Michael J. Bennett - Clinical Chemistry

Clinical Case Study
Increased C3-Carnitine in a Healthy Premature Infant
Kimberly A Chapman1, Michael J. Bennett2 and Neal Sondheimer3,a
Departments of1 Genetics,2 Pathology and Laboratory Medicine, and 3 Child Development, Rehabilitation, and
Biochemical Genetics, The Children’s Hospital of Philadelphia, Philadelphia, PA
a
Address correspondence to this author at: The Children’s Hospital of Philadelphia, 34th Street and Civic Center Blvd,
Philadelphia, PA, 19104. Fax 215-590-4297; e-mail [email protected].
臨床症例研究
健康な早産児での血中 C3-カルニチンの増加
症例
乾燥血液スポット検査で、プロピオニルカルニチン(C3 カルニチン)値が 7.93μmol/L(カットオフ値<6.79
μmol/L)の生後 5 日の男の子が、ニュージャージー州の新生児検診で見つかった。命にかかわる可能性がある
が、治療が可能な先天的代謝異常である、メチルマロン酸血症やプロピオン酸血症のスクリーニング検査に、
C3-カルニチン測定は使用されている。最初のスクリーニング値は C3:C2 カルニンチン比が 0.23(カットオフ
値<0.32、平均 0.074)、C3:C16 比が 2.51(カットオフ値<4.16、平均 0.96)であった。この子供は、新生児集
中治療室外に入院した。この新生児は、在胎月齢 35 週で生まれ、短時間の持続的気道陽圧法を処置し、すぐ
に自然呼吸に移行した。通常通り、牛乳のタンパク質が基となっているミルクによって栄養を摂取した。
生後 6 日に、軽度のアシドーシス(動脈血ガス分析において、pH7.24)を発症した。確認検査の結果が保留の
間は、メチルマロン酸血症やプロピオン酸血症を否定できなかったため、栄養摂取は中止し、静脈からの輸液
投与を開始し、我々の施設に搬送された。到着時、新生児の状態は良いが、警戒態勢であり、正常な成長パラ
メーターを示しており、多呼吸はなかった。状態は良く、反射神経は正常であり、検査結果はアシドーシスを
示していなかった。我々は通常の栄養摂取に戻し、診断を進めた。
考察
C3-カルニチンは血中に存在するが、ミトコンドリア内では活性代謝物のプロピオニル CoA となる。プロピオ
ニル CoA は、アミノ酸分解の中間体である。奇数鎖の脂肪酸分解の中間体や、胃腸管細菌叢により産生され
1
るプロピオン酸の誘導体としても存在する。通常、プロピオニル CoA は、プロピオニル CoA カルボキシラー
ゼ(PCC)によって、メチルマロニル CoA に代謝されるが、もし代謝物が過剰に存在する場合、プロピオニル
種はカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ 2 型によって、対応するアシルカルニチンに変換された後、
ミトコンドリアから放出される(図 1)。
図 1.プロピオン酸の代謝
プロピオニル CoA はアミノ酸のバリン、メチオニン、スレオニン、イソロイシンが分解され産生される。プ
ロピオン酸血症の患者は PCC に異常がある。メチルマロン酸血症の患者は、メチルマロニル CoA ムターゼ、
またはビタミン B12 産生経路のどちらかに異常がある。食事の B12 が欠乏しても、メチルマロニル CoA ムター
ゼは機能しない。ミトコンドリア内で蓄積したプロピオニル CoA は、カルニチンパルミトイルトランスフェ
ラーゼ 2 型(CPT2)と、カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼ(CACT)の働きにより、C3-アシルカ
ルニチンとして細胞質や血漿中に放出される。
新生児での C3-カルニチン増加の原因として、先天的な代謝異常やビタミン B12 欠乏、偽陽性等がある(1)。関
連する先天的な代謝異常に、プロピオン酸血症を引き起こす PCC の異常がある。この状況の可能性がある子
供は、プロピオニル CoA の濃度上昇の結果、代謝流量の直接的な影響を受け、潜在的に C3-カルニチンが非常
に増加している。PCC の補因子であるビオチンに異常がある場合、理論上は C3-カルニチンが増加するが、ビ
オチニダーゼの異常またはホロカルボキシラーゼ合成酵素の異常がある患者において、C3-カルニチンの増加
は報告されていない。
C3-カルニチン増加に最も関連しているのは、メチルマロニル CoA ムターゼ(MMM)の下流での異常である。
MMM はメチルマロニル CoA をクレブス回路の中間体であるスクシニル CoA に変える。この酵素は、体内の
2
中で補因子としてビタミン B12 使う 2 つの酵素のうちの 1 つである。C4-ジカルボキシカルニチンの増加
(MMA カルニチンまたはスクシニルカルニチン)は、それが増加していない人と患者を区別できるほど、常
にまたは十分に増加しないため、C3-カルニチンが MMM の異常(メチルマロン酸血症として知られている)
を検出するために新生児検診に使われる。プロピオニル CoA と C3-カルニチンは、より迅速に検出することが
できる。Cobalaminopathies として知られているビタミン B12 欠乏の様々な影響は、メチルマロン酸血症と生化
学的にオーバーラップする障害につながる可能性がある。
母親のビタミン B12 欠乏と、この欠乏が母親から伝播されたことが、C3-カルニチン増加の原因と知られている
(2)(3)。この障害は新生児の時期に防ぐことはできない。ビタミン B12 が欠乏している完全菜食主義の母親の
母乳で育てられた乳児は、神経障害やメチルマロン酸を排泄することが報告されている(4)。市販されている
ミルクやビタミン B12 代謝が正常な母親の母乳は、このような障害を防ぐのに十分な濃度のビタミン B12 を含
んでいる。
検査による診断結果を用いて、C3-カルニチン増加の原因を識別することが可能である(表 1)。生後 5 日の患
者のアシルカルニチンのプロファイルでは、C3-アシルカルニチンは検出されず、生後 6 日目に再度行ったア
シルカルニチンの分析でも検出されなかった。ガスクロマトグラフ分析によって測定した尿中の有機酸には、
血中メチルマロン酸やメチルマロン酸の増加はなかった。ビタミン B12 の欠乏や、コバラミン代謝の異常によ
り増加するホモシステインは検出されなかった。プロピオン酸血症の追加マーカーであるメチルクエン酸や 3ヒドロキシプロピオン酸は、尿中の有機酸には存在しておらず、PCC 異常は除外された。生後 5 日に測定した
血清中のビタミン B12 の濃度は、正常範囲の下限であった(3,300pg/L、正常基準範囲 2,930-12,080 pg/L)。
表 1. C3-カルニチン増加を認める新生児のための鑑別診断と予想値(1)
背景をさらに調べ、我々はその母親が妊娠中に貧血と診断されたことを知った。質問を続け、妊娠の 3 年前に
減量のために胃のバイパス術を行ったことを告白した。彼女は術後に、ビタミン B12 のサプリメントを摂取し
たかどうか、思い出せなかった。
3
診断
母親が胃のバイパス術の後にビタミン B12 欠乏となったことにより、新生児がビタミン B12 欠乏となったこと
が原因であると診断した。
症例解決
新生児検診を行った生後 2 日目に、ビタミン B12 欠乏が母親から伝播され、代謝異常が起こった。しかし患者
の B12 欠乏は、我々の施設に運ばれてくる時点までに対処されていた。5 日間、経腸栄養補給を行い、乳幼児
用調製粉乳に含まれるビタミン B12 によって、ミトコンドリア内での欠乏(C3-カルニチン濃度により特定)と
血清中の B12 濃度は正常となった。生後 6 日目の一時的なアシドーシスの原因は不明だが、検査結果より、分
岐鎖アミノ酸代謝異常とは無関係であった。母親には B12 欠乏があり、生涯にわたって補充療法が必要である
ことを、彼女の主治医に伝えるよう説明した。
新生児検診は治療を目的として、生存の可能性を高めるような経時変化を検出することにより、先天的な代謝
異常を検出するよう計画されている。新生児検診は当初、フェニルケトン尿症を検出するため開発されたが、
脂肪酸酸化異常やアミノ酸代謝異常症、有機酸代謝異常症などの疾患も加わり、ほとんどの州に広がった。
C3-カルニチン増加の原因は、偽陽性やビタミンの欠乏、メチルマロン酸血症やプロピオン酸血症のような命
にかかわる疾患など、多岐にわたる可能性があるため診断が難しい。メチルマロン酸血症やプロピオン酸血症
の新生児は、典型的な症状として脱水や中等度の肝腫大、アンモニア増加、ケトアシドーシス、食欲不振、眠
気、低血圧、四肢の筋緊張亢進が認められるので、この症例はこのような重度の疾患ではないようであった。
新生児検診を通じて、母親が病理学的な診断(この症例の場合、B12 欠乏)を受けることは、この状況下では
珍しいことではない。C5-OH アシルカルニチンの増加は、3 メチルクロトニル CoA カルボキシラーゼ欠乏など
の様々な病変の指標となり、新生児よりもむしろ母親での欠乏が診断されることがある(5)。そのメカニズム
は恐らく、アシルカルニチン種が直接母体から移行し、3 メチルクロトニル CoA カルボキシラーゼが増加する
のとは異なる。母体のカルニチン輸送体の異常も、新生児検診でカルニチン濃度の低下によって見出されてい
る(6)。
患者の母親で、B12 が欠乏するメカニズムも珍しいものではない。妊娠可能な年齢の女性に行われた胃のバイ
パス手術数は、ルーワイ胃バイパス術の場合、1990 年代初期に 1 年で 16,000 件であったが、2003 年には
103,000 件に増加した(7)。吸収に必要な内因性因子の分泌が失われるため、胃のバイパス手術を行った患者は、
B12 が欠乏するリスクが高い場合が多い。患者は 3 か月ごとに 1mg の B12 を筋肉内投与するか、胃のバイパス
手術の後に、毎週 500μg の B12 を経鼻投与した方がよい(8)。
この症例は稀なメカニズムにより、診断に用いられた代謝物の増加が認められた。患者の家族歴と検査結果を
組合せた結果は良好であり、乳幼児に治療を施す前に原因が明らかとなった。この症例の場合、母親は市販の
乳児用調製粉乳を子供に与えることを選び、ビタミン欠乏は改善した。もし乳幼児が母乳で育てられていたら、
ビタミン欠乏が持続し、MMM の機能障害の結果、アシドーシスが発症していただろう。母親はすでに貧血を
発症していたが、新生児検診プログラムの結果、神経症状が出現する前に母親のビタミン B12 欠乏を検出し治
4
療をした。この稀な診断手順は、医師や家族を不安にさせるかもしれないが、新生児検診プログラムの予期し
ない利点と考えることができる。家族歴や詳細な調査、代謝物の検査によって、メチルマロン酸血症やプロピ
オン酸血症の原因を、新生児検査の C3-カルニチン上昇を示す偽陽性や、栄養面の原因から迅速に分けること
ができる。
覚えておくべきポイント
・代謝性疾患は新生児検診のみでは診断できない。異常結果は臨床症状と家族歴を考慮して行われる、追加検
査によって確認する必要がある。
・C3-アシルカルニチンは代謝異常から数ステップ離れたところに存在しているが、C3-アシルカルニチンの増
加はメチルマロン酸尿症の診断に用いることができる。
・新生児検診の結果により、3 メチルクロトニル CoA カルボキシラーゼの欠乏や、カルニチン輸送体の異常な
どの先天的な代謝異常の原因として、母親の異常や母親の栄養欠乏を明らかにすることができる。
・新生児検診は、偽陽性の割合が増えたため、感度と陰性的中率が向上するようデザインされている。
謝辞
Author Contributions: Each author confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of the
published article.
Authors’ Disclosures of Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors completed the
Disclosures of Potential Conflict of Interest form. Potential conflicts of interest:
Employment or Leadership: M. J. Bennett, Board of Directors, AACC, and member of the editorial board of Clinical
Chemistry.
Consultant or Advisory Role: None declared.
Stock Ownership: None declared.
Honoraria: None declared.
Research Funding: K. A. Chapman is the recipient of grant 2T32GM008638, NIH, National Institute of General Medical
Sciences; and N. Sondheimer is the recipient of grant 2K12HD043245, NIH, National Institute of Child Health and Human
Development.
Expert Testimony: None declared.
5
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and
interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
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論説
Charles P. Venditti
Genetic Disease Research Branch, National Human Genome Research Institute, National Institutes of Health, Bethesda,
MD
Address correspondence to the author at: Genetic Disease Research Branch, National Human Genome Research
Institute, National Institutes of Health, Bethesda, MD 20892. e-mail [email protected].
アシルカルニチンのエステル基分析を用いた補足的な新生児検診は、脂肪酸酸化障害や有機酸血症などの多岐
にわたる障害を持つ新生児を検出することができる。タンデム質量分析法により測定された新生児の血班中の
代謝物や代謝物のグループによって、乳幼児の代謝性疾患のリスクを特定することができる。これらの指標の
うち、C3 種-プロピニルカルニチン-の増加の陽性結果は、危険な状態にある乳幼児に対し、特有性かつ即
時性のある緊急代謝物評価を開始するのに、十分な理由である。血中のプロピオニルカルニチンの増加は、メ
6
チルマロン酸血症状やプロピオン酸血症、細胞内でのコバラミン処理の障害、中間代謝物の致命的な疾患の可
能性の生化学的な特性である。しかし、経験のある医師や新生児検診の研究所は、プロピオニルカルニチンの
増加は完全な疾患マーカーではないと一様に認識しているので、C3 種が増加した乳幼児は、プロピオン酸血
症またはメチルマロン酸血症と診断されるよりも、はるかに望ましい結果である代謝性疾患の偽陽性と分類さ
れやすい(1)。
プロピオニルカルニチンが増加した乳幼児の中で、遺伝性の代謝性疾患の真陽性が最も一般的であるが(1)、
他には、ビタミン B12 貯留が減少した母親から生まれた乳幼児がいる。母親の B12 欠乏は、乳幼児に一連の症
状を引き起こすことが知られており、それは重度の代謝障害を伴う脳症から(2)、中等度のメチルマロン酸性
尿症(3)を伴うプロピニルカルニチンの増加(1)に及ぶ。今回の症例の母親は、胃のバイパス手術を行い、その
後、ビタミン B12 補充を行わなかった。そして、この報告書に母親の生化学的および血液学的パラメーターは
記載されてないが、彼女は恐らくビタミン B12 欠乏であり、それがこの疾患の発端であった。幸運にも、軽度
の未熟児ということ以外に、赤ちゃんは正常でありメチルマロン酸性尿症のような生化学的な異常はなかった。
最後に、有益な新生児検診により、治療されていない母親の病気の認識が可能となり、多岐にわたる新生児検
診によって予期せぬ社会的利点が示された。C3 種の増加について偽陽性と判断された乳幼児が我々に、母親
に病変が存在しているか、もっと注意を払うよう指導しているようである。
謝辞
Author Contributions: Each author confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of the
published article.
Authors’ Disclosures of Potential Conflicts of Interest: No authors declared any potential conflicts of interest.
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and
interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
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論説
Dietrich Matern
Biochemical Genetics Laboratory, Mayo Clinic College of Medicine, Rochester, MN
Address correspondence to the author at: Biochemical Genetics Laboratory, Mayo Clinic College of Medicine, 200 First
Street SW, Rochester, MN 55905. E-mail [email protected].
新生児検診は新生児の病気を検出するために用いられる。稀に、検診によって母親の病気が明らかになること
がある。HIV のような感染性の疾患の新生児検診だけが、母親の病気の検出も目的としている(1)。さらに、
異常結果は食事や医原性要因ではなく、遺伝性疾患の内在を示すと、一般的に想定されている。この症例が良
く示しているように、新生児検診は赤ちゃんだけでなく、母親にとっても意味があり利点がある。さらに、新
生児検診の陽性結果をフォローアップすることで、中鎖アシル CoA 脱水素酵素欠損症のように、症状がない
家族を検査するため、新生児検診は他の人にとっても利点がある(2)。
この症例は、新生児検診に関する検討事項の良い例である。最初の検査結果が異常であった場合、検査をもう
一度行うために、多くの検診プログラムは 2 つ目の乾燥血班を必要とする。もし、2 つ目のサンプルの結果が
正常であった場合、赤ちゃんは健康とみなされ、1 回目の検査結果は偽陽性として却下される。このアプロー
チはいくつかの脂肪酸酸化異常や、とりわけ長鎖アシル CoA 脱水素酵素欠損症にとって妥当でないと、そろ
そろ知られた方が良い(3)(4)。もし、この症例に同じアプローチをしていたら、赤ちゃんのアシルカルニチン
のフォローアップ結果は既に正常であったので、母親の症状はまた検出されなかっただろう。
新生児検診は複雑性を伴い発展するため、the American College of Medical Genetics は効果的に開業医の手助け
をし、新生児検診結果で異常が出た場合に総合的にフォローアップをするガイドラインを作成した
(www.ACMG.net から無料で入手できる)。これらの診療ガイドラインは新生児検診での異常となり、特定の
検診プログラムでは明確に評価できない検体に基づいている。これらのガイドラインは、家族に病気の兆候が
示されたとき、家族の評価もするよう提案している。
(訳者:間下
有子)
謝辞
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met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of the
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Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and
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