2014 年 12 月 24 日 第 19 号 2015 年の 10 サプライズ 大和住銀投信投資顧問 部長 経済調査部 門司 総一郎 年内最後の「市場のここに注目!」は「2015 年の 10 サプライズ」です。10 サプライズは当コラムの 前身である「ストラテジストコラム」で毎年年末に作成していたものですが「市場のここに注目!」 でも続けさせて頂きます。10 サプライズの元祖である元モルガンスタンレーのエコノミスト、バイロ ン・ウィーン氏は「サプライズ」を「一般には 1/3 の生起確率しかないと思われているが自分にとっ ては 50%以上である事象」と定義していますが、私は「比較的可能性が高いリスクシナリオ」位の気持ち で作っています。 2015年に予想される10のサプ ラ イズ サプライズ 市場への影響 株式 債券 円 1 プーチン大統領が辞任! ウクライナ危機収束で株高・債券安 ○ × × 2 景気・業績改善と好需給から日経平均は25年ぶりに28,000円回復 ○ × × 3 低インフレと地政学リスクでFRBはゼロ金利解除を見送り × 〇 〇 4 習改革が本格化! 上海総合指数は5,000ポイントを回復 ○ - - 5 日銀の出口戦略への警戒感から日本の長期金利は0.8%を回復 × × ○ 6 投資マネーの流出から原油価格は50ドル以下が定着 ○ 〇 ○ 7 7年ぶりに外国人が売り越すも日本株は上昇 - - × 8 改革路線への転換が奏功、ブラジルレアルが5年ぶりに上昇 - - × 9 原油安でカタールがW杯開催を返上、代替開催地は日本に決定! 10 エヴァ、バック・トゥー・ザ・フューチャーでSFブーム、関連株が上昇 キリン、ANA、JAL、アディダス(独) コムキャスト(米)、ディズニー(米)、KADOKAWA 出所:大和住銀投信投資顧問、○は日本株式/日本債券/円(対ドル)の上昇要因、×は下落要因、-は中立または影響なしを示す その 1:プーチン大統領が辞任! ウクライナ危機収束で株高・債券安 経済制裁と原油安で 2014 年に暴落したロシア・ルーブル。2015 年も下落は続き、経済の崩壊も現実 味を帯びてきます。国民の間でも批判が強まったため、やむなくプーチン大統領はウクライナからの 撤退を決断するとともに辞任。実現すれば世界の株式には買い要因、債券には売り要因です。 その 2:景気・業績改善と好需給から日経平均は 25 年ぶりに 28,000 円回復 2015 年の日本株はファンダメンタルズ面では景気・業績の改善、需給面では日銀の ETF 購入、公的 年金のポートフォリオリバランス、自社株買いなど好材料尽くし。大幅上昇した 2013 年の再来も期待 できそうです。2013 年の日経平均の上昇率は 56.7%なので、2014 年末を 18,000 円と仮定して同率上げ なら 28,206 円(=18,000×1.567)、丸めて 28,000 円まで上昇の可能性ありと見ています。 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点における当社の判断に 基づくもので、今後予告なしに変更されることがあります。投資に関する最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げ ます。 1 市場のここに注目! 2014 年 12 月 24 日 日経平均( 月次、円) 上海総合指数( 月次) 40000 7000 35000 6000 日経平均 30000 5000 25000 4000 20000 3000 15000 2000 10000 1000 5000 1985年 1990年 1995年 2000年 2005年 0 2005年 2010年 上海総合指数 2007年 2009年 2011年 2013年 その 3:低インフレと地政学リスクで FRB はゼロ金利解除を見送り 2015 年も米景気は好調を維持すると予想していますが、原油安の影響などでインフレ率の 2%達成は 難しそうです。また「イスラム国」などの地政学リスクも考えれば、米連邦準備制度理事会(FRB)が利 上げを見送る可能性もありそうです。利上げ見送りは日本株にプラスとの見方もあるでしょうが、円 高が予想されるため下落要因としました。 その 4:習改革が本格化! 上海総合指数は 5,000 ポイントを回復 周永康前常務委員の拘束により共産党内の権力闘争は一段落。2015 年は習近平国家主席による経済 構造、金融制度、財政など各種の改革が本格化すると予想されます。既に今年後半の中国株は改革へ の期待感から大きく上昇しましたが、改革の進捗次第では来年の上海総合指数が 8 年ぶりの水準を回 復することもあり得るとの見方です。 その 5:日銀の出口戦略への警戒感から日本の長期金利は 0.8%を回復 2015 年も 2%のインフレ目標達成は難しいと思いますが、1%でもデフレ脱却に変わりはありません。 加えて景気が回復し、株価も大幅高となれば、年後半には日銀の出口戦略が意識されることもありそ うです。その場合 10 年債利回りは 6 年ぶりに上昇、年末には 0.8%に達するとのサプライズです。 日本10年債利回り( 月次) WTI先物価格( 月次、ドル/バレル、直近限月) 2.0% 160 140 10年債利回り 1.5% WTI 120 100 1.0% 80 60 0.5% 40 0.0% 2005年 2007年 出所:Bloomberg 2009年 2011年 20 2005年 2007年 出所:Bloomberg 2013年 2009年 2011年 2013年 その 6:投資マネーの流出から原油価格は 50 ドル以下が定着 リーマンショック後も原油価格が 100 ドル前後で推移できたのは、原燃料としての需要でなく、余 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点における当社の判断に 基づくもので、今後予告なしに変更されることがあります。投資に関する最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げ ます。 2 市場のここに注目! 2014 年 12 月 24 日 剰資金の投資先としての需要によるものでした。しかし今回の急落で思った以上に需給が緩和してい ることが明らかになったため、今後は余剰資金の投資先としての需要も剥落すると見ています。その 場合、原油価格は 50 ドル以下に定着することになるとのシナリオです。 その 7: 7 年ぶりに外国人が売り越すも日本株は上昇 外国人は今年まで 6 年連続で日本株を買い越しですが、来年は売り越しとなる可能性があります。 といっても外国人が弱気になるということではなく、日銀、公的年金、上場企業(自社株買い)など国 内勢の買い需要が高いため、結果的に外国人が売り手になるとの理屈です。外国人が売り越した 2008 年の日本株は大幅下落しましたが、今回は外国人が売っても日本株は上昇です。 外国人の日本株買い越し額( 暦年、兆円) ブ ラ ジ ルレア ルの対ドル騰落率( 暦年) 10 40% 8 30% 6 20% 4 10% 2 0% 0 -10% -2 -4 -20% -30% 兆円 -6 騰落率 -40% 2007年 2009年 2011年 2013年 出所:東京証券取引所、現物と先物の合計、14年は11月まで 2007年 2009年 2011年 出所:Bloomberg、14年は12月17日時点 2013年 その 8:改革路線への転換が奏功、ブラジルレアルが 5 年ぶりに上昇 今年の BRICs4 ヵ国は勝ち組(インド、中国)と負け組(ブラジル、ロシア)で明暗が分かれました。し かし 10 月に再選を果たしたブラジルのルセフ大統領は財政再建論者のジョアン・ルビ氏を財務相に指 名、中銀もインフレ抑制のために連続利上げに踏み切るなど従来のポピュリズム路線を転換しつつあ ります。これが奏功し、市場の信頼を回復できれば 5 年ぶりのブラジルレアルの反発が期待できるで しょう。 その 9:原油安でカタールが W 杯開催を返上、代替開催地は日本に決定! 2022 年の FIFA ワールドカップはカタールで開催される予定ですが、元々気候の問題で開催を危ぶむ 見方がありました。更に原油安で財政面でも問題が発生して、やむなくカタールが開催を返上すれば 同じアジアの日本は代替開催地として最有力。その場合、日本代表のスポンサーであるキリン、ユニ フォームを提供するアディダス、海外からの旅行客増の恩恵を受ける JAL や ANA に注目です。 その 10:エヴァ、バック・トゥ・ザ・フューチャーで SF ブーム、関連株が上昇 2015 年は SF に縁がある年。エヴァンゲリオンの舞台は 2015 年ですし、バック・トゥ・ザ・フュー チャー(BTF)の第 2 作で主人公が訪れるのも 2015 年です。この両者の新作に加えて、スターウォーズ のエピソード 7 も来年公開が見込まれており、爆発的な SF ブームは間違いなし!?。 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点における当社の判断に 基づくもので、今後予告なしに変更されることがあります。投資に関する最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げ ます。 3 市場のここに注目! 2014 年 12 月 24 日 株式市場では BTF 配給のユニバーサル・ピクチャーズを傘下に持つ米コムキャスト、スターウォー ズを配給する米ディズニーなどが物色されると思われます。またエヴァ関連では KADOKAWA の他に、舞 台である箱根への訪問者増の恩恵が期待できる小田急も有望です。 以上が 2015 年に予想される「10 サプライズ」ですが、最後に昨年 12 月 26 日付「ストラテジストコ ラム」の「2014 年に予想される 10 サプライズ」の結果について検証しておきます。自己評価では 3 勝 2 敗 5 分です。 2014年に予想された10のサプ ラ イズ サプライズ 評価 寸評 1 「いつするか? 今でしょ!」、インフレ率2%実現でデフレ完全脱却 × インフレ率はピークアウト 2 中間選挙で共和党勝利、ねじれ解消で米政治が安定 △ 共和党勝利も、政治は迷走 3 雇用の回復続き、英国が主要先進国で初の利上げ △ 雇用改善も、利上げは見送り 4 新興国市場でも構造改革がテーマ、株式/通貨は二極化 △ 二極化も、テーマは資源依存度 5 アラブに真の春到来、地政学リスク後退で原油価格が大幅安 △ 地政学リスク高まるも、原油は大幅安 6 行き過ぎた税金対策に待った!! 国際課税強化で巨大多国籍企業が売られる 〇 アマゾン、グーグルは下落、スタバも低迷 7 日経平均も「倍返しだ!」、2014年の高値は19,000円 △ 17935円まで上昇 8 海外投資家を「お・も・て・な・し」、海外勢による日本企業買収が大幅増 × 外→内M&Aは13年と変わらず 9 PS4とXbox OneでTVゲームが復活! 関連株が買われる 〇 ソニー、マイクロソフト上昇 10 賃上げと株高で「お父さん消費」が好調、お父さん関連が上昇 〇 三陽商会、シマノは上昇 出所:大和住銀投信投資顧問、○は「サプライズ発生」、×は「不発」、-は「どちらとも言えない」を示す、12月17日時点 年間を通じて景気や金融市場に明確な方向が出ず、また国・地域ごとにばらつきが大きかったこと から、完全に当たったものも、完全に外れたものも少なかったと思います 本年も「ストラテジストコラム」及び「市場のここに注目!」をご愛読いただき有難うございまし た。来年もよろしくお願いします。良い年をお迎え下さい。 以上 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点における当社の判断に 基づくもので、今後予告なしに変更されることがあります。投資に関する最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げ ます。 4
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