洗濯用洗剤・石けん（液体）

公益財団法人日本中毒情報センター保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報
【洗濯用洗剤・石けん（液体）】Ver.1.00
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洗濯用洗剤・石けん（液体）
１．概要
液体の洗濯用洗剤には、一般衣類用（綿･麻･合成繊維用）、ウール・絹などのおしゃれ着
用、ドライマーク衣類用、部分洗い用などがある。家庭用品品質表示法では合成洗剤と石
けんに分けられ 1)、主成分の陰・非イオン界面活性剤の含有量は用途・濃縮化の程度によ
って大きく異なる。
ボトル入りのほか、1 回分を水溶性フィルムに包んだパック型洗剤、部分洗いや手洗い
用のハンドスプレー容器などもあり、製品形態により事故発生状況の違いが見られる。ボ
トル入りでは、小児がなめたり、触ったりする事故が多いが、自殺企図者や認知症の高齢
者による大量摂取も散見される。パック型洗剤では、小児の誤飲事故が多数報告されてお
り、なかには呼吸困難等のため挿管を必要とした例も海外では報告されている 2)。また、
パック型洗剤が破れたことによる皮膚や眼の曝露例もある 3)4)。
２．製品について
・一般衣類用、おしゃれ着用、ドライマーク衣類用、部分洗い用などがある。ボトル入り
の製品が主流であるが、パック型もあり、部分洗い用ではハンドスプレーやボトル先端
のノズルやスポンジから汚れに直接塗布する製品もある。
・ボトル入りは、規定量をキャップ等で計量し、水やぬるま湯に溶解して使用する。洗濯
機に投入するほか、手洗いやつけ置き洗いを想定した製品もある。
・パック型洗剤は、1 個の容量 15∼25 g 程度で、1 回分の合成洗剤が水溶性フィルム（ポ
リビニルアルコールなど）でパックされており、そのまま洗濯機に投入できる。手洗い、
つけ置き洗いは想定されていない。
・成分の観点からは合成洗剤と液体石けんに二分される。
合成洗剤は、陰・非イオン界面活性剤 20∼75％程度（濃縮タイプでは 50∼75％程度）、
安定化剤としてエチルアルコール、プロピレングリコール、グリコールエーテル類等を
数∼20％程度、アルカリ剤・pH 調整剤としてエタノールアミン類等を数％、そのほか水
軟化剤・分散剤・酵素・蛍光増白剤・香料等を含有する。柔軟・抗菌成分として陽イオ
ン界面活性剤(数％)を含有する製品や、漂白剤として過酸化水素（数％)を含有する製
品もある。ドライマーク衣類用洗剤では、オレンジ油やノルマルパラフィンを数％含有
する製品がある。
液体石けんは、純石けん分（主に脂肪酸カリウム）を主成分とし、陰・非イオン界面
活性剤の含有量は 30∼40％程度である。
・原液の液性は弱アルカリ性∼中性の製品が多いが、弱酸性の製品もある。パウチや紙カ
ートンなどの簡易包装に入ったつめかえ用が販売されている製品が多い。
３．毒性
なめた程度や少量の摂取では重篤な中毒は起こらないが、曝露経路や曝露量によっては
界面活性剤による皮膚および粘膜への刺激が問題となる。
5)
・陰・非イオン界面活性剤
界面活性剤の毒作用とくに局所作用は濃度に依存し、高濃度では重症化する
が、低濃度では症状はほとんどみられない。したがって、毒性値が低くても
高濃度のものは危険と考える必要がある。 6)
４．症状
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なめた程度や少量の摂取では重篤な中毒は起こらないが、大量に摂取した場合や誤嚥し
た場合は重症化することがある。特にパック型洗剤が口の中で破れた場合は、誤嚥の危険
性が高い。
経口：陰・非イオン界面活性剤として
軽症：口腔・咽頭の炎症、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、しゃっくり、
鼓腸など。嘔吐は 1 時間以内に起こることが多い。 5)
重症：消化管出血、麻痺性イレウス、血管透過性亢進・細胞膨化に
起因する肺水腫を伴う全身性浮腫、循環血液量減少性ショック
7)
誤嚥による気道刺激や呼吸困難 5)、誤嚥性肺炎 7)
パック型洗剤で多く認められた症状
2)
咽頭・食道の炎症、流涎、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、咳嗽、喘鳴、呼吸障害、
傾眠などの意識障害。
アシドーシスを認めた事例もある。 8)9)
眼：結膜充血、眼の痛み、流涙、眼窩周囲浮腫、角膜上皮欠損
2)4)
経皮：発疹、紅斑、かぶれ、水泡、化学熱傷
2)3)
５．処置
家庭での応急手当
経口：口をすすぐ、うがいする（難しい場合は濡れガーゼでふき取る）。
咳や喘鳴などの呼吸器症状がみられない場合は直ちに牛乳または水（120∼240
mL、幼児 15 mL/kg 以下）を飲ませる 5)。（呼吸器症状がみられる場合は吸入
あるいは誤嚥の可能性を考慮して直ちに受診する。）
眼：眼をこすらないように注意し、直ちに十分に水洗する。
次に、コンタクトレンズを装着している場合、容易に外せる場合は外す。その後
も洗浄を続ける。 11)
皮膚：付着した衣服を脱ぎ、十分に水洗する。
医療機関での処置
大量摂取時は、一般的な中毒に対する処置と、呼吸･循環管理を中心とした対症療法
を行う。
６．確認事項
1）製品形態：ボトル入りか、つめかえ用か、パック型洗剤か、スプレーか。
2）状況：パック型洗剤の場合、口の中で破れたのか、手で握って破れたのか。
パック型洗剤のフィルムは水溶性のため、口に入れたり濡れた手で触ったり
するとフィルムが破れる。口の中で破れた場合は、誤嚥の危険性がある。
3）摂取量：なめた程度か、大量に摂取した可能性はあるか。
4）患者の状態：咳や喘鳴などの呼吸器症状、眼の症状はないか。
７．情報提供時の要点
1）①咳や喘鳴、嘔吐など何らかの症状のある場合、②認知症の高齢者の誤飲や自殺企図
など大量摂取が疑われる場合は受診を勧める。
2）少量の経口摂取で症状がない場合は、牛乳や水（刺激を緩和する）を飲ませて経過観
察する。
3）眼に入った場合、直ちに十分に水洗しても、充血や痛みが残るときは受診を勧める。
水洗が難しい場合やコンタクトレンズが外れない場合は無理をせず直ちに受診する。
4）皮膚についた場合、水洗後も発赤、痛み、発疹等の症状があるときは受診を勧める。
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８．体内動態
陰・非イオン界面活性剤として
経口：分子構造により違いはあるが、基本的に陰・非イオン界面活性剤は消化管から
吸収される。10)
肝臓で代謝された後、尿中あるいは糞中排泄される。
5)
９．中毒学的薬理作用
陰・非イオン界面活性剤
1)口腔、消化管、気道、皮膚、眼の刺激作用
2)血管透過性亢進・細胞膨化作用
7)
5)
１０．治療上の注意点
経口の場合
・牛乳や水による希釈は、摂取後短時間（数分以内）のうちに行った場合にのみ有効
と考えられる。 5)
・摂取後 1 時間以内に嘔吐が起こらなければ、中毒量を摂取した可能性は低い。5)
１１．その他
・製品の表示について
家庭用品品質表示法では、界面活性剤の総含有率及び名称、10％以上含有している添加
剤の名称の表示が義務付けられている。 1)
表示例）
1)
１２．参考文献
1)消費者庁．“製品別品質表示の手引き合成洗剤”. 家庭用品品質表示法．
http://www.caa.go.jp/hinpyo/guide/zakka,（参照 2014-08-08）．
2) Williams H, Bateman DN, Thomas SH, et al:Exposure to liquid detergent
capsules: A study undertaken by the UK National Poisons Information
Service..Clinical toxicology (Philadelphia, Pa) （online） 2012;50:776-780.
3) Russell JL, Wiles DA, Kenney B, et al:Significant chemical burns associated
with dermal exposure to laundry pod detergent..Journal of medical toxicology
（online） 2014;10:292-4.
4) Fayers T, Munneke R, Strouthidis NG.:Detergent capsules causing ocular
injuries in children..Journal of pediatric ophthalmology and strabismus
2006;43:250-1.
5) DETERGENTS AND SOAPS-ANIONIC AND NONIONIC. (Last Modified: June 02, 2014)
In: POISINDEX(R) System (electronic version). Truven Health Analytics,
Greenwood
Village,
Colorado,
USA.
Available
at:
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http://www.micromedexsolutions.com/ (cited: 10/16/2014)．
6) 28 界面活性剤.内藤裕史,中毒百科事例・病態・治療改訂第 2 版..2.南江堂,東
京,2001,pp119-122.
7)沢田祐介, 山本五十年, 上山昌史, 他:〔中毒新しい治療指針〕界面活性剤.救急医
学 1988;12:1413-1418.
8) Scharman EJ:Liquid "Laundry Pods" : A missed global toxicosurveillance
opportunity..Clinical toxicology (Philadelphia, Pa) （online） 2012;50:725726.
9) Mowry JB, Spyker DA, Cantilena LR Jr, et al:2012 Annual Report of the
American Association of Poison Control Centers' National Poison Data System
(NPDS): 30th Annual Report..Journal of toxicology. Clinical toxicology
2013;51:949-1229.
10)第 7 部代謝・吸収.日本界面活性剤工業会技術委員会,界面活性剤の安全性および
生分解性に関するデータシート集第 4 集,1988,pp74-176.
11)厚生労働省．炭酸ナトリウム(改訂日 2009 年 03 月 30 日)“GHS 対応モデルラベル・
モデル
SDS
情報 ” ．職場のあんぜんサイト．
http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/GHS_MSD_DET.aspx,（参照:2014-12-16）．
１３．作成日
20141110 Ver.1.00
ID M70363_0100_2
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