哺乳びん、乳首の殺菌消毒剤(塩素系)

公益財団法人 日本中毒情報センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報
【哺乳びん、乳首の殺菌消毒剤(塩素系)】Ver.1.00
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哺乳びん、乳首の殺菌消毒剤(塩素系)
1.概要
哺乳びん、乳首を殺菌・消毒する製剤で、液体と錠剤の 2 種類がある。液体は次
亜塩素酸ナトリウムを 1%、塩化ナトリウムを約 16%前後含有し、錠剤はジクロロ
イソシアヌル酸ナトリウムを 500mg 含有する。液体では 10~80 倍に希釈し、錠剤で
は 1 錠を水 2L に溶解し、哺乳びん等を 1 時間以上浸して殺菌消毒する。
2.毒性
希釈して使用する製剤なので、適正な使用時では低濃度であるため毒性は低い
原液では pH11~12 前後のためアルカリによる粘膜刺激作用の障害が考えられ
る
錠剤を誤飲したときも原液と同様の粘膜刺激作用による障害が考えられる
次亜塩素酸ナトリウム:5%溶液の幼児経口致死量 15~30mL(1)
0.5%以下の溶液の服用では生命の危険性は少ない(2)
(皮膚、粘膜の腐食作用は嚥下した絶対量よりもむしろ溶液の濃度による
ところが大)
塩化ナトリウム:ヒト推定致死量 0.5~5g/kg(3)
(成人 30g=茶匙 1.5~2 杯)
致死的ナトリウム血中濃度 185mEq/L
ジクロロイソシアヌル酸:ヒト経口最小致死量 3,570mg/kg(7)
ジクロロイソシアヌル酸は加水分解されて次亜塩素酸を遊離する
3.症状
希釈液を少量服用の場合は重篤な症状があらわれることはほとんどない。
原液を大量に服用すると(子供が原液を 30mL 以上誤飲した場合)塩化
ナトリウム中毒の可能性がある
錠剤を大量に服用すると次亜塩素酸ナトリウム中毒の可能性がある
経口:嘔気、嘔吐、下痢、口腔・咽頭・食道・胃の疼痛と炎症、
頭痛、発熱
経皮・目:刺激作用
4.処置
家庭で可能な処置
経口:牛乳(120~240mL、幼児 15mL/kg 以下)、卵白などを与える
眼 :流水で 15 分以上洗浄
経皮:水で十分に洗浄
医療機関での処置
経口:希釈(牛乳、卵白)
胃洗浄(大量嚥下の場合、摂取後 1 時間以内であれば実施。
消化管穿孔に注意)
粘膜保護剤(マーロックス(R)、アルロイド G(R)など)の投与
ショック、痙攣、低血圧などの対策、消化管穿孔対策
吸入:気道確保、咳嗽、呼吸困難のある場合、呼吸器の炎症症状を診察、
酸素吸入、気管支拡張剤の投与を考慮
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5.確認事項
1)剤形(液体か錠剤か)、濃度(原液か希釈液か)、摂取量:なめた程度か、
あるいは飲んだ可能性があるか
2)患者の状態:口から塩素臭はしないか、口腔内や唇の炎症の有無
6.情報提供時の要点
1)原液を大量に服用した場合は直ちに受診を指示
2)希釈液を誤飲したときには牛乳などを与えて様子をみる
3)眼に入った場合、洗浄後も症状があればすぐに眼科受診を指示
4)皮膚接触の場合、洗浄後も刺激感や痛みがあれば受診を指示
8.参考文献
(1)急性中毒マニュアル(1984)
(2)Clinical Toxicology of Commercial Products(5th)(1984)
(3)Medical Toxicology:Diagnosis and Treatment of Human Poisoning(2nd)
(1997)
(4)急性中毒情報ファイル(1996)
(5)症例で学ぶ中毒事故とその対策(1995)
(6)Poisindex (1997)
(7)家庭内化学薬品と安全性(1990)
(8)感染と消毒(1997)
9.作成日
19900215 Ver.1.00
ID M70255_0100_2
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