鉄欠乏性貧血について

-第36号-
2011.12 月発行
鉄欠乏性貧血について
貧血とは
赤血球中の血色素であるヘモグロビンの濃度が低下した状態をいいます。ヘモグロビンの
基準値は男性;13~17g/dl・女性;11~15g/dl です。ヘモグロビンは体中に
酸素を運搬する働きをするため貧血になると全身へ十分酸素が行き渡らなくなります。貧血の
診断は他に赤血球数、ヘマトクリット値などと合わせて総合的に行われます。
貧血の主な症状
つかれやすい、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、頭痛、顔面蒼白、耳鳴りなどさまざ
まな症状が起こります。しかし、緩やかに進行すると自覚症状を伴わないこともありま
す。
貧血の原因
偏食やダイエットによる摂取不足
胃切除、胃酸分泌低下などによる吸収低下
腎機能低下による赤血球産生不足
成長や妊娠、出産による必要量増加
・ 月経過多、潰瘍、痔など失血による排泄増加(男性の貧血の場合はまず消化管出血
を疑います。)
貧血の種類
鉄欠乏性貧血(最も多い)
再生不良性貧血
悪性貧血(巨赤芽球貧血)
溶血性貧血
治療法
貧血は多種多様であるので、ひとつの病気としてとらえるより、それぞれの兆候とし
て捕らえて治療する事が必要です。鉄欠乏性貧血が最も多く、食事とのかかわりが大きく、
食事療法が有効な治療手段となります。
鉄剤について
鉄欠乏性貧血の治療には原則として経口鉄剤が用いられます。鉄剤投与後1週間程度で網
赤血球の増加がみられ、2ヶ月以内に貧血の改善がみられます。貯蔵鉄の補充にはヘモグ
ロビン、血清鉄、血清フェリチンなどの検査データが正常化しても、3~6ヶ月は服用を
継続するのがよいです。
経口鉄剤は悪心、嘔吐、腹痛、腹部不快感、下痢、便秘などの胃腸障害が主な副作用です。
食直後の服用をします。症状が強い時は胃薬を併用します。(制酸剤や牛乳と同時に服用
すると効果が弱くなるので注意)胃腸薬を併用しても症状がおさまらない場合は鉄剤の種
類を変更するといい場合もあります。便の色が黒くなりますが鉄の色ですので心配はあり
ません。
食事療法について
鉄を摂りましょう
ヘム鉄を多く含む食品(吸収が良い)
非ヘム鉄を多く含む食品
豚肉・牛肉・鶏肉・レバー・かつお・いわ 卵・あさり・しじみ・大豆・あずき・ココ
し・まぐろ(血合いは特に多い)
アホウレン草・小松菜・ひじき
たんぱく質も十分摂りましょう
たんぱく質は赤血球やヘモグロビンの材料となる栄養素です。いろいろな種類を取り混ぜ
て食べるようにしましょう。(肉や魚のたんぱく質は非ヘム鉄の吸収を高めます。)
いろいろな食品をバランスよく摂りましょう。
ビタミン B12、葉酸、ビタミン C、銅なども造血に欠かせない栄養素です。
ビタミン B12 を多く含む食品;牛、豚レバー・魚介類・貝類・卵黄・チ-ズなど
葉酸を多く含む食品;牛、豚レバー・卵黄・大豆・納豆・ほうれん草・ブロッコリーなど
銅を多く含む食品;豆類、種実類、魚介類(えび・かに・いか)、牛レバーなど
ビタミン C は大切
非ヘム鉄を吸収しやすい形に変える助けになります。(ビタミンCを多く含む新鮮な野菜
や果物を一緒に食べることでヘム鉄の吸収率を高める事ができます。)
調理方法や食べ方を工夫しましょう。
鉄製の調理器具を使うと吸収の良い鉄が微量に溶けて、鉄を補うことができます。また、
すっぱいもの、辛いもの、ハーブ類などを摂ると胃液の分泌が高まり鉄の吸収が良くなり
ます。