2010 年 10 月 3 日 アメリカの証拠捏造事件 郵便割引制度をめぐる偽の

2010 年 10 月 3 日
アメリカの証拠捏造事件
郵便割引制度をめぐる偽の証明書発行事件(郵便不正事件、2010 年 9 月 21 日報道)は検
察官が証拠を改ざんした事件だったが、アメリカでも似たような「証拠捏造」事件があっ
た。
アメリカの事件では別々の容疑者グーループが犯人として浮かび、それぞれが別の自白
をしたので、事件の真相は混沌とした。
捜査官(デイビッド・コーフェド)にとってこの事件は歴史上、最悪の事件のひとつと
なったようだ。捜査官はその事件を称して、まるで「トルーマン・カポーティが書いた小
説“冷血”のようだ」、と述べた。
2006 年のイースター祝祭日にネブラスカ州の農家で仲のよいカップル、ウェインとシャ
ーモン・ストックが殺害されているのが見つかった。ネブラスカ州のマードックは小さい
村で、誰も鍵をかけたりする所ではないが、村中が不信の渦の真只中に置かれたのだ。牧
師のジョン・ワッカーは「ショックです。いろんな憶測が飛び交っている」、と述べた。州
のダグラス郡・犯罪研究所のベテラン捜査官、コーフェドは「犯罪の特徴からして殺害は
ストックスたちをよく知っている者による復習ではないか。盗みの痕跡はないし、これは
個人的な恨みの線である」、と述べた。
殺害の疑いはストックスの甥、マシュー・ライバース(28)に向けられた。ライバース
は二人に対して金銭上の恨みを持っていた、と伝えられている。ライバースは嘘発見器に
かけられた。彼は嘘発見器では「黒とでた」と告げられ、強く反対したが最終的に尋問の
過程をテープに取ることを条件に詳細を語った。
捜査官「本当は、お前は銃を持っていたのだろう?」
ライバース「そのとおり」
ライバースはうまく警官に誘導されて、犯行についてしゃべりだした。そして、彼のいと
こ、ニック・サンプソンとの共犯を仄めかし、仔細をしゃべったのだ。
「銃を彼女に向け、撃った。そして、奴の顔をむけて奴も撃った」と、ライバースは警官
に語っている。その殺人の夜、ライバースとサンプソンはタンク車を運転していた。二人
がタンク車に乗って、農家に近い道を高速で走っているところを“いぶかりながら”見て
いた目撃者が現れた。ライバースはさらに悪いことに、彼らが使っていたタンク車は殺人
時刻の数時間前後に車の洗車場に持っていかれた、と証言した。
「車は同日の朝の 5:30 に洗車された記録がある」と、捜査官は言った。
それは、ただの偶然の一致だったのか。
犯罪の裏づけとなる二人を事件現場に結びつける証拠、DNA や血の跡はなにも見つからな
かった。それで検察は捜査官(コーフェド)を事件の捜査に差し向けたのだ。彼はネブラ
スカ州では有名で、誰もが発見できないような証拠を見つけ出すことができる有能な捜査
官だった。
コーフェドはライバースが犯罪に使ったという車を調べた。そして、事前の捜査では車
から何も発見できなかったが、車の中に犯罪現場の一滴の血を発見したのだ。容疑者は特
定され、ライバースとサンプソンが殺人の容疑で逮捕された。
しかし、未解決の問題が残った。殺人があった家の台所から金の指輪が発見されたのだ。
それはライバースのもでもサンプソンのものでもなく、結果的にこの事件をひっくり返す
ほどの小さなほころびだった。
ダグラス郡の若い女性捜査官(クリスチーン・ガビグ)は金の指輪の持ち主を探した。
指輪には「愛、いつまでも。コリーとライアン」と、彫られてあった。
「彫りはユニークで、
輪の外側に彫ってあった」と、クリスティーンは言った。指輪には宝石店のマークもあっ
たので、クリスティーンはニューヨーク州にある(すでに廃業した)会社にたどり着いた。
「訪ねたとき、事務所は最終日だった。事務所には掃除している婦人がいました」と、
彼女は言った。訪ねた日が一日後だったら追跡できなかったであろう。70回も電話して、
クリスティーンはその指輪がウイスコンシン州のライアンが持っていたもので、殺人のあ
った 2 日前に赤のピックアップ・トラックと一緒に盗まれていたことを突き止めた。盗ん
だのは若いカップルのジェシカ・レイド(17 歳)とボーイフレンドのグレゴリー・フェス
ター(19 歳)で、すでに保護観察中の身であった。彼らは州をまたいで、一連の犯行を重
ね、車を盗んでいたのだ。レイドは名誉学生だったが、車の盗みの常習犯のフェスターと
恋に落ちたのだった。フェスターはキーの付いていない車でもエンジンをかけて盗むこと
ができた。
尋問の結果、二人のカップルはイースターの日の深夜、車を盗み、その間にストックス
を殺害したことを認めた。現場のほかの証拠と一緒に、レイドとフェスターの DNA と殺害
現場の血が付いた指輪が見つかったのだ。完璧な証拠であった。
しかし、捜査官たちは事件に関与しているのはライバースとサンプソンと信じきってい
た。なぜなら、ライバースとサンプソンは自白したし、証拠の血は捜査官のコーフェドに
よって車の中から発見された、と信じていたからだ。
車を盗んだジェシカ・レイドは尋問官から死刑の脅しをかけられ、ライバースとサンプ
ソンも殺害に関与していると言うように言われた。一度はライバースとサンプソンもやっ
たと証言したが、すぐさま撤回した。
検察官にとっての壁は「自白と血の証拠」だった。もし、ライバースとサンプソンがス
トックスを殺していないのなら、なぜ、ライバースは自白したのだ。そしてどうして殺人
現場の血が車の中で発見されたのだと。
「あなたが発見した血のサンプルについて誰かほかに疑問を持った者はいないの?」と、
ニュースキャスターのデボラ・ロバートはコーフェドに質問した。「彼らがやったのは、は
っきりしている」と、捜査官のコーフェドは答えた。
これに疑問をもった一人に特別検事のクラレンス・モックがいた。彼の指摘はネブラス
カ州の検察の権威を崩壊させるものだった。モックは「証拠は捜査官のコーフェドが DNA
を故意に移植したものであるという疑いを裏づけるものだ」と発言した。これで、ライバ
ースとサンプソンに対する疑いは、はっきりと解け始めた。
ライバースは特別検事のモックからライバースが引っかかった嘘発見器はまったく不正
な操作が行われていたのだと、と告げられた。さらに、モックはライバースには知的障害
があり、やっていない犯罪も単に告白してしまうのだ、と述べた。
しかし、ベテランの捜査官がやった証拠の移植は罪に問われるのか。コーフェドは無実
を主張し、嘘発見器もなんなく通過している。彼は州の裁判所の裁判で、日付記載のミス
として起訴されたが、結局無実となった。
しかし、彼はカス郡の裁判所では証拠捏造の罪で二回目の審問の結果、有罪となった。
コーフェドは犯罪を否認し続けている。
「もし私が証拠を移植したのなら、実際にはやってはいないが、もし、しようとしたのな
らーーーこいつたちをしっかり捕まえていたであろう。われわれは彼らの衣服や靴を全部
持っているのだ。ニック・サンプソンのジーンズ、彼がやった可能性の高い血のついたジ
ーンズを持っている」と、コーフェドは語った。さらに、
「まったく意味が無い。われわれ
が誰か他の人の車に証拠を移植するなんて」、と続けた。
特別検事のムックはそれに対して「はっきりとした少量の血が見過ごされ、その血は他
の誰かテクニシャンがふき取るのを忘れたものであるというようなシナリオ」には、同意
できない、と述べた。
捜査官・コーフェドの弁護人スティーブ・レファーは、
「コーフェドは部下の女性捜査官・
クリスティーンが指輪を追跡することを認めた人間である。それがライバースとサンプソ
ンの無実を証明することになるかもしれないとしたら、そんなこと了承しますか」、と言っ
た。
レファーは「そんなことは意味あります?」、と。「コーフェドは一方で二人を起訴しよ
うとして、他方でクリスチーヌに指輪を探しに行けと、言います?」
、と述べた。捜査官・
コーフェドは ABC ニュース番組「20/20」のキャスターに、
「すべてはむちゃくちゃだ」、
と語った。彼は車をふき取るのに使ったテスト機材はストックの家にあったものであり、
そこで現場の血と混ざり合ったに違いない、と述べた。モックはテスト機材がストックの
家の血まみれの殺人現場にあったかどうかを決める必要はない、
「これは今までで観察した
血にまみれた現場のひとつである」
、「血があったのははっきりしている」、と述べた。
事件の審理が進むにつれ、市の警察官のミスに対する訴訟や、コーフェドが関わった他
の事件の再審査がなされ、関係者の間では検察の捜査は時には如何にいい加減であるか、
ということが一致した意見となった。
「死刑線上にいたライバースとサンプソンは指輪が発見されたことにより助かったのだ
ろう」と、モックは述べた。
コーフェドは今、20 ヶ月~4 年の刑(証拠捏造の罪)で服役している。彼は無実を訴え
ている。ジェシカ・レイドと彼女のボーイフレンドは殺人罪で終身刑となり服役している。
ライバースとサンプソンは捜査官・コーフェドを証拠捏造の罪で訴えている。
(ABC
ニュース
2010 年 9 月 3 日)