィニーサー(FNSR) 米高速データ通信用光ファイバー機器メーカー、フィニーサー の2−4月 (第1四半期)決算では、売上高が1億 620 万ドルと、予想(1億 750 万ド ル)に届かなかった。 7 15.コマグ(KOMG) コンピューター駆動装置部品メーカーのコマグは SEC への届け出で、7−9 月(第3四半期)決算について、前期比での増収率が3%にとどまり、当初 予定の最大5%に及ばないとの見方を示した。 16.プライスライン・ドット・コム(PCLN) オンライン旅行サービスのプライスライン・ドット・コムは、香港の複合企 業ハチソン・ワンポアとチョンコン・ホールディングス(長江実業)が持ち 株 890 万株(発行済み株式の 22%)を売却したと発表。 17.BEA システムズ(BEAS) 企業向けソフトウェアメーカー、BEA システムズは 6 日引け後、2006 年5− 7月(第2四半期)の財務報告を、期限である9月 11 日までに提出できない 見通しであると言う。ストックオプション付与をめぐる内部調査が続いてい ると言う。 18.KB ホーム(KBH) 住宅建設のKBホームは、予想以上の需要の弱さを理由に利益見通しを 6 日 引け後に下方修正した。同社によると、2006 年 11 月通期利益は1株当たり 8 −8.5 ドルの見込み。当初は同 10 ドルを見込んでいた。 19.ルーセント・テクノロジー(LU) SEC は、通信機器大手のルーセント・テクノロジーに、中国での事業をめぐ り同社を提訴する可能性を通知した。 20.チャールズ・シューマー米上院議員(民主、ニューヨーク州)は、中国から の輸入品に制裁関税を科すことを目指した法案の採決を今月中に行うよう求 めていくと言明。シューマー議員とリンゼー・グラム上院議員(共和、サウ スカロライナ州)は、中国が人民元相場を切り上げなければ、米国に輸入さ れる中国製品すべてに対し 27.5%の制裁関税を発動する法案を用意。元は最 大 40%過小評価されていると指摘。シューマー議員は、法案が採決に付され る前に、ポールソン米財務長官が中国政府に人民元の切り上げを受け入れさ せることができるよう期待を表明した。ポールソン財務長官は今月下旬、中 国を訪問する予定だ。 21.ドイツのミロー財務次官は7日、来週末にシンガポールで開く7カ国財務 相・中央銀行総裁会議(G7)で円安が議題になると発言した。これに対し、 財務省の渡辺博史財務官は為替が中心議題になるとは思わないとの認識を示 した。 8 22.欧州中央銀行(ECB)は7日に 8 月月報を発表した。 (要旨) ★消費者の間でインフレ期待が上昇していることについて、深読みすべきで はない。 ★これまで将来の物価動向と消費者のインフレ期待の間にはほとんど相関性 がない。 23.サンフランシスコ連銀のイエレン総裁が講演。 (要旨) ★インフレは予想以上に速やかに現在の高い水準から鈍化する可能性がある。 過去 10 年間にインフレが定着したことを示す形跡はあまり見られない。イ ンフレには一定の数値でとどまっているというより、長期インフレ率の平 均値に戻る傾向があった。 ★住宅市場の鈍化が消費支出を抑制するだろう。 ★経済指標が示すところでは、必要な景気鈍化は進行中である。 ★必要な時に動くと言う敢然たる姿勢が、FRB の信頼感につながっている。 ★金融政策の効果が現れるまでに時間がかかることから、現在の金利据え置 きは、賢明な手段だ。 ★FRB は更なる引き締めバイアスを持たねばならない。なぜなら、目下のと ころ、インフレ率は心地良い水準を上回っているからだ。 24.イングランド銀行は7日、金融政策委員会(MPC)で、政策金利のレポ金 利を 4.75%のまま据え置くことを決めた。市場予想通りの結果だった。英中 銀は8月にインフレを抑制するため市場予想に反し利上げを実施。同中銀は その後発表した四半期物価報告で、今年の経済成長とインフレの見通しをと もに上方修正したことから、投資家らの間では、年内追加利上げとの見方が 広まっている。 25.FRB が7日、8 月 8 日開催 FOMC の公定歩合に関する議事録を公表。 (要旨) ★フィラデルフィア連銀とリッチモンド連銀が公定歩合の引き上げを要請して いた。成長が鈍化しながらも堅調である。インフレ圧力が残るリスクのほう が、景気が大幅に減速するリスクを上回ると判断。 ★金利据え置き派の論旨は、景気減速と金融政策効果の時間的ラグ、長期的な インフレ期待が安定していること。 9 26.アスペン・テクノロジー(AZPN) 石油・化学企業向けソフトウエアを開発するアスペン・テクノロジーは、ス トックオプションの付与に関連した会計ミスにより、2005 年度までの4年間 の業績を修正報告すると発表した。 27.ボストン・サイエンティフィック(BSX) 米医療機器大手のボストン・サイエンティフィックは特定のケースとして、 心臓用ステントの内部に血栓が発生するリスクがわずかながらあると発表し た。 28.パーム(PALM) 携帯情報端末(PDA)大手の米パームが6日引け後発表した 2006 年6−8 月(第1四半期)決算の暫定集計によると 、売上高は3億 5400 万−3億 5600 万ドルと、同社の事前予想(少なくとも3億 8000 万ドル)を下回った。 29.ピーボディ・エナジー(BTU) 米石炭最大手のピーボディ・エナジーは、掘削機械や鉄道運輸の問題が響き、 今年の生産量は自社予想の下限にとどまるとの見方を示した。 =以上=
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