宇佐市弁論大会

宇佐市弁論大会
11月27日(水)、宇佐市立北部中学校を会場に
宇佐市弁論大会が開催されました。安心院中学校か
らは3年生の佐藤百夏さんが出場し、「宇佐市教育
会館理事長賞」をいただいています。佐藤さんは文
化祭で発表した弁論に修正を加え、堂々と、しかも
温もりのある弁論を披露していました。職場体験学
習、介護の仕事をする中でのお年寄りとのふれあい
を通して感じたこと、介護の仕事に携わる人の心の
あり方などについてふれています。以下、写真と弁
論の全文を掲載します。
「思いやり
心が通じる
第一歩」
「思いやりの心で」
3年
佐藤
百夏
私はこの七月、地域の老人ホームに職場体験に行きました。特に将来
なりたい職業など決まっていなかった私。父が介護の仕事をしていたか
ら…という安易な理由で選んだ職場でした。近所のお年寄りとも気軽に
話のできる私は、
「おじいちゃん、おばあちゃん大好きやし。楽勝、楽勝。」
そんなことも思っていました。
しかし、そんな私の思いは、すぐに後悔に変わりました。私の担当は、
認知症の方たちでした。早速、いつも近所のお年寄りと話すように話し
かけてみました。
「こんにちは。私の名前は佐藤百夏と言います。」
「……。」
「私は佐田に住んでいます。おうちはどこですか。」
「……。」
なかなか会話がはずみません。ただ愛想笑いを浮かべるだけの私を見
かねて、職員の方が私たちの輪の中に入ってきてくれました。
「今日は顔色いいですねえ。」
職員の方が笑顔を向けると、それだけで輪の中はぱっと明るくなりま
した。そして、会話もどんどんはずんでいきました。私は「すごいな」
と思うと同時に、自分が情けなくなりました。
「私も笑顔で話しかけたんに、いったい何が違うん?」
あっという間に食事の時間。一人のおばあちゃんの食事のサポートに
つくように言われました。でも、なぜか、その方は、途中で食べるのを
やめてしまうのです。私は口元まで食事を運び、何とか食べさせようと
しましたが、まったく口を開いてくれないのです。私は焦り、自分の顔
が引きつっていくのを感じました。困った私は、周りの様子を見てみま
した。
職員の方たちは、優しい笑顔で、お年寄りがゆっくりゆっくり噛むの
を待ち、飲み込んでから、次の一口を、優しく、ゆっくりと口の中に入
れてあげています。食べるのが止まったお年寄りには、無理に食べさせ
ようとせず、好きな食べ物の話など、優しく話しかけながら、穏やかな
雰囲気の中、根気よく食べさせています。食べ終わったお年寄りには、
とびっきりの笑顔で、
「いっぱい食べましたねえ。」
と声をかけ、お年寄りもほめられた子どものようにうれしそうな顔をし
ています。
私はその様子を見ていて「はっ」としました。
「何で食べてくれんの?」
「何とか食べさせんと!」
自分の都合ばかり考えていた私……。楽しいはずの食事の時間なのに、
食べることを強制するような私の態度……。それに気づいた私は、職員
の方のように、とびっきりの笑顔で、
「はい、ゆっくりでいいから、食べましょうね。」
と、優しく、ゆっくりと口元に運び、
「少しでも食べてな。おばあちゃん。ちゃんと食べて体力つけんと。」
という気持ちを込めて、そのおばあちゃんの目を見つめました。すると、
おばあちゃんは、ゆっくりと口を開け、私の差し出したスプーンをくわ
え、「ぱくっ」と一口食べてくれたのです。私はうれしさと同時に、
「おばあちゃん、すごい。やったあ。」という気持ちもわいてきて、お
ばあちゃんがゆっくりゆっくり噛んで、飲み込むのを見守っていました。
すると今度はおばあちゃんの方から口を開けてくれ、私は次の一口を口
の中に入れてあげました。おばあちゃんは何も言いませんでしたが、な
んだか心が通じ合ったような、そんな気がしました。結局、おばあちゃ
んは苦手な野菜を少し残しただけで、後は全部きれいに食べてくれまし
た。
わずか二日間の職場体験でしたが、私の中の何かが変わった気がしま
した。そして、この仕事に長年携わっている父のことも思いました。介
護の仕事……確かに仕事ではあるけれど、機械的にできる仕事ではない
こと。ひとりよがりではうまくいかないこと。相手に寄り添い、気遣う
心が大切であること を知りました。あまり仕事のことについて話す父
ではありませんが、すごいなあ、と改めて思いました。そして、とても
大変だけど、心がつながったとき、大きな喜びを感じられる職業に、私
も就けたらな」と考えるようになりました。
これから学ぶことはたくさんあるけれど、まずは、思いやりの心を持
って、人と接していきたい!また、介護や教育の道など、人と、心で接
する職業に就いてみたい!
新たな私が今、スタートを切りました。