放射線教育プロジェクト ビデオコンテンツ 解説

放射線教育プロジェクト
ビデオコンテンツ(解説)
解説補足資料
放射線教育プロジェクト ビデオコンテンツ 解説
タイトル
手作り X 線 CT スキャン装置
視聴対象
理系科目(高校「物理Ⅱ」相当を履修済み等)既習の大学生、
理科教員研修者
ビデオ概要
「中学校学習指導要領(平成 20 年 3 月 平成 22 年 11 月一部改正 文部科学省)」の「放射線
の性質と利用にも触れること。」を受け、「中学校学習指導要領解説 理科編(平成 20 年 7 月 文
部 科 学 省 )では 「…放射線は透過性などをもち,医療や製造業などで利用されていることなどに
も触れる。」とある。本ビデオでは、市販の部品を用いて独自設計により製作したX線CT装置を
紹介する。身近な理科の興味対象として蝉の抜け殻を選んで被写体とし、代表的な解析の途中
段階とともにCT像が得られるまでを動画で説明した。
ビデオの使い方例
X線CTの原理を学ぶ場合、教科書に載っている模式図とともに、諸量の関係を数学的に理解
することになろう。本ビデオは構造を単純にしたX線CT装置の各部を、一目瞭然の画像で紹介
し、動画の特徴を活かして、途中の計算過程を分かりやすく示す事が出来た。
初学者が活字でX線CTの原理や構造を学ぶときの導入教材となれば幸いである。
その他
詳細については、以下の「解説補足資料」にて説明する。
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<手作り X 線 CT スキャン装置>
ジ部」が鉛直方向を軸として回転できるようにした構造であ
1.装置全体図
る。被写体は「試料ステージ部」に静置し、測定する。
装置の各部がよく見えることが装置の原理の理解に役
立つと考え、市販の部品を用いて独自設計により製作した。
X線は分光せず、白色のまま使用した。
3.レントゲン画像の測定とサイノグラム
本X線CT装置の全体をご覧頂いている。画面
中央に透明なアクリル板で作ったX線シールド
内に装置主要部がある。左側にはX線の量や
被写体の位置を遠隔操作する為のノートパソコ
ンが写っている。
この他に、画面には写っていないが、X線検出
身近な理科の興味対象として、蝉の抜け殻を選んで被写
器を制御するパソコンもある。得られたデータか
体とした。「試料ステージ部」に円筒状の紙筒を乗せ、蝉の
らCT像までに解析するノートパソコンも別に必
抜け殻を静置したところの画像が画面最左部である。その
要である。
すぐ右側に本装置で撮影したX線透過像である。レントゲ
ン写真と言った方が知られているかもしれません。
2.装置主要部概要
X線透過像には横に伸びる細い黒い帯があるが、これは
X線検出器の構造上の特性で、受光面の継ぎ目に当たる
不感領域で、気にしないで欲しい。「試料ステージ部」を回
転させながら順次撮影されるX線透過像が本ビデオで分
かりやすく示されている。ここで、赤い四角で示す領域、緑
の四角で示す領域、及び青の四角で示す領域の三箇所に
ついて、縦軸を被写体の回転角度、横軸をレントゲン画像
の強度分布として抽出したものを、それぞれの色分けされ
た領域ごとに、画面の右側に示した。これらレースのカー
X線CT装置は、主要部として「X線発生装置
テンが揺らめいているような画像はサイノグラムと呼ばれ
部」、「試料ステージ部」、「X線検出器部」からな
ている。我々の測定は、対称性を考慮し、180°の回転で
っている。医療用のものは「試料ステージ部」に
実施した。
相当するところに患者さんが横たわり、その周り
を「X線発生装置部」と「X線検出器部」が対にな
って回転し、360°の各方向からX線の透過像
を撮影する。本装置は、「X線発生装置部」と「X
線検出器部」を固定させ、代わりに「試料ステー
4.逆ラドン変換とフィルター処理
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3つがそれぞれのサイノグラムの領域に対応したCT像で
ある。CT像を得るときに、巧みなフィルター処理する事に
よって、この画像を見やすくする技術がある。二回目の矢
印の先は、フィルター処理した結果の例である。
CT像が得られるまでの代表的な解析の途中段階を見る
事は、計算の途中の確かめ算に相当する非常に重要な事
で、原理の理解にも役立つだろう。
画面最上段が、X線透過像の赤、緑、及び青
更にX線CT装置について学びたい方は、論文(荒川悦雄,
で注目した領域のサイノグラムである。これらサ
岩見隆太郎, 本久靖子, 亀沢知夏, 鴨川 仁, フォグリ ヴ
イノグラムを数学的に逆ラドン変換して得られる
ォルフガング「教育用 3 次元 X 線 CT 装置の開発と利用」
画像がCT像で、断層像とも呼ばれている。一回
RADIOISOTOPES, 65, 119–128 (2016))をご参照ください。
目の赤い矢印の先に示した画面中段やや左の