査察の継続による平和的解決を――イラク問題で

フランス大統領 ジャック・シラク殿
査察の継続による平和的解決を――イラク問題で改めて要請します
2003 年 2 月 14 日 日本平和委員会
先日はお忙しい中を、私たちの要請を受け止めていただきありがとうございました。
イラク問題を国連憲章の立場に立って平和的に解決することをめざす、貴国のご努力に
心から敬意を表します。
さて、イラク問題の新たな局面に際して、改めて要請させていただく次第です。
先日、米国務長官がイラクの大量破壊兵器開発の「疑惑」についての報告を安保理にお
いて行いました。これに基づき米ブッシュ政権は、自動的な武力行使を可能にする新たな
決議の採択をめざすとともに、国連を無視して一方的な武力行使を行う姿勢を強めていま
す。私たちはこうした米国の姿勢に強い危惧を抱くものです。
① 私たちは、イラクの大量破壊兵器問題は、国連安保理 1441 決議に基づき、査察を継
続することによって平和的に解決すべきだと考えます。この中には米国が提示した
「疑惑」の解明も当然含まれます。国連査察団とイラク政府との協議で、イラク側
もいっそうの協力を表明し、査察団も引き続く査察の継続を求めています。査察の
継続・徹底により、この問題を平和的に解決することは可能です。
② 米国が武力行使を行う国際法上の根拠は何もありません。ブッシュ政権は 1441 決議
に基づきすでに武力行使は可能であるといっていますが、同決議は査察活動によっ
て問題が生じた場合は、安保理がそれに対する対応を協議するとしています。加盟
国による自動的武力行使は認められていません。そして、安保理各国の多数は査察
の継続による平和的解決を求めています。米国が安保理を無視して武力行使を行う
ことは、自らが賛成した国連安保理決議も国連憲章も踏みにじり、世界を無法な状
況へと導くものであり、断じて許すことはできないと考えます。
③ イラクに対する武力行使は、計り知れない人道的惨害を生み出す暴挙です。国連の
予測でも初期の戦闘で 50 万人もの死傷者が生まれるとされています。平和的解決の
可能性があるにもかかわらずこれを求めず、何の道理もない武力行使によって罪の
ない多数の市民や子供たちの命を奪う権利は、どの国にもありません。
こうした立場から私たちは、イラク問題の平和的解決のために、貴国が引き続き大きな
役割を果たされることを、心から期待するものです。
世界平和のために、共に力を合わせましょう。