森田英二(京都スキー協会)(2008年5月) (森の会ニュース140

目標に 向け て設定し た テー マは
「①内脚を配下に置く。②骨盤を前傾させる。」であっ
楽 し て 楽 し い (楽 々 )ス キ ー 術
た。
キーワード:重力を味方に
①について は京都ス キ ー 協通信 No192 と No193 で
詳しく解説して いるので 、それを参考にみて 頂く事にし
て、これを試行す る中で発見したことが一つある。
なみあし
「内脚を配下に」とはター ン内側にな る脚を重心の下
に収めるということで、内脚の踵あたりにお尻(内腰)を
落 として いく感 じは 、ア キ レス 腱 をス ト レッ チ す る動 作
「石 の 上 にも 3 年 」とは よく言 っ た も の だ 。 二 軸 動 作 によく似ている。
「常歩(な みあし)」に取り組ん で 3 年。ようやく身につい
膝を伸ばして 腰を前に持っ て いくとふくら はぎ のス ト
て きた。自 然 にから だが 動 くようにな っ て き た といっ て レッ チ とな るが 、膝 と足 首 を曲 げ 腰 (重 心 )を踵 あた り
も 良い。「力を抜くことで 動きが生ま れる」ま っ たく逆転 に落として いくとア キ レス 腱のス ト レッチ とな る。この と
の発想。これが二軸動作「常歩」の真髄だと思う。いか きつま 先あたりに重心があると、つま 先とふくら はぎ に
に効 率 よくか ら だ を動 か す か ? 地 球 上 で 暮 ら す 動 物 力 が 入 り、 ア キ レ ス 腱 は 縮 ま ろ うとす るが 、 踵 付 近 に
たちが営々と身につけてきたものをどう引き出す かだ! 重心を落とし、むしろ足の甲、つま 先を脛に近づけるよ
武術や芸術の世界で は 60 歳は、ま だま だ青二才と うに脛の筋肉(前傾骨筋)を働かせることで ア キ レス 腱
か ! いま ま で 力 で 押 して き た も の が 、 そ うは 行 か な く はよくストレッチされる。
な っ て 何 か に「気 づき 」は じめ る。還 暦 とは 、そ ん な 人
現代人のア キ レス 腱はかな り退化して きて いるら し
生の折り返し点かも しれな い。今シ ー ズンの好成績は いが、野山を駆け巡る動物たちにとっ て は重要な 役割
元気にそこま で 何 とか辿り着 いた御褒美 だと思っ て い を果たしている。カ ンガルー が時速 30 ~ 40km で移動
る。
す るとき ア キ レ ス 腱 は 最 大 限 に役 割 を 発 揮 し一 番 省
~シーズン目標とテーマを検証する~
エ ネ走 行 とな るら しい。カ ンガ ル ー の ア キ レス 腱 は 非
今 シ ー ズンの 大 き な 目 標 は 全 日 本 マ ス ター ズに参 常 に発 達 して いて 、着 地 した とき 伸 張 され た ア キ レ ス
戦してポイントを獲得す ることにあっ
腱は強 力な バ ネとな り、少な いエ
た。それも シ ー ド圏内に入る。
ネルギー で 大きな 跳躍力を生み出
栂池高原スキ ー場で行われた
している。
今大会は 思っ た以上 にハ ー ドバ ー
そ れ を知 っ たとき、ス キ ー で の 内
ンで 、斜度はそれほど で も な いが
脚の使い方のヒントとな っ た。内脚
我々 60 才 ク ラ ス は 、60 歳 台 ~ 80
を配下に置くことで ア キ レス 腱はス
歳台男子と女子に設定された B コー
ト レッ チ され 、そ の 時 生 ま れ るエ ネ
ス で 、 300 人 ほ ど 滑 っ た 後 の 最 終
ル ギー は 次 の ター ンへ とつな が る。
ス タ ー ト 。 コー ス は 掘 れ 掘 れ 荒 れ
切 り 替 え 時 か ら だ を 前 へ と運 ん で
放題。ワンター ンご とにえ ぐ れ た 溝
くれる力に変わると。
をク リア して いかねばな ら ず 、全長
これ は 常 歩 走 歩 行 と同 じ要 領 で 、 前 に振 り出 そ うと
約 900m 旗 門 31( 二 戦 目 は 33 旗 門 ) を 1 分 10 秒 前 す る脚 (遊 脚)は大 き く振 り出 そうとせ ず 、自 分 の重 心
後で 走破す るには脚への負担は相当な も ので ゴ ー ル の下へ踏みしめ るように着地させる。そうす ると重心は
へ辿り着くのがやっ とという状態で あっ た。そん な 中で、 ス ム ー ズに前 に運 ば れ 次 の 遊 脚 とな る脚 は 先 行 す る
二戦とも 10 位入賞は上出来であっ た。
重心に引き込ま れるように振り出され(ター ンオー バー
ここで も ス ター ト 前 に心 が けた ことは 「力 を抜 く」こと し)、ブ レー キ ングのない走歩行となる。
で あっ た。上体をリラ ック ス させ膝 と股関 節 を柔 ら かく
これ をス キ ー の ター ンとダ ブ ら せ て み ると少 々 や や
使 い、で き るだ けシ ョ ッ ク を和 ら げ 重 心 を下 へ 下 へ 向 こしいが 、二 つの パ ター ンが ある。一 つは 従 来 の 交 互
かわせる。そのことで先を見る余裕も 生ま れ、よいコー 操作的な ス テップ ター ンや KO ター ン(ター ン後半山側
ス取りにつながり目標とした結果が残せたと思う。
にある内 ス キ ー の 角 付 けを 小 指 側 = K ラ イ ンか ら 親
今 年 は 89 人 中 64 番 ス ター ト で あっ た が 来 年 の 雫 指側= O ラ イ ンに移す ことで 重心移動を行いター ンを
石大会では 15 番以内のスター になるであろう^^!!
切 替 え る方 法 )で み ら れ る様 な オ ー ソ ドッ ク ス な 中 で
他の大会でも 申し分ない成績を残せた。
常歩スキー開花
●スキー協・全国競技大会(55才クラス)
今シーズンの主な戦績
GS1位
●スキー協・関西ブロック競技大会(60才クラス)
1戦目1位
複合1位
●八方尾根リーゼスラローム大会(60才クラス)
2戦目1位
3位
●全日本マスターズ選手権大会(60才クラス)
●京都府知事杯争奪クラブ対抗(60才クラス)1位
●SKIチャレンジ小谷杯(60才クラス)
1位
1戦目10位
2戦目10位
●きそふくしまGSカップ(60才クラス)
5位
●一の瀬大回転(50才以上クラス)
7位
1
の 使 い方 。 も う一 つは 、 カ ー ビングス キ ー に対 応 した
スキ ー 協・新教程で も 提唱している同時操作的な中で、
内脚主導となる OK ター ン(ター ン後半谷側にある外ス
キ ー の 角 付けを親 指 側 = O ラ イ ンか ら 小 指 側 = K ラ
イ ンに移 す ことで 重 心 移 動 を行 いター ンを切 替 え る方
法)での使い方。
前 者 の 場 合 、内 脚 (遊 脚 )が
外 脚 (支 持 脚 )に切 り替 わ るとき
股関節の内旋が強 調され、中心
軸的な 動きにな りやす いが、後
者 は 外 脚 (支 持 脚 )の 股 関 節 外
旋により重心移動を導くため 、常
歩的な感覚でスムーズに次のター
ンポジ シ ョ ンへ と入 っ て いけ る。
この とき 「膝 抜 き 」も 合 わ せ て 行
うと重 心 が 持 ち上 が ることな く ダ
イ レク トにフ ォ ー ルラ イ ン方向へ
向い、素早く内脚を配下に収めることが出来る。
②の「骨盤の前傾」は最近富 みに言われ だした。世
界と互角に戦うため には、この 辺の姿 勢から 見直 して
いく必要がありそうだ!
日本人は生活様式から か骨盤が後傾して いる人が
多 いそ うで 、引 く動 作 や 小 回 りに向 いて いるが 前 進 す
る動きに不利がある。陸上のハー ドラ ー で有名な 為末
大選手は、それを逆手に短距離から ハー ドルに乗り換
え た。骨盤が上を向いて いるのはハー ドルを越え るの
に都合が良いと考えてのこと。しかし、スキ ー は下を向
いて滑るのだから 、骨盤も 下を向いて いる方が都合が
良い。ハ イ ス ピー ドにも ついて いけるしギャ ップ や コブ
など にも 強くなる。
フ リ ー ス タイ ル で 世 界 の 頂 点 に立 っ た 上 村 愛 子 の
2
滑 りは そ れ を物 語 っ て いる。骨 盤 を前 傾 させ コブ に当
てるように滑っている。大変参考になるが、ではどうやっ
て 骨 盤 を前 傾 させ た 姿 勢 が 作 れ るの か ? や は り日 常
生活の中で 、椅子に腰掛けるときも 、胡坐をかくときも、
も ちろん 歩くときも 意識して骨盤を立て 、やや前傾させ
る姿勢を作ることが一番といえ る。
常歩式ス ポー ツ上達法の本の中
にも 股 関 節 の 外 旋 習 得 法 と合 わ
せ 紹 介 され て いるの で 参 考 にし
て欲しい。
私 が 雪 上 で ス ター ト 前 にや るの
は、普通に立っ た姿勢から 尾て
い骨 を 少 し持 ち 上 げ る よ うに ヒッ
プ ア ッ プ を す る 。 そ うす る と骨 盤
が や や 前 傾 し、 そ の 姿 勢 か ら 膝、
足首を曲げ ていくと骨盤の前傾し
た中間ポジ シ ョ ンが作れる。その
姿勢を確 認して おいて ス ター ト す るだ けで も 体 制 の 崩
れが少なく滑りが安定す る。
さら に、内 脚 股 関 節 の 外 旋 と脛 の 筋 肉 (前 傾 骨 筋 )
を使 え るようにな ることで も 連 動 して 骨 盤 の 前 傾 は 保
たれ、ハム ス トリングス 、大臀筋、背筋といっ た強い筋
群を動員 で き高いパフ ォ ー マ ンス を発揮す ることが 出
来る。
さて、来シ ー ズンはど ん な目標とテー マを持っ てい
くか考えど ころである。目標はさておき、テー マはリズ
ム でいこうと思っ ている。それも 3拍子。ど うも これがス
ポー ツにも 心地よいら しい。これから のオフ シ ー ズンに
探っ てみよっ と^^!
京都スキ ー 協・森田 英二