20090629 中国法令調査報告書 文化部・商務部によるネットワークゲームの仮想通貨の管理を強化 することに関する通知 報告日:2009 年 6 月 29 日 管理番号:20090629 今回のご報告のポイント 本通知は、文化部と商務部が共同でネットワークゲームの仮想通貨の出現にともな う新たな問題について規定を行うものである。本通知では、①ネットワークゲーム仮 想通貨の定義、使用範囲が規定されたほか、②ネットワークゲーム仮想通貨の発行お よび取引サービスへの参入についての文化部等の管理、③未使用の仮想通貨の返却義 務等のユーザー権益の保護などが規定されている。現在中国では成功しているネット ワークゲームのほとんどが自身のオンライン市場で仮想通貨の取引を行っている。ま た、「淘宝」「5173」等の第三者のプラットフォームを利用している場合も多く、こ れらの取引主体は今後文化部の審査認可が必要となる。 1. 法令等の名称・番号 中国語名称:文化部商務部加強網遊虚擬貨弊管理的通知 日本語訳: 文化部・商務部によるネットワークゲームの仮想通貨の管理を強化する ことに関する通知 法令番号: 文市発〔2009〕20 号 (ソース)人民ウェブサイト 2. 公表した政府部門 文化部・商務部 3. 発表日 2009.6.26 4. 施行日 1 ANDERSON MŌRI & TOMOTSUNE 20090629 2009.6.4 5. 分野 ネットワークゲームの仮想通貨の管理 6. 概要・コメント (以下は、本通知の全訳である。重要と思われる部分には下線を引いた。) 各省、自治区、直轄市文化庁(局)、商務庁(局)、新彊生産建設兵団文化局、商務 局、北京市、天津市、上海市、重慶市、寧夏回族自治区文化市場行政法律執行総チーム: 近年来、ネットワークゲームの迅速な発展に伴い、ネットワークゲームの仮想貨幣は、 広範囲にわたってネットワークゲームの経営サービスに使用されている。ネットワーク ゲームの仮想貨幣は、ネットワークゲーム産業の発展を促進すると共に、新しい経済及 び社会問題ももたらした。これは、主に、 (一)ユーザーの権益保障が足りないこと、(二) 市場行為に対する監督管理が足りないこと、(三)ネットワークゲームの仮想貨幣の使用 において引き起こされる争いが絶えないことに現われている。 ネットワークゲーム市場の経営秩序を規範し、「ネットワーク文化管理暫定規定」、 「ネットカフェ及びネットワークゲームの管理業務を更に強化することに関する通知」 (文市発[2007]10号)及び「ネットワークゲームに関する経営秩序を規範し、ネットワ ークゲームを利用して賭博を行うことの取締まりに関する通知」(公通字[2007]3号)等 文書の精神に従い、中国人民銀行等の部門と協議し同意を経た上、ネットワークゲーム の仮想通貨の管理業務について、以下のように通知する。 一、 市場参入を厳格にし、主体管理を強化する。 (一)本通知にいうネットワークゲーム仮想通貨とは、ネットワークゲーム運営企業が 発行し、ゲームのユーザーが法定の通貨を使用して一定の比率により直接又は間 接的に購入し、ゲームプログラム外に存在し、電磁記録の方法によりネットワー クゲーム運営企業が提供するサーバー内に保存され、かつ、特定の数字単位によ り表現された一つの仮想交換ツールである。ネットワークゲーム仮想通貨は、発 行企業が提供する指定範囲、指定期間内のネットワークゲームサービスの交換に 使用され、ネットワークゲームの先払いチャージカード、先払い金額又はポイン ト等の方式により表わされる。ただし、ゲーム活動において取得したゲーム道具 (中国語:遊戯道具)を含まない。 (二)文化行政部門は、市場参入を厳格にし、ネットワークゲーム仮想通貨の発行主体 及びネットワークゲーム仮想通貨の取引サービスの提供主体の管理を強化しなけ ればならない。「ネットワークゲーム仮想通貨の発行サービス」及び「ネットワ 2 ANDERSON MŌRI & TOMOTSUNE 20090629 ークゲーム仮想通貨の取引サービス」業務に従事する場合、「国務院が留保する 必要のある行政認可項目につき行政許可を設定することに関する決定」(国務院 第412号令)及び「「ネットワーク文化管理暫定規定」に従い管理を行う。上記2 項目のサービスを提供する企業は、経営性のネットワーク文化企業(中国語:「経 営性互聯網文化単位」)の設立に関する関連条件に合致しなければならず、企業 所在地の省級文化行政部門に申請を行い、省級文化行政部門は第一次的な審査を 行った後文化部に送付してその認可を受ける。「ネットワークゲーム仮想通貨の 発行企業」とは、仮想通貨の使用サービスを発行しかつ提供するネットワークゲ ーム運営企業を指す。「ネットワークゲーム仮想通貨取引サービス企業」とは、 ユーザー間のネットワークゲーム仮想通貨の取引にプラットホーム(中国語:平 台)化サービスを提供する企業を指す。同じ企業が、2項目の業務を同時に経営し てはならない。 (三)企業が「ネットワークゲーム仮想通貨の発行サービス」業務の申請する場合、法 に基づき関連する資料を提出するほか、業務発展報告において仮想通貨の形式、 発行範囲、単位購入価格、サービス終了時の返却方法、ユーザーの購入方法(現 金、銀行カード、ネットワーク上の支払等の購入方法を含む)、ユーザーの権益 の保障措置、技術安全保障措置等の内容を提供しなければならない。 (四)「ネットワークゲーム仮想通貨の取引サービス」業務に従事する場合、商務主管 部門による電子商務(プラットホーム)サービスの関連規定に合致しなければな らない。これらの企業が申請を行う場合には、法に基づき提出する資料のほか、 業務発展報告においてサービス(プラットホーム)のモデル、ユーザーの購入方 法(現金、銀行カード、ネットワーク支払等の購入方法を含む)、ユーザーの権 益の保障措置、ユーザーの口座と実名の銀行口座の指定使用(中国語:绑定)状 況、技術安全保障措置等の内容を提供しなければならない。 (五)既にネットワークゲーム仮想通貨の発行及び取引サービスに従事している企業は、 本通知の公布日より3ヶ月以内に、文化行政部門に対して関連する経営業務を申請 しなければならない。期限を越えても申請しない場合、文化行政部門が「ネット ワーク文化管理暫定規定」に従い調査・処理する。文化行政部門の認可文書につ いては、商務部及び中国人民銀行に送る。 二、発行及び取引行為を規範し、市場リスクを防止する。 (六)ネットワークゲーム運営企業は、自身の経営状況及び生産運営の状況に基づき、 適量のネットワークゲーム仮想通貨を発行しなければならない。先払い資金の占 3 ANDERSON MŌRI & TOMOTSUNE 20090629 用を目的とする悪意の発行行為を厳禁する。ネットワークゲーム運営企業の仮想 通貨の発行総量等の状況については、四半期ごとに企業所在地の省級文化行政部 門に報告しなければならない。 (七)法定通貨により購入する場合を除き、ネットワークゲーム運営企業は、その他の 如何なる方法によってもユーザーに対してネットワークゲーム仮想通貨を提供し てはならない。ネットワークゲーム仮想通貨を発行する際に、ネットワークゲー ム運営企業は、ユーザーのチャージ記録を保存しなければならない。当該記録の 保存期間は、ユーザーによるチャージの日から180日を下回ってはならない。 (八)ネットワークゲーム仮想通貨の使用範囲は、発行企業自身が提供する仮想サービ スの交換に限定され、実物製品の支払、購入又はその他の企業の如何なる製品及 びサービスの交換にも使用されてはならない。 (九)ネットワークゲーム運営企業は、必要な措置及びクレーム処理手続を行い、ユー ザーの合法的な権益を保障しなければならず、かつ、企業がユーザーに対してサ ービスを提供するウェブサイト上の見やすい場所において説明を行わなければな らない。 (十)ユーザーのネットワークゲーム仮想通貨の使用過程において争いが生じた場合、 その登録した身分情報と一致する個人の有効な身分証明書を提示させなければな らない。ネットワークゲーム運営企業は、ユーザーの身分を確認した後、仮想通 貨のチャージ及び移転記録を提供し、クレーム処理の手続に従い処理しなければ ならない。ユーザーの合法的な権益が侵害を受けている場合、ネットワークゲー ム運営企業は、積極的に証拠の収集に協力し、解決に協力しなければならない。 (十一) ネットワークゲーム運営企業は、その製品及びサービスの提供を停止し ようとする場合、60日前までに公告を行わなければならない。サービスを終了す る際に、ユーザーが既に購入したものの未使用の仮想通貨については、ネットワ ークゲーム運営企業は、法定通貨又はユーザーが認めるその他の方法によりユー ザーに返却しなければならない。 ネットワークゲームがサービスの接続の停止、技術故障等のネットワー クゲーム運営企業の自身の原因により連続してサービスを30日中断した場合、終 了とみなす。 (十二) ネットワークゲーム運営企業は、ネットワークゲーム仮想通貨の購入単 位価格を変更してはならず、ネットワークゲーム仮想通貨の発行種類を新たに増 4 ANDERSON MŌRI & TOMOTSUNE 20090629 加する場合、本通知第3条に掲げる資料の内容をもって文化行政部門に届け出なけ ればならない。 (十三) ネットワークゲーム運営企業は、ネットワークゲーム仮想通貨取引を行 わない場合、技術措置を取りネットワークゲーム仮想通貨のユーザー口座間の移 転機能を禁止しなければならない。 (十四) ネットワークゲーム仮想通貨取引サービス企業は、ネットワークゲーム 仮想通貨の関連取引サービスを提供する際に、販売者であるユーザーが有効な身 分証明書を使用して実名登録を行うよう規定し、かつその実名登録情報と一致す る国内の銀行口座の指定・使用を要求しなければならない。ネットワークゲーム 仮想通貨取引サービス企業は、ユーザー間の関連取引記録及び財務記録を保存し なければならない。保存期間は、取引行為の発生日より180日を下回ってはならな い。 (十五) ネットワークゲーム仮想通貨取引サービス企業は、違法取引の責任追及 制度及び技術措置を確立しなければならず、取引情報の真偽を厳格に審査し、違 法行為を禁止しなければならない。ネットワークゲーム仮想通貨が違法により取 得されたものであることを明らかに知り又は告発を受けて確認した場合、速やか に虚偽の取引情報を削除し又は取引サービスの提供を終了しなければならない。 (十六) ネットワークゲーム仮想通貨取引サービス企業は、未成年者のために取 引サービスを提供してはならない。 (十七) ネットワークゲーム仮想通貨発行企業及び取引サービス企業は、積極的 に措置を取り個人情報の安全を保護しなければならず、関連部門が法により調査 する際には、積極的に協力し、関連記録を提供しなければならない。 (十八) ネットワークゲーム運営企業は、ユーザー間による仮想通貨移転サービ ス(中国語:転移服務)を提供する場合、技術措置を取り移転記録を保存しなけ ればならず、関連する記録の保存期間は180日を下回ってはならない。 三、市場に対する監督管理を強化し、仮想通貨を利用して賭博を行う等の違法な犯罪行為 を厳しく取り締まる。 (十九) 各地は、公安部、文化部等の部門による「ネットワークゲームに関する 経営秩序を規範し、ネットワークゲームを利用して賭博を行うことの取締まりに 5 ANDERSON MŌRI & TOMOTSUNE 20090629 関する通知」(公通字[2007]3号)の要求に従い、公安機関が厳しく賭博の性質を 有するネットワークゲームの管理を行うことに協力しなければならず、ネットワ ークゲーム仮想通貨を利用して賭博を行うこと等の違法な犯罪行為を厳しく取り 締まらなければならない。 (二十) ネットワークゲーム運営企業は、ユーザーが直接的に現金又は仮想通貨 を投入する前提の下に、抽選、金賭け、ランダム抽出等の偶然的な方式によるゲ ーム道具又は仮想通貨の分配を行ってはならない。 (二十一) ネットワークゲーム仮想通貨の発行及び取引サービス企業は、積極的に 管理部門に協力し、技術的な手段を取り、「口座・パスワードの盗用」(中国語: 盗号)、「higention」(中国語:私服)、「regedit」(中国語:外掛)等を取 り締まる。 (二十二) 文化部が認定したネットワークゲームの「higention」、「regedit」の ウェブサイトにおいてネットワーク支払サービスを提供する場合、文化部は中国 人民銀行に通報する。 四、法執行行為を強化し、市場環境を浄化する。 (二十三) 許可を経ずに、無断でネットワークゲーム仮想通貨の発行及び取引サー ビスに従事する企業に対しては、省級以上文化行政部門が「ネットワーク文化管 理暫定規定」に従い、調査・処理する。 (二十四) 本通知の要求に違反するネットワークゲーム仮想通貨の発行及び取引サ ービス企業に対しては、文化行政部門、商務主管部門は期限を決め是正を行うよ う通知する。期限を過ぎても是正しなかった場合、関連部門が法により取り締ま る。 (二十五) ネットワークゲーム仮想通貨の管理業務の協調メカニズムを確立し、 「口 座・パスワードの盗用」、「higention」、「regedit」、違法な利益の取得、マ ネー・ロンダリング等の違法行為の取締りを強化する。各部門は、定期的に交流し、 協力し、速やかに関連状況を報告し、各自の職責の範囲内においてネットワーク ゲーム仮想通貨の管理業務を行わなければならない。 (二十六) ネットワークゲーム運営企業が発行するネットワークゲーム仮想通貨は、 ゲーム内の道具の名称と重ってはならない。ネットワークゲーム内の道具の管理 6 ANDERSON MŌRI & TOMOTSUNE 20090629 規定は、国務院文化行政部門が関連部門と共同で別途制定する。 文化部・商務部 2009 年 6 月 4 日 以上 上記の事項についてさらに詳細な情報をご希望される場合には、下記までご連絡いただきます ようお願いいたします。 森脇 章 パートナー弁護士 Email: [email protected] Telephone: 03-6888-1055(東京事務所) 中川 裕茂 パートナー弁護士、北京事務所首席代表 Email: [email protected] Telephone: 03-6888-1174(東京事務所) +86-10-6590-9060(北京事務所) 本報告書は、法令の一般的な解釈を示したものであり、当事務所の法律上、会計上、税務上の アドバイスを含むものではありません。 本報告書の著作権は、出典が明記されているものを除き、アンダーソン・毛利・友常法律事務 所に帰属します。 7
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