北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2014 年 2 月 7 日 プロトカテキュ酸の酸化的二量化反応によるナフタレン生成機構の解析 応用生物科学専攻 食資源科学講座 食品機能化学 武田 直樹 1.はじめに プロトカテキュ酸 1 およびそのメチルエステル 2 は水系溶媒中でのラジカル消去活性が大きく異な り、その原因が初期酸化反応後の二次反応における反応性の違いによるものであることが明らかに なっている。これまでに酸化反応生成物として種々の酸化的二量体が同定されているが、そのうち 分子骨格の大きな変換をともなうナフタレン型生成物 3 については、キノン体の二量体を経る生成 機構が推測されるものの詳細は明らかになっていない。本研究は 1 の種々の誘導体の酸化反応につ いて調べることによりナフタレン型酸化二量体の生成機構を明らかにすることを目的とした。 2.方法 種々のプロトカテキュ酸誘導体をメタノール中ジアセトキシヨードベンゼン(DAIB)で酸化し、そ の後水を添加して得た反応液を HPLC、LC-MS および NMR で分析した。用いた誘導体は、1)カルボキ シ基を性質の異なる種々の置換基に変えた 4-6 6、2)ベンゼン環を選択的に重水素ラベルした 7、3) フェノール性水酸基のメチル化体である 8,9 9 である。 3.結果と考察 1) カルボキシ基の置換体 4-6 6 の反応液は HPLC あるいは in situ NMR 分析により非常に複雑な混 合物となり、1 1 の同条件の酸化でみられたナフタレン型生成物あるいはその前駆体と予想される二 量体の検出は困難であった。 2) 2 位重水素ラベル体 7 の合成は、バニリン酸メチルから 4 位水酸基のアセチル化、2 位の選択 的ニトロ化、アセチル保護基のメチル基への架け替え、ニトロ基のアミノ基への還元、アミノ基の ジアゾ化と重水素化次亜リン酸による還元、メチル基の脱保護の工程で達成した。現在生成物の最 終精製と酸化反応について検討中である。 3) バニリン酸 8 の酸化反応液は 1 のものと類似した HPLC パターンを与えた。 LC-MS 分析の結果、 反応液中にはキノンアセタール二量体 10 および対応するヘミアセタール 11 と思われるピークが同 定できた。一方、イソバニリン酸 9 の反応では 1 や 8 とは大きく異なって安定な生成物がほぼ単一 に生成し、単離構造解析の結果、10 10 の位置異性体 12 であることがわかった。以上の結果より、ナ フタレン生成機構を図のように推定した。 CO2H R OH CO2H D HO CO2H 1:CO2H 2:CO2CH3 4:CO2CH(CH3)2 5:NO2 6:CH3 OH 3 O [O]/ MeOH OH PA:R=H VA:R=CH3 HO RO CO2H CO2H CO2H OR OR1 OR2 RO HO O RO HO CO2H H3CO O CO2H HO2C O 8:R1=CH3,R2=H 9:R1=H, R2=CH3 7 O H3CO RO OH OH OH CO2H OCH3 H3CO 10:CH3 11:H 12 CO2H MeOH or H2O RO RO HO O CO2H CO2H HO2C OR O OCH3 CO2H OH O OCH3
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