染毛剤(ヘアダイ、ヘアカラー)

公益財団法人 日本中毒情報センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報
【染毛剤(ヘアダイ、ヘアカラー)】Ver.1.00
公益財団法人 日本中毒情報センター
保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報
染毛剤(ヘアダイ、ヘアカラー)
1.概要
染毛剤には、一時染毛剤、永久染毛剤、ヘアブリーチの 3 種類あるが、ここでは
中毒事故も多く、毒性の高い永久染毛剤をとりあげる。第 1 液は、酸化染料
(p-フェニレンジアミン 0.5~24%含有、p-または o-アミノフェノール 0.5%含有)、
カップラー(m-フェニレンジアミン、m-アミノフェノール)、その他、25%アンモニ
ア液(4~8%含有)、非イオン系界面活性剤(20~30%含有)、溶剤(プロピレングリコ
ールやイソプロピルアルコール)5~10%からなる。第 2 液は酸化剤(過酸化水素 5~6%含
有)からなる。中毒はとくに第 1 液により生じる。
2.毒性
パラフェニレンジアミン:成人経口推定致死量 10g (1)
アミノフェノール:ラット経口 LD50
p-アミノフェノール 375mg/kg、
o-アミノフェノール 1,300mg/kg、
m-アミノフェノール 1,660mg/kg(2)
アンモニア水:(25%水溶液)成人経口推定致死量 約 30mL(3)
過酸化水素:30%液 ヒト経口推定致死量 1,429mg/kg(7)、
8~20%液 ラット経口 LD50 1,518mg/kg(7)
3.症状
パラフェニレンジアミン(5)(6)(アンモニア水、過酸化水素は各項参照)
経口:服用後 2 時間以内に繰り返し嘔吐が始まり、続いて顔面、頸部、咽
頭の浮腫、そして呼吸困難、チアノーゼとなる
呼吸器系:喘息、気管支痙攣、急性呼吸不全(神経血管性浮腫による)は
死因となる
消化器系:上腹部痛、嘔吐、嚥下困難
肝:肝細胞壊死、
腎:急性腎不全(腎尿細管壊死、二次的に血管内溶血)
その他:高カリウム血症、低カルシウム血症、溶血、
メトヘモグロビン血症、横紋筋融解
眼:結膜・角膜炎、結膜浮腫、眼瞼浮腫
皮膚:多形成紅疹、接触性皮膚炎など
4.処置
家庭で可能な処置(5)
眼:15 分以上流水で洗浄
皮膚:石鹸と水でゆっくり洗浄
医療機関での処置(パラフェニレンジアミンに対する処置(5)(6))
胃洗浄、吸着剤・下剤の投与
血液透析、血液灌流による薬物除去の有効性は不明だが、重症例には試
みるべき(6)
対症療法
神経血管性浮腫:特異的治療なし。抗ヒスタミン剤やステロイド剤
投与が勧められるが、有効性は証明されていない
1/3
copyright © 2009 公益財団法人 日本中毒情報センター All Rights Reserved.
公益財団法人 日本中毒情報センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報
【染毛剤(ヘアダイ、ヘアカラー)】Ver.1.00
メトヘモグロビン血症(30%以上なら要処置):メチレンブルーの投与
5.確認事項
1) 成分:染毛剤には、資料のその他の項に示すように様々な種類があり、
目的によって成分も変わるので、必ず容器記載の成分を確認。
また 1 液か 2 液か聞く
2) 摂取量:なめた程度か、容器から飲んだのか
3) 患者の状態:嘔吐、浮腫、呼吸困難など変化の有無
6.情報提供時の要点
1) 第 1 液を少量でも飲んだらすぐに受診を指示
2) 第 2 液の場合は少量なら牛乳を飲ませて経過を観察し、症状があれば
受診を指示
3) 眼や皮膚への接触では、洗浄後も痛みや腫れなどの症状が残るなら受診を
指示
4) 受診の際は必ず容器の持参を指示
7.体内動態
パラフェニレンジアミン:
吸収:消化管粘膜、皮膚、肺から速やかに吸収(6)
排泄:体内でキノンジイミンに酸化され、さらに N-アセチル-p-フェニ
レンジアミンにアセチル化。あるいはグルクロン酸抱合、硫酸抱
合されて尿中に排泄(6)
8.中毒学的薬理作用
パラフェニレンジアミン: 局所粘膜刺激作用、溶血、
メトヘモグロビン血症 (1)
9.治療上の注意点
(5)(6)
パラフェニレンジアミンについて
1) 咽頭・喉頭の違和感や浮腫を認める場合、気管内挿管または気管切開
2) 催吐は初期症状として嘔吐が繰り返し生じ、また気管内吸引の危険性
があるため積極的には勧められず
10.その他
一時染毛剤は黒チック、カラースプレー、カラーリンスとも呼ばれ、着色
剤を物理的に毛髪に付着させるタイプのもので、顔料、粘結剤(シェラ
ック樹脂、エチルセルロースなど)、被膜剤を混和した化粧品。永久染
毛剤は、酸化染料を毛髪中に浸透させるもので、色もちは 1 カ月以上。2 液
式で、第 1 液は酸化染料、カップラーを含み、第 2 液は酸化剤で、使用時
混合して用いる。医薬部外品に指定。ヘアブリーチは、毛髪や足・腕の
むだ毛を脱色。2 液式のものが多く、第 1 液は過酸化水素水、第 2 液は
アルカリ剤が主成分で、使用時混合して用いる
12.参考文献
(1) 救急中毒マニュアル(1984)
(2) Clinical Toxicology of Commercial Products(5th)(1984)
2/3
copyright © 2009 公益財団法人 日本中毒情報センター All Rights Reserved.
公益財団法人 日本中毒情報センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報
【染毛剤(ヘアダイ、ヘアカラー)】Ver.1.00
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
Handbook of Poisoning(1987)
産業中毒便覧(1981)
Poisindex(1989)
大橋教良、他:救急医学、12(10):1509~1512(1988)
RTECS(1992)
13.作成日
19900215 Ver.1.00
ID M70158_0100_2
3/3
copyright © 2009 公益財団法人 日本中毒情報センター All Rights Reserved.