山内担当分 第2回 トピックを並べなおす ~~~ 話の流れ・筋道を作る (論文やレポートの場合) 1つの「主張(クレーム)」(=結論)に対して、それを「論証」する 論文には主張が無ければならない(主張するのが論文である)。報告書・レポートであっても、主張は存在する。 主張がある限り、論証がなければならない。 論証とは、読んだ誰もが主張を認めざるを得なくするもの。 > 「主張(クレーム)」とは (どんなことが結論となり得るのか?) 「高校生のための論理思考トレーニング」より * 自明でない、「なぜ」とか「どうして」とか「どうやって」とかを尋ねられる(その部分が論証になる) * 自分はそう思う=そう主張する 主張たるもの vs 主張とはなり得ないものの例 1. 現在は晴れている (注:主張になる場合も作れるが、普通は事実) 2. 昨日、駅前のスーパーでニンジンを3本 150 円で売っていた 3. 1+1は2になる 4. 数学は英語より難しい 5. Windows は Linux より使いやすい 6. 映画 Oceans 13 は見に行くべきだ 注意すべき点は、主張とはなり得ない(=論証の対象でない=「事実」)との判断が正しいかどうか。 「事実」と思ってそこから議論をスタートしたにもかかわらず、その点をひっくり返されると、論が成立しなくなる。 -「皆が or 誰かがそう言っているから」 -「教科書に書いてあるから」 -「あたりまえだろう!」 脱線: 科学の新発見は、上のような場合を疑うことから始まった場合が多い(というか殆どであろう) 地動説、地球は丸い、万有引力、量子力学、… 脱線: 数学では、定義と公理が「事実」の部分に当る。公理(=証明できない、あらかじめ与えられたとして信じる 「事実」)と、定理(=証明(論証)された結果)は、厳然と区別する。数学の発想では一般に、なるべく公理を少なくし て、体系を作ろうとする(?) 実世界の論文では、「事実」の認定はもう少し緩いのが普通だろう。 「高校生のための論理思考トレーニング」 p.100 での見方 主張となるのは、①次にあるような語・表現を使って、②それが現在形で述べられて、③それが文の主たる骨格要素 になっている場合、としている。 ・相対的な形容詞、 但し、相対的=「特殊歴史的・特殊文化的・特殊個人的」なこと ・主観をあらわす助動詞 may(かもしれない), can(できる), must(しなければならない), should(するべきだ)等 He will be accepted to the University of Tokyo. 合格するだろうという私の予測 Chapter 9 of Japanese Constitution should be reconsidered. 改正すべきだという私にとっての should ・think, believe, want, hope, wish など I を主語とする主観をあらわす動詞 ②の現在形というのは、過去形の記述は「事実」になるからである。 「昨日雨が降った」 尚、過去の事実に関して 現在の時点で推量するのは、現在に推量しているのであって過去ではない。「昨日雨が降ったように(今)思う」 ③は、「憲法9条は改正されるべきだと田中君は言っている」のように、この文の骨格が「田中君が言っている」である から、こちらについて論証をするかしないかを判断することになる。 この本では主張となるかならないかの判断(主張であれば論証を迫られる)を議論しているが、ここでは、我々はむし 1 ろ逆に考えて、論文・レポートの主題(=主張)は、上記のような条件を陽または陰に満たしていなければならない、と すべきだろう。つまり、「私はこう思う」、という内容でなければならないということである。 脱線: ちなみに、日本語、日本人は、主張をしない。だから慣れていない。たとえば、「XXXXと言われている」という 表現を見るが、これは本当に出典があってそこで言われている場合と、本当は「自分がそう思った」というべきところ を、責任をとらない形で「XXXXと言われている」と表現する場合とがあるように(私は)思う。日本語のよさでもあるの だが、他人を理詰めで説得する西欧文化からすると、甚だ曖昧に見える。これは氷山の一角であろう(と私は想像す る)。 課題で出した Docomo vs Au は、「私はこちらがよいと思う」と主張せよとし、「その判断の根拠は?」と聞いている。 卒業論文では主張をし、その主張の論拠を説明して読み手を納得させて欲しい。 授業の課題レポートではどうか? 数学の証明でも、プログラム作成でも、答は1つでないならばそれらの答を並べて 比較し、どちらが良いという主張ができる。もちろん、結果が1つで自明な問題も多いかもしれないが。 > 「論証」とは 次回に、いろいろな論証(テクニック)を見るが、ここでは感覚的に捉えておく。 本質は、相手・他人に自分の主張を信じさせること 例1) 気圧計の数値が下がると、じきに雨が降る (論拠1) A ならば B である(推論規則) 気圧計の数値が(いま)どんどん下がっている (論拠2) Aである(前提) だから、もうすぐ雨になる (主張) B である(結論) 例2) 猫が顔を洗うと、じきに雨が降る (論拠1) うちの猫が(いま)顔を洗っている (論拠2) だから、もうすぐ雨になる (主張) 例3) 雨が降ったなら地面がぬれている (論拠1) (いま)地面がぬれている (論拠2) だから、雨が降った (主張) 例4) 雨が降ったなら地面がぬれている (論拠1) 主張 雨が降っていない・降らなかった (論拠2) だから、地面がぬれていない (主張) > 個別の論証を、組み合わせる 論拠 論拠 主張 全体としてみると、多重に重なった(論証の)ピラミッド 底辺に、複数の論拠が入ることもあるだろう (単純な三角形とも限るまい) A と B が成り立てば C が成り立つ ~ であれば A と B とを保証してやらないと C が主張できない 途中の「論拠」ノードは、更に下の論証(三角形)によって保証される 例) (主張) UFO は存在すると思う 論拠 論拠 主張 論拠 (論拠) NASA が「UFO が存在する」と言った(と思う) 2 このとき、論拠とした情報はまだ「書き手がそう思っている」 それに対する、更なる論拠を求める事ができる。つまり (主張) NASA が「UFO が存在する」と言った(と思う) に対して (論拠) ここにある新聞記事に、そう書いてある この論拠は、まあ「誰にでも信じられる」 (疑うことも大切だが~たとえば記事そのものが捏造とか) 事実と 見なせるだろう。 (~ しつこいが、立場による) 論文・レポートの「設計」 = 正しい論証のピラミッドを作ること パラグラフ で見ると、2段階で考えることになる。つまり、 パラグラフの内部: パラグラフ同士の間: 原則は1つの三角がよい(1パラグラフ・1トピック) 多重のこともあり得るが。 「主張」 や 「論拠」 を パラグラフ(のトピック) に当てる (イメージ) パラグラフ トピックセンテンス(主張) > 整った論文の、2つの条件 それぞれのピラミッドが正しく構成されてい るか (論証の条件を満たしているか) 論拠 論拠 最下辺のノードは、無条件に信じられる「事 実」であるか (信じられなければ、「主張」 パラグラフ間の ピラミッド であり、論証する必要がある) * 上記2つを満たすために十分なノード (それぞれの主張)が挙げられている パラグラフ トピックセンテンス(主張) パラグラフ トピックセンテンス(主張) か? 足りなければ、追加しなければならな い。 ~~ 論理に抜けがあることに 論拠 論拠 論拠 論拠 なる 課題) 「携帯電話は、Docomo がよいか、Au がよいか」について、準備したノードを元にして、論証のピラミッドを作ってみよ 1) 全体の結論となる主張(=全てのピラミッドの頂点)は、1つの主張のはず(「Docomo がよい」 or 「Au がよい」) 2) 一番上のピラミッドを作る 結論の主張を支えるノード(部分的な主張)はどれか。 そこはどういう論理パターンで支えているのか 3) その「仮定」の主張を支える、2段目のピラミッドを作る 4) これを繰返して、出発点(=最下辺)のノードが、すべて自明な事実だろうか? 5) 自分が宿題として集めたノードの中で、今回の筋道に役立たないもの(無駄であり、載せないノード)は何か? 3
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