14自然地理学演習資料6

14/05/26 自然地理学演習 No.1
14自然地理学演習資料6
Ⅰ
本日のテーマ
本日はF教室に移って2回目の演習となります。前回はこの教室の環境になれるために基本的な操
作を確認するとともに、MANDARA を使ってとにかく地図を描いてみました。「結構簡単にできた!」
というのが印象ではないでしょうか?MANDARA は使いやすくとても多機能なソフトです。
さて、今回は皆さんが集めてきた各種の地理情報をどのように加工して MANDARA に取り込み、
地図化していくのかということをテーマに演習を進めていきます。
Ⅱ
本日のキーワード
GIS、地理行列、属性行列、OD(起終点)行列、属性編集、地図ファイル、GIS ソフト、
オブジェクト、クリップボード、MANDARA タグ、レイヤー、
Ⅲ
MANDARAを使ってGIS体験!
★GISソフトとは何か?
一言で表現するのはなかなか難しいです。一見すると表計算またはデータベースソフトのようで
すが、地図ソフトのようでもあり、統計分析ソフトのようなところもあります。
でもあえて定義するならば、
「GIS ソフトとは各種の地理情報を使って表現方法の異なる複数の主題図を作成すると ともに、そ
の結果から各種の空間分析をおこなうことができるソフトである。」
とでもなるのでしょうか。地理情報とは地理的位置をキーとする情報で位置情報の他に属性情報
(その地点の事実や事情)がセットになっているデータのこと。属性情報はふつう地理行列(移動量
はOD行列)という一種の表を使って整理することができます。
★データの表現方法
コンピュータで図形を扱う場合は二つの表現方法があって、ラスタ型とベクタ型の二つに分類され
ます。この二つの差はかなり根元的なものなので、GIS ソフトを利用する時には注意が必要です。一
般に対象が自然物である場合はラスタ型が適しており、人工物の場合はベクタ型がよいとされていま
す。以下にそれぞれの特徴を簡単にまとめます。
1.ラスタ型データ
地表を規則正しく配列する長方形(正方形を含む)の網で覆い尽くし、その交点や中心点の値、面
積を持つメッシュを代表する値、あるいは属性コードを2次元配列の形で表現したものがラスタ型デ
ータである。国土地理院発行の「数値地図 50mメッシュ(標高)」などが代表例。
2.ベクタ型データ
地表の位置をポイント(点)、ライン(線)、ポリゴン(面)の座標で表し、それに値あるいは属
性コードを結びつけた構造を持つ地理情報がベクタ型データである。なお、今回使用している
MANDARA はベクタ型の GIS ソフトです。
★ラスタ型データとベクタ型データの比較
ラスタ型データの特徴
・解像度の二乗に比例してデータ量が多くなる。
・縮尺の変更にはあまり適していない(特に拡大すると境界線が
ギザギザになる)
・データの処理や加工は表計算ソフトなどで容易にできる。
・コンピュータの周辺機器ではスキャナーがラスタ型入力機器の代表。
・市販の地理データとしては数値地図 25000(地図画像)や数値地図 50mメッシュなどがある。
ベクタ型データの特徴
・拡大縮小が容易にできる。
・必要なデータは座標値だけであるのでデータ量が少なくてすむ。
・データ処理は点、線、面に関する幾何学的、論理的演算が必要で手間がかかる。
・コンピュータの周辺機器ではデジタイザーがベクタ型入力機器の代表。
・市販の地理データとしては数値地図 2500(空間データ基盤)やJMCマップなどがある。
※なお、ラスタ型とベクタ型のデータは決して排他的なものではなく、GISを使って互いの特性を
生かした処理が可能となってきています。すなわちそれぞれのデータの相互変換が可能となってき
ているのです。
14/05/26 自然地理学演習 No.2
ベクタ型データとラスタ型データ
Ⅳ
階級区分を考える
MANDARA を使うといとも簡単に地図が描けてしまい、「ハイ」これで完成となってしまうのです
が、ちょっと待ってください。ここでは手書きで作った経験が生きてきます。階級区分図(コロプレ
スマップ)を作成する場合を考えてみましょう。階級分割数と階級区分値の設定はとても重要で、し
かも難しいのです。
1.階級分割数をどうするか?
一般の読者の模様識別能力は8~10程度とされており、色彩の識別能力も 11 ぐらいが限度とされ
ているそうです。実際には 6 階級くらいが適当とされています。場合によって4~8階級位を使い分
けるのが無難といえそうです。
2.階級区分値
これがなかなかやっかいです。基本は度数分布表(またはヒストグラム)を作ってみることです。
MANDARA では簡単に度数分布表ができます。さらに Excel 分析ツール(アドイン機能)を使って棒グ
ラフ表示(ヒストグラム)にすると分かりやすいと思います。このグラフをみながら度数分布の特徴を
みましょう。そして階級区分値を決定していくことになります。おもな方法を四つ紹介します。
①等間隔の区分
統計データの最大値から最小値の差をとり、これを階級分割数でわると、等間隔の区分になります。
場合によっては、区切りのよい数に丸めることもあります。
②平均値を用いる区分
統計データの全体の平均値を求め、これを境にデータを二つのグループに分けます。次に、それぞ
れのグループの平均値を求め、これを境にデータを二つのグループに分けます。こうして4つのグル
ープができます。これをくり返していくと、8,16,・・・、2 n個の階級区分ができます。
③等比数列を用いる区分
統計データによっては、どちらか一方に大きく偏った場合があります。この場合は統計データの値
が小さい内は間隔を小さくし、値が大きくなるにつれて間隔を広くしたりするときに適しています。
例えば初項500、公比2とすると→a n=500×2 n-1
階級区分値は500,1000,2000,4000,8000となります。
④データ数を等分する区分
これは今回の演習2、3でも利用している方法ですが、統計データの個数を階級分割数で割る方法
です。データをソートして大きい順などにしておいて計算して求めた 1 階級あたりの数で区分してい
きます。端数は調整します。
このほかにも標準偏差を用いる区分や等面積の区分など様々な方法がありますが、どれが正しく、
どれが間違いということはないので、作成する階級区分図で「何を伝えたいのか」という目的に照ら
し合わせて、手順を踏んで階級区分をしていきましょう。
なお MANDARA には階級区分が自動で選択できる便利な機能が付いていますので、大いに活用し
て下さい。なお階級区分の方法は以下の 5 種類です。
自由設定、分位数、面積分位数、標準偏差、等間隔
14/05/26 自然地理学演習 No.3
主題図の表現方法
主題図にはデータの性質によって、様々な表現方法が使われます。代表的なものを紹介しますので、
どの表現方法が適しているのかをしっかりと判断できるようにして下さい。
①ドットマップ
ドット(小さい円点)に適切な数値を代表させ、ドットの疎密の度合いによっ て統計値の地域的な
分布形態を示す。最もよく利用される方法の一つ。利点は事象の空間的密度を容易に表現することが
できることである。
②図形表現図
ある単位地区や地点の統計値を図形で表現する。一般に図形の大きさを統計値に比例させて表現す
る。この図の目的は、特定の単位地区あるいは地点における事象の相対的大きさを表現すること。
③階級区分図(コロプレスマップ)
統計値を単位地区ごとに表現する地図であり、統計値をいくつかの階級に区分して表現することが
多い。階級区分や階級の記号化、凡例のデザインなどを慎重に検討する必要がある。
注意点として連続する地理的事象を表現するのにはふさわしくない。例えば年平均気温を階級区分
図で表現するのは不適当。またこの図で統計値を表現する場合は、絶対的統計値ではなく、相対的統
計値を使用する。
これは多くの場合、単位地区の面積が異なるために、面積の大小から生ずる影響を除去するためで
ある。相対的統計値の代表例は比率、例えば人口密度、家屋密度、単位面積あたりの生産高など。
④等値線図
等値線によって 3 次元的事象を 2 次元の平面に表現する地図。地形を等高線で示す手法を統計値の
表現に応用したもの。図化する範囲全体の分布形態を重視するときに使う。気温分布など連続的な事
象を表現するのに適している。
Ⅵ 参考文献
・野上道男・岡部篤行 他 2001「地理情報学入門」 東京大学出版会
・町田聡 2004「GIS・地理情報システム」 山海堂
・菅野峰明・安仁屋政武・高阪宏行 1987「地理低情報の分析手法」
・後藤真太郎・谷謙二 他 2007.「新版 MANDARA と EXCEL による市民のための GIS 講座」
Ⅴ
演習3 :「GIS ソフトを使って都道府県別各種統計から主題図をつくる」
前回は MANDARA の機能を少しだけ紹介しましたが、今回は実際に与えられたデータを使って主
題図を作ってみましょう。まずは URL からダウンロードし、デスクトップまたは G ドライブあたり
に貼り付けて下さい。ここからが本日の演習です。
★作業の概要と作成する主題図
講座用ホームページからエクセルファイル「演習3:都道府県の各種データ」をダウンロードし GIS ソ
フト MANDARA 用にデータを加工、さらに主題図を作成する。主題図は以下の二つを作成すること。
1.人口分布図(図形表現図)と人口増減率または人口密度を組み合わせた多主題図を作成する。
2.人口以外の都道府県統計をつかって自由に主題図を一つ作成する。
★作業のポイント
1.以下の URL から→本日の作業→5/26 の資料へジャンプし、エクセルファイル「演習3:都道府県
の各種データ 2(14review.xlsx)」をダウンロードして各自の G ドライブに保存する。
学内用URL:http://www.edu.i.hosei.ac.jp/~fb60085/index.html
学外用URL:http://mtgeo.web.fc2.com/
2.エクセルの sheet 機能を使って、Sheet「14 各種エータ」から必要なデータのみ sheet「作成用」
にコピー&ペーストする。表の形式を MANDARA データ用に整え、MANDARA タグを記入する。
3.あらかじめ作成した MANDARA 用データをクリップボードにコピーしておき、GIS ソフト
MANDARA を起動して「クリップボードのデータを読みこむ」を選択してOKをクリックする。
4.ここからは MANDARA 上での作業です。人口分布の図形表現図、人口密度のコロプレスマップ
を作成する。
・MANDARA のトップページからデータ項目「人口 2010 年」などを選び赤字のタブから記号を選び
描画 を開始します。必要に応じて凡例の階級を調節してみて下さい。記号サイズの設定ボタンをク
リックすると記号の形、色、サイズも変更できます。
・人口密度はコロプレスマップ表示をしますので、「ペイント・ハッチ・文字・線」のタブを選択
します。次に階級分割数を決め色の設定を行います。色の設定は色設定方法を選択し色ボタンに
カーソルを動かすと十字になるのでクリックします。そうすると色の指定もできます。各種の設
定ができたら描画開始です。
14/05/26 自然地理学演習 No.4
・あっというまに主題図ができてしまいます。ただこれで終わりではありませんね。手作業でやっ
たときと同じように地図の構成要素を確認して下さい。主題図のタイトル、凡例、縮尺、方位、
データの出典、作成者、日付等です。方位や凡例などの記号は地図上でドラッグすると自由に移
動できます。大きさも変更できます。タイトル用の文字も入力できます。
・これでほとんど完成ですが、演習3の提出用地図は多主題図です。すなわち人口分布の図形表現
図と人口密度のコロプレスマップを重ねた図を作ってほしいのです。MANNDARA のトップ画面
をよくみると「重ね合わせセット」というのがあります。これを使うと・・・。
★提出について
以下の期日までに図を完成、プリントアウトして提出すること。
期日:6月9日(月)の講義まで
追加の作業
5.エクセルからではなく MANDARA の属性ファイル上でもデータは入力できる。そこで、右の表
の都道府県別の平均標高のデータをキーボードから入力してみること。47件の入力が終了した
らまた主題図が作成できるのでつくってみること。どの表現方法が適しているだろうか?
★属性ファイル入力用データ
平均標高
m
全国
386
北海道
308
青森県
226
岩手県
425
宮城県
220
秋田県
301
山形県
436
福島県
539
茨城県
95
栃木県
460
群馬県
761
埼玉県
246
千葉県
45
東京都
244
神奈川県
248
新潟県
389
富山県
663
石川県
294
福井県
372
山梨県
990
平均標高
m
長野県
1129
岐阜県
716
静岡県
499
愛知県
208
三重県
264
滋賀県
282
京都府
260
大阪府
142
兵庫県
264
奈良県
567
和歌山県
320
鳥取県
371
島根県
299
岡山県
313
広島県
387
山口県
228
徳島県
459
香川県
168
愛媛県
410
高知県
433
平均標高
m
福岡県
165
佐賀県
180
長崎県
138
熊本県
395
大分県
350
宮崎県
400
鹿児島県
228
沖縄県
86
6.エクセルファイル「演習3:都道府県の各種データ(14review.xlsx)」に入っている 14 各種デ
ータなどを使っていろいろな主題図を作成してみること。必要ならば多主題図も作成してみること。
★すべて完成した人へ
おめでとうございます。ここまでできれば都道府県の主題図はお手のものでしょう。インターネッ
トからいろいろな都道府県データを入手してきて主題図を作ってみましょう。おもしろいものができ
たら是非見せて下さい。ここで注意すべき点は、
データの特徴をよく考えてどのような地図表現にするか
表現する点、線、面の大きさや色をどうするか
凡例の階級をどうするか、色の設定をどうするか
ダミーオブジェクトの表示をどうするか
地図の構成要素は大丈夫か
などを必ず確認して下さい。いくらコンピュータで簡単に作図できるといってもこの辺を慎重にや
らないとせっかくの地図が台無しになってしまいます。