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解答のヒント
今回の課題記事は、若者の間での「サプライズ」の流行を扱ったものです。友人や恋人に
対して、誕生日やプロポーズなどの機会にサプライズを仕掛ける若者が増えており、その企
画を代行するビジネスまで登場している、と紹介されています。記事では更に統計数値から、
確かに若い世代の方がサプライズを企画することが多いことが示され、その原因の分析と
して、SNSの普及も挙げられています。興味深い内容ですが、ここからどのような解答を
書いていくことができるでしょうか。今回は解答者自身の「実体験」を重視した答案、知識
に頼らない固有の「感じ方・考え方」を重視した答案作りもあるということを、ごく簡単に
ですがお伝えできればと思います。
解答作成の方針
記事を踏まえて、まず考えられるのは、多くの「若者論」の常套になっているように、こ
うした「若者の風潮」の内に何らかの不健全な点、問題点を見付け、
「警鐘を鳴らす」とい
う趣旨のもと、批判的な論調で書くやり方でしょう。確かに、記事の末尾には「慢性化する
サプライズ」の大変さが紹介されており、また記事冒頭でも、
「なぜそこまでやるのだろう」
という、記者の感想が記されています。こうした視点を深めることで、記事のような「若者
の風潮」に批判的な解答が一つ、でき上がるのではないかと思います。
ただ今回は、別の方針を採ることにします。理由は幾つかありますが、一つは、世間や「若
者の風潮」に対して闇雲に「警鐘を鳴らす」という姿勢に慣れてしまうのも、それはそれで
不健全であると考えるため。また別の一つは、受験本番を想定した場合、上記のような解答
を書く受験生は多くなるのではないか、つまり自分がそれを書いても、あまり独自性が出せ
なくなるのではないかと懸念するからです。もちろん、他と少し違う解答だからと言って高
得点がもらえるとは限りませんし、書きにくいことを書いて失敗する恐れも大いにあるで
しょう。実際、小論文の解答は、自分が書きやすいと感じたことを中心に書くのが鉄則のは
ずで、答案全体の論理性や構成が採点の際の主な評価基準だと思います。ですが今回は、敢
えて「
『サプライズ』し合う若者たち」に肯定的な眼差しを向け、彼らの立場から書き進め
てみることで、何とか解答を形にしてみたいと思います。はじめは見通しが立たないと感じ
られても、じっくりと考えて、ある方針のもとにどんな解答がひねり出せるのかを探ってみ
ると、案外色々なアイディアが出て来るものだと思います。
実体験と繋げて考えてみる
今回は「実体験」を重視してみます。実際、記事のように大々的にではなくても、例えば
友人の誕生日に他の仲間と協力し合って何らかのサプライズを仕掛けたことがあるという
人は、多いのではないでしょうか。解答例では、自分もサプライズをやったことがある、と
いう個人的な経験を出発点にして、その時に感じたことを述べ、更に、なぜそう感じたのか
を分析することを叙述の主軸にする、というアプローチを採ることとします。課題記事をた
だ第三者的に読み流すのではなく、同じことを自分も実際に体験したことがある、あるいは、
過去の実体験がなくとも、体験した場合に自分ならこう感じるだろうと想像してみる。導入
としてこうしたアプローチを採ることで、解答の糸口が、存外に見えて来る場合もあるはず
です。
実体験と繋げて書くことの大きなメリットの一つは、そうすることで、解答者の本当の思
考力や洞察力を出題者側に伝えることができる点にあると思います。社会的な動向を扱っ
た小論文の場合、軽薄を避けようとする気持ちから、ついつい手持ちの知識の総動員によっ
て答案を組み立てようとしてしまいがちです。ですがその場合、どうしても知識量は出題す
る側の方が多いので、
「素晴らしい意見だ」と答案によって驚かすことは難しいですし、ま
た実はそれでは、解答者の本当の「個性」
(思考力や洞察力、感じ方や考え方)が、出題者
側に伝わりにくくもなると思います。たまたま持っていた付け焼き刃の知識を書き並べる
ことで、いたずらに日頃思ってもいない「批判」を展開するよりは、体験に即した解答者自
身の個人的な感じ方・考え方から答案を書いていく方が、はるかに「個性」は発揮しやすい
はずです。あとはその中に、少しでも「鋭いな」と読む側に思わせられるような視点を、何
とか織り交ぜることを目指しましょう。以下、今回の解答例の流れになります。
サプライズを仕掛けるという経験と、若者の「成長」
さて、今回の解答例では、キーワードを若者の「成長」としました。サプライズ企画の成
立には、条件として仕掛ける側と仕掛けられる側の双方が必要ですが、特に仕掛ける側の立
場から答案を書き進めています。サプライズを仕掛けることは自分にとって楽しく、充足感
をもたらしたが、なぜ充足感をもたらしたのかと言うと、それはその経験が、自分を含めた
若者に「成長」を感じさせてくれたからではないか。自分がサプライズを仕掛けた時のこと
を想起・想像してみて、解答例ではこんな風にまず仮説を立てました。またその際、若者と
しての自分の個人的な感じ方を、若者一般のものへと広げる視線も入れました。ここまでが
第一段落の内容になっています。これを踏まえて、では具体的にその時感じた「成長」とは
何であったのか、内省及び分析の上、以下の二つの観点から続けて書いています。
一つ目。サプライズの企画を考えるという作業は、他者に成り代わって、どうすればその
他者が感激してくれるのかを思案する作業を含む。ところでこのような作業は実は人生上
では稀少であり、従ってサプライズを企画する経験は、若者を成長させるのではないか、と
いう観点。
「人の気持ちになって考えなさい」と、誰もが子供の頃から散々言われてきたと
思いますが、実は人の気持ちになって本当に真剣に考えたという経験は、振り返ってみると
少ないのではないか。サプライズの企画は、この作業を要請する。だから真剣にそれに打ち
込んだ時には、成長を感じさせてくれるのではないか、という観点です。こうした内容を、
解答例の第二段落としました。
二つ目。サプライズを仕掛け、実行するに当たって、若者はダンサーやセレブなど、非日
常的な様々な役割を擬似的に担うことができる。ところで実は、こうした体験は若者である
自分の将来的な可能性を見定めることに繋がるので、成長にとって重要なのではないか、と
いう観点。自分にはどのような可能性が備わっており、自分は何に憧れを抱き、自分はどん
な役割を担っている時に喜びや充足感を最も感じるか。こうした人生上の重要な事柄は、存
外に普段の生活の中では気付かれにくいものだと思います。サプライズは、それに気付く機
縁を与えてくれる。だから成長を感じさせてくれるのではないか、という観点です。こうし
た内容を解答例の第三段落としました。
解答例では、以上二つの観点がサプライズを仕掛けるという経験に備わるので、若者は
「成長」を感じるのではないか、という考えを、第一段落の問いに対する答えとしています。
最後の第四段落はそれらのまとめ、簡単な「締め」の文章になっています。このように、紹
介されている体験を、自分自身は過去において実際にどう感じただろうか、あるいは、仮に
体験するとすればどう感じるだろうか、と想起・想像し、それはなぜかと原因を分析的に探
ってみる。今回採ったこうしたアプローチがあることも、小論文の答案執筆の際に困ったら、
思い出していただければと思います。
終わりに
以上、今回はある社会的な風潮を紹介した記事を題材に、
「実体験」を重視した答案作成
を目指してみました。このように、小論文では自分の体験や記憶、想像などから解答のアプ
ローチが得られることも大いにあると思います。どのような課題文・設問に対して、どのよ
うな解答のアプローチがあり得るのか。受験本番までまだ時間はありますので、様々な可能
性を探り、一つでも多くの引き出しを作っておいて欲しいと思います。せっかくの受験勉強
の時期、
「解答例」にもあるように、自分をとにかく「成長」させることを目標に、未来あ
る皆さんには、勉学に励んで欲しいと思います。
(植木 啓之)
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