(英語英米文学専攻・教育学専攻)ニューズレター

茨城キリスト教大学
文学研究科(英語英米文学専攻・教育学専攻)
ニューズレター
No.5
2013 年 6 月発行
カリキュラムに「特別支援教育の分野」が
新設されました(教育学専攻)
目次
カリキュラム(教育学専攻)
新設のご案内
スタッフ紹介
修士論文紹介
修了生からのメッセージ
論文・著書紹介
FD 活動報告
オープンキャンパス
文学部研究科進学説明会
スタッフ紹介
村上 美保子
英語英米文学専攻
准教授
(英語教育特論・
英語教育演習Ⅱ
担当)
[ページ 1]
学校教育法の一部改正により、2007 年度から「特別支援教育」がスタートしました。「特
別支援教育」では、従来の「特殊教育」の対象でなかった、高機能自閉症、ADHD などいわ
ゆる軽度発達障害とよばれる子どもたちも支援の対象となることや、通常学級においても
支援が行われることが規定されています。このような制度の転換を迎え、学校現場では、こ
のような様々な教育的ニーズを抱える子どもたちの支援が喫緊の課題となっています。
このような現状を踏まえ、教育学専攻では今年度より、「教育学」「教育心理学」「臨床教
育」の 3 分野に加え、新たに「特別支援教育」の分野を新設いたしました。この特別支援教
育の分野では、特別支援教育の理念や制
度を学ぶ「特別支援教育Ⅰ」、特別支援教
育での教育実践を学ぶ「特別支援教育Ⅱ」、
特別支援の対象となる子どもたちの心理に
ついて学ぶ「特別支援教育Ⅲ」などの授業
を開設しています。教育学専攻では、これ
らのカリキュラムでの学びにより、教育にか
かわる専門識者として、教育現場で活躍す
る人材を今後も送り出していきます。
(教育学専攻 准教授 細川 美由紀)
「
「特別支援教育Ⅰ」の授業の一コマ
前回のニューズレターに引き続き、今回も文学研究科のスタッフを紹介します。
応用言語学・英語教育学が専門で
す 。 特 に 、 Task-based Language
Learning/ Teaching に興味を持ってい
ます。教室でどのような言語活動を行
えば学習者は英語を使えるようになる
のか、コミュニケーション能力の育成と
文法指導との関係について研究・実験
を進め、自らの授業の改善に役立てる
と同時に発信しています。応用言語学・
英語教育学は学際的な研究分野で、
理論研究で得た知見を用いて実践し、
検証することで理論も磨かれます。ま
た、これまで 15 年間にわたり、毎年海
外の国や地域での外国語教育、言語
政策について、授業の視察を通して研
究してきています。
乳児のことばの発達や、幼児・児童
の防犯教育について研究をしてきまし
た。最近では障害児家族の支援にも興
味を持っています(詳細は、http://
www.icc.ac.jp/ejiri/index.html)。
「発達心理学特論・演習」の授業は、教
育学専攻だけでなく、看護学研究科や
生活科学研究科の院生も受講していま
す。全く異なる分野のように思われます
が、「人」という対象を、科学的な観点か
ら探究していく点では共通しています。
授業では、乳幼児期から老年期にかけ
てのさまざまな発達の諸問題を取り上
げます。興味のある方は、いつでも授
業を見にいらして下さい。
([email protected])
2013 年 6 月
江尻 桂子
教育学専攻
教授
(発達心理学特論・
発達心理学演習
など担当)
大学院文学研究科レター
●第 5 号●
修士論文紹介
2012 年度に提出された論文のうち、英語英米文学専攻の円城寺真理子さん、教育学専攻の木村哲さん
の修士論文を紹介します。
英語英米文学専攻
円城寺 真理子「英語教育における効果的な小中連携の在り方についての研究
-茨城県内小中学校教員、中学校 1 年生への意識調査を通して-」
円城寺氏の論文の目的は、(1) 茨城県内の小学校教員と中学校教員の英語教育における小中連携に対する意識
の違いはあるだろうか、(2) 英語教育における効果的な小中連携を進めるには何が最も重要なのだろうかについて考
察することでした。まず最初に、茨城県内の小中教員を対象に意識調査を行いました。調査の主な内容は、(1)小中連
携の必要性の有無、(2)小中連携の実態、(3)児童生徒に育てたい力、(4)外国語活動で児童が育ったと思う力、(5)中学
校の英語の授業での生徒の様子、(6)外国語活動について期待することや不安に思うこと、(7)授業で工夫している点で
した。さらに、小中連携を考える上で、外国語活動を実際に受けた生徒の声も聞くことも必要であると考え、茨城県内の
中学 1 年生にも英語学習についても調査を行いました。その調査内容は、(1)学校以外での英語学習経験の有無、(2)
小学校外国語活動についての感想、(3)外国語活動が楽しかった(楽しくなかった)理由、(4)中学校の英語の授業への
期待度、(5)小学校外国語活動で学んだことが中学校で役に立っているかどうかでした。
教員への意識調査から、小中学校教員のどちらも英語学習への小中連携の必要性を感じてはいるものの、互いの学習目標や学習内容
等の実態の把握が十分に行われていないのが現状である様子が伺えました。意識の違いについては、小学校教員は、「英語の言語の面白
さを知ること」や「外国の文化と日本の文化を比較すること」などを外国語活動で「児童に育てたい力」としている教員が多かったのに対し、文
化の比較については中学校教員の意識が低く、小中間で差が見られました。しかしながら、文字について
の項目は、小中共に「育てたい力」としていることが特筆すべき点でした。文字指導については賛否両論あ
り、今後も研究テーマとして重要な課題となりました。また、中学 1 年生を対象とした調査では、小学校外
国語活動を「楽しかった」と答えた生徒と、中学校での英語学習も「楽しみにしていた」と回答した生徒が過
半数おり、70%以上の生徒が、小学校で学習した内容が中学校で「役に立っている」と回答していました。
最後に、本研究で実施した調査から、英語教育において小中教員の意識差をなくし、効果的な連携を図
るためには、『学習指導要領』で定める相互の目標の理解と情報の共有、更には、小学校 5 年から高等学
校卒業までの 8 年間を見通して、カリキュラムの作成をすることではないかと結論づけています。小学校
における「英語」の教科化、英語教育の開始年度を下げること等が活発に議論されている中、現状を踏ま
えた意義のある論考となりました。
英語英米文学専攻 教授 上野 尚美 (英語教育課題研究、英語教育特論・演習担当)
教育学専攻
木村哲「漢字読みに困難を示す児童における見本合わせ法による学習支援
-子どもの認知特性および学習の動機づけの観点から-」
2007 年度より特別支援教育が正式にスタートし、特別支援学校のみならず、通常学校に通う特別なニーズのある子
どもたちの支援についても注目されるようになってきた。
通常学校には、落ち着きがない、友達とうまく関わることが難しい、読み書きが苦手、など様々なニーズのある子ども
たちがいる。その中でも、行動上に問題のある子どもは教員の目にもとまりやすく、支援の対象になりやすい。その一
方で、顕著な問題行動がなく、学習のつまずきのみが認められる子どもについては、その困難に気づかれないこともあ
る。そのため、適切な支援を十分受けられないままに、できないことに対して自信をなくしている子どもも多く存在する
のが実状である。
本論文では、このように学習の困難から学習意欲が極端に低下していると思われる小学校 6 年生女児を対象に、
子どもの認知特性に配慮した支援,および学習動機を高める支援の 2 つの側面から,漢字の読み習得を促進する要因について検討した。
対象児の認知特性に配慮した支援として、見本刺激から適切な答えを選択する、「見本合わせ」を用いた課題を実施した。その結果、漢字
の正答率は学習した 1 週間後、および 2 週間後においても高いまま維持されていた。このことから、容易な手続きで学習に取り組むことが
できる見本合わせ法による支援は、対象児にとって効果的であったといえる。加えて、動機づけを高める支援としては、漢字を読むことがで
きたら表の該当箇所にシールを貼付する「学習シール」,および見本合わせ課題実施後に、読むことができた漢字を読み札として用いた「漢
字カルタ」を実施した。併せて、それぞれの支援を実施した際における対象児の言動について、エピソード記録より抽出し、その回数と内容
について分析した。その結果、学習に対するネガティブな言動は、動機づけに配慮した支援の実施によって減少する傾向が認められた。以
上の結果から,学習に対する動機づけが極端に低下している子どもの学習には,認知特性に配慮した支援のみならず,内発的動機づけを
高めるような活動を用意する必要があることが明らかとなった。
本論文の執筆者である木村氏は、小学校を退職後、本学大学院に進学し、ボランティアとして前勤務校に足を運びながら、実践研究を行
った。動機づけは概念が広範でありその記録や評価が難しいことから、研究としては非常に難しいテーマに取り組むこととなった。対象児の
行動記録や評価の方法については改善の余地があるものの、現場ならではの視点からの考察は、高く評価できるものであった。今後の活
躍にも期待したい。
教育学専攻 准教授 細川 美由紀 (特別支援教育課題研究、特別支援教育など担当)
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2013 年 6 月
大学院文学研究科レター
●第 5 号●
修了生からのメッセージ
私は今、大学院を経て、水戸啓明高等学校にて英語の教員をしています。私が大学院への進学を決めたき
っかけは、「このままの自分ではいけない。もっと深い知識を身につけなければ」という思いからでした。しかし、
大学院 1 年目は失敗の連続で、大挫折を経験しました。今ではいい思い出ですが・・・。また、韓国の大学での
論文発表、小学校教員へのインタビュー、教員採用試験対策ゼミの講師など、ここには書ききれないほど多く
の経験をさせてもらいました。大学院での 2 年間から得たものは計り知れないものであり、今まさに自分の教育
面での糧となっていることは間違いありません。
私は、勉強が好きなほうでは無かったので、中途半端で勉強を乗り切っていた所がありましたが、大学院と
先生方のおかげで、本当の意味での「学ぶ」「考える」ということを学べたと思います。この学んだことを生徒た
ちに如何に伝えられるか。これが私のこれからのテーマです。一生精進!頑張ります。
(2010 年度修了生 高等学校英語教員 泉澤 靖さん)
私は心理士になるべく、本大学院へ進学しました。それぞれの学校にはカラーがあると思うのですが、ここで
私が感じたものは、自己覚知を中心に「自身と徹底して向き合う努力を行う事によって、他者を知る」ということ
を頭と感覚でしっかりと学べる事にあると思います。これは土台を作るという作業であり、上手に積み上げるた
めには最初に取り組まなければならない作業だと思うのですが、専門家になっていくためだけではなく、人と関
わる仕事につく人、何より生きていくために必要なものだと感じます。じっくりと取り組むこの作業は、院生という
希少な時間の中でこそ実現出来たと感じています。
また、一口に心理士といっても働く場所によって求められるものは全く異なります。その点において、様々な
ジャンルの専門家である先生方が、院生 1 人に対し徹底してサポートしてくださるのは大変心強かったです。こ
こで最新の情報や、現場でのお話を伺う事が出来、卒業後のイメージがしやすかった事に加え、卒業後におい
ても継続してサポートしてくださり、安心して積極的に活動する事が出来ています。自身の夢に向かって、学び
方を選べるのは本大学院の魅力だと感じます。
(2011 年度修了生 同仁会 つくば香風寮セラピスト 山根 彩さん)
清宮 倫子 教授
(英語英米文学特
論・演習 担当)
[ページ 3]
論文紹介
著書紹介
連載から三巻本へ-—
Tess of the d’Urvervilles
をめぐって
『「感激」の教育 – 楽器作り
と合奏の実践 –』
『大みか英語英文学研究』 第15号
(2011 年発行)
広瀬俊雄(監修)藤林富郎・池内耕作・広瀬
綾子・広瀬悠三(著) 昭和堂
(2012 年発行)
イギリスの文豪 Thomas Hardy の最
高傑作 Tess of the d’Urvervilles の初
出は雑誌の連載であり、その雑誌社
は、ヴィクトリア朝時代という、きわめて
道徳的に厳格な時代社会に属してい
た。従って、Hardy は完成していた原稿
に手を入れ、プロットを変更したり、文章
を変えたりしなくてはならなかった。本論
文は、Hardy が、当作品を、複数の出版
社に分けて連載しながら、最後に今わ
れわれの手元にあるテクストに纏めてい
ったプロセスを論じている。2011年に
Christie’s Auction に、Hardy の初版本
を集めた Collection が出品され、筆者
が本学の研究費をもって落札した結果
生まれた論文である。
(英語英米文学専攻 教授 清宮倫子)
泉澤 靖さん
(修了生)
山根 彩さん
(修了生)
長野県の山あいにある小さな小学校で、
池内 耕作 教授
ひとりの教師がはじめた楽器作りの教育。
(教育方法学特論・
これを発端に受け継がれてきた小学校や
演習ほか担当)
大学、老人介護施設等でのいとなみを、シ
ュタイナー教育の研究者らが独自に分析し
ながら紹介した本です。ここで取り上げられ
た実践は、ある教科や教育活動における一
単元・一活動としてのモノづくりではありま
せん。他教科を含む教育活動全般に連動
し影響を与える「コア(核)」として位置づき、
子供達のなかにまさしく「感激」と呼ぶほか
ない原動力を生み出している実践なので
す。本書では、この実践の様子を様々な観
点から解説しています。帯に「シュタイナー
教育を超えて!」と銘打った日本独自の素
晴らしい実践です。様々な方にご一読いた
だければ幸いです。
(教育学専攻 教授 池内 耕作)
2013 年 6 月
大学院文学研究科レター
●第 5 号●
報告
2012 年度 文学研究科FD活動
国際誌への論文投稿の意義とプロセス
-アフリカにおける視覚障害児教育の研究を通して-
講師 :ポール・レンチ先生
(イギリス・バーミンガム大学 視覚障害教育・研究センター研究員)
2012 年 10 月 2 日に、ポール・レンチ先生を講師に迎えて FD 研修会を開催しました。研
修会の前半は、レンチ先生が現在携わっておられる、アフリカにおける視覚障害児教育の
アクション・リサーチ研究について、紹介がありました。後半は、研究論文を国際誌へ投稿
する際の具体的なアドバイスをいただきました。これから論文を投稿しようとしている私たち
教員や院生にとって大変参考になるものでした。今回の FD 研修会の成果を生かして、今
後も精力的に研究・教育活動を行っていきたいと思います。
江尻 桂子 (教育学専攻 教授 2012 年度 FD 企画・世話人)
3 種類のカリキュラム比較
-文法中心・テーマ中心・タスク中心-
講師 :サンドラ・マッケイ先生
(サンフランシスコ州立大学名誉教授)
2012 年 10 月 20 日(土)、文学研究科の FD の一環として、サンフランシスコ州立大学名
誉教授 Sandra McKay(サンドラ・マッケイ)博士に講演していただきました。講演タイトル
は、“A Comparison of Structural, Theme-based and Task-based Curricula”「3 種類のカリ
キュラム比較-文法中心・テーマ中心・タスク中心-」で、英語指導において、文法中心の
カリキュラムがよいのか、テーマ中心のカリキュラムがよいのか、また、タスク中心のカリキ
ュラムがよいのかについて、それぞれの長所と弱点を指摘した内容でした。結論を簡潔に
まとめると、生徒の英語能力とコースの目的を考慮し、3 つのカリキュラムを組み合わせて
使うのが最も有効な使い方である、ということでした。講演の途中にタスクを取り入れ、実
践に即した内容でしたので、文学研究科所属の教員や現職の中高英語教員のみならず、
英語教員を志望している学生にもとても示唆に富む内容でした。
上野 尚美 (英語英米文学専攻 教授 英語英米文学専攻 FD 委員)
オープンキャンパス
(8/4)
文学研究科進学説明会 (7/29)
2013 年 8 月 4 日、本学「オープンキャンパス」におい
て、大学院進学相談ブースが設けられます。詳細に
つきましては、大学ホームページをご覧ください。
http://www.icc.ac.jp/nyushi/event/index.html
[ ページ 4 ]
2013 年 6 月
大学院文学研究科レター
●第 5 号●