巻頭言 和泉俊一郎 - 神奈川県産科婦人科医会

平成20年7月(2008)
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(1)
巻頭言
東海大学医学部専門診療学系 産婦人科
和泉俊一郎
この執筆の依頼をいただいて、改めて地方部会誌について考えてみました。私にとっては、前回担当理事をさせてい
ただいたこともあって、大層思い入れのある雑誌なのですが、一般的にはどうでしょう?業績という観点からすれば、
英文ではない、もちろん和文の論文掲載誌ですし、IMPACT FACTOR 0点です。少し以前なら絶滅危惧誌の代表のよう
なものでもありました;IT 化の時代に紙ベースでの和文誌がどこまで存続するのかと、私も担当となったときに気付き、
今後の方向性を模索しなければと考えたりしていたわけです。ホームページ化すれば紙で印刷もせずにすむと考えても
いました。
しかし、現在 IT 化が進められているカルテを例にとってみても、紙ほど扱いやすいものはありません。私の東海大学
は付属病院が4つありますが、電子カルテは統一されておらず、違うメーカーのシステムをそれぞれに使いこなさねば
なりません。全てワープロベースの八王子病院もありますが、本院のシステムは一旦2号用紙を出力して、それに書き
込んだものをスキャンして電子的に保存しています。つまり、カルテの字は文字情報でなく、全て絵の情報として保存
されるわけで、私のような悪筆の者にとっては恥ずかしいシステムです。このシステムは、技術の進歩でメモリーが格
段に進歩した恩恵でもありますが、とてもナンセンスなように思えます。しかし、意外にも外来での処理患者数は八王
子よりはるかに多いのです。
他方、電子メールの発達と普及は目覚しいものがあります。もはや電子メール無しに私の仕事は一歩も進まなくなっ
ています。毎日こなしている仕事もコンピュータ無しには不可能です。海外に行くのにもメールは毎日見れるようにし
ておかないといけなくなっています。
さて、このような状況ですが、やはり紙ベースの日本語の論文は大切にすべきだと思うようになっています。論文を
書く第一歩としては、まず日本語できちんと論理を構築する作業が必要です。確かに医師として欧文論文の執筆は必須
ですが、初心者が直に欧文を書くのは無理(無茶)ですから、まず日本語で書くことをお勧めします。それを発表する
場が地方部会誌です。英文誌は peer-review が原則です。すなわち、同好の志がお互いにチェックしレベルアップを図る
わけです。和文誌でも査読の無いものは、やはり投稿しても勉強になりません。その点、地方部会誌は、創刊より強力
な編集会議があって常に同僚による手厚い論文改善のための指摘がなされてきました。その点については、毎号の編集
幹事を順番に引き継ぎながらこなして頂いている横浜市大のスタッフの先生方の力量に脱帽とともに深く敬意を表しま
す。裏方としてこれまで延々と尽力されてきたことを知る会員は少ないのではないでしょうか。勿論各々の論文の査読
は委員の先生方が分担して査読されています。その委員の先生方の献身を少しでも知って頂けるように、メンバーのお
名前を数年前から雑誌の最後に列挙するようになっています。話が少しずれたので雑誌の話に戻します。
近年、産婦人科専門医取得後の subspeciallity の各分野での専門医申請に関しては、業績がかなり要求されるようにな
ってきました。面白いもので、英文業績至上主義だけではハードルが高すぎるということで、しかし業績を必須としな
い専門医の資格は今や一般からの非難と文科省からの是正指導の対象となってしまうため、我らが地方部会誌の存在意
義が上昇してきているように思います。ここに至って、かつて私が悩んだ地方部会誌の位置付け(又はその着地点)が
今は明確になってきたように思います。投稿規程もどんどん親切になってきています。投稿者は必ず一読いただきたい
と思います。同時に是非良識ある指導的な査読者としてご協力いただき、会員皆の力で地方部会誌のレベル向上に努め
ようではありませんか。
2
(2)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
「特別講演」
習慣流産と母性について考える
Recurrent pregnancy loss and maternal mental health
日本医科大学 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, Nippon Medical
School
竹下 俊行 Toshiyuki TAKESHITA
要 旨
不育症患者の心のケアは適切になされているか?
2度3度と流産を繰り返している反復流産、習慣流産患
者にとって、妊娠は喜びではなく新たな恐怖の始まりであ
る。このような女性に、われわれ医療者はどのように対応
すべきであろうか。患者の生の声を分析し、習慣流産患者
に対する心のケアについて考えてみた。流産という喪失体
験の特殊性を理解し、喪の過程を障害することなく健全な
回復過程を促し、次回妊娠に対する希望を持たせることが
肝要である。その過程では、われわれ医療者のきめ細かな
心遣いが必要であり、心ない言葉で患者を傷つけ、新たな
流産の原因を作ることのないよう注意しなければならな
い。次にわれわれがすべきことは、流産原因の徹底解明で
あり、それに基づく適切な治療である。日産婦の推奨する
スクリーニングを行うと、習慣流産患者の7割以上に何ら
かの異常が検出される。治療の過程では母性を意識し、
Tender Loving Care (TLC)を施す。
「不育症」は最近でこそメディアなどが取り上げ、よ
うやく一般国民にも知られるようになったが、まだまだ
その認知度は低いといわざるを得ない。数年前に日産婦
生殖内分泌委員会「ヒト生殖のロス(習慣流産等)に対
する臨床実態の調査小委員会」のアンケートでは、不妊
症外来を有する診療所・病院のうち不育症を扱う外来を
設けている施設は 14% であった。習慣流産の頻度が生殖
年齢カップルの 1% に存在することを考えると、この数
は決して多いとはいえない。不育症外来がなければ不育
症のケアができないということはないが、やはり専門的
な知識が不足していると充分な対応ができない。まして、
非常にデリケートな心理ケアとなると、それを適切に行
いうる施設は限られてくるのではないだろうか。不育症
患者の心のケアに携わる医療従事者には、医師をはじめ
看護師、助産師、臨床心理士などがあるが、臨床心理士
を除いて専門的な教育を受けているものは少ない。臨床
心理士の有資格者は 15,000 人ほどいるが、そのうち生殖
医療に精通したものはまだごく僅かである。したがって、
今わが国では、不育症患者が心のケアを適切な形で受け
られる環境はまだ整っていないのが現状である。
Key word:習慣流産、不育症、母性、心理、Tender Loving
Care(TLC)
流産の苦痛と母性
女性は妊娠が判ったその時から母性に目覚めると言わ
れる。来るべき日に、この手で我が子を抱く瞬間を夢見
て。しかし、ある一定の割合で流産が発生する。流産・
子宮内胎児死亡の宣告は、妊娠の歓びから一転、妊婦を
悲しみのどん底に陥れる。加えて多くの場合子宮内容除
去術などの産科的処置を受けなければならず、患者の精
神的・肉体的苦痛は大きい。これが2回、3回と繰り返さ
れる反復流産、習慣流産では、そのダメージははかり知
れない。2度3度と流産を繰り返している彼女たちにとっ
て、妊娠は喜びではなく新たな恐怖の始まりである。流
産や死産を繰り返した時、また新たな妊娠を迎え恐怖感
に苛まれている女性に、われわれ医療者はどのように対
応すべきであろうか。こんな時こそ、母性に配慮しなけ
ればならないのではないだろうか。そこで、患者の生の
声を分析し、母性を考慮した習慣流産・不育症への対応
を考えてみたい。
流産による喪失の特異性
心理学的には、流産は自我と深く関わっていた対象を
失うことであり、それを対象喪失(object loss)という。
対象喪失によって生じる心理過程を喪(mourning)とい
い、その過程における落胆や絶望の情緒体験を悲嘆
(grief)という。これらを経験することにより流産という
対象喪失の悲しみから回復して行く 1)。死別による悲し
みは葬儀等、喪の期間に十分悲しみを表出し、遺族役割
を果たすことにより乗り越えることができるといわれる。
流産も胎児との死別ではあるが、通常の死別とは若干様
相が異なる。妊娠初期には、周囲の者はその女性が妊娠
していたことに気づいていないことが多く、一般の死別
をした場合にみられる周囲の心遣いや援助を受けずに過
ごすことが多い 2)。すなわち、悲しみを十分に表出する
機会が少ないために、喪の過程が障害されることになる。
このことは受容までの過程に時間がかかることを意味し、
そのまま、心理的外傷体験(reproductive trauma)となり
苦しんでいるケースがある 1)。特に不育症では、この過
平成20年7月(2008)
程が繰り返されている訳であり、回復の過程が不十分な
まま次の喪失体験を繰り返すことは、次回妊娠の予後を
悪化させるばかりでなく 3)、自身の心理的外傷を不可逆
的にしてしまう恐れも出てくる。
流産経験者の生の声
近年、インターネットの普及は著しい。不育症に悩む
女性は、これまでに述べてきたように、心理的外傷とし
て後遺症を残さぬためにも、悲しみを充分に表出し、喪
の過程を経験することが重要である。そのために、イン
ターネットを利用する場合が多くなっている。すなわち、
いわゆるブログといわれる掲示板に、自分の体験を語り、
読者のレスポンスを得たり、他人の体験談に対して書き
込みをしたりすることで喪の過程を遂行しているのであ
る。
一方、こうした体験談は、われわれ医療者が不育症患
者に対してどのように接したらよいかを考える際に大き
なヒントを与えてくれている。今回はポコズママの会と
いうサイトに投稿された流産体験談について、分析を試
みた 4)。
「天使のママの声」というコーナーには 295 件の書き
込みがあった。
1)病室・処置室が他の妊婦、褥婦と一緒で辛かった
(83件)
不妊症や不育症に悩む人が最も嫌うのが、幸せそう
な妊婦、褥婦との同居である。
「流産処置前の点滴室の
隣で NST が行われていて、バクバクと元気な赤ちゃん
の鼓動が大音量で響き渡っていた。」「流産手術の麻酔
から覚めたとき、隣の部屋で赤ちゃんが生まれた。私
のいた部屋にしか体重計がないからと、手術を終えた
ばかりの私の前に、生まれたばかりの 赤ちゃんをつれ
てきた。
」などで、ただでさえ辛く悲しい思いをしてい
る中、こうした体験は敗北感、焦燥感、嫉妬などの感
情に追い打ちをかける。医療者はこのような事態にな
ることが決して良いことではないと、理解はしている
が、現在わが国の医療事情を考えると致し方のないこ
ともある。しかし、配慮の気持ちは忘れてはならない。
2)医療従事者の心ない言葉、態度(40件)
「こういう胎児は染色体に異常があったんだろうね。
良かったじゃない流産して、これが産まれてたら大変
だよ。
」
「手術後、
“いいでしょう。また作れば”と気楽
に言われた。
」など、患者を励ますつもりで言った言葉
にせよ、大きなダメージを与えている。
3)喪失感情の無理解、悲しみの妨害(18件)
「よくあることだから。たかが流産なんかで。」「死
産(21 週)ということで泣きながら陣痛に耐えている
私に、みんな同じように痛いんですよ あなただけが特
別に痛いわけじゃありませんと、何度も何度も言われ
ました。
」
4)亡くなった赤ちゃん(胎児)の扱いに不満(11件)
「娩出後、銀色の膿盆に入れた。人間なのに冷たい
銀色の膿盆に。人らしい扱いをして欲しい。」「子供用
3
(3)
の小さな棺が、葬儀屋にあるのに“用意はこちらでし
ます”と言われて任せたら、薬が入ってきた段ボール
箱に入っていた。
」
5)その他
・説明が欲しい、情報不足(特に臨床症状のない稽
留流産を宣告された患者に多い)
・カルテを読んで!連絡不徹底
以上からわれわれ医療者や家族が慎むべき言葉が類型
化される(表1)
。
心因性因子と流産
流産と心因性因子、ストレスとの関係は古くから研究
されている。妊娠前の適切な心理ケアは流産率を低下さ
せるという Stray-Pedersen の論文は、心因性因子による流
産の存在を示すものとして今でもしばしば引用される 5)。
Neugebauer らは、染色体正常胎児を流産した女性は異常
胎児を流産した女性に比べて、妊娠前にストレスを抱え
ていた確率が2.6倍高いと報告した 6)。また、動物実験で
も、ストレスを与えたマウスは流産率が 4 倍高かったこ
とが報告されている 7)。さらに、反復流産における抑鬱
状態はさらなる流産を引き起こすという報告もある 3)。
流産の原因は単一の要因では説明がつかないことが多く、
このような場合は心因性因子を中心とした Psycho-neuroendocrine network の概念を導入する必要が出てくるが(図
8)、科学的な証明はこれからの研究分野である。
1)
表1.医師や看護師、家族が慎むべき言葉
1)いつまでも泣いていないで(悲嘆の抑止)
「悲しむ」ことは正常な感情である。悲しむべき時に押
さえ込むと、感情が自分に向かい卑屈、抑欝的になる。
2)今回のことは早く忘れなさい(喪の過程の否定)
こんなに辛い体験を忘れられるわけはない。むしろ、予
定日や掻破の日にその子のことを思い出す特別な時間を
取ってあげることで、喪に服すほうがよい。
3)妊娠はできるのだからまだいい方(喪失感情の無理解)
4)次は絶対大丈夫だから(根拠のない励まし)
図1.妊娠維持における
Psycho-neuro-immune-endocrine network
4
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日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
母性を意識した不育症のケア
1)徹底した流産原因の究明
流産を反復すると、次回妊娠への恐怖心が芽生えてし
まう。この恐怖心は次回妊娠時のマイナス要因になるば
かりでなく、続発性不妊に結びつく可能性すらある。原
因を究明しないまま次の妊娠に臨むことを、多くの女性
は望まない。したがって、徹底した原因究明を行い、不
安材料を取り除いておく必要がある。表 2 に当科不育症
外来で行っている検査チェックリストを示した。これに
従って検査を行うと、77% の習慣流産患者に原因が判明
する。
2)Tender Loving Care(TLC)
2006年の Human Reproduction に習慣流産診療のガイド
ラインが掲載された 9)。この中で、唯一エンビデンスの
確立した推奨される治療として TLC が挙げられている。
TLC が習慣流産の治療として用いられた最初の報告は
Stray-Pedersen らによってなされた 5)。TLC の内容は特殊
なものではなく、現在わが国のクリニックで日常的に行
われている妊娠初期の対応と変わるものではない。Li は
習慣流産患者への TLC のあり方として、表3に示すよう
な項目を挙げた 10)。
おわりに
心因性因子による流産・習慣流産の研究は端緒に着い
たばかりであるといってよい。流産の反復による心理的
ダメージが、新たな流産の原因となりうることを考慮す
ると、この分野の研究がきわめて重要であることがわか
る。繁忙な外来診療の中で、母性を意識したきめの細か
いカウンセリングを行うことは難しい。しかし、われわ
れ医療者の一言が、治療に繋がることもあれば、さらな
る流産を招いてしまうかも知れないことは、肝に銘じる
べきである。
表2 習慣流産チェックリスト(日本医科大学付属病院不育症外来)
表3 TLC とは?
・習慣流産(不育症)専門クリニックによって
行われるケアである。
・心理的なサポートが受けられる。
・主治医に容易にコンタクトが取れる。
・心配事を相談する門戸を開いている。
・第 1 三半期には超音波検査を頻繁に行う。
・適切な励まし。
・スタッフは常に援助する姿勢を持ち、決して
はねつけるような態度は取らない。
(文献 10 より)
平成20年7月(2008)
5
文 献
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自然流産後における悲嘆の反応について、母性衛生
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Aoki K, Kitamura T.: Depression as a potential causal
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4) ポコズママの会:天使のママの声
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7) Arck PC, Merali FS, Stanisz AM, Stead RH, Chaouat G,
Manuel J, Clark DA.: Stress-induced murine abortion
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8) Clark DA, Arck PC, Jalali R, Merali FS, Manuel J, Chaouat
G, Underwood JL, Mowbray JF.: Psycho-neurocytokine/endocrine pathways in immunoregulation during
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10) Li TC.:Recurrent miscarriage: principles of management.
Hum Reprod. 1998 ; 13:478−482
(H20. 1. 23受付)
6
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日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
腹腔鏡下に止血を行った妊娠黄体出血の1例
A case of hemorrhagic corpus luteum during pregnancy
平塚市民病院 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, Hiratsuka City Hospital
本田 能久 Nobuhisa HONDA
古谷 正敬 Masataka FURUYA
東條龍一郎 Ryuichiro TOJO
藤本 喜展 Yosinobu FUJIMOTO
笠井 健児 Kenji KASAI
齋藤 優 Suguru SAITO
持丸 文雄 Fumio MOCHIMARU
要 旨
症例は19才、0経妊 0経産。7週 0日の無月経。性交後の
下腹部痛を主訴に来院。尿中 hCG 定性反応にて陽性を示
し、経腟超音波断層検査にて子宮内の胎嚢及び多量の腹腔
内出血を認めた。妊娠黄体出血と子宮内外同時妊娠破裂の
鑑別および止血を目的に腹腔鏡手術を施行した。200 ml の
腹腔内出血を認め、左卵巣黄体出血と診断した。
黄体出血は珍しい疾患ではないが、妊娠中の発症はまれ
である。黄体出血は急性腹症の原因として外科もしくは婦
人科疾患と鑑別を要する。特に妊娠反応が陽性となり腹腔
内出血を伴う点において子宮外妊娠と類似した臨床所見及
び検査所見を示す。超音波検査で十分な鑑別が行えない場
合や腹腔内出血が多量で循環動態が不安定な場合に診断及
び治療を兼ねた腹腔鏡手術が有用である。
Key word:卵巣出血、子宮外妊娠、妊娠、腹腔内出血、腹
腔鏡下手術
緒 言
現病歴:無月経7週 0日、性交渉直後より強い下腹部痛
が突然出現した。その後腹部全体にわたる疼痛に増悪し
たため救急車にて当院受診となった。
既往歴・家族歴:特記すべき事なし。
現症:意識清明、血圧 84/30 mmHg、脈拍 68/分、体
温 36.3℃。腹部触診にて筋性防御及び反跳痛あり。尿中
hCG 定性反応陽性。内診では子宮正常大、圧痛及び移動
痛あり。付属器触知せず。帯下は白色少量で性器出血は
認めなかった。
経腟超音波断層検査所見:子宮内に 14 mm の胎嚢と卵
黄嚢を認めた。子宮周囲には膀胱子宮窩に達する多量の
液体貯留と凝血塊様陰影を認めた(図 1)。付属器は明ら
かにできなかった。
入院時検査結果:WBC 10600/μl、RBC 362×104 /μl、
Hb 11.4 g/dl、Hct 33.6 %。
ダグラス窩穿刺により非凝血性の血液を確認した。
以上の所見より妊娠黄体出血を強く疑った。しかし、
子宮内外同時妊娠破裂による腹腔内出血の可能性が否定
できないこと、出血量が多く血圧低下が認められたこと
黄体は排卵後の卵胞から形成され、妊娠の成立および
初期妊娠維持を目的としたプロゲステロン産生を行う内
分泌組織であり、その大きさは 2 cm から 10 cm に達する。
黄体出血は稀な疾患ではないが、急性腹症の原因として
しばしば急性虫垂炎、急性胃腸炎、尿路結石などの他科
疾患との鑑別を要する。さらに妊娠中の発症は稀で、こ
の場合には子宮外妊娠との鑑別も必要となってくる。子
宮内に胎嚢が認められたとしても、頻度は少なくなるが
子宮内外同時妊娠との鑑別を行う必要がある。両者の鑑
別には経腟超音波断層検査が有用であるが、診断が紛ら
わしいことも少なくない。
診断及び治療に腹腔鏡手術が有用であった妊娠黄体出
血の1例を経験したので報告する。
症 例
症例:19歳、0経妊 0経産。未婚。
月経:月経周期 30から90日、不整
主訴:下腹部痛
図1 経腟超音波断層法
子宮周囲に液体貯留と凝血槐様陰影を認める。子宮内に
は胎嚢を認める。
平成20年7月(2008)
7
から外科的治療の適応があると判断し腹腔鏡手術を行う
こととした。また、妊娠中絶の希望があったことから同
時に子宮内容除去術も行った。
手術所見:腹腔内に約 200 ml の出血を認めた。左卵巣
が嚢腫状に腫大し、嚢腫内に血液の貯留を認めた(図2)
。
左卵管、右卵巣・卵管及び子宮に異常所見はなかった。
その他腹腔内を注意深く観察し、子宮外妊娠と思われる
病変がないことを確認した。嚢腫を反転させ、出血部位
をバイポーラー止血鉗子にて止血した。この際、肉眼的
に黄色の黄体組織を確認した。腹腔内を十分な生理食塩
水で洗浄し、手術を終了した。手術所見より妊娠黄体出
血と診断した。
術後経過:術後経過は良好で、血中 hCG 値は術前
16344 mIU/ml であったのが術後5日目に 342 mIU/ml と
低下した。術後4週時に尿中 hCG 定性反応は陰性、その
後月経周期が再開した。子宮内容の病理検査では絨毛お
よび脱落膜組織を確認した。
考 察
排卵直前より顆粒膜細胞及びその周囲の内莢膜細胞が
黄体を形成し始める。その後、毛細血管を伴った結合組
織が放射状に莢膜層から破裂した卵胞内腔に進入し、黄
体血管網を構築する。黄体出血はこの血管網の破綻によ
り生じる。黄体出血の誘因は性交渉などの外的損傷によ
るものがほとんどであるが、重労働や過度の便秘による
腹圧上昇も誘因となることがある。本症例では性交渉直
後から腹痛が発症しており、この点から黄体出血が第一
に考えられた。
黄体出血は決して珍しいものではなく、多くは排卵後
数日以内に発症するが、妊娠中の発症は稀である 1) 2)。妊
娠中の黄体出血は特に子宮外妊娠との鑑別が必要となる。
Sohail らは子宮内に胎嚢を認めながら付属器にも卵管妊
娠を疑わせる嚢腫様病巣が超音波画像にて確認され、最
終的に腹腔鏡手術を行い妊娠黄体出血の診断に至った症
例を報告している 3)。一方で Belhassen らは卵巣出血と診
断し手術を行った後に、卵管妊娠が判明し再手術を行っ
た症例を報告している 4)。超音波装置の進歩により両者
の鑑別は比較的容易になったとはいえ、骨盤内に多量の
凝血塊が貯留したときは本症例のように超音波検査によ
る付属器の観察が困難なことも少なくない。また、出血
性黄体嚢胞が子宮外妊娠と類似したリング状の超音波像
を示すこともある 3) 5) 6) 7)。したがって、子宮内に胎嚢を
認める腹腔内出血に遭遇した場合、頻度の少ない子宮内
外同時妊娠を鑑別する目的となるが、腹腔内出血の量や
患者の状態により外科的診断を行う必要があると考えら
れる。その際に患者にとって低侵襲な腹腔鏡手術は有用
な方法である。
本症例では腹腔鏡手術における肉眼的所見により黄体
出血の診断をおこなったが、この点については反省すべ
き所がある。本症例では偶然妊娠中絶の希望があり、今
回の手術をもって子宮内の絨毛組織の除去ができ、hCG
値のフォローアップを行うことで卵巣出血部位など子宮
(7)
図2 手術所見
左卵巣が嚢腫状に腫大し、一部に破綻を認めた。
外の絨毛組織の残存を否定することが可能であった。し
かし、仮に妊娠継続の希望があった場合、卵巣出血部位
に絨毛組織がないことを hCG 値によって示すことはでき
なかったことになる。したがって、いかに肉眼的に黄体
出血を思わせる所見であったとしても出血部位より組織
を採取し、病理組織学的に診断を確定すべきであったと
考える。もし妊娠初期に妊娠黄体を外科的に切除してし
まっても妊娠継続は可能であるといわれている 2) 8)。
今回我々は腹腔鏡手術により診断および治療を行った
妊娠黄体出血の一例を経験した。超音波検査装置の進歩
により多くの場合、卵巣出血は非侵襲的に診断されるが、
子宮外妊娠などとの鑑別が困難な場合や腹腔内出血が多
量の場合は診断と治療を兼ねた腹腔鏡手術が有用である
と考えられる。
本論文の要旨は、第 375 回日本産科婦人科学会神奈川
地方部会において報告した。
文 献
1) Ottaway JP.:Ruptured hemorrhagic ovarian cysts during
pregnancy. Report of two cases of massive hemoperitoneum.
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8
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7) Stein MW, Ricci ZJ, Novak L, Roberts JH, Koenigsberg M.
: Sonographic comparison of the tubal ring of ectopic
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
pregnancy with the corpus luteum. J Ultrasound Med. 2004 ;
23:57−62
8) Rabinerson D, Tohar M, Pomerantz M, Haimovich L. :
Persistence of a normal pregnancy after an early luteectomy.
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(H19. 10. 30受付)
平成20年7月(2008)
9
(9)
腹腔鏡手術後に未熟奇形腫と判明した卵巣嚢腫茎捻転の1例
A case of ovarian torsion which was diagnosed as immature teratoma after laparoscopic treatment
平塚市民病院 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, Hiratsuka City Hospital
本田 能久 Nobuhisa HONDA
古谷 正敬 Masataka FURUYA
東條龍一郎 Ryuichiro TOJO
藤本 喜展 Yosinobu FUJIMOTO
笠井 健児 Kenji KASAI
齋藤 優 Suguru SAITO
持丸 文雄 Fumio MOCHIMARU
要 旨
良性付属器腫瘍に対する手術療法は近年腹腔鏡手術によ
っておこなわれる傾向にある。付属器腫瘍に対する腹腔鏡
手術には手術侵襲が軽度な事や創部が小さく美容面でのメ
リットがある反面、開腹手術に比べ術中に嚢腫内容液の漏
出に伴う腫瘍細胞の播種、術後腹膜炎の危険性が高くなる
というデメリットがある。未熟奇形腫の発生頻度は卵巣奇
形腫の 1∼3 % と稀であるが、若年者においてはその頻度
は上昇すると考えられる。従って未熟奇形腫の可能性をよ
り考慮すべき若年女性の卵巣奇形腫に腹腔鏡手術を行うこ
とは慎重に判断しなければならない。今回腹腔鏡手術後に
未熟奇形腫と判明した卵巣嚢腫茎捻転の1例を経験したの
で報告する。
症例は14歳。突然の下腹部痛を主訴に当院小児科を受
診した。CT にて下腹部に 10 cm 大の嚢胞性腫瘤を認めた
ため、卵巣嚢腫の診断のもと当科依頼入院となった。CT
上、一部に石灰化があり、悪性を示唆する所見はなく、卵
巣奇形腫茎捻転の診断のもと緊急腹腔鏡手術を行った。嚢
腫は左卵巣由来で茎捻転をしていたが、卵巣実質の色調は
良好であり嚢腫核出術を行った。術中嚢腫内容の漏出があ
ったが十分な洗浄を行い、手術を終了した。病理組織診断
は未熟奇形腫 Grade 1 であった。十分なインフォームドコ
ンセントの上追加手術は行わず経過観察とした。術後 10
ヵ月が経過し再発兆候は認めていない。
術中に嚢腫内容液の漏出を来たし、その結果として腫瘍
細胞の播種、術後腹膜炎の危険性が高くなるというデメ
リットがある 5) 6) 7)。未熟奇形腫の発生頻度は卵巣奇形腫
の 1∼3 % と稀であるが、若年者においてはその頻度は
さらに上昇すると考えられる。したがって未熟奇形腫の
可能性を考慮に入れた場合、若年女性の卵巣奇形腫に腹
腔鏡手術を行うことは慎重に判断すべきである。今回腹
腔鏡手術後に未熟奇形腫と判明した卵巣嚢腫茎捻転の 1
例を経験したので報告する。
症 例
症例:14歳、0経妊 0経産。
月経:初経10歳。月経周期30日、整。
主訴:下腹部痛
現病歴:突然出現した強い下腹部痛を訴え、当院小児
科を受診した。単純 CT 検査にて下腹部に 10センチ大の
腫瘍を認めた。卵巣嚢腫が疑われ当科へ依頼となった。
既往歴:特記すべきことなし。
家族歴:母がうつ病により他院入院中であった。
現症:身長 158 cm、体重 58 kg。意識清明、血圧 132/
90 mmHg、脈拍 77/分、体温 37.7 ℃。腹部触診にて下腹
部に新生児頭大の嚢腫様腫瘤を触知、同部位に圧痛を認
Key word:未熟奇形腫、若年性奇形腫、茎捻転、腹腔鏡下
手術、嚢腫核出術
緒 言
良性付属器腫瘍に対する手術療法は近年腹腔鏡手術が
選択される傾向にある。腹腔鏡手術には手術侵襲が軽度
な事や創部が小さく美容面でのメリットがあり 1) 2)、最近
では妊娠女性や小児に対しても行われるなどその対象範
囲は広がっている 3) 4)。当院においてもここ数年間で付属
器腫瘍に対する腹腔鏡手術の件数、割合とも増加してき
ている(図 1)。しかし、腹腔鏡手術には開腹手術に比べ
図1 当院での卵巣腫瘍に対する手術件数
10
(10)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
めた。また反跳痛もあった。
入院時検査結果:WBC 15200/
μlと上昇している以外
異常値はなかった。
CT 検査所見:腫瘍は直径 10 cm、単房性で solid part は
なく、悪性を示唆する所見はなかった。一部に骨と思わ
れる高信号を示す部位を認め皮様嚢腫が考えられた(図
2)
。
以上の所見より卵巣奇形腫茎捻転と考え腹腔鏡手術を
行った。
手術所見:気腹を行ってもほとんど腹腔を占有する巨
大な腫瘍をみとめた(図 3)。嚢腫壁の層を明らかにした
後、術野を確保するために嚢腫内容を吸引した。この時
点で左卵巣嚢腫の茎捻転であることを確認した。卵巣実
質の色調に異常がなかったため捻転を解除した上で嚢腫
核出術を行った。腫瘍の大部分はかす状の脂肪と毛髪で
あり、一部に柔らかい充実性病変を認めた。術中に嚢腫
内容液が腹腔内に漏出したため、3000 ml の生理食塩水で
腹腔内を洗浄し手術を終了した。
病理学的所見:40倍の低倍率で観察して未熟な神経組
織を 1 視野に 1 カ所以下確認されたため、未熟奇形腫
grade 1と診断した(図4)
。また術中所見を合わせ病期は
stageIc(b)と推定された。
術後経過:術後発熱はなく、経過良好にて術後 4 日目
に退院となった。
本人が受験を控えていた事情などもふまえ十分なイン
フォームド・コンセントの上、追加治療は行わず慎重な
経過観察を行うこととした。
術後10ヵ月が経過し、定期的に CT 検査や超音波断層
検査を施行しているが、再発兆候は認めていない。
を得ていることは少なく、十分な説明をおこない慎重に
手術方法の選択を行う必要がある。一方、医療者側に付
属器腫瘍に対する腹腔鏡手術の明確な適応基準がないこ
とも事実であり、術式の選択は各医師の裁量に委ねられ
ている。本症例の様に若年女性の卵巣奇形腫に対する手
術の場合は若年であるが故に術後回復期間の短縮や美容
面でのメリットと仮に未熟成分があった時に内容漏出に
伴う upstaging を来すというデメリットのジレンマに悩ま
されることとなる。
まず若年者の卵巣奇形腫に対する術式の選択について
考察を加える。この問題を考える場合、未熟奇形腫での
術中破綻が予後に影響を与えるかという議論に通じる。
これまで上皮性卵巣癌の場合、術中破綻は予後に影響を
与えないという報告が多かった 8) 9) 10)。しかし、最近では
5年無病生存率などで比較をおこなうと差があるとの報告
があり 11) 12)、未だ議論の余地があると考えられる。ただ
し未熟奇形腫についてはこれまでの報告をみるとⅠc 期を
含めたⅠ期全体の予後は grade によらず極めて良好である
13)。したがって、術中破綻の可能性があっても明らかな
悪性所見を認めない限り卵巣奇形腫に対する腹腔鏡下手
術は容認できると考えられる。
考 察
近年、良性付属器腫瘍に対する手術療法は腹腔鏡下に
行われることが一般的となっている。腹腔鏡手術による
メリットについては患者側も多く知識をもっており、患
者側より腹腔鏡手術を希望されることも多くなってきて
いる。しかし内容漏出に伴うデメリットについては情報
図2 CT
図3 手術所見
腹腔内を占有する卵巣嚢腫を認める。卵巣実質を剥離し
嚢腫壁の層を確認した所。
図4 病理組織像 HE 染色 強拡大
未熟な神経上皮を認める(矢印)
。
平成20年7月(2008)
11 (11)
次に本症例における術後管理について考察する。術後
に未熟奇形腫と診断された場合、改めて患者に対して侵
襲となる手術を行うべきかは難しい問題である。本症例
では本人が受験を控えていたことなどの社会的背景もあ
り追加治療を行わず慎重な経過観察を行うことを選択し
た。しかし、初回腹腔鏡手術のみで正確な staging が行え
ていないこと、嚢腫核出術のみで病巣の摘出が十分か不
明であることについては議論のあるところと考えられる。
まず staging については、今回の腹腔鏡手術のみで正確で
ないことは事実である。しかし、未熟奇形腫 grade 1 の予
後が極めて良好なことを考えると、staging のみを目的と
した外科的侵襲を与えるよりも、超音波検査や CT 検査
による慎重な経過観察の方が選択されるべきであると判
断した。ただし、腹腔鏡手術であっても付属器腫瘍の手
術に際しては腹水もしくは洗浄腹水の採取による細胞診
を行うべきであったと反省している。一方、嚢腫核出術
については stage 1、grade 1 の未熟奇形腫は予後がよく、
嚢腫核出術のみでも再発を認めなかったとの学会発表や
論文報告がみられる 14)。しかし、いかに予後の良い未熟
奇形腫、grade 1 とはいえ、どの程度縮小した術式で管理
を行うことが出来るかについては更なる症例の蓄積、検
討が必要である。本症例に対しても今後も診療な経過観
察を続けていくべきと考えられる。
今回腹腔鏡手術後に未熟奇形腫と判明した卵巣嚢腫茎
捻転の一例を経験した。若年性卵巣奇形腫の手術におい
て内容漏出の可能性があっても十分なインフォームド・
コンセントの上、腹腔鏡手術は容認できると考えられる。
また未熟奇形腫に対して嚢腫核出術のみで再発を認めて
いないが、縮小手術の安全性については今後更なる症例
の検討を重ねるべきであると考える。
本論文の要旨は、第 376 回日本産科婦人科学会神奈川
地方部会において報告した。
文 献
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treated patients. Obstet Gynecol. 1994 ; 84:598−604
14) Beiner ME, Gotlieb WH, Korach Y, Shrim A, Stockheim D,
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(H19. 10. 30受付)
12
(12)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)における膀胱損傷の検討
A case of the vesical injury in total laparoscopic hysterectomy.
平塚市民病院 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, Hiratsuka City Hospital
笠井 健児 Kenji KASAI
本田 能久 Nobuhisa HONDA
東條龍一郎 Ryuuichirou TOJO
古谷 正敬 Masataka FURUYA
藤本 喜展 Yoshinobu FUJIMOTO
齋藤 優 Suguru SAITOU
持丸 文雄 Fumio MOCHIMARU
要 旨
46歳女性(4経妊 1経産)に対し、子宮腺筋症・子宮内
膜症の根治手術として腹腔鏡下子宮全摘術(total
laparoscopic hysterectomy:TLH)を施行した。定型的に手
術を進め、腟パイプを経腟的に円蓋部に留置し、腟壁を超
音波メスにて切開・切断し子宮・両側付属器を経腟的に摘
出した。腟断端を腹腔鏡下に縫合した時点で軽度の血尿を
認め、尿バッグの膨張傾向を察知した。閉創した後、膀胱
造影および膀胱鏡を施行したところ、膀胱後壁粘膜に 8
mm 程度の線状創を確認した。膀胱切開にて膀胱粘膜の裂
創を確認し、これを修復した。再度膀胱造影を行い造影剤
の漏出がないことを確認し手術終了とした。手術の記録映
像をもとに、膀胱損傷の部位・時期・原因について検証を
行ったところ、切断した腟管から子宮を摘出する段階で、
腟断端やや腹側の膀胱後壁に熱変性所見のない鈍的挫創が
明瞭に確認された。経腟操作で腟パイプが直接膀胱に触れ、
恥骨側に圧した結果挫滅が生じ損傷したと考えられた。腟
壁が解放された後は腟パイプなどの非通電機器が脆弱な軟
部組織に直接触れ、思わぬところで損傷を来たす可能性が
ある。術者・助手は、術視野のみならず「見えない術野」
にも注意を払い、非通電機器による鈍的損傷を回避する努
力が必要である。術中に膀胱損傷を疑う徴候を認めた場合
には、麻酔覚醒前に膀胱鏡を施行、損傷を診断し、修復す
ることが望ましい。
Key word:total laparoscopic hysterectomy、vesical injury、nonpowered device
緒 言
腹腔鏡下手術に起因した合併症については古くから報
告・検討されてきたが、腹腔鏡機器・手技の進歩により
婦人科腹腔鏡下手術の適応・術式が拡大しつつあること
から、新たな問題点も指摘されている。腹腔鏡下子宮全
摘術(total laparoscopic hysterectomy : TLH)は、子宮摘
出・腟断端縫合までのすべての操作を腹腔鏡下に行う術
式で、ヤグレーザー、双極凝固装置、超音波メスなど比
較的多くの機器を使用するため、時に予想できない経過
で臓器損傷のおこる可能性がある。われわれは、子宮腺
筋症に対し TLH を施行した症例で、腟管切開時に使用す
る腟パイプにより鈍的膀胱損傷を来たし、膨張した尿バ
ッグによりそれを察知した症例を経験した。術中映像を
検証し、術中に使用したいくつかの機器と膀胱損傷との
関連につき、文献的考察とともに報告する。
症 例
患者:46歳女性、4経妊 1経産
主訴:月経困難症、腰痛、過多月経
既往歴・家族歴:特記すべきことなし
月経歴:月経周期は 28 日、持続 6 日で特に月経初日及
び2日目に月経痛が強い(鎮痛剤を1日数回服用)
。
現病歴: 4 年前より子宮内膜症を指摘され、他院にて
GnRHa 療法試みるも症状改善せず、次第に増悪傾向とな
った。さらに腰痛も自覚するようになり当院を受診とな
った。
初診時現症:身長 164 cm、体重 64 kg。内診上、子宮は
鵞卵大で可動性不良、移動痛を伴う。また右付属器周囲
に触圧痛を認める。
超音波断層:子宮の腫大・子宮壁の肥厚、及び右卵巣
嚢腫(type Ⅱ)
。
検査所見:Hb 13.6 g/dL、CA 125 93.4 U/mL。
MRI 所見:子宮は 9×6 cm に腫大。子宮筋層は最大3
cm に肥厚し微小な出血点を含む子宮腺筋症の所見であっ
た。また、右卵巣に直径 2.5 cm 程度のチョコレート嚢腫
を認めた。
経過:根治療法として、全身麻酔下に腹腔鏡下子宮全
摘術(TLH)・腹腔鏡下両側付属器切除術を施行した。
手術経過・所見:気管内挿管うえ全身麻酔を導入。患
者を砕石位に固定し、子宮マニピュレータを留置した。
臍下より 12 mm トロッカーにて腹腔に達し 10 cm H2O に
て気腹した。左右腸骨棘内側より 5 mm トロッカーを刺
入し術式を開始した。右円靭帯を超音波メスにて切断、
後腹膜腔を展開し尿管および子宮動脈を確認した。子宮
動脈を 2-0 吸収糸にて結紮・切断し子宮の上位靭帯を超
平成20年7月(2008)
13 (13)
図1 腟パイプ
腟壁切開時、矢印の方向で腟内に留置する。腟円蓋に当
てることで切開部位を明瞭にでき、気腹用炭酸ガスの腹
腔外への流出も防止できる。直径 4 cm。
常所見は認めなかったが、造影剤を排出し膀胱が縮小す
ると、後腹膜腔に漏出したと思われる造影剤残留が確認
された(図2)
。膀胱鏡にて膀胱後壁粘膜に 8 mm 程度の
線状創を確認、ここから還流液の漏出を認めたため膀胱
損傷と診断した。修復は経腹的に行った。膀胱切開にて
膀胱粘膜の裂創を確認し、3 層の縫合でこれを修復した。
再度膀胱造影を行い造影剤の漏出がないことを確認し手
術終了とした。
術後経過:術後 9 日目に再度膀胱造影を施行し漏出が
ないことを確認し膀胱内留置カテーテルを抜去した。術
後1ヵ月程度は頻尿傾向を訴えたが、2ヵ月目以降は膀胱
機能に概ね問題は生じなかった。術後 3 ヵ月時に施行し
た膀胱鏡では粘膜面に特に所見は認めず、治療を終了と
した。
検証:手術の記録映像をもとに、膀胱損傷の部位・時
期・原因について検証を行った。損傷は腟断端のやや腹
側の膀胱後壁に確認され、これは術中膀胱鏡での所見に
合致する部位であった(図 3)。しかし膀胱粘膜面が鋭的
裂創であったのに対し、後腹膜腔側の創は熱変性所見の
ない鈍的挫創であった。記録映像上この損傷は、切断し
た腟管から子宮を摘出する段階(A)で初めて明瞭に確
認されたが、前壁を切開する段階(B)では損傷のない
膀胱を確認可能であった。腟断端を縫合する段階で軽度
血尿と尿バッグの膨張傾向を認めたことから、損傷は B
から A の間に起こったものと推定された。この間、腟パ
イプを円蓋に当てながら超音波メスで腟壁を切開し、双
極凝固装置にて止血操作を行っているが、いずれの通電
機器も損傷部位には接触していない。映像記録で確認で
きない範囲で超音波メスなどの通電機器により損傷を来
たした可能性は否定できない。しかし創の性状から非通
電機器による損傷を考える状況であり、原因となりうる
機器は腟パイプのみである。視野を確保するために腟パ
イプを大きく動かすが、切開が進むに従い腟パイプ本体
図2 膀胱造影像
膀胱内留置カテーテルより造影剤を注入し膀胱造影を行
った。full-bladder とした後、造影剤を排出し膀胱が縮小
する(white arrow)と、後腹膜腔に漏出したと思われる
造影剤残留(black arrow)が確認された。
図3 膀胱損傷部位
損傷は腟断端(white arrow)のやや腹側の膀胱後壁に確
認された。膀胱鏡で確認された膀胱粘膜創が鋭的裂創で
あったのに対し、後腹膜腔側の創は熱変性所見のない鈍
的挫創であった(black arrow)
。
音波メス切断した。対側も同様の処理を行った。次いで
膀胱漿膜を翻転部にて子宮より剥離し非通電切開した。
膀胱を子宮頚部・腟より超音波メスを用いながら剥離し
前腟円蓋を十分に露出した。傍子宮組織・膀胱子宮靭帯
を超音波メス、双極凝固装置を用いながら処理、さらに
仙骨子宮靭帯を切断した。ここで腟パイプ(図1)を経腟
的に留置し、円蓋部を押し示しつつ前腟壁、後腟壁、右
壁、左壁の順に超音波メスにて切開・切断し子宮・両側
付属器を経腟的に摘出した。腟断端および後腹膜を腹腔
鏡下に 2-0 吸収糸で縫合した。この時点で軽度の血尿を
認め、尿バッグの膨張傾向を察知した。腹腔内を洗浄、
止血を確認し脱気、トロッカーを抜去し閉創した。
尿路系損傷を確認するため、全身麻酔を維持し以下の
処置を行った。まず、膀胱内留置カテーテルより造影剤
を注入し膀胱造影を行った。膀胱を充満した時点では異
14
(14)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
が腟断端から確認できるようになる。腟管切断後、子宮
体部を腟管に導くと、膀胱が牽引され恥骨結合レベルま
で下降する。この時腟パイプが直接膀胱に触れ、恥骨側
に圧した結果挫滅が生じ損傷したと考えられた。
考 察
腹腔鏡下子宮全摘術は腹腔鏡下に処理する範囲に応じ、
上位靭帯のみを処理する LAVH(laparoscope-assisted
vaginal hysterectomy)
、加えて子宮動脈の結紮・切断まで
を行う LH(laparoscopic hysterectomy)
、そして子宮摘出ま
ですべての処理を行う TLH(total laparoscopic hysterectomy)
の 3 種に大別される。これら三者は段階的に手術難度が
高くなるが、特に TLH は高い腹腔鏡技術を要する術式で
あり、合併症の頻度において施設間の差が大きい。膀胱
損傷の頻度は、LAVH で 0.4∼3.4% 2) 7) 8) 10) 11) 13) 16) 17) TLH
で 0.2∼7.0% 1) 4) 5) 6) 7) 11) 12) 14) 15) と報告されている。開腹
あるいは経腟での子宮摘出に比べ、膀胱損傷の頻度は低
いという報告 4) 6) 7) 15) が多いが、高い・有意差なしとする
報告 13) 14)もある。帝王切開の既往と円錐切除の既往は、
膀胱損傷の明らかなリスクファクターと考えられてい
る 2) 5) が、LAVH がそのリスクを減少させると説く著者
16) 17) もいる。腹腔鏡手術における他の損傷と同様に、膀
胱損傷の頻度はいわゆる学習曲線に従う因子と考えられ、
同一術者・同一施設内での症例の集積によりその頻度は
減少する 1) 2) 3) 10) 12)。膀胱損傷の多くは、膀胱を子宮頚
部・腟壁から剥離する際に単極凝固切開装置などの通電
機器により裂創として生ずると考えられ、本症例のよう
な経過は報告に乏しい。術経過のなかで、腟壁が解放さ
れた後は腟パイプなどの非通電機器が脆弱な軟部組織に
直接触れる機会が増える。しかも術視野に入らない部位
で操作されることがあるため、通常の術式を完遂したと
しても結果的に思わぬところで損傷を来たす可能性があ
る。学習曲線の要素のひとつとも考えられるが、TLH を
行う術者・助手は、術視野のみならず「見えない術野」
にも注意を払い、非通電機器による鈍的損傷を回避する
努力が必要である。
膀胱を損傷した場合の血尿は一般的に強度のことが多
いが、加えて膀胱内に気腹ガスが流入することから尿バ
ッグが膨張するという特徴的な所見を見ることがある 2)。
本来、閉鎖系の尿バッグに気体が充満することはありえ
ず、少量の流入であっても尿路系の損傷を示唆するに十
分な所見と考えるべきである。損傷の確認にはインジゴ
ブルーなどの色素希釈液を膀胱に注入する方法や造影な
どいくつかの方法があるが、本症例ではまず尿路造影を
行った。これは、不明確な損傷部位を検索する場合、造
影がもっとも迅速で客観性の高い診断法であると考えた
からである。膀胱損傷の診断に対しては特に膀胱鏡の有
益性が報告されている 2) 18) 19) 20)。術中膀胱鏡を施行する
ことで、ほとんどの損傷例を発見でき直ちに治療を行う
ことができる 20)。後に膀胱腟瘻となって発見されるよう
な微小な損傷は発見できない可能性もあり 18)、術中膀胱
鏡を全症例に施行することには疑問が残るが、当然のこ
とながら術中に修復を行うことの予後への利点は大き
い 13) 。したがって、術中に強度の血尿や尿バッグの
膨張など膀胱損傷を疑う徴候を認めた場合には、麻酔
覚醒前に膀胱鏡を施行、損傷を診断し修復を行うべき
である。修復は開腹・腹腔鏡下どちらでも可能である
2) が、1 層縫合は 2 層以上の縫合に比べ予後不良 22) な
ので、膀胱粘膜および平滑筋層を個別に縫合した 2 層
縫合を行うことが望ましい。
結 語
TLH を行う術者・助手は、術視野のみならず「見えな
い術野」にも注意を払い、非通電機器による鈍的損傷を
回避する努力が必要である。術中に強度の血尿や尿バッ
グの膨張など膀胱損傷を疑う徴候を認めた場合には、麻
酔覚醒前に膀胱鏡を施行、損傷を診断し、膀胱粘膜及び
平滑筋層を個別に縫合した 2 層縫合を行うことが望まし
い。
文 献
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(H19. 11. 16受付)
16
(16)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
子宮体部を包み込んで発育した子宮頚部腺癌の1症例
A Case Report of Endocervical Adenocarcinoma which Covered Uterus Body
大和徳洲会病院 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, Yamato Tokusyu-kai
Hospital, Yamato, Kanagawa
石川 哲也 Tetsuya ISHIKAWA
小出 馨子 Keiko KOIDE
野口 有生 Yusei NOGUCHI
昭和大学 第一病理学教室
First Department of Pathology, Showa University School of
Medicine, Shinagawa, Tokyo
国村 利明 Toshiaki KUNIMURA
概 要
子宮頚部腺癌は早期診断が困難であるため進行した状態
で発見されることが多い。今回我々は、子宮頚部腺癌が子
宮体部を包み込んで多房性に発育したため、術前診断で卵
巣腫瘍との鑑別が困難であった一例を経験したので報告す
る。症例は 56 歳、未婚、未経妊、閉経後の患者である。
少量の不正出血のため当院を受診となる。腟鏡診では子宮
頚腟部は正常、子宮頚部細胞診は ClassⅠ であった。子宮
口はピンホール様であったため子宮体部細胞診は施行出来
なかった。腹部超音波断層検査では多房性の直径約10cm
大の腫瘍を認めた。MRI 検査では約 9×9×13 cm の多房
性の卵巣由来と思われる腫瘍を認めたが、子宮を同定する
ことは出来なかった。腫瘍マーカーは CA 19-9:666.4 U/
ml、CA 125 : 35.2 U /ml、CA 72-4 : 2.5 U /ml 以下、
CEA:0.4 ng/ml 以下、であった。以上より卵巣もしくは
子宮由来の悪性腫瘍の疑いで手術を施行した。開腹所見で
子宮頚部腫瘍が子宮体部全体を包み込み、両側子宮円索と
固有卵巣索をも引き込んでいる状態を観察した。術前検査
で観察された多房性腫瘍は子宮頚部由来の腫瘍であった。
子宮頚部悪性疾患を疑い準広汎子宮全摘出術 + 両側付属
器摘出術 + 骨盤内リンパ節郭清を行った。術後病理診断
では粘液性腺癌内頚部型、pT1b2N0M0 であった。術後補
助化学療法として TC 療法を5コース施行した。現在術後
33ヵ月たつが再発転移は認めていない。
経験したので報告する。
症 例
56 歳、未婚、未経妊。家族歴、既往歴特記すべきこと
無し。50 歳の時に閉経となる。少量の不正出血が生じる
とのことで当院を受診となる。腟鏡診では帯下に異常所
見を認めず、子宮腟部は上方に偏位していたが肉眼上正
常であった。腹部所見では小児頭大のやや硬い可動性不
良の腹部腫瘍を触知した。未婚であり腟の狭小化を認め
たため腹部超音波断層検査を行ったところ、多房性の直
径約 10 cm 大の腫瘍を認めた(図1)
。子宮頚部細胞診は、
綿棒を用いて子宮頚腟部より採取し Class Ⅰ であった。
子宮口はピンホール様であったため子宮体部内膜細胞診
を行うことは困難であり MRI 検査で評価することとし
た。MRI 検査では約 9×9×13 cm の多房性の卵巣由来と
思われる腫瘍を認めたが、子宮を同定することは出来な
かった(図2)
。CT 検査では遠隔転移などの所見は見られ
なかった。腫瘍マーカーでは CA 19-9:666.4 U/ml、CA
125 : 35.2 U /ml、CA 72-4 : 2.5 U /ml 以下、CEA : 0.4
ng/ml 以下、であった。以上より卵巣悪性腫瘍の疑いで、
Key word:子宮頚部腺癌、画像診断
緒 言
子宮頚部腺癌は子宮頚部扁平上皮癌に比べてリンパ節
転移率も高く、放射線治療に抵抗性を示すことや、早期
診断が困難であることから進行した状態で発見されるこ
とが多い 1) 2)。近年では、その割合は増加傾向にあるとさ
れている 3)。今回我々は、子宮頚部腫瘍が子宮体部を包
み込むように多房性に発育したため術前診断において卵
巣腫瘍との鑑別が困難であった子宮頚部腺癌の一症例を
図1 経腹部超音波断層検査所見
平成20年7月(2008)
17 (17)
術中迅速病理診断の下で手術を行った。術中腹腔内所見
では子宮頚部が子宮体部全体を包み込みように大きく発
育し、両側子宮円索と両側卵巣固有靭帯は腫大した子宮
頚部腫瘍内に引きずられるように深く引き込まれていた
(図3)
。卵巣腫瘍と思われた腫瘍は子宮頚部由来の腫瘍で
あった(図4)
。左付属器に直径約 2 cm 大の傍卵巣嚢腫を
認める以外に付属器には異常所見はなく、腹腔内にもそ
の他の異常所見は観察されなかった。術中開腹所見より
子宮頚部由来の悪性腺腫などの悪性疾患を疑い準広汎子
宮全摘出術 + 両側付属器摘出術 + 骨盤内リンパ節郭清
を行った。傍大動脈リンパ節の腫大は術中触診上では、
確認されなかった。術後の病理診断では、子宮頚部に限
局する最大径 8 cm の多房性腫瘍を認めた。腫瘍内は、異
型に乏しい粘液産生性の腺管が増殖し、一部に腺癌を示
唆する異型細胞が浸潤性発育を示していた。粘液性腺癌
内頚部型であり、脈管侵襲を認めず、腟断端は陰性、子
宮内膜は菲薄化し正常、両側付属器にも異常を認めなか
った(図5)
。pT1b2N0M0、腹水細胞診は ClassⅡ であっ
図2 MRI 検査所見
図3 術中開腹所見
両側子宮円索と両側卵巣固有靭帯が腫大した子宮頚部腫
瘍内に入り込んでいるのが観察される
図4 摘出子宮肉眼所見
子宮頚部腫瘍が子宮体部全体を包み込み発育し、あたか
も子宮体部が子宮頚部腫瘍内に存在する中隔のように観
察される
Vag:腟断端部、CX:子宮頚部、iOS:内子宮口、
UtB:子宮体部、FUt:子宮底部、RtAdd:右付属器、
LtAdd:左付属器
b)x 1.25:腫瘤は多房性の
嚢胞を示している
a)腫瘤部の割断面所見
図5 摘出物病理検査所見
c)x 20:嚢胞壁を覆う円柱上皮は粘液
産生を示しており、異型を伴っている
18
(18)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
た。bulky type の頚部腺癌であったため術後補助化学療法
としてTC 療法(paclitaxel, carboplatin)を5コース施行し
た。現在術後33ヵ月たつが再発転移は認めていない。
考 察
子宮頚部腺癌は子宮頚癌の約 8∼26% を占めるとされ
る比較的稀な組織型の癌である 4)。しかし近年集団検診
の普及や、細胞診の精度が上昇したため、扁平上皮癌が
浸潤癌以前の状態で発見治療されることが多くなり、相
対的に浸潤癌に占める腺癌の割合が増加してきていると
言われている 3) 5) 6) 7)。
頚部腺癌の早期診断法は扁平上皮癌と同様に細胞診と
組織診で行われている。しかし細胞診では腺系異型細胞
が採取されていても扁平上皮系の異型細胞が視覚的に目
立つため見逃される傾向があることや、初期病変では高
分化のことが多く細胞異型が強くないため診断が困難で
あることが指摘されている 8) 9)。確定診断では円錐切除術
による組織診断が必要とされている 10) が、組織診では発
生部位が頚管の奥(内子宮口側)の場合や、頚管の表層
から発生していない初期病変では捕らえにくい 11)とされ
ている。
一般に Ⅰb 期以上の浸潤腺癌病変の診断には腟鏡診所
見が重要とされているが、本症例では頚部腺癌病変が内
子宮口の近傍より生じ子宮体部方向に大きく発育したた
め、肉眼では子宮腟部が正常として観察された。また子
宮頚部細胞診では子宮口がピンホール様であったため頚
管奥より十分な細胞を採取できなかったことや、組織学
的にも高分化型腺癌であったことが術前診断を困難とし
たと考えられる。
骨盤腔内に存在する多房性の大きな腫瘍を認めた場合、
一般には卵巣腫瘍を疑うことが多い。しかし本症例では、
子宮頚部腺癌が子宮体部を巻き込むように多房性に腫大
化し発育していたことに加え、術前の MRI 検査で子宮内
膜が薄く子宮体部の存在部位が判りにくかったこと、腟
の狭小化のため十分な内診が行えなかったこと、などが
重なり術前に子宮頚部由来の腫瘍を診断することが出来
なかった。
子宮頚部腺癌は扁平上皮癌と異なり放射線治療に抵抗
性を示し、そのため予後が悪いとされている 12)。また一
見、根治手術が出来たように見えても、腺癌の場合微小
転移がどこかに存在していることが高いことが指摘され
ている。Eifelら 13)によると Ⅰb 期の扁平上皮癌と腺癌に
おける放射線療法後の予後の検討で、局所抑制率は扁平
上皮癌と腺癌では変わらなかったにもかかわらず、遠隔
転移は扁平上皮癌では 20 % であるのに対して腺癌では
36 % と微小転移が予後を大きく左右しているとされてい
る。そのため頚部腺癌では術後化学療法が主体として行
われることが多い。子宮頚部腺癌に対して施行されてい
る化学療法は、子宮頚部腺癌の頻度が低いため多数例で
検討された報告が少なく、レジメンは確立されていない
のが実状である。現在のところ TC 療法を初めとして
PAM 療法(cisplatin, acracinomycin, mitomycin)
、MEP
療法(mitomycinC, etoposide, cisplatin)など国内外含めて
様々な治療法が報告されている 14)。しかし platinum base
chemotherapy が子宮頚部扁平上皮癌、腺癌 ともに共通の
evidenceであるとされている 15)。腺癌に対する単剤での抗
腫瘍効果は、cisplatin,paclitaxicel, ifosfamide の3剤を除けば
著 効 率 は 十 分 で な い と さ れ て い る 16)。 TIP 療 法
(paclitaxicel, ifosfamide, cisplatin)が TP 療法(paclitaxel,
cisplatin)よりも有用であるとの報告もある 17) が、我々の
施設では副作用の点より腺癌に対しては paclitaxel と
carboplatinを用いた術後療法を第一選択している。TC 療
法は cisplatin を用いた TP 療法に比べて腎毒性が比較的低
く、今後長期間の定期投与を行うにあたって患者のコン
プライアンスが得られると我々は考えている。
結 語
本症例では術前に子宮頚部腺癌を診断することが出来
なかった。一般に骨盤内の多胞性腫瘍を見つけたときは
卵巣由来の腫瘍を考えることが多い。しかし本症例のよ
うに子宮頚部由来の腫瘍も同様の像を呈することがある
ことを念頭に入れて術前診断を行うことが必要であると
思われた。
文 献
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(H19. 12. 17受付)
20
(20)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
当院における緊急腹腔鏡下手術の現状
Urgent Laparoscopic Surgery in our Institute
横浜市立大学附属市民総合医療センター 婦人科
Department of Gynecology, Yokohama City University, Medical Center
横浜市立大学附属病院 産婦人科 *
Department of Obstetrics and Gynecology, Yokohama City
University School of Medicine
吉田 浩 Hiroshi YOSHIDA
片山 佳代 Kayo KATAYAMA
八巻 絢子 Junko YAMAKI
高島 邦僚 Kunitomo TAKASHIMA
茶木 修 Osamu CHAKI
平原 史樹 Fumiki HURAHARA*
石川 雅彦 Masahiko ISHIKAWA
要 旨
【目的】低侵襲性及び美容性のため腹腔鏡下手術の需要
は高まりつつある。当院でも開院当初より腹腔鏡下手術を
導入し、平成17年度からは積極的に緊急手術にも施行し
てきた。これまでの蓄積症例を検討し、今後の緊急腹腔鏡
下手術の可能性について考察した。
【対象と方法】平成17
年4月∼平成19年3月に施行した緊急手術症例、66例を対
象とし、診療録をもとにデータ収集し後方視的に検討した。
【結果】調査期間の2年間における緊急手術は66例で年々
増加傾向にあり、そのうち35例が腹腔鏡下手術であった。
緊急腹腔鏡下手術の約 70% を子宮外妊娠が占めていた。
緊急腹腔鏡下手術の 37% が準夜帯あるいは深夜帯に施行
され、週末休日の施行例は 17% に及んでいた。入院から
手術開始までの経過時間は開腹で95分なのに対し、腹腔
鏡で176分と有意に長く、比較的状態が安定した症例は手
術室などの都合がつき次第行われる傾向がみられた。緊急
腹腔鏡下手術での開腹移行例は3例(8%)であった。
【考
察】手術機材数に余裕を持たせ、腹腔鏡習熟医師の当直や
オンコール体制を整えることにより曜日や時間帯による腹
腔鏡手術数の分布に偏りは比較的見られなかった。しかし
ながら腹腔鏡開始までの時間はおよそ平均3時間であり、
症例の中には重症化した症例も見られ、今後適切な適応症
例の選択が必要であると考えられた。
ており、平成17年度からは緊急手術にも腹腔鏡を積極的
に行ってきた。平成 18 年度までの 2 年間で緊急に行われ
た腹腔鏡下手術は35例に及んだ。今回我々は後方視的に
これらの症例を検討し、今後の婦人科における緊急腹腔
鏡下手術の問題点と可能性に関し検討した。
対象と方法
症例は平成17年度と18年度に当院にて施行された緊急
開腹と緊急腹腔鏡下手術を対象とし、診療録をもとに診
断、術式、手術開始時刻などを後方視的に検討した。当
院婦人科の診療体制を表 1 に示す。年度ごとに増加傾向
にあるが、当院での総婦人科手術件数は年間 400 件あま
り、常勤医師は 6 名、婦人科病床数は 15 床である。腹腔
鏡下手術の増加に伴い、緊急手術にも対応できる体制と
して、当直医師またはオンコール医師のいずれかが腹腔
鏡下手術に習熟しているようにした。緊急腹腔鏡を施行
することにより翌日の定時手術に影響が出ないよう、腹
腔鏡の鉗子類のセットは3セット、光学視管2本用意して
いる。時間のかかるガス滅菌を必要とするカメラコード
や光源コードは4本ずつ備えている。
表1 当院の診療体制
常勤医師数
Key word:婦人科救急、緊急腹腔鏡下手術、子宮外妊娠
目 的
腹腔鏡下手術はその低侵襲性及び美容性から婦人科領
域でも広く行われるようになり、卵巣嚢腫、内膜症病変、
子宮外妊娠においては施設間の差はあるものの、第一に
選択される手術手技になったといっても過言ではない。
当院でも平成12年の開院当初より腹腔鏡下手術を導入し
病床数
6人
15 床
年間婦人科手術数
410 件(平成 18 年度)
年間腹腔鏡件数
105 件(平成 18 年度)
腹腔鏡用具
10mm 光学視管
2本
5mm 電子スコープ
1本
カメラコード光源コード
4本
鉗子類のセット
3 セット
気腹、鋼線吊り上げ
平成20年7月(2008)
21 (21)
結 果
当院における婦人科的緊急腹腔鏡下手術件数と緊急開
腹手術件数の推移を図 1 に示す。新体制を組み始めた平
成17年度と翌18年度はそれ以前に比べ明らかに緊急手術
は増加しており、2 年間における総緊急手術は 66 件であ
った。うち腹腔鏡下手術はおよそ半数を占め35件であっ
た。表 2 に緊急手術の疾患の内訳を示す。35 例の緊急腹
腔鏡下手術の中で最も多かったのは子宮外妊娠手術・ 24
例(68.6 %)であった。緊急で行った子宮外妊娠手術は
31例あったが、77.4% を腹腔鏡下で行いえていた。一方、
卵巣嚢腫茎捻転は 9 例あったが、腹腔鏡下手術を施行し
たものは 3 例にとどまった。また、卵管・卵巣膿瘍・骨
盤内炎症は全例開腹術を施行していた。
ついで、緊急腹腔鏡下手術が休日、時間帯にかかわら
ず行われているか検討した。図 2 に緊急時手術の曜日別
(A)・施行時間別分布(B)を示す。週末・休日に施行
された緊急腹腔鏡手術は 6 件あり緊急腹腔鏡下手術の
17.1% を占め、休日週末にかかわらず腹腔鏡下手術を選
択しえていたと考えられた。緊急腹腔鏡手術の施行時間
帯については、準夜・深夜帯に行われた緊急腹腔鏡手術
は13例にのぼり、実に 37.1% が夜間帯に施行されていた。
さらに、いつでも緊急腹腔鏡が開始できる体制かどう
かを別の側面から検討し、時に時間単位での緊急性が要
求される子宮外妊娠症例についての入院から手術開始ま
でに要した時間を図 3 に示す。開腹手術における平均手
術開始時間は 95 分であるのに対し、腹腔鏡手術では 176
分を要していた。腹腔内出血量との関連をプロットする
と開腹手術はおおむね 500 ml 以上の出血があったものに
選択されているのがわかる。一方、腹腔内出血が認めら
れる症例でも腹腔鏡下手術を選択しているが、おおむね2
時間以内に手術が開始されている。その一方で 3 時間近
く待機した腹腔鏡症例の中には2例の 1500 ml 以上の腹腔
内出血が観察され、いずれの症例も気腹下にて循環動態
が保てるか直前の判断が困難であった。
35 例の緊急腹腔鏡下手術のうち開腹術へ移行したもの
が3例あり、表3にまとめた。全ての症例は子宮外妊娠症
例であったが開腹理由はそれぞれ異なり、骨盤内内臓器
の強度癒着、術中も持続する破裂部からの強出血、卵管
切除端からの止血困難が開腹移行理由であった。
考 察
婦人科領域における緊急腹腔鏡下手術に関する本邦で
の報告は予想外に少ない 1) 2) 3) 4)。腹腔鏡下手術の目覚し
い普及は誰も認めるものであるが、救急症例への腹腔鏡
の導入は各施設における腹腔鏡技術の向上とは別の面で
の努力が必要なものと考えられる。当院では過去 2 年間
に開腹を含めた緊急手術は66例であり(流産手術などの
腟式手術を除く)
、うち半数以上を腹腔鏡下手術が占めて
いた。開腹術を選択した症例31例のうち筋腫分娩、子宮
悪性腫瘍などの子宮摘出を要する症例が 9 例あり、これ
らは当院では現在でも緊急腹腔鏡下手術の対象としてい
ないものである。子宮外妊娠症例は全体で31例行ってい
図2 緊急時手術の曜日別(A)・施行時間別分布(B)
腹腔鏡下手術 開腹手術
図1 緊急腹腔鏡下手術数
図3 入院から手術開始までかかる時間(子宮外妊娠手術)
表2 緊急腹腔鏡下手術の内訳
腹腔鏡下手術
子宮外妊娠
卵巣腫瘍茎捻転
開腹手術
24 例
7例
3例
6例
卵巣出血
3例
0例
卵巣嚢腫破裂
2例
0例
腹腔鏡術後出血
2例
0例
卵管・卵巣膿瘍・骨盤内炎症 0 例
8例
他
合計
1例
35 例
10 例
31 例 総計 66 例
表3 緊急腹腔鏡下手術の開腹移行例
35 例中 3 例
症例 1)間質部妊娠破裂腹腔内出血 2000ml
→附属器周辺の癒着により妊娠部位の同定困難
症例 2)卵管膨大部妊娠破裂腹腔内出血 1000ml 以上
→破裂部からの強出血持続、腹腔鏡施行中に血
圧低下
症例 3)卵管膨大部妊娠破裂腹腔内出血は 100ml 程度
→卵管切断端の止血困難
22
(22)
るが、あらかじめ開腹術を選択したものは 7 例あり、シ
ョックなど全身状態が気腹に不適切と判断された症例や
間質部妊娠と診断し腹腔鏡下手術では困難と判断された
症例が5例を占めていた。一方で、残りの2例は残念なが
ら開腹術を選択しなければならない医学的根拠が乏しい
ものであった。診療録の記載などには残らない開腹術を
選択せざるを得なかった可能性のある状況として、手術
室の人員確保の困難性などが考えられるが詳細は不明で
ある。卵巣嚢腫茎捻転症例では、9例中3例にしか腹腔鏡
下手術が行われていないという、予想外の結果であった。
経験的にも卵巣嚢腫茎捻転症例は決して煩雑な腹腔鏡手
技を要するものではない。しかしながら、開腹症例 6 例
の内訳を検討すると、2 例は 70 歳代、2 例は CT 上卵巣悪
性腫瘍疑い、1例は汎発性腹膜炎既往がありいずれも緊急
腹腔鏡下手術は不適切と考えられた症例であった。残念
ながら 1 例のみ腹腔鏡下手術を選択できない医学的根拠
が見られなかった。
さらに腹腔鏡下手術が休日夜間にかかわらず行われて
いるか振り返ってみたが、結果はおおむね満足できるも
のであった。しかしながら腹腔鏡開始までの時間はおよ
そ平均 3 時間であり、診断時は安定していた症例の中に
は重症化した症例も見られ、今後適切な適応症例の選択
が必要であると考えられた。休日夜間にも緊急腹腔鏡手
術を施行可能となるには 1)麻酔科医を含めた手術室の
手配、2)手術可能な術者の手配、3)手術機器の手配
が必要となる(文献 1)。コメディカルにとっては搬出す
る機械類が多く、麻酔科医にとっては気腹下では患者の
状態が変動する可能性もあり、日ごろから緊急時の腹腔
対応に関しお互いに理解を深めておくことにより、より
スムーズな緊急時対応が可能になると考えられる。前述
したように、緊急開腹手術症例 31 例中 3 例に医学的には
腹腔鏡下手術を選択しえた症例があったが、これまで腹
腔鏡機器セットの不足により腹腔鏡手術の選択を断念せ
ざるを得なかったことは経験していない。また、原則的
に腹腔鏡習熟者が当直あるいはオンコールとしたことに
より、術者による手術法の制限は生じなかった。
山本らの検討 4)では、今回の我々の報告よりはるかに
多くの緊急手術 240 件の経験について詳細な解析をして
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
いる。これによると、対象疾患に有意な相違を認めない
にもかかわらず、71% の症例に腹腔鏡下手術を施行しえ
ている。山本らの解析では腹腔鏡セットを 2 セットに増
加しさらに腹腔鏡手術可能医師数が 3 名となってから急
激に緊急腹腔鏡下手術に対応できるようになったとし、
さらに腹腔内大量出血症例に対応するために自己血回収
装置器具のストックの徹底が重要であると述べている。
今回は自己血液回収装置の使用例については検討をして
いないが、当院での使用例はまだまだ少なく、今後の緊
急腹腔鏡下手術への対応として重要なものになると考え
ている。結果には示さなかったが、緊急腹腔鏡下手術例
と定時腹腔鏡下手術例で入院期間に差はなく平均4.6日で
あった。中村らは緊急腹腔鏡下手術の症例でも翌日まで
に退院できた症例が 43.9% あったと報告しており 3)、今
後我々もいっそうの入院期間の短縮を図れる可能性があ
ると考えている。
今回われわれは、過去 2 年間における緊急腹腔鏡下手
術症例に関し検討を行った。腹腔鏡手術を施行するにあ
たっての医師、看護師、コメディカルといった人的要因、
腹腔鏡機器、適切な症例の選択などの条件が整えば通常
診療の一環として緊急腹腔鏡を導入することは十分に可
能であると考えられた。
文 献
1) 森田峰人、渡辺慎一郎:ここまで来た産婦人科腹腔鏡
下手術、産婦治療、2005 ; 91:318−321
2) 伊熊健一郎、山田幸生、細川真理子、奥久人、伊藤善
啓、上田真太郎、田中雅子、子安保喜:婦人科腹腔下
手術の実際、腹部救急疾患に対する腹腔鏡下手術、
産婦治療、2004 ; 89:343−352
3) 中村拓実、木幡豊、井上裕美:ここまできた婦人科日
帰り手術、緊急腹腔鏡下手術、臨産婦、2004 ; 58 :
93−95
4) 山本和重、中西順子、広瀬玲子、伊藤邦彦:救急医療
における内視鏡の重要性についての検討―当科におけ
る緊急腹腔鏡下手術の現状解析から―、日産婦内視鏡
会誌、2002 ; 18:46−49
(H20. 1. 16受付)
平成20年7月(2008)
23 (23)
子宮原発悪性リンパ腫の1例
A Case of Malignant Lymphoma of the Uterus
横浜労災病院 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology,Yokohama Rousai
Hospital
野中 愛子 Aiko NONAKA
門脇 綾 Aya KADOWAKI
梅津 信子 Nobuko UMETSU
杉浦 賢 Ken SUGIURA
中山 昌樹 Masaki NAKAYAMA
要 旨
子宮原発悪性リンパ腫は全子宮悪性腫瘍中の 0.05% 未
満と極めて少ない。今回我々は著明な水腎症と腸管狭搾を
伴った子宮原発悪性リンパ腫を経験したので報告する。患
者は66歳。腰痛、下腹部痛を主訴に来院、11 cm 大に腫大
した子宮と著明な右水腎症を認めた。血液生化学検査では
LDH 283 IU/l、Cre 1.05 mg/dlと軽度上昇を認めたが、子
宮頚部・内膜細胞診は陰性、腫瘍マーカーの上昇はなかっ
た。CT、MRI では腫大した子宮を認め、子宮との境界不
明な軟部組織腫瘤が直腸周囲、腹部大動脈左側に連続し、
肝表面には播種と思われる像を呈していた。注腸造影では
S状結腸から直腸上部まで腫瘍の圧迫による狭搾を認めた。
子宮は更に増大したため、子宮肉腫を疑い手術の方針とし
た。右腎は著明な水腎症を認め術前に右腎瘻を造設。子宮
腫瘤はS状結腸、膀胱、左後腹膜に硬く浸潤しており、子
宮腫瘤核出術と人工肛門造設術を施行。摘出された腫瘤は
L-26(+)、UCHL-1(-)、ビメンチン(-)であり diffuse
large B-cell Lymphoma と診断。骨髄穿刺は異型細胞を認め
ず Ann Arbor 分類Ⅳ期、子宮原発とされ、リツキサン、ピ
ラルビシン、シクロフォスファミド、ビンクリスチンによ
る化療を開始。化療後、残存腫瘤は縮小、右水腎症も改善
し腎瘻を抜去。7コース終了した時点で腫瘍は消失し、経
過は順調である。
診。子宮腫大と水腎症を認め、当科紹介となった。
既往歴:B型肝炎。
入院時検査所見:LDH 283 IU/L、Cre 1.05 mg/dlと軽
度上昇。その他特記すべき異常なし。SCC、CA 125、CA 199、CEA-S は正常。子宮頚部・内膜細胞診はともにclass Ⅰ。
内診所見:子宮腟部平滑、子宮頚部腫大なし。子宮は
亜小児頭大、硬。両付属器は触知せず、分泌物黄色調、
少量。
画像所見:
超音波:子宮は 11.6 × 10.1 cm に腫大。
造影 CT:子宮は頚部を含め腫大。子宮との境界不明
な軟部組織腫瘤が直腸周囲、腹部大動脈左側に連
続。膀胱との境界も不明瞭で膀胱浸潤を疑われた。
両側水腎症を認め、左腎盂への腫瘍浸潤の可能性
も示唆された。
(図1矢印)
MRI:造影 CT と同様の所見であったが、T2 強調画
像で子宮腫瘤は不均一な軽度高信号を呈していた
(図2-1)
。内膜は保たれていた。
(図2-2:矢印)
Key word:悪性リンパ腫、子宮原発、水腎症、腸管狭搾、
化学療法
はじめに
子宮原発悪性リンパ腫は全子宮悪性腫瘍の中で 0.05%
未満と極めて稀な症例である。今回腫瘍により著明な水
腎症と腸管狭搾を認めたが適切な処置により最小限の合
併症で化学療法が著効した子宮原発悪性リンパ腫の症例
を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
症 例
症例:66歳、2経妊 2経産、閉経56歳
主訴:腰痛、下腹痛
現病歴:初診 1 ヵ月前頃より上記主訴出現し、近医受
図1 造影 CT
矢印 腹部大動脈周囲と左腎盂へ連続する腫瘍
24
(24)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
2-1 内部やや不均一な軽度高信号を示す腫瘤 2-2 保たれている内膜 図2 MRI(T2 強調画像)
図3 肉眼的所見
DIP :左腎は描出されず無機能腎の状態、右腎盂は
著明に拡大。
膀胱鏡:腫瘍圧迫により施行不可。
注腸造影: S 状結腸から上部直腸に周囲からの圧迫
による狭搾あり。
臨床経過:検査中にも子宮は急速に増大し、1 ヵ月で
18 × 16 cm となったため、子宮肉腫を疑い開腹術の方針
とした。腫瘍による圧迫で Cre 3.05 mg/dl と悪化した為、
術前に右腎瘻を造設した。
術前診断:子宮肉腫疑い
術中所見:腫大した子宮は S 状結腸、膀胱、左側後腹
膜に硬く浸潤しており、子宮全摘術は困難と判断。術中
迅速病理検査では間質部肉腫または悪性リンパ腫と診断。
子宮体下部後壁の腫瘤を核出、人工肛門を造設し終了。
手術時間2時間30分、出血 3400 ml(MAP 16 U、FFP 8 U
輸血)。洗浄腹腔細胞診 Class Ⅳ、洗浄膀胱細胞診 Class
Ⅳ。
病理所見:(図3、4)
摘出標本は 12 × 8 cm、壊死、出血所見なし。HE 染
色でリンパ球様の N/C 比の高いクロマチン濃染性
の核を有した大型円形腫瘍細胞のびまん性増殖を認
図4 HE 染色
め、免疫染色で L-26(+)
、CD79α(+)
、UCHL-1(-)
、
CD3(-)、Actin(-)、CD34(-)、Vimentin(-)、
CD10(-)であり、Diffuse large B-cell malignant
lymphoma と診断された。
術後経過
診断確定と同時に血液内科へ転科となったが、診断を
待っている間にも残存腫瘍は増大し、化療直前の CT で
は腹膜播種を認めた。可溶性 IL2 レセプター(S-IL2R)
は 13300 U/mlと高値を示し、骨髄穿刺では異型細胞を認
めなかった。以上から Diffuse large B-cell malignant
lymphoma(Ann Arbor 分類 Ⅳ期)
(表1)
、子宮原発と診断
された。非ホジキンリンパ腫の治療としてピラルビシン、
シクロフォスファミド、ビンクリスチンにリツキシマブ
を併用した R-THP-CO 療法を開始した。ステロイドは B
型肝炎の既往があるため劇症肝炎を懸念して使用しなか
った。治療開始後、腫瘍は急速に縮小し、右水腎症も改
善した為、腎瘻を抜去。7コース終了した現在、腫瘍は消
失し経過観察中である。
(図5)
平成20年7月(2008)
25 (25)
表1 Ann Arbor 病期分類
Ⅰ期:1リンパ節領域の侵襲(Ⅰ)、または1リンパ節外臓
器あるいは部位の限局的侵襲(Ⅰ E)
Ⅱ期:横隔膜で境した片側にとどまる 2 箇所以上のリンパ
節領域の侵襲、あるいは一つのリンパ節外臓器また
は部位の限局性病変とその同側リンパ節領域の病変
(Ⅱ E)
Ⅲ期:横隔膜の上下にわたる複数のリンパ節領域への侵襲
(Ⅲ)、あるいはこれに一つのリンパ節外臓器または
部位の限局的侵襲(Ⅲ E)
、脾への侵襲(Ⅲ S)
、こ
の両方(Ⅲ ES)
Ⅳ期:リンパ節病変の有無に関わりなく一つ、あるいは複
数のリンパ節外臓器または部位のびまん性浸潤
図5 化療後の造影 CT
右水腎症の改善がみられる。腹部大動脈周囲の腫瘍消失
考 察
子宮原発の悪性リンパ腫は悪性リンパ腫全体の 0.14%、
女性の節外性リンパ腫の 2 % 1) 、全子宮悪性腫瘍中の
0.05 % 未満 2)と非常に稀な疾患である。なかでも頚部原
発が 80∼90% を占め 2)、体部原発はさらに稀である。好
発年齢は20歳∼80歳代まで幅広い報告があり、中央値は
40 歳代前半、体部でやや発症が遅い傾向にある。初発症
状は不正性器出血(54%)
、腟部腫瘤、体部の場合は腹部
腫瘤感、腰痛、背部痛を訴えることも多く、本症例では
水腎による背部痛が主訴であった。
検査データでは LDH、S-IL2R の上昇を認め、細胞診は
頚部、内膜ともに陰性を示すことが多い。その理由とし
て子宮原発の悪性リンパ腫が上皮と関係なく深部間質へ
向かって腫瘍細胞が浸潤していくことが多く、頚部の上
皮層、内膜層に異常を呈することが少ない為といわれて
いる。本症例では細胞診も陰性、LDH の上昇も軽度であ
り積極的に悪性リンパ腫を疑う所見はなかった。
画像所見では MRI が有用であり、T1 強調画像で低∼
等信号、T2 強調画像で高信号を示し、内部は比較的均一、
内膜・junctional zone は保たれていることが多く 1)、腫瘍
の大きさに比し変性や壊死を示す信号強度変化に乏しい 3)。
またガリウムシンチグラフィーは悪性リンパ腫に集積し、
体癌や頚癌への集積率が 26% 以下と低いため鑑別や全身
検索に有用という報告もある 1)。
病理組織は大部分が本症例と同様、Diffuse large B-cell
malignant lymphoma であり、鑑別には特殊免疫染色が有用
である。
非ホジキンリンパ腫の病期分類としては Ann Arbor 分
類が適応され、子宮原発の悪性リンパ腫の予後は FIGO
分類より Ann Arbor 分類が進行度とよく相関するといわ
れている 4)。稀な疾患であるため予後に関しての報告は
様々であり、Harris らの報告 5)では全病期での5年生存率
は 73 %、stage ⅠE 期では 89 % と比較的良好であるが、
ⅠE 期以上では 20% と不良であった 6) 7)。また日本では
女性生殖器原発の悪性リンパ腫全体の5年生存率は 41%、
そのうち頚部 56%、体部 50%、卵巣 14%という報告や 8)
診断から 1 ∼ 2 年以内の死亡例が 38 %、特に体部原発で
予後不良という報告 7)もある。本症例では肝表面への播
種性病変、傍大動脈リンパ節浸潤を認めており Ann Arbor
分類Ⅳ期とした。子宮原発の根拠としては Fox ら 9) 10) の
① 初診時に子宮および子宮に隣接したリンパ節または臓
器に病変が限局している ② 末梢血や骨髄に異常細胞がな
い ③ 原発部位から離れた部位に病変が出現したとしても
原発の発症時期から数ヵ月以上経過していることが条件
とされている。本症例ではこの条件を満たしており、ま
た初診時に頚部腫大がなかったことから子宮体下部原発
と診断した。(CT、MRI 撮影までの間に急速に増大した
ものと思われる)Ann Arbor 分類Ⅳ期、子宮体部原発から
本症例の予後は悪いことが予測され、厳重なフォローが
必要である。
今回の症例のように急速に進行する子宮腫瘤は子宮肉
腫のほかに悪性リンパ腫も積極的に疑う必要があり、鑑
別には S-IL2R 測定や MRI が有用と思われた。本症例で
は手術により確定診断が得られたが、出血量を考えると
確定診断のための生検程度の手術に抑え、化学療法を行
う選択肢もあったと考えられた。
文 献
1) 寺山耕司、山川稔隆、木津修、前田知穂:子宮原発悪
性リンパ腫の 1 例、臨床放射線、東京:金原出版、
1999 ; 44(6):745−748
2) 黒瀬圭輔、山口晶子、石川温子、土居大祐、米山剛一、
小西英喜、鴨井青龍、竹下俊行:化学療法が著効した
子宮体部原発悪性リンパ腫の 1 例、日婦腫瘍会誌、
2005 ; 23:191−195
3) 井本勝治、大西雅之、坂本力、山崎道夫、邵啓全、金
崎周造、小山敬己、古川顕、村田喜代史、森田陸司:
子宮原発の悪性リンパ腫の1例、臨 MRI、1999 ; 10:
58−62
4) 秋山稔、木村俊雄、小林晶、横井崇子、須藤慎介、廣
瀬雅哉、高倉賢二、野田洋一:子宮原発と考えられた
悪性リンパ腫の2症例、産婦の進歩、2000 ; 52(3):
26
(26)
528−530
5) Harris N, Scally R.:Malignant lymphoma and granulocytic
sarcoma of the uterus and vagina. Cancer 20. 1984:2530−
2545
6) 中村洋子、長沼孝雄、大高昌子、松本一仁、池崎福治、
福士義将、真鍋麻美、黒滝日出一:子宮頚部擦過細胞
診にて発見された子宮体部悪性リンパ腫の1例、日臨
細胞会誌、2002 ; 41(5):345−348
7) 川越秀洋、天ヶ瀬紀昭、畑瀬哲郎、草場信秀:子宮体
部原発悪性リンパ腫の1例、産と婦、2000 ; 67(2):
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
267−272
8) 加藤有紀、斎藤圭介、石山朋美、木田博勝、柳澤隆、
飛鳥井邦雄:子宮体部原発悪性リンパ腫の1例、日産
婦関東連会報、2001 ; 38:339−343
9) 川崎憲欣、西村弘、綾目秀夫、野田薫、瀬戸口美保
子:女性内性器に原発した悪性リンパ腫の2症例、産
と婦、2003 ; 70(4):545−551
10) Fox H, More JRS:Primary malignant lymphoma of the
uterus. J Clin Pathol 18. 1965 ; 723−728
(H20. 1. 16受付)
平成20年7月(2008)
27 (27)
分娩用吸引器にて修復し手術を回避し得た新生児陥没骨折の1例
A case of neonatal depressed skull fracture treated by an obstetrical vacuum extractor
神奈川県立こども医療センター 産婦人科
Kanagawa Children's Medical Center Division of Obstetrics and
Gynecology
長瀬 寛美 Hiromi NAGASE
小澤 克典 Katsusuke OZAWA
永田 智子 Tomoko NAGATA
丸山 康世 Yasuyo MARUYAMA
石川 浩史 Hiroshi ISHIKAWA
山中美智子 Michiko YAMANAKA
神奈川県立こども医療センター 新生児科
Kanagawa Children's Medical Center Division of Neonatology
猪谷 泰史 Yasufumi ITANI
要 旨
新生児頭蓋骨陥没骨折は 0.01∼0.025% に起こるといわ
れている。分娩時のみならず子宮内圧迫によって自然に起
こる可能性もあるとされているが、分娩用吸引器で整復で
きることはあまり知られていない。今回我々は、新生児陥
没骨折を分娩用吸引器で整復し得たので報告する。症例は、
38週1日にクリステレル胎児圧出法にて出生した 3990 g の
女児で、頭蓋骨陥没と無呼吸発作のために出生8時間後に
当院へ新生児搬送となった。神経学的異常は認めず、頭部
レントゲンで左頭頂骨に陥没骨折を認めた。観血的外科手
術の前に非観血的整復を試みる方針となり、吸引用分娩カ
ップを用いた整復を試みた。通常の吸引分娩と同様の圧・
時間で吸引することとし、まず、30 cmHg で1分間、さら
に、45 cmHg で1分間吸引し、レントゲンにて骨折の整復
と、CT にて頭蓋内出血のないことを確認した。児は、脳
波・MRI でも異常なく、日齢6に退院した。新生児頭蓋陥
没骨折の治療については、観血的整復を推奨する報告があ
る一方で必ずしも整復が必要ないとの意見もある。分娩用
吸引器による整復は外科手術より児への侵襲は小さく、合
併症の報告もないため、観血的整復の前に施行する価値の
ある方法と考えられる。
Key word:新生児、頭蓋骨陥没骨折、分娩用吸引器
緒 言
新生児頭蓋骨陥没骨折は約 0.01 ∼ 0.025 % と稀な疾患
である 1)。原因は、妊娠中の母体の外傷、鉗子分娩、分
娩介助者の指による圧迫、出生後の外傷のほか、子宮内
圧迫でも起こるといわれている。治療は、外科的手術の
ほかに、用手的整復、分娩用吸引カップや搾乳器を用い
た吸引による整復がある、また、保存的経過観察で自然
治癒するとの報告もある。今回我々は、新生児の陥没骨
折を吸引分娩器で整復するという貴重な経験をしたので
報告する。
症 例
症例は日齢 0 の女児。他院で出生後、左後頭部の陥没
と頻発する無呼吸発作を主訴に当院へ新生児搬送となっ
た。
<現病歴>
母体は28歳、1回経妊・1回経産。妊娠経過中異常なく、
外傷の既往もなかった。妊娠 38 週 1 日で陣痛発来して入
院し、その後、順調に分娩進行した。1回のクリステレル
胎児圧出法にて前方後頭位で分娩となった。分娩時間は2
時間25分であった。
児は 3990 g の女児で Apgar score は1分後8点、5分後10
点であった。出生直後より、左後側頭部に 4 cm 大の頭蓋
骨陥没を認めた。出生後約 2 時間より無呼吸発作を認め
出生後8時間に当院に新生児搬送となった。
<入院時現症・検査所見>
バイタルサインは安定しており神経学的異常所見も認
めなかった。左頭頂部に 4 cm 大の陥没を認めた。陥没部
の皮膚は正常であり皮下出血、浮腫は認めなかった。採
血所見でも異常所見は認めなかった。頭部レントゲンで
左頭頂骨に 4 cm×4 cm×1 cm の陥没骨折を認めた。
(図
1)また、頭部の CT 画像では、左頭頂骨に骨折線を伴う
陥没骨折を認めたが、頭蓋内に出血所見は認めなかった。
(図2)
<入院後経過>
頭頂骨の陥没骨折に対して、観血的整復術の前に非観
血的整復術を行うことが検討され、新生児科より産科へ
分娩用吸引器による整復が依頼された。出生後時間が経
過することで分娩用吸引器による整復が困難になるので
はないかとの推測から同日、早急に行うこととした。吸
引の時間と圧を協議した結果、通常の分娩時と同様の時
28
(28)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
図2 入院時頭部 CT
左頭頂骨に 4 cm ×4 cm ×1 cm の陥没骨折を認める。
図1 入院時頭部レントゲン画像(正面)
左頭頂骨に 4 cm ×4 cm ×1 cm の陥没骨折を認める。
間・圧での吸引を行う方針となり吸引圧は通常の 1 / 2
の 30 cmHg から始め最大 60 cmHg とし、また、吸引時間
は 2 分間を限度とすることとした。泉門を避けて吸引カ
ップを装着し、まず、30 cmHg で1分間吸引した。吸引を
始めると児は激しく啼泣した。触診にて陥没に変化ない
ため、さらに 45 cmHg の圧で 1 分間吸引した。その後、
触診にて骨折を確認するも皮下組織の腫脹が著明で陥没
については診断不可能であった。その後、頭部レントゲ
ン、CT を施行し、陥没骨折の整復と頭蓋内出血のないこ
とを確認して終了した。
(図3、4)
翌日の MRI にて再度脳挫傷や頭蓋内出血のないことを
確認した。吸引直後より認められた頭血腫は徐々に縮小
し、脳波上も異常所見は認めなかった。無呼吸発作も翌
日以降認められず日齢6で退院となった。
考 察
新生児陥没骨折は、1 / 4000 ∼ 6000 出生の頻度で起こ
ると報告されている 1)。その原因は、母体の妊娠中の外
傷や鉗子遂娩術、分娩介助者の指による圧迫や子宮内で
の圧迫によるといわれている。子宮内圧迫は第 5 腰椎や
仙骨岬、恥骨結合、骨折などで変形した骨盤、子宮筋腫、
胎児自身の足や双胎の他方の足などが原因となることも
あると考えられている 2)。今回は、妊娠中、分娩時の経
過について詳細に検討したが、妊娠中に母体への外傷の
既往なく、分娩も鉗子の使用はなく、分娩時間も 2 時間
25 分と順調に進行していることや、出生直後から陥没が
認められたことから、子宮内での圧迫が疑われた。
新生児陥没骨折の治療に関しては統一された見解はな
く、外科的整復術を推奨している報告もある一方、自然
治癒するとの報告もある。また、観血的整復のほかに、
搾乳器や分娩用吸引器を使用した非観血的整復や陥没の
辺縁を圧迫するという用手的整復も報告されている 3)。
それぞれの適応については、様々な意見がある。Loeser
らは外科的手術適応を
1)骨折片が脳実質内にある、
2)硬膜外または硬膜下出血を疑う神経学的症状があ
る、
3)頭外内圧上昇所見、
4)帽状腱膜下の髄液の漏出所見、
5)手術以外の方法での整復不可能な場合としてい
る 4) 。
その他に、CT にて頭蓋内病変が存在しない場合には、
1 ∼ 2 日経過観察し、自然挙上を待ち、その後用手的整
復、吸引器による整復を行い、最後に外科的適応を考え
るべきであるという意見や 5)、陥没が深さ 5 mm 以内で
あれば自然経過観察とし、深さ 5 mm 以上、直径 2 cm
以上ならば吸引による整復を行うという意見もある 6)。
一方、子宮内圧迫による頭蓋骨陥没は生後 2 ∼ 3 ヵ月で
その 90 % が自然に正常へと修復され残りの 10 % も早
期から適切な姿勢をとることでほぼ 100% 正常化される
という報告や 7)、陥没部の自然軽快傾向が出現するまで
には最低でも 4 ∼ 5 ヵ月を要するので症例の経過を見極
めるのには 6 ヵ月∼ 1 年の経過観察期間が必要と報告も
ある 2)。
今回、我々の施設では、確立した治療方針がないため、
外科的手術か分娩用吸引器による整復が検討された。非
平成20年7月(2008)
29 (29)
図4 整復後頭部 CT
頭頂骨陥没骨折の整復と頭蓋内出血のないことを確認。
結 語
図3 整復後頭部レントゲン写真
整復された頭頂骨陥没骨折を確認。
観血的に整復が可能であれば児への負担も最小限にとど
められるのではないかと考え、分娩用吸引器による整復
を試みた。治療時期と整復の成功の関連について検討し
ている報告はなかったが、今回我々は、早急に治療した
方が整復の可能性が高くなるのではないのではないかと
推測して搬送当日に吸引による治療を行った。吸引圧と
時間については、通常の吸引分娩と同様と考え 30 cmHg
で 1 分間さらに 45 cmHg で 1 分間吸引し整復可能であっ
た。分娩用吸引器による整復の圧と時間を明記した文献
は少ないが、0.3∼0.8 kg/cm2(25∼60 cmHg)で 20∼90
秒という報告や 5) 0.2∼0.5 kg/cm2(30∼40 cmHg)で20
秒∼6分と報告、また時間の明記はないが 0.4∼0.6 kg/
cm2(30∼45 cmHg)という報告がある 8) 9)。いずれも圧
に関しては通常の吸引分娩の圧と同様であり、今回の
我々の吸引圧・時間は文献的にも適当であったと考えら
れる。整復するとクリック音がするとの報告もあるが、
今回の経験で、クリック音は確認できず、皮下組織の浮
腫によって触診でも整復したか否かの判断は困難である
ことがわかった。そのため、前もって吸引時間を設定し
ておく必要があると考えられる。
また、通常の吸引分娩においては、頭蓋骨骨折、頭血
腫、帽状腱膜下血腫、頭蓋内出血、新生児黄疸、網膜出
血などの合併症のリスクが考えられる。分娩用吸引器に
よる陥没骨折整復による合併症の報告はないが、通常の
吸引分娩と同様の合併症の危険があると考えられるため、
十分に家族に情報提供が必要である。
新生児陥没骨折の治療に関しては、様々な意見がある。
分娩用吸引器による整復は外科的治療の前に試みる価値
はあると考えられるが、自然整復の可能性もあり治療の
適応について慎重に検討する必要がある。
(本論文の要旨は、第 377 回日本産婦人科学会神奈川
地方部会にて発表した。
)
文 献
1) Brian S. Saunders, CDR, MC, USN, Stephen Lazorits, LT,
MC, USNR, Robert D. McArtor, CDR, MCV, USNR, Paul
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敏則:子宮内圧迫による新生児頭蓋陥没、埼玉小児医
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30
(30)
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Reprod Biol. 1986 ; 22:249−255
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日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
fracture in the newborn. A report of 3 cases. S Afr Med J.
1978 ; 54:830−832
(H20. 1. 17受付)
平成20年7月(2008)
31 (31)
術後、急速に ARDS に至った卵管卵巣膿瘍の1例
A case report of septic shock and ARDS caused by Tubo-ovarian abscess
済生会横浜市東部病院 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, Saiseikai Yokohamashi
Tobu Hospital
増田 健太 Kenta MASUDA
青野 一則 Kazunori AONO
梅津 桃 Momo UMEZU
後藤優美子 Yumiko GOTO
中林 章 Akira NAKABAYASHI
秋葉 靖雄 Yasuo AKIBA
渡邉 豊治 Toyoharu WATANABE
小西 康博 Yasuhiro KONISHI
要 旨
卵管留膿症、卵管卵巣膿瘍(Tubo-ovarian abscess:TOA)
は、付属器感染を経て膿瘍を形成し重篤な経過をたどりう
る疾患である。今回 TOA 術後に、大腸菌を起因菌として
敗血症性ショック・急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory
distress syndrome:以下 ARDS)を発症し重篤な経過をたど
った一例を経験したので報告する。
症例は36歳、0経産で、前日からの腹痛、発熱を主訴に
受診した。腹部全体に圧痛と反跳痛を認め、血液検査上、
WBC 18,740/μl、CRP 18.8 mg/dl であり、造影 CT 検査よ
り卵管留膿症が考えられた。抗生剤を点滴投与したが、投
与開始12時間後より下腹部痛が増強し、嘔吐、下痢が出
現した。さらにその6時間後に血圧 76/40 mmHg と突然
の低下を認め、敗血症性ショックの可能性が考えられたた
め開腹手術を施行した。両側卵管留膿症の破裂及び左卵巣
膿瘍であった。両側卵管切除・左卵巣部分切除を行い、腹
腔内洗浄しドレーンを留置した。しかし術直後より呼吸苦
が出現、低酸素血症・ショック状態となり、胸部レントゲ
ンにて両側肺野の浸潤影を認めた。TOA の破裂による敗
血症性ショックから ARDS が生じたと考え、エンドトキ
シン吸着療法、気管内挿管による呼吸管理などを行った。
状態は徐々に改善し、術後12日目に退院となった。
TOA の急性期にはこのように重症化することもあるた
め、破裂を念頭に置きながら厳重な周術期管理を行う必要
があると考えられた。
治療に難渋する場面が少なくない。
今回我々は TOA の術後、大腸菌を起因菌として敗血症
性ショックから急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory
distress syndrome:以下 ARDS)を発症し、急激に呼吸状
態が増悪したため集中治療管理を必要とした症例を経験
したため報告する。
症 例
緒 言
患者:36歳、0経妊 0経産、東南アジア人
既往歴:特記すべきことなし
家族歴:父に高血圧
月経歴: 28 ∼ 30 日周期、整。最終月経は腹痛出現の 9
日前から6日間
現病歴:来院の前日より腹痛が出現。その後、徐々に
痛みが増強し、発熱も認められたため、救急車で来院し
た。
来院時バイタル:血圧 106 /60 mmHg、脈拍 80 bpm、
体温 37.5 度
身体所見:腹部は平坦。全体に圧痛と反跳痛あり。筋
性防御なし。
内診所見:子宮は正常大、両付属器に圧痛あり、子宮
頚部の移動痛あり。帯下は黄色中等量、悪臭なし。
臨床検査所見:(末梢血)WBC 18,740/μl、Hb 10.3 g/dl、
Plt 17.2×104 /μl、CRP 18.8 mg/dl、AST 30 U/l、ALT
28 U/l、LDH 217 U/l、BUN 8.3 mg/dl、Cre 0.8 mg/dl、
Na 140 mEq/l、K 3.9 mEq/l、Cl 110 mEq/l
経腟超音波検査:子宮 70×40 mm、右卵巣 36×22 mm、
左卵巣 6×31 mm(多房性腫瘤)
造影 CT 検査:子宮の両側に管腔構造、肥厚した壁に
造影効果あり。腹水なし。
(図1)
TOA(Tubo-ovarian abscess)は、付属器感染を経て膿瘍
を形成し重篤な経過をたどりうる疾患である。保存的治
療が無効であることが多く、開腹手術による付属器摘出
が行われることが多い。一方で、生殖可能年齢での発症
も認められ妊孕性温存の考慮が必要とされる場合があり、
入院後経過
TOA を伴う骨盤腹膜炎による発熱、腹痛であると診断
した。嫌気性菌感染の可能性を考慮し、セフメタゾール
ナトリウム(CMZ)投与を開始した。抗生剤を 2 回投与
Key word:卵管留膿症、卵管卵巣膿瘍、ARDS、敗血症性
ショック、集中治療
32
(32)
した後、すなわち入院 12 時間後より、下腹部痛の増強、
嘔吐・下痢が認められた。血圧 116/70 mmHg、脈拍 82
bpm、体温 40.7 度であり、急激な体温の上昇を認めた。
血液培養検査を行い、補液にて経過観察とした。入院 18
時間後に血圧 76/40 mmHg、脈拍 96 bpm、体温 36.5度と
突然の血圧低下を認めた。十分な補液を行ったが血圧の
上昇が見られないため、敗血症性ショックと診断し、病
巣の早期除去を目的に開腹手術を施行した。
腹腔内には中等量の膿性腹水を認めた。両側卵管は示
指∼母指頭大に腫大しており、子宮及び卵巣に癒着して
いた。また左卵巣の一部には膿瘍を認めた。両側卵管留
膿症の破裂、左卵巣膿瘍と診断した。子宮全摘及び両側
付属器切除を考慮したが、本人家族ともに子宮・卵巣の
温存を強く希望されていたため、両側卵管切除術、左卵
巣部分切除術を施行した。生食で十分に洗浄し、ドレー
ンをダグラス窩に留置し手術終了とした。手術時間は 1
時間50分、出血量は 296 g、術中バイタルに異常を認めな
かった。病理学的検査では、卵管の粘膜における糜爛・
潰瘍形成、好中球浸潤及び膿瘍形成を伴う急性化膿性卵
管炎・漿膜炎の所見を認め、臨床所見と矛盾しない所見
であった(図2)
。
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
術直後より呼吸苦、喘鳴が出現し、血圧 93/48 mmHg、
脈拍 115 bpm、SpO2 60 %、と低酸素血症、低血圧状態と
なった。酸素マスク 10L 投与下で、血液ガス所見 pH
7.299、pO2 58.4 mmHg、pCO2 35.1 mmHg、HCO3 16.8
mEq/l であり、Ⅰ型呼吸不全、代謝性アシドーシスを認
めた。胸部レントゲンでは両側肺野に浸潤影を認めた
(図3)
。肺水腫による呼吸不全と考え、酸素投与、利尿剤
投与、非侵襲的陽圧換気酸素マスク(BiPAP)による治
療を病棟にて開始したが改善を認めなかったため、気管
内挿管を行い集中治療室(ICU)管理とした。術後のバ
イタルサイン、血液検査所見、血液ガス所見(表1)では、
敗血症性ショック、急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory
distress syndrome:以下 ARDS)の診断基準(表2)を満た
していた。
ICU における治療と経過を図4に示す。ICU の治療は全
て ICU 専属医の指導のもとに行った。敗血症に対し、抗
生剤をセフメタゾールナトリウムからより広域スペクト
ラムなカルベニン(panipenem・betamipron:PAPM/BP)
2 g/日 に変更し5日間投与し、血液透析によるエンドト
キシン吸着療法(PMX)を1日間、γグロブリン 2 V/日
を 3 日間投与した。ショックに対しては、カテコラミン
(ドーパミン、ドブタミン、ノルアドレナリン)の投与を
2日間行った。血小板減少も認めたため、DIC の治療に準
じて新鮮凍結血漿(FFP)
(6単位/日)を3日間、メシル
酸ナファモスタット(750 mg /日)を 2 日間、アンチト
ロンビンⅢ(150単位/日)を3日間投与した。 ARDS に
対しては、レスピレーター管理とし、ステロイド(メチ
ルプレドニゾロン)パルス療法(1000 mg/日)を2日間
行った。術前の血液培養検査及び、術中の膿性腹水の培
養検査より、ともに Escherichia coli が認められた。上記
治療を開始後、白血球・CRP は徐々に低下し、肺の酸素
化能を表す PFratio も徐々に回復した。術後2日目に、カ
テコラミンを中止し、3 日目に抜管とした。抜管後は、
徐々に全身状態が回復し、術後 5 日目に一般病棟へ転棟
となり、術後12日目に退院となった。
図1 骨盤造影 CT 所見
付属器に管腔構造あり(矢印)
。肥厚した壁に造影効果を
認めた。腹水なし。
図2 摘出検体
両側卵管は暗赤色に腫大し、内腔に膿をいれている。
図3 胸部単純レントゲン
平成20年7月(2008)
33 (33)
表1 術後検査所見
表2 敗血症性ショックの診断基準
バイタルサイン
(塩酸ドパミン 5μg/kg/min 投与下、気管内挿管前)
・ BP 93/53 mmHg
・ HR 113 bpm
・ BT 37.2 ℃
・ RR 36/min
(American College of Chest Physicians/Society of Critical
Care Medicine Consensus Conference Committee and Bernard
et al. より改編)
敗血症性ショック
・感染源がある
・全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory
response syndrome ; SIRS)の定義をみたす ・適切な補液でも持続する血圧低下
血液検査
・ WBC 23380/μl
・ Hb 10.3 g /dl
・ Plt 17.2× 10000 /μl
・ Alb 2.0 g /dl
・ T-Bil 0.9 mg /dl
・ AST 30 U/l
・ ALT 28 U /l
・ LDH 217 U /l
・ BUN 8.3 mg /dl
・ Cre 0.80
・ Na 140 mEq /l
・ K 3.9 mEq /l
・ Cl 110 mEq /l
・ Glu 145 mg /dl
動脈血液ガス分析
(呼吸器設定 FiO2 0.7)
・pH 7.387
・pCO2 42.0 mmHg
・pO2 70.4 mmHg
・ HCO3 24.7 mmol /l
・ BE -0.3
・ PaO2/FaO2 100
SIRS(Systemic Inflammatory Response Syndrome)
・体 温 > 38℃ あるいは < 36℃
・脈 拍 > 90 bmp
・呼吸数 > 20回/分あるいは PaCO2 < 32 mmHg
・WBC > 12000/mm3 あるいは < 4000/mm3
あるいは幼若球数 > 10%
以上4項目のうち2項目以上を満たす。
表3 ARDS の診断基準
(The American-European Consensus Conference on ARDS.
より改編)
急性呼吸窮迫症候群 (acute respiratory distress syndrome : ARDS)
・急性発症
・動脈血酸素分圧(PaO2)/吸入酸素濃度(FaO2)
(P/F ratio)<200 mmHg
・両側肺野の浸潤影
・肺動脈楔入圧 18 mmHg 以下または臨床的に左房内
圧上昇所見なし スワンガンツカテーテル挿入時所見
・ PAWP 14 mmHg
図4 ICU 経過
34
(34)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
考 察
TOAは骨盤腹膜炎の中でも重症化しやすく、保存的治
療だけでは治療困難な場合が少なくない。一般的には、
まず抗生剤の治療を開始し、48時間または72時間後に再
度評価を行い、抗生剤が無効である場合には手術適応と
されている 1)。また、破裂が疑われる場合や敗血症の症
状を呈している場合は、速やかに手術を行うべきとされ
ている 2)。TOA による死亡例の 88% が、破裂と思われる
時間から90時間以内に死亡しているという報告もあるた
め 3)、適切な時期に外科的治療を行うことが重要である。
また今回のように、TOA の治療中に敗血症性ショックを
合併した症例、敗血症性ショックと ARDS を合併した症
例も稀ではあるが報告されている 4) 5)。本症例においては、
入院時 CT 検査には腹水貯留を認めなかったが、術中に
膿性腹水を認めたことから、入院後の臨床症状悪化の時
点で(下腹部痛の増強、消化器症状の出現、急激な体温
上昇)膿瘍内容が腹腔内に漏出し、骨盤腹膜炎が誘起さ
れた可能性が高いと思われる。今回、臨床症状の悪化よ
り6時間後に血圧低下し10時間後に手術開始となったが、
術後の重篤な経過を考慮すると、敗血症性ショックに至
る前に手術を行うべきであったと思われる。
TOA は若い女性の発症も多く妊孕性温存を考慮する場
面も多いので、術式について苦慮することが少なくない。
子宮摘出を行うことで膿瘍再発のリスクが低下するとい
う報告があるが 3)、術式の選択が生命予後に影響するか
についての報告は明らかではなかった。その一方で、炎
症性癒着がある場合では大量出血を伴うことがあり、膿
瘍の切開排膿にとどめるべきとの意見もある 6)。本症例
では、妊孕性を温存するために、術前に再発・再手術の
可能性について十分説明したうえで子宮摘出を行わなか
った。術後 8 ヵ月が経過したが、現在のところ膿瘍の再
発は認めていない。
TOA の起因菌としては、好気性グラム陰性桿菌である
E.coli からグラム陽性球菌である Streptococcus、嫌気性菌
である Bacteroides まで幅広く検出されるとの報告があり、
また複合感染も多い 7)。今回は、血液培養検査、腹水培
養検査ともに E.coli が検出されており、TOA 破裂による
菌血症から敗血症に至っていたと考えられる。敗血症の
病態は、感染に対する防御機構の過程で産生される大量
のサイトカインやケミカルメディエーターが、全身の炎
症反応を引き起こしている状態である。本症例では E.coli
に対する感受性のある抗菌薬を入院時から投与していた
にもかかわらず重症化が認められた。TOA 破裂により腹
膜炎に至るような症例では、たとえ有効な抗生剤を投与
していたとしてもサイトカインやケミカルメディエータ
ーが急速に産生されることにより、敗血症の状態となり
得ることの考慮が必要であり、保存的治療中においても
慎重な経過観察が望まれる。
重症化した敗血症では、多臓器不全の一つとして急性
呼吸不全:ALI(acute lung injury)/ARDS を呈する事が
ある。病態としては、サイトカインなどのケミカルメデ
ィエーターが肺胞隔壁の透過性を亢進させ、非心源性肺
水腫を引き起こすとされている。ARDS に対する治療は
まだ確立されたものはなく施設ごとに様々な治療をされ
ているのが現状であり、ARDS に至った場合は死亡率は
30から 70% と報告されている 8) 9)。本症例では、ARDS
発症後早期に診断ができ、集中治療室にて ICU 専属医師
とともに呼吸器管理やエンドトキシン吸着やステロイド
投与などの治療を行うことができた結果、死亡率の高い
疾患から救命する事ができたと考えられる。
結 語
今回我々は、TOA 治療中に敗血症性ショックを疑い早
期に手術を行ったにもかかわらず、術後に ARDS を発症
し重篤な経過をたどった症例を経験した。本症例では、
敗血症症状である血圧低下が起こる 6 時間前に疼痛の増
悪・消化器症状の出現があり、この時点で膿瘍内容が腹
腔内に漏出し腹膜炎に至った可能性が高いと考えられる。
TOA の治療中に敗血症を少しでも疑う症状が出現した際
には重症化する可能性があるため、予後についての十分
なインフォームドコンセントを行ったうえで厳重な周術
期管理を行う必要があると思われた。また疼痛の増悪・
消化器症状の出現が見られた場合には、破裂を念頭にお
いて速やかに手術を行うべきと考えられた。産婦人科領
域では敗血症性ショック・ ARDS を経験することは稀で
あるが、発症すれば致死率が高く迅速な対応が必要とな
る。治療に当たってはその病態を理解して術後も慎重に
経過観察を行い、必要に応じて血液ガス検査・レントゲ
ン検査などを行うべきであると思われる。その結果集中
管理が必要な状態であれば、重症感染症治療に慣れてい
る内科医・救急医・ICU 医との連携を積極的に行うべき
であると考えられた。
文 献
1) McCormack WM:Pelvic inflammatoru disease. N Engl J
Med 1994 ; 330:115−119
2) 広田泰、大須賀穣、甲賀かをり、福山千代子、中澤学、
藤原敏博、百枝幹雄、矢野哲、武谷雄二:子宮内膜症
性卵巣嚢胞を合併した付属器膿瘍の症例検討、日産婦
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3) John A. Rock, Howard W. Jones, Ⅲ.:Te Linde's Operative
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親、大井豪一、茂庭将彦、小林浩、金山尚裕:敗血症
性ショックにより診断された卵管留膿腫の1例、産婦
の実際、2006 ; 55:729−733
5) 輿石太郎、小野大輔、名倉麻子、秦奈峰子、幡亮人、
五十嵐優子、長田久夫、古堅善亮、三橋直樹: septic
shock より多臓器不全に至った卵管留膿腫の 1 例、日
産婦関東連会誌、2007 ; 44:363−369
6) 野島美知夫、木下勝之:子宮付属器炎、産婦の実際、
2003 ; 52:55−60
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平成20年7月(2008)
巣膿瘍(TOA:tubo-ovarian abscess)に対する経腟穿
刺排膿術の有効性の検討、産婦治療、2006 ; 93 :
482−490
8) 高江洲秀樹、篠崎正博:ショックに伴う呼吸不全とそ
35 (35)
の対策、救急医、2005 ; 29:61−64
9) 橋本悟、志馬伸朗:ALI/ARDS 診療のためのガイド
ライン、呼吸と循環、2007 ; 55:1337−1342
(H20. 1. 18受付)
36
(36)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
当院における腹腔鏡下卵巣内膜症性嚢胞摘出術症例の検討
Retrospective study on laparoscopic cystectomy for endometrial cyst in our institute
横浜市立大学附属市民総合医療センター 婦人科
Department of Gynecology, Yokohama City University Medical
Center, Yokohama
高島 邦僚 Kunitomo TAKASHIMA
石川 雅彦 Masahiko ISHIKAWA
片山 佳代 Kayo KATAYAMA
吉田 浩 Hiroshi YOSHIDA
村瀬真理子 Mariko MURASE
横浜市立大学医学部 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, Yokohama City
University school of Medicine, Yokohama
榊原 秀也 Hideya SAKAKIBARA
平原 史樹 Fumiki HIRAHARA
要 旨
対象及び方法
当院において施行した卵巣の内膜症性嚢胞に対して施行
した腹腔鏡下内膜症性嚢胞摘出術39症例48嚢胞を対象と
して術後再発率、不妊症合併症例における治療成績につい
て後方視的に検討した。術後再発率は 14.5 % であった。
不妊症合併症例における術後1年以内の体外受精以外での
妊娠率は 35.2%(17例中6例)
、2年以内で 41.2% (17例中
7例)であった。妊娠例は術中の卵管癒着の軽症側の癒着
スコアが8点以上の症例には認められなかった。また術後
IVF-ET を実施した症例につき排卵誘発剤に対する反応性
を検討したところ周期あたりの採卵数は平均2.8個であり、
周期あたりの妊娠率も 11% と卵管因子適応による IVF-ET
実施群に比べ低率であった。卵管癒着の重症症例において
は ART に移行する可能性を考慮し、術式を慎重に選択す
る必要があると考えられた。
平成 12 年 1 月から平成 16 年 3 月までに当科において腹
腔鏡下卵巣内膜症性嚢胞摘出術を施行した内膜症性嚢胞
51症例のなかで術後経過を観察し得た39症例、48嚢胞を
対象とし、術後再発率、不妊合併症例における排卵誘発
における卵巣機能、妊娠率などについて後方視的に解析
検討した。統計処理は Mann-Whitney の U 検定または χ2
Key word:卵巣内膜症性嚢胞、腹腔鏡下嚢胞摘出術、癒着
スコア、卵巣機能低下
緒 言
卵巣の内膜症性嚢胞は日常の診療上でもよく遭遇する
疾患であり、当科においては外科的治療法としては腹腔
鏡による卵巣内膜症性嚢胞摘出術が主に行われている。
しかし嚢胞を有する症例においては比較的年齢層が若く、
将来挙児を希望される症例や不妊症症例も多く含まれて
おり、術後に卵巣の機能が低下して問題となることも少
なくない。当センター開設以来、当科において施行され
た内膜症性嚢胞に対する腹腔鏡下手術卵巣内膜症性嚢胞
摘出術症例のうち予後追跡可能であった症例について報
告する。
検定を行った。対象症例の患者背景を(表1)に示す。
結 果
術後 2 年以上フォローアップされていた症例の中で
MRI や経腟超音波断層法にて手術療法を考慮すべき 4 cm
以上の再発嚢胞が確認された症例(嚢胞)は 7 症例(嚢
胞)であった。再発率は 14.5% であった。再発嚢胞はい
ずれも術後 2 年以内に再発が確認されていた(図 1)。ま
た術後 2 年以内に再発を認めた症例と認められなかった
症例について年齢、手術時嚢胞径、術前 CA 125、ASRM
スコア、薬物療法併用の有無、術後 ASRM スコア、術後
妊娠の有無、月経痛再発の有無について比較検討したと
ころ、ASRM スコア、薬物療法併用の有無、術後 ASRM
スコア、術後妊娠の有無、月経痛再発の有無において差
を認めた(表 2)。腹腔鏡下内膜症性嚢胞摘出術施行症例
表1 患者背景
平成20年7月(2008)
37 (37)
のなかで不妊合併症例は 17 例認められた。術後 1 年以内
の体外受精以外での妊娠率は 35.2 %(17 例中 6 例)、2 年
以内で 41.2 %(17 例中 7 例)であった(図 2)。またこれ
ら妊娠成立群と妊娠不成立群での癒着スコアを比較した
ところ卵管における癒着スコアにおいて明らかな差を認
めた(p < 0.05)(図 3)。また両側卵管で癒着が軽度で
ある側の癒着スコアを比較したところ少なくとも一方の
卵管の癒着スコアが 8 点以上である場合に妊娠例は認め
られず、4 点の場合も 1 例に認めるのみであった(図 4)。
また当センターにおいて内膜症性嚢胞摘出術後に ART 以
外の不妊治療で妊娠せず、IVF-ET を実施した9症例17周
期につき排卵誘発剤に対する反応性を検討したところ周
期あたりの採卵数は平均2.8個であり、周期あたりの妊娠
率も 11% と卵管因子適応による IVF-ET 実施群に比べ低
率であった(図5、6)
。
図2 術後の累積妊娠率
考 察
卵巣の内膜症性嚢胞に対する保存的手術療法としては
嚢胞摘出、内腔切開凝固、アルコール固定などの術式が
存在している。内膜症性嚢胞を認め、手術対象となる患
者の年齢層は比較的若年者が多く手術に対しては嚢胞の
摘出、症状の緩和および卵巣機能の温存を要求されるこ
とが多くなる。内膜症性嚢胞の術後再発率に関しては
Wheeler ら 1)は術後36ヵ月で 13.5%、Yoshida ら 2)は術後
平均27.6ヵ月の経過観察期間で 13% 、中島ら 3)は術後36
ヵ月で16%としている。今回の検討において再発症例に
Gn-RHa や低容量ピルなどの薬物療法を併用していた症例
図3 内膜症スコアの比較
図4 軽症側卵管癒着スコアの比較
図1 観察期間と再発率
表2 再発群と非再発群の比較
図5 体外受精症例における比較(1)
図6 体外受精症例における比較(2)
38
(38)
が多く認められた。薬物療法併用症例では全13症例の中
で Re-AFS stageⅣ の症例が12例、stageⅢ の症例が1例
と stageⅣ の症例の比率が高く、また術中の骨盤内所見に
て腹膜病変や附属器領域の癒着スコアが高い又は術後ス
コアが高かった症例に薬物療法を併用している症例の比
率が多く認められていたことによるものと考えられた。
2004 年に発行された子宮内膜症取扱い規約では術後の内
膜症再発は術後1年の時点で累積再発率は 40% にのぼる
とされており内膜症再発に関する因子としては Re-AFSscore、腹膜 Re-AFS-score、年齢が挙げられ腹膜深部にお
ける病変が(手術においても除去困難)再発に関与して
いるとしている。また今回の検討では術後妊娠例はいず
れも再発を認めてはおらず妊娠していることが再発に何
らかの影響を及ぼしている可能性は考えられたが長期的
な予後については更なる検討が必要と考えられた。
内膜症性嚢胞を認めるような重症子宮内膜症症例(ReAFS StageⅢ、Ⅳ)においては附属器領域に強固な癒着を
認めることが多く、手術による解剖学的異常の是正が妊
孕能の改善に結びつくことは容易に推測できる。
しかし内膜症性嚢胞に対する腹腔鏡下手術の術式とし
ては嚢胞吸引、エタノール固定、内腔切開焼灼、嚢胞摘
出などの様々の術式が存在し妊娠予後についても議論が
分かれているのが現状であり、特に嚢胞摘出術と切開焼
灼術での妊娠予後についても相反する報告が認められて
いる。Hemmings ら 4)は嚢胞摘出と切開焼灼では術後36ヵ
月での妊娠には差を認めないものの切開焼灼の方が早期
に妊娠していると報告し Beretta ら 5)は cystectomy の方が
術後の妊娠率は嚢胞切開焼灼に比べ有意に高いと報告し
ている一方で、Donnetz ら 6)は嚢腫摘出による正常卵胞組
織が失われるため切開、焼灼を推奨し術後 1 年以内の妊
娠率が 50% であったと報告している。今回のデータにお
いては嚢胞摘出術後の排卵誘発剤に対する反応性は良好
とはいえないことから、挙児希望症例に対する術式の選
択においては慎重な検討が必要であると考えられた。
重症の子宮内膜症症例において一般不妊治療における
妊娠予後を規定する因子としては卵管周囲や卵管采での
癒着が重要な因子と示唆されているが、当科でのデータ
においても卵管における癒着スコアの高い症例は明らか
に妊孕能が悪化していた。
当然このような症例において不妊治療を進めるために
は子宮内膜症取扱い規約にも示されているとうり ART が
必要となる可能性が高い。
ただ内膜症病変が ART にどのような影響を与えている
かということについては現段階では未だ不明であるが最
近の Meta-analysis では他の不妊因子に比較すると採卵数、
受精率、着床率、妊娠率とも低率でありおけるとも報
告されており 8)、ART を選択する場合でも実際のとこ
ろ内膜症病変を充分に焼灼することが必要と考えられ
ている 10)。ただ内膜症性嚢胞については摘出することに
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
より正常卵巣組織の喪失がおこり 9) 12) 、hyperovarian
stimulation においての発育卵胞数の低下、採卵数の低下に
よる妊娠率の低下 11)も考慮する必要があると考えられた。
結 論
卵巣内膜症性嚢腫症例においては術後の卵巣機能の低
下や将来不妊治療において ART に移行することを考慮し
術式を慎重に選択する必要があると考えられた。
文 献
1) Wheeler JM : Recurrent endometriosis, incidence,
management and prognosis. Am j Obstet Gynecol. 1983 ;
146:247−253
2) Yoshida S:Laparoscopic surgery for the management of
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3) 中島達也:本院における卵巣子宮内膜症嚢胞の術後再
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4) Hemmings R:Results of laparoscopic treatments of ovarian
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coagulation. Fertil Steril. 1998 ; 70:527−529
5) Beretta P:Randomized clinical trial of two laparoscopic
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8) Barnhart K:Effect of endometriosis on in vitro fertilization.
Fertil Steril. 2002 ; 77:1148−1155
9) Loo TC:Endometrioma undergoing laparoscopic ovarian
cystectomy : its influence on the outcome of in vitro
fertilization and embryo transfer. J Assist reprod Genet. 2005
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12) Hachisuga T:Hystopathological analysis of laoaroscopically
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loss of fillicles. Hum Reprod. 2002 ; 17:432−435
(H20. 1. 21受付)
平成20年7月(2008)
39 (39)
腹腔鏡手術の合併症:トロッカー穿刺による膀胱損傷の1例
Complications in laparoscopic surgery:A case of bladder injury by trocar insertion.
矢崎病院 婦人科
Department of Gynecology, Yazaki Hospital, Ayase
田中 雄大 Yudai TANAKA
聖マリアンナ医科大学 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, St. Marianna University,
School of Medicine, Kawasaki
五十嵐 豪 Go IGARASHI
鈴木 直 Nao SUZUKI
木口 一成 Kazushige KIGUCHI
石塚 文平 Bunpei ISHIZUKA
要 旨
症 例
婦人科領域の手術において、膀胱損傷は頻度の高い合併
症である。再発子宮内膜症に対して腹腔鏡手術を行った際、
トロッカー挿入時に膀胱を穿孔した症例を経験した。症例
は33歳、開腹1回、腹腔鏡2回の計3回の子宮内膜症性嚢
胞切除術の既往がある。4 cm 大の再発子宮内膜症性嚢胞に
対して腹腔鏡手術を施行した。癒着剥離及び嚢腫切除施行
後、腹腔内を洗浄していたところ、突然尿バッグがガスで
膨張し始めた。尿道カテーテルよりインジゴカルミンを逆
行性に注入していったところ、恥骨上部のトロッカー刺入
部より色素の漏出を認めた。トロッカー挿入部より膀胱が
穿孔を起こし、腹腔内炭酸ガスが尿バッグに流入したもの
と診断した。腹腔内より吸収糸にて膀胱壁を修復した。本
症例では計3回の手術既往より、膀胱がつりあがっている
可能性は十分に予測できた。そのため、前回の創部よりも
頭側にトロッカーを挿入したにも関わらず膀胱を損傷して
しまった。手術終了直前に尿バッグが充満したことで膀胱
損傷を発見でき、腹腔鏡下の修復が可能であったが、さも
なければ損傷に気づかずに手術を終了していた可能性が高
く、瘻孔形成に至った可能性も否定できない。手術既往の
ある患者に対する腹腔鏡手術では、膀胱ドームが頭側に吊
り上っている場合があり、正中部、特に恥骨上部にトロッ
カーを挿入する際には膀胱損傷に十分に注意する必要があ
る。
年齢:33歳 G0 P0
主訴:不妊症・月経痛
既往歴:20歳 子宮内膜症性嚢胞切除(開腹)
22歳 子宮内膜症性嚢胞切除(腹腔鏡)
24歳 子宮内膜症性嚢胞切除(腹腔鏡)
現病歴:挙児希望にて他院を受診し、クロミッド併用
人工授精を 4 回施行したが、妊娠に至らなかった。初診
時より、約 4 cm 大の子宮内膜症性嚢胞の再発を認めてお
り、腹腔鏡手術目的に当院を紹介受診した。過去 3 度の
手術の既往があり、手術により卵巣予備能を更に低下さ
せる可能性も危惧されたが、月経痛及び慢性の骨盤痛も
認めており、本人及び家族と良く相談した上で腹腔鏡下
卵巣嚢腫切除を施行した。
Key word:腹腔鏡、膀胱損傷、膀胱修復
緒 言
婦人科領域の手術において、膀胱損傷は最も頻度が高
い合併症の 1 つである。特に腹腔鏡手術においては、術
中操作だけではなく、トロッカー挿入や熱凝固過程によ
って、膀胱損傷のリスクが更に上がることになる。再発
子宮内膜症に対して腹腔鏡手術を行った際、トロッカー
挿入時に膀胱を穿孔した症例を経験したので報告する。
手術所見
トロッカー挿入部位は臍部のカメラポートも含めて、5
箇所とした。恥骨上のトロッカーは、開腹手術時の正中
創上で、且つ前回腹腔鏡手術時のトロッカー挿入部より
2 cm ほど頭側にとった(図1)
。ダグラス窩は子宮内膜症
性の癒着により半閉鎖の状態であった。卵巣嚢腫切除及
び癒着剥離を行い、腹腔内を洗浄していたところ、突然
尿バッグ内に空気が充満してきた。この時点で手術開始
後約 60 分が経過していた。このため膀胱穿孔が発生し、
腹腔内気腹用の CO2 が膀胱内に流入した可能性を考え
た。インジゴカルミン希釈生理食塩水を逆行性に膀胱内
に注入したところ、恥骨上トロッカー刺入部より腹腔内
にインジゴカルミンの漏出を認めた(図 2)。腹腔内より
2-0 Monocyryl 糸(ジョンソンエンドジョンソン社)にて
同部を Z縫合にて縫合修復した(図3)
。再びインジゴカ
ルミン希釈生理食塩水を膀胱内に約 300 ml 注入し、再漏
出が無いことを確認し手術を終了した。術後 7 日目に尿
道カテーテルを抜去し、8日目に退院となった。
40
(40)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
図1 トロッカー挿入部位と創部
A:今回腹腔鏡手術における恥骨上部トロッカー挿入部位
B:既往腹腔鏡手術における恥骨上部トロッカー挿入部位
C:開腹手術創部
図2 恥骨上トロッカー刺入部より、膀胱内に注入した
インジゴカルミンの流出を認めた。
図3 膀胱損傷部位を 2-0 Monocryl 糸にて Z 縫合し、修復した。
考 察
腹腔鏡手術全体における膀胱損傷の頻度は約 1.6 % 程
度と報告されている 1) 2)。また、Orlando ら 3) は、トロッ
カー挿入時の臓器損傷の頻度は 0.03 ∼ 0.2 % と報告して
いる。Schafer ら 4) によれば、こうした臓器損傷症例のう
ち、約 60% は少なくとも1度以上の開腹手術の既往があ
ったという。
本症例では開腹・腹腔鏡合計3回の手術の既往があり、
膀胱が吊り上っている可能性は十分に予見できた。その
ため、恥骨上部トロッカーは前回・前々回の創部よりも
頭側より挿入した。それにも関わらず膀胱を損傷してし
まった理由としては、1)膀胱の吊り上りが予想以上で
あったこと、2)瘢痕創部上に刺入したため、組織が硬
く挿入時に腹膜を伸展させてしまい、その際に膀胱頂部
が頭側に引き寄せられ損傷に至った可能性があること、
3)挿入時には損傷はなかったが、術中にトロッカーを
何度か再挿入をしているうちに損傷してしまった可能性
があること、などが考えられる。実際、尿バッグが膨張
をし始めたのは手術終了間際であり、損傷が発生した時
点は、トロッカー挿入時ではなく腹腔内操作中である可
能性も十分に考えられた。
Ostrezenski ら 5)は、腹腔鏡手術による膀胱損傷 77 例を
検討しているが、それによれば膀胱損傷を術中に診断し
えた症例は41例(52%)で、術後に瘻孔形成に至った症
例が 4 例あったと報告している。このうち損傷部位を腹
腔鏡下に修復した症例は23例(30%)にとどまっている。
本症例では、最初は 5 mm トロッカー挿入部位の皮膚を
約 2 cm まで切開し、直視下に膀胱内腔の粘膜を縫合しよ
うと試みたが、損傷部位を同定できなかった。そのため、
膀胱表面の粘膜面の縫合は断念し、腹腔内よりトロッカ
ー刺入部の外側 5 mm ほどのところに大きく Z 縫合をか
け、これによって尿の漏出は無くなった。
Godfrey ら 3)は膀胱損傷を回避する手段として、1)開
腹手術または正中部トロッカーを用いた腹腔鏡手術の既
往がある場合には、創部より頭側にトロッカーを挿入す
る、2)恥骨上トロッカー挿入時に確実に膀胱を空虚に
しておく、3)それでも危険が予測される場合には正中
線上を避けて挿入する、などを挙げている。本症例では
1)
、2)は遵守していたにも関わらず膀胱損傷が起こっ
てしまった。Martin ら 6)は、スコープライトで透かすこと
平成20年7月(2008)
41 (41)
によって、腹膜越しに膀胱ドームのラインを確認する方
法を提唱しているが、Hurd ら 7)によればこの方法では
46% の症例でしか膀胱ドームラインを確認できなかった
という。したがって、損傷を確実に避けるためには、膀
胱ドームがもっとも吊り上っている正中部を、数 cm で
も左右に避けてトロッカーを挿入することが必要なのか
もしれない。ただし、この場合は下腹壁動静脈の損傷に
留意する必要がある。
術中の膀胱損傷はトロッカー挿入部からの大量の出血
を契機に発見されるケースが多いとされるが、腹腔鏡下
の膀胱損傷は時として発見が難しく、術中に診断がつか
ないケースも多い。本症例のように、尿バッグの膨張で
見つかる症例はまれであるといわれており 8)、早期発見
できた点では幸運だったのかも知れない。この尿バッグ
膨張が無ければ、損傷に気づかずに手術を終了していた
可能性が高く、瘻孔形成に至った可能性も否定できない。
正中部付近に創部を有する手術既往のある患者の再手術
の際には、予想以上に膀胱が吊り上がっている場合があ
り、腹腔鏡手術におけるトロッカー挿入という minimum
invasion ですら膀胱を損傷し、発見が遅れれば膀胱瘻に発
展する可能性すらあるということを肝に命じ、手術に臨
む必要があると考えられた。
結 語
子宮内膜症再発症例に対する腹腔鏡手術において、恥
骨上部に 5 mm トロッカーを挿入した際に膀胱を損傷し
た症例を経験した。損傷部は腹腔鏡下に縫合・修復が可
能であった。手術既往のある患者に対する腹腔鏡手術で
は、膀胱ドームが頭側に吊り上っている場合があり、正
中部、特に恥骨上部にトロッカーを挿入する際には膀胱
損傷に十分に注意する必要がある。
文 献
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Farhart SA.:Complications of major operative laparoscopy.
A review of 452 cases. J Reprod Med. 1996 ; 41:471−
476
2) Godfrey C, Wahle GR, Schilder JM, Rothenberg JM, Hurd
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two cases. J Laparoendosc Adv Surg Tech A. 1999 ; 9:
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3) Orland R, Palatini P, Lirussi F.:Needle and trocar injuries
in diagnostic laparoscopy under local anesthesia:What is
the true incidence of these complications? Journal of
Laparoendoscopic and advanced surgical techniques. 2003 ;
13:181−184
4) Schäfer M, Lauper M, Krähenbühl L.:Trocar and Veress
needle injuries during laparoscopy. Surg Endosc. 2001 ;
15:275−280
5) Ostrzenski A, Radolinski B, Ostrzenska KM.:A review of
laparoscopic ureteral injury in pelvic surgery. Obstet Gynecol
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6) Martin D:Trocar injuries to the bladder. In:Corfman RS,
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Scientific Publications, 1993 ; 56−59
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bladder before laparoscopic trocar placement. Fertil Steril.
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8) Classi R, Sloan PA.: Intraoperative detection of
laparoscopic bladder injury. Can J Anaesth. 1995 ; 42 :
415−416
(H20. 1. 25受付)
42
(42)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
胎児敗血症から早期新生児死亡となった1例
A case of early neonatal death caused by fetal sepsis
神奈川県立こども医療センター 産婦人科
Division of Obstetrics and Gynecology, Kanagawa Children's
Medical Center
小澤 克典 Katsusuke OZAWA
丸山 康世 Yasuyo MARUYAMA
永田 智子 Tomoko NAGATA
長瀬 寛美 Hiromi NAGASE
石川 浩史 Hiroshi ISHIKAWA
山中美智子 Michiko YAMANAKA
要 旨
症 例
preterm PROM(pPROM)に伴った絨毛羊膜炎から急激
な経過をたどり、胎児敗血症による早期新生児死亡となっ
た症例を経験した。
症例は33歳、2経妊 1経産。妊娠26週 5日、前期破水に
て前医に入院。妊娠27週 0日、当院に母体搬送された。入
院時、羊水過少を認めるも胎児心拍モニタリング(NST)
所見で基細変動あり、絨毛羊膜炎症状もなかった。塩酸リ
トドリン持続点滴、抗生剤(ABPC 2 g/day)点滴、腟洗
浄、クロマイ腟錠挿入を開始した。妊娠27週 3日、突然悪
寒が出現し、体温 39.6 ℃ に上昇。NST で基細変動減少が
見られたため、絨毛羊膜炎、Non-reassuring fetal status と診
断し、緊急帝王切開術にて児を娩出。1020 g 男児 Apgar ス
コア 0−0(1分後−5分後)であり、児の蘇生を試みるも
全く反応せず、早期新生児死亡となった。児の動脈血液培
養、および肺、肝臓擦過培養にて大腸菌(Escherichia coli)
が検出された。
絨毛羊膜炎から出生した早産児の敗血症発生頻度は高
く、周産期死亡が約 6% に発生し、その多くは大腸菌等グ
ラム陰性菌である。NST 所見及び母体臨床症状から急速遂
娩を選択したが、早期新生児死亡を防ぐことが出来なかっ
た。絨毛羊膜炎による胎児感染症の中には、劇症型の経過
をたどる一群が存在する。
症例は33歳、2経妊 1経産の女性である。既往歴に、26
歳時に腰椎椎間板ヘルニア手術、及び初回の出産の後 30
歳時に、子宮頚部上皮内癌(CIS)で子宮腟部円錐切除術
がある。今回は自然妊娠であり、妊娠19週頃から少量の
性器出血を認め、切迫流産の診断にて塩酸リトドリンを
内服していた。妊娠 26 週 5 日、破水感で前医を受診し、
前期破水の診断にて入院となった。塩酸リトドリン、抗
生剤(PIPC 2 g/日)を投与され、ベタメタゾン12 mg/
日を 2 回投与された。児は骨盤位で推定体重は 834 g、
AFI 4.9 cm であった。妊娠27週 0日、当院に母体搬送と
なった。
当院入院時所見:血圧 112/54 mmHg、脈拍 95回/分、
体温 36.7 ℃。内診で子宮口 1.5 cm 開大、頚管長 15 mm で
あった。流出羊水は少量で混濁はなかった。
血液生化学検査:白血球数 15700/
μl、CRP 0.45 mg/dl
と軽度な上昇を認める以外に肝機能、腎機能を含めて明
らかな異常は認めなかった。
胎児超音波検査:児は骨盤位で、推定体重は 1071 g で
あった。AFI 3.1 cm、羊水ポケット 1.3 cm と羊水過少を認
めた。明らかな胎児形態異常所見はなかった。臍帯動脈
血流、中大脳動脈血流に異常を認めなかった。
胎児心拍モニタリング(NST)所見:図1に示すとおり
で、明らかな acceleration は認められないものの基細変動
(moderate)は保たれ、子宮収縮も認めなかった。
入院後経過:塩酸リトドリン 67μg/kg/min にて持続
点滴を行い、抗生剤(ABPC 2 g/day)の点滴を開始した。
腟洗浄、クロマイ腟錠挿入を連日施行した。
妊娠 27 週 1 日 血液検査で白血球数 11500 /
μl、CRP
0.18 mg/dlと、炎症反応の改善をみた。
妊娠27週 3日 入院時の腟分泌物培養の結果が判明し、
Staphylococcus aureus 1+、Staphylococcus epidermidis 2+、
Enterococcus spp. 2+であったため、抗生剤を FMOX 2 g/
day に変更した。朝の血液検査では、白血球数 12600/
μl、
CRP 2.60 mg /dl と炎症反応の再上昇を認めた。体温は
36.8 ℃ であった。ルーチンの NST は baseline 160 bpm、基
細変動を認め、内診所見では、流出羊水は少量で混濁な
Key word:前期破水、絨毛羊膜炎、胎児敗血症、早期新生
児死亡、大腸菌感染
緒 言
絨毛羊膜炎は、preterm PROM(pPROM)・早産の原因
となるとともに、胎児・新生児感染症の原因となる。絨
毛羊膜炎から出生した早産児では、罹患率・死亡率とも
増加することが知られている。今回、pPROM に伴った絨
毛羊膜炎から急激な経過をたどり、早期新生児死亡とな
った症例を経験した。死後の精査で胎児敗血症による死
亡と診断された。
平成20年7月(2008)
し。子宮口 1.5 cm 開大、頚管長 22 mm と変化はなかった。
更に悪化所見が認められるようであれば急速遂娩とする
こととして、この日は待機することとしたが、15 時に急
に悪寒が出現し、15時40分には体温 39.6 ℃ に上昇した。
その際、NST で baseline 180∼190 bpm と頻脈を呈し、基
細変動の減少が見られたため(図2)
、絨毛羊膜炎、Nonreassuring fetal status と診断し、緊急帝王切開術を決定した。
手術室入室直前まで NST を継続し、16 時 22 分 baseline
160 bpm、基細変動があることを確認し、NST をはずして
手術室に向かった。16時30分 手術室に入室。母体の腰椎
椎間板ヘルニア手術既往のため麻酔法は全身麻酔とし、
16時52分 緊急帝王切開術を開始、16時53分 分娩となっ
た。子宮内に羊水はほとんどなく、臍帯巻絡は認めなか
った。
児は 1020 g の男児であり、Apgar スコア 0 − 0(1 分
後− 5 分後)であった。新生児科医により直ちに蘇生術
が開始されたが、全く反応せず、早期新生児死亡となっ
た。明らかな外表奇形は認めなかった。臍帯の黄染があ
り、児の気道吸引物も黄色調であった。児の血液検査所
見は、白血球数 12700/
μl、Hb 8.6 g/dl、Plt 6.1 × 104/
μl、
CRP 1.37 mg/dl、IgM < 9 mg/dl、臍帯動脈 pH 7.113 であ
った。動脈血液培養で、Escherichia coli が検出された。
Escherichia coli の薬剤感受性はペニシリン系、セフェム系
の抗生剤の中で ABPC にのみ耐性であった。術後 1 日目
に児の病理解剖を行った。病理所見で形態異常はなかっ
たが、肺、肝臓擦過培養で Escherichia coli が検出された。
図1 入院時胎児心拍モニター所見
baseline 150 bpm、acceleration は認められないものの
基細変動(moderate)を認め、子宮収縮も認めず。
図2 手術室入室直前胎児心拍モニター所見
baseline 180∼190 bpm、それ以前に比べると基細変動の
低下が見られる。
43 (43)
胎盤病理では、acute chorioamnionitis と acute funisitis を認
めた。
母体は術後1日目に解熱し、術後経過に問題なく術後5
日目に退院となった。
考 察
絨毛羊膜炎は主に上向性感染による子宮内感染であり、
pPROM の約 40 % に合併する。絨毛羊膜炎から出生した
早産児のうち敗血症は 2.3∼11.4 % に認め、周産期死亡
が約 6 % に発生する 1)。その多くはグラム陰性菌が原因
とされる。また、新生児の早発型敗血症は、母体からの
上行性感染および産道感染によって生じることが多いが、
その起因菌としては、B 群溶連菌、大腸菌(Escherichia
coli)が最も多い 2)。大腸菌はエンドトキシンを産生する
グラム陰性桿菌であり、早期に敗血症、敗血症性ショッ
クに移行する可能性がある。エンドトキシンの本体は細
胞壁の構成要素であるリポ多糖体(lipopolysaccharide :
LPS)である。エンドトキシンは微量でも毒性が強く、
発熱やショックなどの激烈な作用を生体に及ぼす。生体
内でサイトカインの異常生成を起こし、嫌気性代謝の進
行、局所のアシドーシスから臓器機能を障害すると、多
臓器不全、DIC を引き起こす 3)。早発型敗血症の死亡率
は約 40 % と高いが、なかでも生後24時間以内に発症す
る劇症型敗血症の死亡率は高い。未熟児は母体からの経
胎盤的な IgG 抗体の移行が不十分であり、さらに細胞性
免疫能の低下、腸管や皮膚の感染防御機構の未発達なた
め、生体防御機構が脆弱で、早発型は低出生体重児が占
める割合が高く、特に極低出生体重児の死亡率が高い 4)。
pPROM 例に抗生剤投与を行うことの有効性は広く認め
られているが 5)、近年、大腸菌を含めたグラム陰性桿菌
は、様々な酵素を産生し、耐性化が著しい 6)。大腸菌は
ABPC 耐性であるのみでなく、第三世代セファロスポリ
ン薬に耐性を獲得した ESBL(Extended-Spectrum βLactamase)産生菌も増加している 7)。母体 ABPC 投与後
に ABPC 耐性大腸菌の垂直感染によって出生児に早発型
敗血症を引き起こし、新生児死亡となった例も報告され
ており 8) 9)、抗生剤を投与する際には、耐性菌を考慮した
薬剤選択が求められる。
pPROM では殺菌作用のある羊水の量が減少することで
細菌が繁殖しやすくなり、また、Fetal inflammatory
response syndrome(FIRS)により胎児の腎血流量が減少し、
尿量が減少することで羊水過少が起こることも考えられ、
羊水過少と児の敗血症の関連性は高いともいわれる 10) 11)。
このため妊娠32週未満の pPROM 例では、羊水腔減少か
ら72時間未満に分娩させることにより、FIRS の発症が減
少し、新生児予後を改善しえる可能性があるとの報告が
ある 12)。また妊娠26週以降であれば積極的に娩出した方
が新生児予後の改善につながる可能性があると主張する
報告もある 13)。しかしながら、pPROM の児の予後に影響
する因子が多様であるため、その管理法に関しては一定
の見解には達していないのが現状である。
今回の症例では、妊娠27週という児の未熟性を考慮し
44
(44)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
て待機療法とし、母体の感染徴候や胎児の状態が悪化す
る所見が出現した時には急速遂娩とする方針であった。
胎児心拍モニタリングでは、基線変動があれば 98 % に
アシドーシスがなく、基線変動が減少または消失してい
ればその 23 % にアシドーシスがあるといわれている。
本症例では、胎児心拍モニター上、基細変動が減少して
きたとはいえ消失はしておらず、軽度の徐脈も認められ
ていない状態から、およそ30分後に児を娩出したにも関
わらず、まったく児の蘇生が不可能な状態であった。急
速遂娩を決定した時点でも、モニターの所見からはここ
まで重篤な状態であるとは想定していなかった。また
ABPC に耐性の大腸菌が起炎菌であったことも予後不良
の一因であった。pPROM 例の中には本例の様な劇症型を
たどる例があり、従来の胎児心拍モニタリングや
Biophysical Profile Score などの胎児評価や母体のマーカー
のみでは十分な評価や管理が困難であると考えられた。
結 語
大腸菌による絨毛羊膜炎から胎児敗血症となり、急激
な経過をたどった症例を経験した。
胎児心拍モニタリング所見および母体臨床症状から急
速遂娩を選択したが、早期新生児死亡を防ぐことができ
なかった。絨毛羊膜炎による胎児感染症の中には、劇症
型の経過をたどる一群が存在する。
(本論文の要旨は、第 377 回日本産婦人科学会神奈川
地方部会にて発表した。
)
文 献
1) Mercer BM.: Management of premature rupture of
membranes before 26 week's gestation. Obstetrics and
Gynecology of North America. 1992 ; 19:339−351
2) 山本和歌子、与田仁志、中島やよひ、遠藤大一、矢代
健太郎、川上義:当院 NICU における15年間31例の
早発型敗血症の検討:日周産期・新生児会誌、2007 ;
43:70−74
3) 室月淳、金杉知宣、岩根恵子:周産期における重症感
染症と敗血症性ショック、周産期医、2006 ; 36 :
913−917
4) 辻章志、木下洋、緒方肇、北村直行、辰巳貴美子、大
橋敦、黒柳裕一、小林陽之助:関西医科大学病院
NICU における敗血症起因菌の23年間の推移、日新生
児会誌、2003 ; 39:1−4
5) 松田義雄:前期破水における抗生物質投与と胎児、新
生児の予後、周産期医、2005 ; 35:387−390
6) 坂田宏、小久保雅代、白井勝、梶野真弓、高瀬雅史、
岡本年男、中右弘一、椎葉豪、野原史勝、梶濱あや、
沖潤一:敗血症・髄膜炎の乳児から分離された大腸菌
とB群溶血連鎖球菌の薬剤感受性、日小児会誌、2005
; 109:22−25
7) 荒川宜親:【耐性菌の新たな脅威 PRSP・BLNAR・
ESBLs】第三世代セファロスポリンに耐性を示す
「ESBL産生菌」
、INFECTION CONTROL、2002 ; 11:
1064−1069
8) 村上成行、小暮佳代子、水竹佐知子、今井文晴、篠崎
博光、峯岸敬:ABPC 耐性大腸菌による早発型新生児
感染症を発症した前前期破水の2例を経験して、日産
婦関東連会誌、2006 ; 43:151
9) Terrone DA, Rinehart BK, Einstein MH, et al.:Neonatal
sepsis and death caused by resistant Escherichia coli :
Possible consequences of extended maternal ampicillin
administration. Am J Obstet Gynecol. 1999 ; 180:1345−
1348
10) Yoon BH, Kim YA, Romero R, Kim JC, Park KH, Kim MH,
Park JS.:Association of oligohydramnios in women with
preterm premature rupture of membranes with an
inflammatory response in fetal, amniotic, and maternal
compartments. Am J Obstet Gynecol. 1999 ; 181:784−
788
11) Vermillion ST, Kooba AM, Soper DE.: Amniotic fluid
index values after preterm premature rupture of the
membranes and subsequent perinatal infection. Am J Obstet
Gynecol. 2000 ; 183:271−276
12) 酒井正利、佐々木泰、渡邉弘道、他:新生児予後から
みた妊娠32週未満の Preterm PROM 症例の管理につい
ての検討、周産期シンポ、2004 ; 22:11−18
13) 村越毅:妊娠中期 Preterm PROM に対する待機療法と
積極的分娩による新生児予後についての検討、周産期
シンポ、1999 ; 17:95−100
(H20. 1. 27受付)
平成20年7月(2008)
45 (45)
「話題提供」
神奈川県救急医療中央情報センターによる周産期救急受入医療機関紹介業務の現況
−試行期間から本格稼働へ−
The mediation of maternal transport
by the Information Center of Emergency Medical-care in Kanagawa
−From a trial period to full-scale operation−
神奈川県産科婦人科医会周産期医療対策部
Department for Perinatal Emergencies in Kanagawa Medical
Association of Obstetrics Gynecology
山中美智子 Michiko YAMANAKA
天野 完 Kan AMANO
井槌慎一郎 Shinichiro IZUCHI
井上 裕美 Hiromi INOUE
石川 浩史 Hiroshi ISHIKAWA
小川 幸 Miyuki OGAWA
小川 博康 Hiroyasu OGAWA
加藤 良樹 Yoshiki KATO
小松 英夫 Hideo KOMATSU
澤田 真紀 Maki SAWADA
代田 琢彦 Takuhiko SHIROTA
多和田哲雄 Testuo TAWADA
平吹 知雄 Tomoo HIRABUKI
堀 裕雅 Hiromasa HORI
毛利 順 Jun MOHRI
森 晃 Akira MORI
平原 史樹 Fumiki HIRAHARA
神奈川県産科婦人科医会
Kanagawa Medical Association of Obstetrics Gynecology
中野眞佐男 Masao NAKANO
海野 信也 Nobuya UNNO
東條龍太郎 Ryutaro TOJO
八十島唯一 Tadaichi YASOJIMA
神奈川県周産期医療協議会事務局
Secretariat of Council for Perinatal Medicine in Kanagawa
山中美智子 Michiko YAMANAKA
要 旨
神奈川県では県内を6つのブロックに分けた周産期救急
システムが1987年(昭和62年)から稼働してきた。基幹
病院はブロック内の施設から母体搬送の依頼があった場合
に、自院での収容が不可能であっても収容先を斡旋しなけ
ればならない責を負う。県内では年間1000∼1200例の母
体搬送例があり、そのうちの6∼7割が基幹病院に収容さ
れている。しかし、県内施設では十分な対応ができず、県
外に搬送される例も 8∼9% に上るという問題を抱えてい
る。基幹病院にとって収容先の斡旋業務が大きな負担にな
っていた。
そこで切迫早産等未熟児の出生が予想される搬送依頼の
うち緊急性がさほど高くない例について、神奈川県救急医
療中央情報センターに県内受入医療機関紹介業務を委託す
るシステムが、2007年春から試行され、11月からは本格稼
働するに至った。このシステムの開始により、基幹病院の
負担感が非常に軽減され、また情報が一元化されたことに
より、効率よく収容先を探すことができるようになった。
46
(46)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
さらに周産期救急に関する関わるデータの蓄積がリアルタ
イムにかつ正確にできるようにもなるなど、効率化が図ら
れた。本システムの現況と問題点を紹介する。
Key word:周産期救急システム、母体搬送、救急情報センター
はじめに
日本全国のいたるところで、周産期救急患者の搬送に
伴う問題が取り沙汰され、大きな社会問題となっている。
神奈川県の状況も例外ではなく、周産期救急患者の県内
での収容が困難な事態も頻発している。こうした中で、
2007 年から周産期救急システムの中に、神奈川県救急医
療中央情報センターに県内受入医療機関紹介業務を委託
するシステムが取り入れられた。本システムの現況につ
いて、従来との比較を行いながら報告する。
神奈川県周産期救急システム
神奈川県では1987年(昭和62年)から周産期救急シス
テムを稼働させ、途中、協力施設の見直しやインターネ
ット空床情報の導入など、システムの改善を行いながら
維持してきた。県内を 6 つのブロックに分けて、それぞ
れのブロックに基幹病院(全 8 施設;横浜地区は 3 施設、
他は各地区1施設)
、中等症を扱う中核病院(県内12施設)
、
軽症∼中等症を扱う協力病院(県内12施設)を設けてい
る。このシステムの大きな特徴は、基幹病院は、ブロッ
ク内の施設から母体搬送の依頼があった場合、自院での
収容が不可能であっても収容先を斡旋しなければならな
い責を負うという点にある。また軽症・中等症の依頼の
場合には、たとえ自院で収容可能であっても他の受入可
能施設を斡旋するというトリアージ的な役割も果たして
きた。県内では年間 1000 ∼ 1200 例の母体搬送例があり、
そのうちの6∼7割が基幹病院に収容されている。しかし
ながら基幹病院が自院に収容できた率は、低い施設では
20% 台に留まり、県内全体での県外搬送も年間100件を
越えて 8 ∼ 9 % に上るという大きな問題を抱えている。
各病院の空床情報は、協力・中核・基幹病院のみがアク
セス可能なインターネットで検索可能になっているとは
いえ、その空床情報をアルタイムで更新することは不可
能であり、結局は電話連絡に頼らざるを得ない。自院で
収容できない場合、搬送依頼から収容先決定までにかか
る時間が 1 時間を超えることも稀ではなく、日常の診療
業務に加えて収容先を探す仕事をこなすということが基
幹病院にとって大きな負担になっていた。更に慢性的な
NICU 病床の不足や最近の県内分娩取り扱い施設の減少
に伴って基幹病院の負担は過度なものとなり、現場の医
師達の負担感は限界に達していた。
このような事態を受けて、切迫早産や妊娠高血圧症候
群、子宮内胎児発育遅延等、未熟児の出生が予想される
搬送依頼のうち緊急性がさほど高くない例について、神
奈川県救急医療中央情報センター(以下、情報センター)
に県内受入医療機関紹介業務を委託するシステムが考案
され、2007年春から試行し、11月からは本格稼働するに
至った。このシステムは、従来基幹病院が請け負ってい
た県内の他施設収容先斡旋業務を情報センターに依頼し、
情報センターが収容先を探して搬送依頼元施設に受入可
能施設を連絡するというものである(図 1)。情報センタ
ーで斡旋を行うオペレーターは非医療者であるため、医
学的な判断は行えない。そこで
1)搬送依頼は、まず基幹病院で受けて医学的な情報
整理をし、緊急度の高さを判断する。自院で収容
できない場合で、緊急性がさほど高くないと思わ
れる例に関して、情報センターに斡旋依頼をする。
2)情報センターオペレーターとの間での情報伝達を
確実にするために、基幹病院から fax により情報
を伝達し、情報センターから電話による内容確認
を行う。
図1 新しい神奈川県周産期救急システム
平成20年7月(2008)
47 (47)
2. 2007年12月までの現況
表 1 に受付件数とその転帰を示す。情報センターで県
内収容先を斡旋できたのはセンターへの依頼総数の
64.3% であった。検索中止となった138件の転帰を表2に
示すが、31 件(22.5 %)は依頼元基幹病院に収容されて
いる。県外搬送は46件で、これは4月20日∼12月31日ま
での 256 日間での件数であるので、これをもとに計算し
た年間予測件数は64件となり、これは従来に比べると少
ない。斡旋が成立した例で、収容先決定までに要した時
間の分布を図 3 に示す。約 47 % が 30 分以内に決定し、
83% は60分以内に収容決定可能であった。逆に2時間以
上を要した例も 1.8% あった。
3)緊急度の高い例に関しては、基幹病院が責任をも
って受け入れ先を確保する。
というルールのもとで運営することとした。
新しいシステムの現況
情報センターによる斡旋業務が始まってからの現況を、
同センターで集積したデータ、および 2007 年 4 月∼ 10 月
の基幹病院における状況を仮調査として行った結果を元
に解析する。過去のデータとしては2005年度、2006年度
に基幹病院を対象に行った周産期医療協議会調査研究部
会による調査を用いて比較する。
1. 試行期間(2007年4月20日∼10月31日)における状
況(図2)
各基幹病院への総依頼数は 619 件あり、そのうち情報
センターには325件が斡旋依頼され、206件を同センター
で収容先を斡旋した。この期間の県外搬送は40件で、全
体の 6.5% であった。以前のデータと比較すると、2005、
2006年度の実質件数数はそれぞれ1007件、1215件、県外
搬送が両年とも 103 件で、それぞれ全体の 9.5 %、8.5 %
であった。基幹病院への収容が不可で県内他院を斡旋し
たのが、それぞれ407件、388件あり、この部分の業務を
情報センターに依頼していることに相当すると考えられ
る。試行期間が約半年であることから、発生件数は従来
と同じような件数であった。
図2 試行期間における概況
表1 情報センター受付状況
2007年4月20日∼12月31日
所要時間(分)
件数 構成比
(件) (%)
処 理
平均
最短
最長
5.1
0
最多
100.0
県内収容先決定
283
64.3
39.6
9
151
4.5
1
20
6
1.4
73.2
0
112
8.8
0
13
13
3.0
―
―
―
―
―
―
138
31.4
49.2
0
162
6.7
0
19
検索中止
162
最少
440
残照会先無し
0
平均
総受付件数
情報案内
41.9
照会件数(件)
20
*情報案内:直近の空床情報を基に依頼元基幹病院が交渉した結果、受入先を確保できた案件
*残照会先なし:直近の確認経過を説明し、照会は不要となった案件
表2 検索中止事例
基 幹 病 院 名
横 浜 県立こども医療センター
最終受入先
分娩施設収容 依頼元基幹病院収容 県内独自検索
10
10
3
57
25
県外搬送
2
15
4
1
2
1
0
横浜市立大学附属
市民総合医療センター
126
44
13
16
12
3
聖マリアンナ医大病院
横須賀共済病院
東海大学医学部付属病院
小田原市立病院
北里大学病院
合 計
110
10
51
11
60
440
28
2
18
7
10
138
14
1
7
3
5
46
7
1
8
3
1
48
3
0
1
0
4
31
4
0
2
1
0
13
聖マリアンナ医大
横浜市西部病院
川 崎
三 半
湘 南
西 湘
県央北湘
依頼 検索中
総数 止件数
※検索中止の主な理由
① 県内で受入先が見つからない案件
② 確認した他の基幹病院から「緊急度が高く、情報センターで取り扱うべき症例ではない」
等の指示があった案件
③ 確認中に分娩不可避となり、新生児搬送に移行した案件 等
図3 県内収容先決定までの所要時間
48
(48)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
解 説
本システムが稼働したことにより、基幹病院の負担感
は非常に軽減され、現場からは強い好感を持って受け入
れられている。一番大きな効用として、県内の情報が一
元化されたことにより、効率よく収容先を探すことがで
きるようになったことがあげられる。残念ながら過去の
データ収集が困難であったため、単純な比較ができない
が、現場の実感として斡旋時間は以前より短縮したと感
じている。たとえ、情報センターでの斡旋が不能であっ
た事例でも、インターネットによる空床情報より更に直
近の県内の状況が把握できることになり、無駄な検索を
しなくて済むようになった。以前であれば、複数の基幹
病院が同一時間帯に県内の各施設に電話をしながらそれ
ぞれに斡旋先を探しているという現象も起きていたが、
今はこうした事態は回避できるようになった。また各病
院が受け入れ可能レベルを明らかにしたことで、収容が
効率よく行われるようになったことも推測される。更に
また周産期救急に関する関わるデータの蓄積がリアルタ
イムにかつ正確にできることも大きな利点である。シス
テム稼働前は、周産期医療協議会の調査研究部会が各基
幹病院に対して実態調査を行っていたが、様々な業務が
平行して行われている現場からデータを収集することは、
非常に困難であった。情報センターでは、各事例をその
都度記録することにより、データの蓄積が容易に行われ
ており、行政の施策に働きかけるためにも非常に貴重な
データが得られるというのは重要である。このようにし
て効率化が進むことは患者さんの利益にも繋がり、当初
予測していた以上の効果が得られている。
しかしながら、県内の NICU 病床が慢性的に不足して
いるという現状が改善されたわけではなく、県内で収容
不可の場合に県外施設を探す業務はいまだに基幹病院に
課せられており、また急増している未受診・飛び込み分
娩等の救急隊からの依頼や助産所等本システム対象外施
設からの依頼には対応していないことなどまだまだ問題
は残っている。本システム稼働後に県外搬送が減ってい
る可能性も期待されるが、これは様々な要因の複合であ
ると思われる。各施設がぎりぎりの状況の中で努力を続
けているというのが現場の実感である。たとえば検索中
止事例の中で、20% 以上が依頼元基幹病院に収容されて
いるのも、基幹病院の NICU 病床も確保できない状況な
がら、再搬送となることも前提にして基幹病院に収容し
ているという努力の表れではないかと推測される。
本システムの運営にあたっては、始動前にシミュレー
ションを行うなど準備を十分に重ねたり、稼働後もメー
ルにより問題点の共有をしたりするなど、いくつかの工
夫をしながら維持してきた。オペレーターの方達の熱意
に支えられている部分も大きいが、研修などの機会を通
じて現場の医師達とオペレーターが実際に顔を合わせて
情報交換をするなど face-to-face の交流を持つことはこう
したシステムの円滑な運営には重要なことであると思う。
問題が山積する中でも本システムの稼働は確実な前進
の一歩であり、同様のシステムが近隣の県でも稼働すれ
ば、行政を通じてより連携が取りやすくなる可能性も期
待されている。最近厚労省からは、全国の救急医療の改
善を図るために救急患者受け入れコーディネーターの配
置が各都道府県に通知された 1)。その中では「搬送先医
療機関の調整を行う者として『救急患者受け入れコーデ
ィネーター』の配置を検討すること」とされ、さらに
「コーディネーターは原則として医療機関」に配置し、
「専門的な知見の下に、より高度な判断を必要とする」た
めに「コーディネーターは原則として医師が務める」こ
とが勧告されている。これは漸く稼働し始めた本システ
ムとの整合性に問題が生じる可能性もあるが、本システ
ムは、他の同じような事情の地域においても採用しうる
効率的なシステムでもある。NICU の増床や、人員の再
配置など山積した問題はあるものの、本システムが今後
も一層の充実を図りながら維持・発展していくことを祈
願している。
謝 辞
本システム稼働に際し、特にご尽力頂いた神奈川県産
婦人科医会長 八十島唯一先生、神奈川県産婦人科医会周
産期医療対策部・前部会長 海野信也先生ならびに現部会
長 平原史樹先生、神奈川県保健福祉部医療課地域医療対
策班 清田宏明氏、神奈川県救急医療中央情報センター 金
井信高氏ならびにオペレーターの方々に深謝致します。
また日頃からデータの収集および周産期救急医療にご協
力いただいている基幹病院他中核病院、協力病院の先生
方、及び医会会員の先生方のご協力に感謝いたします。
文 献
1) 厚生労働省医政局指導課長、厚生労働省雇用均等・児
童家庭局母子保健課長、総務省消防庁救急企画室長:
産科救急搬送受け入れ体制等の確保について、医政指
発第1210002号・雇児母発第1210001号・消防救第165
号 2007年12月10日
(H20. 1. 17受付)
平成20年7月(2008)
49 (49)
「教育講演」
女性外来のための基礎知識:その近未来像と、ライフサイクルに対応した内分泌ケア
What and for whom is the gender-specific outpatient clinic ?
東海大学医学部専門診療学系産婦人科学領域
Professor, Department of Obstetrics and Gynecology, Tokai
University School of Medicine
和泉俊一郎 Shun-ichiro Izumi, M.D., Ph. D.
要 旨
平成 19 年 9 月 15 日に川崎市で開催された第 379 回神奈
川県産科婦人科学会の教育講演として『女性外来のため
の基礎知識』について講演した。これは、平成19年度母
体保護法指定医師研修会としての講演でもあり、女性の
ライフサイクルに対応した内分泌ケアを中心に解説した。
本稿では、前半部分の「女性外来の近未来像」に焦点を
絞ってまとめた。女性外来は「性差医療」の観点から出
発して、性ホルモン分泌などの生物学的要因、職場や家
庭での立場など社会学的要因から、症状や治療法が男女
で異なることに着目して診療していくことが必要であり、
女性ホルモンと心の不調に造詣の深いことが必須と考え
られる。すなわち学問としては産婦人科の専門が基礎と
なった上位の専門分野として発展することや、臨床では
産婦人科医がチーフとして存在する診療科に精神科医や
泌尿器科医が加わるチーム医療として発足することが期
待される。近年、産婦人科医の減少の影で、若年代への
女性医の進出が顕著だが、この女性医師が結婚・分娩と
いう女性としてのライフステージをどう計画するかが、
実は産婦人科全体の QOL を左右することであり、彼女た
ちのキャリアパスをプランしやすくするためにも、この
女性外来は重要なキーワードと考えられる。講演の後半
部分の、女性の各ライフステージにおけるホルモン動態
と関連する病態については、すでに配布された研修ノー
トにその役目を譲りたい。
Key word:女性専門外来、性差医療、女性医師、産婦人
科専門医
Ⅰ 序
第 379 回神奈川県産科婦人科学会の教育講演として
『女性外来のための基礎知識』について、ライフサイクル
に対応した内分泌ケアを中心に解説させていただきまし
た。今回の稿では、その内容の中でも、特に女性外来の
近未来像に焦点を絞って、以下にまとめます。
平成19年7月の日本経済新聞の記事にも「広がる女性
外来 配慮細やか」と題した記事が掲載されていました。
肛門科や泌尿器科もあり、女性が行きにくい状況を改善
し、来院を促すことにより早期治療につながることなど
が紹介されていました。ただし、専門医師数が少ないこ
とが今後の課題とされています。
「女性外来」は日本産科
婦人科学会の本年度のテーマですが、研修ノートがまだ
完成していない現状ですので(講習会の時点では)
、私見
を中心にまとめさせて頂きました。
さて、
「女性外来」と聞いて何を考えるでしょうか?お
そらく初歩的な疑問として(1)女性外来は女性だけを
診る外来であれば、それは産婦人科のことではないの
か?(2)担当医は女性医師でなければいけないのか?
(3)何を診るのか?等が浮かび上がってきます。
そこで講演ではまず女性外来について統計を 2 つ紹介
して、その実態と社会からの期待を明らかにした後、そ
の近未来像を提示します。
Ⅱ 女性外来とは
(1)統計2つ:期待と実態
今回紹介する 2 つの統計のうち、まず最初の統計は
「女性医療サービスの今後のあり方に関する研究」(東京
女子医科大学医学部産婦人科学教室 太田博明教授によ
る)からです。この研究は2005年度厚生労働科学・特別
研究事業「女性医療サービスの標準化と質の向上に資す
る方策の検討」と題して行われ公表されています。
その中で「女性外来のあり方」とは?という質問に対
して、女性外来・女性クリニック標傍医師のみ 173 名に
アンケートした結果は、女性外来のあるべき姿を知る上
で興味深いものです。その答えの中からベスト 5 を挙げ
ると;
① プライバシーが確保できるような診察室を作り、そ
の情報を公開する(145 / 173 :以下 [肯定した人
数/母集団の人数] を示す)
② 診療体制を維持するために全科の協力のもとに実施
する。
(133/173)
③ 地域の専門医との連携を強化する。
(129/173)
④ ゆっくり話が聞けるような(コメディカルもしくは
医師との)相談室を充実する。
(125/173)
⑤ ゆっくりと話を聞くことで患者を安心させ、背景に
ある問題点を抽出する。
(111/173)
です。
これら上位の意見に対して半数近くの方々が良いと考
えていることは、
「セカンドオピニオンの場合には専門の
窓口で受けるのがよく、女性外来とは別枠と考えて、初
50
(50)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
診はできれば女性医師である方が医療に接する機会の少
なかった女性に医療施設への受診を促せる」としていま
す。また「継続診療では最初に診察した医師が一定期間
担当するのがよいが、何回かの診察で終了すること。た
だし従来の診療で十分納得していない患者に対してゆっ
くりと説明を行う。また担当医の専門と性別を提示し、
患者が選択できるようにし、健康教室の資料の貸し出し
システムがあればもっとよい」という意見でした。しか
し、費用負担については、施設のサービスとして保険診
療の範囲で行うことも、自費負担にすることも、まだ決
めかねるようで、女性医による担当についても、
「適正な
専門施設・医への紹介・誘導を考えれば、初診医師の性
別は問わずに専門を提示すればよいのではないか」との
意見もあります。一般診療後の追加説明を平行して行う
ことは、女性外来の荷重を増やすために否定的でした。
また、重大な疾患の鑑別診断をすることについては、プ
ライマリケアをどこまで取り込むかという今後の課題で
あるようです。また、担当者として望まれる職種は(図1)
、
産婦人科医・心療内科医がトップで、次いで看護師が望
まれていることからも、チーム医療の必要性が強く前面
に出ている外来構成と考えられます。以上を概観するこ
とによって現段階での期待像がみえてくると考えます。
さらにもう一つの統計は和歌山労災病院の辰田仁美氏
による「女性外来モデルシステムに関する研究 ∼女性
外来でのアンケート結果報告∼」です。これは女性外来
の設置されている労災 5 病院(釧路・東北・関東・中
部・和歌山)において、2005年4月∼06年11月に女性外
来を受診した 630 名を対象に行われたアンケートの統計
です。この 5 つの外来は、事務手続きの満足度(n=471)
が 88.0 % であり、かつ診察内容の満足度(n=471)も
90.7% と高い良好な運営の女性外来での統計と思われま
す。
この外来への受診患者層は、20代∼40代に広くわたっ
ており(図 2 左上)、60 % 近くは他の医療機関に不満足
(図 2 右上)で女性医師を 70 % 以上が希望していました
(図2左下)
。疾患・分野の 40% が産婦人科でカバーされ
図1 「女性外来」というシステムで必要な医療者は?
(全体回答)
図2 女性外来でのアンケート結果
平成20年7月(2008)
51 (51)
ており(図左下)
、女性外来における必要科のマジョリテ
ィーは前述の太田氏の統計と同じ傾向を示しています。
受診の理由のベスト5は;
① 担当が女性医(339/532)
② 総合的に診てもらえる(303/532)
③ 他院で不満足(124/532)
④ 自宅に近い(119/532)
⑤ 時間をかけてみてもらえる(101/532)
でした。また、医療機関受診の抵抗を感じる点として
は;
① 長い待ち時間(241/532)
② 診療時間帯(平日)
(179/532)
③ 男性医師(178/532)
④ 触診(内診を含む)
(133/532)
が挙げられていました。
対象となった病院の診療形態を探る意味で、そのうち
の2例を紹介しますと、
国立病院機構関門医療センター(山口県下関市後田 11-1;病床数/400床;医師数/67人でうち女性13名;診
療科目/総合診療、内科、糖尿・血液科、腎臓内科、呼
吸器科、循環器科、消化器科、神経内科、小児科、精神
科・心療内科、外科・小児外科、心臓血管外科、整形外
科、リハビリテーション科、脳神経外科、皮膚科、泌尿
器科、産婦人科、耳鼻咽喉科、気管食道科、口腔外科、
麻酔科)での女性外来概要は、診療日は週 5 日(月曜日
∼金曜日の午後)で、担当医は 5 人(循環器内科・代謝
内科・心療内科・精神神経科・皮膚科・耳鼻咽喉科・乳
腺外科)さらに医師以外の担当者として看護師 2 人(う
ち1人は専任)
、臨床心理士1人、臨床検査技師2人、診療
放射線技師3人、薬剤師2人の構成になっていました。こ
こは1日の平均受診者数が、2∼3人とのこと。
また、社会保険久留米第一病院(福岡県久留米市櫛原
町 21 番地;病床数/ 200 床;医師数/ 29 人うち女性 12
名;診療科目/内科・胃腸科、循環器科、外科、泌尿器
科、産婦人科、腎センター、麻酔科、放射線科)での女
性外来概要は、診療日が週1日(水曜日の午後)
、担当医
は12人(婦人科、産科、乳腺外科、消化器外科、泌尿器
科、一般内科、糖尿病内科、呼吸器内科、消化器内科、
循環器内科、甲状腺内科)
、医師以外の担当者として助産
師 2人、看護師 7人、臨床検査技師 8人、診療放射線技師
5人、事務員 3人でした。ここは1日の平均受診者数が60
∼80人とのことです。
以上の例を見ても、その実態は各病院様々で、必ずし
も病院採算上の期待の星として機能しているとは言えそ
うにありません。しかし、患者側の立場からの要望はあ
る程度明らかになったと思われます。
(2)歴史的背景と考察
前述の統計によっていくらか理想と実像が見えてきた
ところで、女性外来の歴史をみてみます(表 1)。天野恵
子先生によれば、2001 年に鹿児島大学第一内科に女性外
来が開設され、
「女性による女性のための女性の医療」が
開始されたとされています 1)。また、東京女子医科大学
に97年発足した女性生涯健康センターは、04年からメン
タルヘルスへと主軸を移動されたとのことで、女性外来
の精神的側面を重視する風潮もうかがえます。また、大
阪中央病院では、女性患者だけ集めて診察する「女性の
ための泌尿器科外来」を開設して有名になっていますが、
この泌尿器科の竹山政美氏は男性医師であることはつと
に有名で必ずしも女性医師の担当である必要はないよう
です。
以上の考察から、女性外来は女性専用外来とも呼ばれ、
主に特定疾患に焦点を当てた専門性の高い外来と、女性
の身体と心の不調を総合的にみる外来との 2 種類を含み
表1 女性外来の歴史
52
(52)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
ます。しかしこれらの外来は「性差医療」の観点から出
発したと考えられ、性ホルモンの分泌などの生物学的要
因、職場や家庭での立場など社会学的要因から、症状や
治療法が男女で異なることに着目して診療していくこと
が必要と考えられます 2)。すなわち女性ホルモンに造詣
の深いことが必須と考えられます。その点からは産婦人
科の専門医が基礎となった上での専門分野として発足す
ることも考えられますし、産婦人科医がチーフとして存
在する診療科に精神科医や泌尿器科医が加わるチーム医
療として発足しても良いでしょう 3)。
Ⅲ 女性外来、その近未来像
ここで私見として女性外来近未来を述べます。図 3 に
女性の産婦人科医が女性外来を担当した場合の要件を図
図3 女性診療科(近未来)
図4 産婦人科医 年齢別分布と男女比
表2 女性の一生(各時期毎のホルモンに関連する病態と基本的方針)
平成20年7月(2008)
示しました。すなわち、女性外来では、担当の女性医が
総合的に個人を診察する外来で、重症の疾患に対しては、
あくまでも高次医療への窓口として機能し、そこから紹
介された先の専門医は性別を問わないで重症化を予防で
きるメリットを強調したいと思います 6) 7)。
近年産婦人科医の若年代には女性医の進出が顕著です
(図4)
。この女性医師が結婚・分娩という女性としてのラ
イフステージをどう計画するかが、実は産婦人科全体の
QOL を左右することが議論されています。さらにこれら
産婦人科女医たちが分娩関連のステージを含めてキャリ
アパスをいかにプランしやすくするかも彼女たちを見て
いる今の初期研修医たちが産婦人科を後期研修として選
択するかに大きく影響します。
講演の後半では女性の各ライフステージにおけるホル
モン動態と関連する病態について(表2)解説いたしまし
たが、すでに研修ノートの配布されている現時点では、
むしろノートを含めた他稿にその役目を譲りたいと思い
ます。
最後に第 379 回日本産科婦人科学会 神奈川地方部会
(平成 19 年 9 月 15 日(土)於 ホテル・ザ・エルシー武蔵
小杉)において、平成19年度神奈川県母体保護法指定医
53 (53)
師研修会としての教育講演の御指名をいただき、県会長
八十島先生並びに役員の先生方並びに司会をしていただ
いた可世木先生に御礼申し上げます。
文 献
1) 天野恵子:性差医療の現状と展望、2005 ; 治療学 39
(3):225−227
2) Institute of Medicine(U.S.)
. Committee on Understanding
the Biology of Sex and Gender Differences:Exploring the
Biological Contributions to Human Health : Does Sex
Matter?. Wizemann TM and Pardue ML, Editors, National
Academy Press. Washington, D.C., 2001.
3) 片井みゆき:プライマリケア医が更年期女性を診るポ
イント−女性専門外来での実践、日本医事新報 2004 ;
4186:1−7
4) 片井みゆき:女性が求める女性のための医療とは−女
性が求める医療から、皆が求める医療まで、クリニカ
ル プラクティス 2005 ; 24(7):713−716
5) Bowman MA and Frank E:Women Physicians as Healers.
Women in Medicine Career and Life Management, Third
Edition, Springer-Verlag, 2002 ; 132−143
(H20. 3. 5受付)
54
(54)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
「研究会報告」
神奈川県産婦人科内視鏡研究会:この1年の歩み
日本医科大学武蔵小杉病院 可世木久幸
前回に引き続いて最近1年間の神奈川県産婦人科内視
鏡研究会の発表内容を示す。
第21回 神奈川県産婦人科内視鏡研究会
開催日時:2007年10月19日(金曜日)
開催場所:けいゆう病院
当番世話人:北里大学 川内 博人
参加人数:約30人
演題1. エチコン製剤及びストルツ製モルセレーターの
使用経験
(梅津 桃;済生会横浜市東部病院)
演題2. 子宮内膜症手術におけるタココンブの有用性に
ついて
(五十嵐 豪;聖マリアンナ医科大学)
演題3. 31週で子宮破裂をきたした腹腔鏡下子宮筋腫核
出術後妊娠の1例
(沼尾 影子;北里大学)
特別講演:子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術
− microsurgical approach −
(松本 貴;大阪中央病院)
第22回 神奈川県産婦人科内視鏡研究会
開催日時:2008年3月5日(水曜日)
開催場所:横浜市立大学付属市民総合医療センター
当番世話人:湘南鎌倉病院 井上 裕美
参加人数:約40人
演題1. 腹腔鏡下針生検の1例
(大林 美貴;湘南鎌倉総合病院)
演題2. 当院における緊急腹腔鏡手術の検討
(村越 行高;川崎市立川崎病院)
演題3. 当院における緊急腹腔鏡手術の検討
(吉田 浩;横浜市立大学付属市民総合医療セン
ター)
演題4. 当院における子宮外妊娠の経験
(菱川 賢志;湘南鎌倉病院)
演題5. 当院における内膜症性嚢胞に対する腹腔鏡手術
の検討
(倉品 隆平;日本医科大学武蔵小杉病院)
演題6. アルコール固定後強固な癒着を伴う内膜症性嚢
胞に対し腹腔鏡下手術により摘出を試みた1例
(増田 健太;済生会横浜市東部病院)
なお、次回から本研究会代表世話人が関賢一(川崎市
立川崎病院)から可世木久幸(日本医科大学武蔵小杉病
院)に変わることが世話人会で決定された
平成20年7月(2008)
55 (55)
「研究会報告」
神奈川婦人科腫瘍研究会報告
横浜市立大学医学部産婦人科 平原史樹
神奈川婦人科腫瘍研究会は、1999 年に北里大学蔵本博
行教授、東海大学篠塚孝男教授のお二人が音頭を取られ
て発足し、県内の腫瘍に取り組む婦人科医が集まり、本
音で症例を検討しあい、勉強をするという主旨で発足し
た。
第1回はホテルリッチ(当時)で1999年10月16日に開
かれ、爾来、別表(表1)のごとく会が開かれ、熱心な県
内のメンバーの集いの場となっている。
平成 19 年度は表 2 のようなテーマで研究会が開かれ熱
心な討議がもたれた。県内の多くの専門医の方々はじめ、
研修医も多くご参加いただけるようお願いする次第であ
る。
表1
日 時
第1回
平成11年10月16日
(土) ホテルリッチ 4階
16:00∼
第2回
会 場
羽衣の間
平成12年9月30日
(土) 神奈川県民センター
当番幹事
北里大学医学部
蔵本博行先生
東海大学医学部
篠塚孝男教授
14:00∼
特別講演
「卵巣がんの治療、最近の動向」
慈恵医科大学 安田 允教授
「産婦人科領域における深部静脈血栓・
肺塞栓の予防と治療」
埼玉医科大学総合医療センター
総合周産期母子医療センター
竹田 省教授
第3回
平成13年9月8日
(土) 神奈川県民センター
平原史樹先生
15:00∼
第4回
平成14年6月22日
(土) 神奈川県民センター
聖マリアンナ医科大学
斎藤 馨先生
14:20∼
第5回
横浜市立大学
平成15年6月21日
(土) 神奈川県民センター
15:00∼
「産婦人科がんと EBM」
筑波大学 吉川裕之教授
「北海道における子宮筋腫症例の検討」
札幌医科大学 寒河江悟教授
神奈川県立がんセンター
「系統的リンパ節廓清術の意義 中山裕樹先生
センチネルリンパの観点から」
日鋼記念病院 林 博章部長
第6回
平成16年6月5日
(土) けいゆう病院 13階
15:00∼
第7回
平成17年6月25日
(土) ホテル キャメロット
15:00∼
第8回
大会議室
ジャパン
平成18年6月24日
(土) 神奈川県民センター
甘 彰華先生
関東労災病院
香川秀之先生
聖マリアンナ医科大学
木口一成先生
15:00∼
第9回
けいゆう病院
「新しい抗子宮体癌ヒトモノクロナール抗体」
慶應義塾大学 青木大輔講師
「若年女性の子宮頚癌の診断・治療」
癌研有明病院 瀧澤 憲部長
「腹腔鏡を用いた婦人科悪性腫瘍の手術」
倉敷成人病センター 安藤正明部長
平成19年6月23日
(土) ホテル キャメロット 日本医科大学武蔵小杉病院 「子宮癌からヒトの性の進化を探る」
15:00∼
ジャパン
朝倉啓文先生
信州大学 小西郁生教授
56
(56)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
表2
平成19年6月23日(土)
情報交換会会場:ホテルキャメロットジャパン 14F
グレードA アネックス
当番世話人:日本医科大学武蔵小杉病院 教授
朝倉啓文
3.『Atypical Endometrial Hyperplasia にて経過観察、術後
判明した粘膜下筋腫に発生した子宮体部癌の1例』
けいゆう病院 産婦人科
平尾薫丸、甘 彰華
4.『周術期管理に苦慮した巨大卵巣嚢腫瘍の1例』
一般演題 座 長 日本医科大学武蔵小杉病院 土居大祐
1.『妊娠に合併した悪性卵巣腫瘍の2例』
日本医科大学武蔵小杉病院 女性診療科・産科
中井晶子、佐藤杏月、坊 裕美、深見武彦、吉田有里、
立山尚子、西田直子、金 栄淳、松島 隆、土居大祐、
可世木久幸、朝倉啓文
2.『Ⅳb 期体癌の予後に関する検討』
神奈川県立がんセンター 婦人科
沼崎令子、近内勝幸、池田仁惠、山本晃人、小野瀬亮、
加藤久盛、中山裕樹
関東労災病院 産婦人科
富尾賢介、橋本耕一、内田大介、安水 渚、袖本武男、
葛目正央、香川秀之
5.『妊娠末期に発見された未熟奇形腫の1例』
聖マリアンナ医科大学病院 産婦人科
難波千絵、高江正道、和田康菜、桑原真理子、吉岡伸人、
吉岡範人、渡辺敦子、大原 樹、奥田順子、鈴木 直、
小林陽一、木口一成、石塚文平
特別講演 座 長 日本医科大学武蔵小杉病院 教授
朝倉啓文
『子宮癌からヒトの性の進化を探る』
信州大学医学部 産婦人科学講座 教授
小西 郁生
平成20年7月(2008)
57 (57)
「研究会報告」
第7回 横浜 ART 研究会
神奈川レディースクリニック 院長
小林 淳一
2008年2月9日(土)に第7回横浜 ART 研究会が開催さ
れました。本研究会も 7 回目となり、回を追う毎に参加
者も増えております。
地元のART 施設以外にも神奈川県下、さらに東京や埼
玉の先生方も出席されています。
今回はまず基調講演では日本大学生物資源科学部教授
でいらっしゃる佐藤嘉兵先生が「胚のクオリティーと最
近の知見」を話されました。マウスでの研究をもとに核
移植の問題等まで最先端のお話しを聞くことができまし
た。
次に会員発表として「AHA (アシステッドハッチング)
をめぐって」をテーマに 3 施設の胚培養士が、各施設で
のやり方や問題点などを発表しました。透明帯切開法や
レーザーによるハッチング法などこれらの技術について
は、まだ試行錯誤で確立した方法がなく、今後さらにい
ろいろな方面から研究・検討していく必要があります。
招請講演として弘前大学医学部産婦人科学准教授でい
らっしゃる藤井俊策先生が「胚の品質評価について」の
講演をされました。胚の品質を評価する様々な方法が紹
介され大変興味深く聞かせていただきました。
特別講演、吉田レディースクリニック院長吉田仁秋先
生による「良好胚作成の工夫」は、卵巣の予備能の正し
い評価と適切な刺激法が大切という実践でのお話しで会
場の参加者もとても熱心に聴講していたのが印象的でし
た。
今後さらに横浜 ART 研究会が学会員の熱意によって有
意義な研究会と発展し、地域、施設や専門を越えての研
究・交流の場となっていくことを期待いたします。
■ 第7回横浜 ART 研究会
日 時:平成20年2月9日(土)午後5時30分より
会 場:ヨコハマ グランド インターコンチネンタル
ホテル 1階『シルク』
<基調講演>
座 長:日本大学医学部名誉教授 佐藤和雄先生
講 演:日本大学生物資源科学部 動物細胞学教室 教授 佐藤嘉兵先生
演 題:『胚のクオリティーと最近の知見』
<会員発表>
座 長:神奈川レディースクリニック 院長 小林淳一先生
共通演題:『AHA(アシステッドハッチング)をめぐって』
演 者:アモルクリニック
峯 麻美先生(胚培養士)
演 者:田園都市レディースクリニック 菅かほり先生(胚培養士)
演 者:神奈川レディースクリニック
中山朋子先生(胚培養士)
*ディスカッション
<招請講演>
座 長:東條ウィメンズクリニック 院長
東條龍太郎先生
講 演:弘前大学医学部産婦人科学教室 准教授
藤井俊策先生
演 題:『胚の品質評価について』
<特別講演>
座 長:堀病院 院長 堀 裕雅先生
講 演:吉田レディースクリニック 院長
吉田仁秋先生
演 題:『良好胚作成の工夫』
58
(58)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
「研究会報告」
平成19年度、神奈川乳房画像研究会・神奈川乳房超音波画像研究会活動報告
代表世話人 加藤 善廣
平成 19 年度の主な活動は研究会を 3 回、神奈川県医師
会主催のマンモグラフィ技術講習会、神奈川県下ポジシ
ョニング指導講習会を開催した。また、第17回日本乳癌
検診学会ではデジタルフィルムコンテスト会場の運営お
よび、会場整備、研究発表など協力を行った。その他、
横浜市マンモグラフィ二次判定会での技術協力に参加し
た。
第 32 回研究会(参加者 223 名)は、亀田メディカルセ
ンター乳腺センター長・乳腺科部長の福間英祐先生より
「乳癌局所療法の変還と画像診断」、蓮田一心会病院放射
線科・乳腺外来の石栗一男技師より「乳腺画像技術編」、
埼玉県立がんセンター病理科部長の黒住昌史先生より
「乳腺病理入門−フィルムリーディング 基礎編パート
2−」と 3 題のテーマで開催した。黒住先生のフィルム
リーディングは実践的であり、参加者にはいつも好評を
いただいている。
第 33 回研究会(参加者 185 名)は、神奈川乳房画像研
究会発足10年という節目の年にあたり、10周年特別記念
講演と題して、乳がん検診の第 1 人者である先生方にご
講演を頂いた。講演 1 は聖マリアンナ医科大学放射線医
学教室教授 中島康雄先生より、
「乳がんの画像診断、最
近のトピックス」
、講演2は聖マリアンナ医科大学乳腺・
内分泌外科教授 福田護先生より「日本乳癌検診学会の
取組と目指す方向」
、講演3は東北大学大学院医学系研究
科外科病態学講座腫瘍外科学分野教授 大内憲明先生に
「がん対策のための戦略研究・超音波による乳がん検診
(J − START)」と多岐にわたるテーマで開催した。これ
は市民公開講演として一般市民の方も入場していただい
たため、乳がん検診に関する最新情報や今後の乳房画像
および検診のあり方などをわかりやすく講演して頂き、
活発な質疑応答が展開された。研究会としても充実した
内容であり、盛大な記念講演会となった。
第 34 回研究会(参加者 120 名)は、聖マリアンナ医科
大学病院超音波センター 桜井正児技師より「ファント
ムを用いた超音波装置精度管理の状況と自動式乳房走査
装置使用経験」
、次に四谷メディカルキューブ乳腺外科部
長 長内孝之先生より「乳癌診療における PET-CT 検査
の有用性」
、最後に埼玉県立がんセンター病理科科長兼部
長 黒住昌史先生より、
「超音波画像と病理像の比較から
学ぶ乳腺病理」を講演して頂いた。19 年度は超音波と病
理のテーマに力を入れ企画してきたが、この34回にて目
標が達成できたと自負している。
また19年度には、本会における今までの活動が評価さ
れ、株式会社エイボンよりピンクリボン活動助成金とし
て「マンモグラフィ装置の線量測定器」を援助して頂い
た。20 年度はこれを有効に活用し、神奈川県下のマンモ
グラフィにおける被ばく線量の低下に貢献する事業も行
っていきたいと考えている。
平成20年7月(2008)
59 (59)
「研究会報告」
PWG開催報告
神奈川県立こども医療センター 石川浩史
PWG(Perinatal Working Group)とは、神奈川県内の周
産期施設に勤務する産科医師・新生児科医師・助産師・
看護師などによる症例検討・懇話会である。平成19年度
末でこれまでの開催が 55 回を数えた。現在は年 3 回開催
しており、神奈川県立こども医療センター、横浜市大、
北里大が各回の症例・話題の呈示を行っている。参加者
は上記 3 施設の医療従事者と、その他の大学病院・一般
病院・看護教育機関などである。
周産期領域における研究会のひとつではあるが、扱わ
れる内容は周産期の最新トピックスから倫理的諸問題ま
で幅広い。また症例呈示とディスカッションのスタイル
は他に類を見ないユニークなものである。一つの症例に
ついて、産科医師、産科助産師・看護師、新生児科医
師・新生児科看護師が症例を呈示し、それぞれの立場か
ら考察を加えた上でディスカッションを行う。ときには
議論が噛み合わないこともあるが、医師の症例呈示でよ
く理解できなかった内容が看護サイドの症例呈示で疑問
が氷解して思わぬ発見となることもあり、貴重な場であ
る。
平成19年度は下記の3回が行われた。
■ 第53回(症例担当:こども医療センター)
2007年5月30日 神奈川県総合医療会館
「妊娠14週から自然経過を観察した胎児尿道閉鎖症
の1例」と題して症例呈示とディスカッションが行わ
れた。また妊娠22週未満で紹介となった胎児異常例の
経過について、こども医療センターのこれまでの症例
を概説が行われた。
■ 第54回(症例担当:横浜市大)
2007年9月19日 神奈川県総合医療会館
「母体到着時に IUFD と判明した IUGR の搬送症例」
と題して症例呈示とディスカッションが行われた。
■ 第55回(症例担当:北里大)
2008年1月23日 神奈川県総合医療会館
「3回とも胎児水腫となった1例」と題して症例呈示
とディスカッションが行われた。
現在事務局はこども医療センター産婦人科で担当して
いるので、開催予定などはお問い合わせください。
60
(60)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
「研究会報告」
RMW(生殖医療を考える神奈川県医師の会)
KHW(神奈川県ホルモン療法を考える医師の会)
RMW:Reproductive Medicine Working group は、11年前
に、神奈川県下で生殖医療に携わる若手の医師が、大学
の垣根をとりはらって議論できるようにと、それぞれの
医局を飛び出る形で、演題を持ち寄って相模原市医師会
のメヂカルセンターで開催された会合が発端となり発展
したものです。参加費 500 円でサンドイッチ代と会場費
をまかなっていました。一方、その RMW の世話人を中
心に、RMW と表裏一体となる形で、KHW : Kanagawa
Hormone therapy Working group が発足し、スポンサーに経
済的援助を御願いする形で、年に 2 回で遠方からの演者
による講演会を開催してきました。演者には基礎と臨床
の分野からそれぞれ関連する 2 名に御願いし、参加者の
自由討議を活性化するように構成しています。当初の、
和文名称は、RMW が「生殖医療を考える神奈川県若手
医師の会」と KHW が「ホルモン療法を考える神奈川県
若手医師の会」でしたが、しかし、10 年を経てた世話人
はすでに 50 代の者もおり、“気だけ若い会”や“苦手
(にがて)医師の会”だとの噂もありました。そこで昨年
から、実情にそぐわない「若手」を削除しました。
さて、19年度の活動報告ですが;
KHW はスポンサーが変更になり、19年度から年1回開
催になっています。平成 19 年 11 月 22 日(木)に第 14 回
神奈川県ホルモン療法を考える医師の会(KHW)を開催
しました。場所は、崎陽軒(横浜市西区高島2-13-12)で、
ペアの演題は、横浜市立大学大学院医学研究科 生殖生育
病態医学 准教授 榊原秀也先生『月経困難症の診断・治療』
と、京都大学大学院医学研究科 放射線医学講座 教授 富
樫かおり先生による『シネ MR を用いた子宮の動態評価』
でした。性周期での子宮の機能の変化について、シネ
MRI と LOC についての2講演で、その関連する Q&A に
熱い議論が沸騰しました。
RMW については、事務局がマリアンナから私どもに
変更となり、世話人への連絡がシンクロせず、昨年度は
世話人会で今後の予定を議論しただけで、開催できませ
んでした。20年度は、建て直しの年度です。
新しい形での新 KHW については、本年度も10月ごろ
開催予定です。演題に興味があれば、お気軽に参加して
いただけます。連絡又は参加を希望の方は事務局までご
連絡いただきたくお願い申し上げます。
新 RMW 事務局
東海大学 医学部 専門診療学系(産婦人科)内
担当 和泉俊一郎
TEL:0463-93-1121 FAX:0463-91-4343
E-Mail:[email protected]
平成20年7月(2008)
61 (61)
第379回 日本産科婦人科学会神奈川地方部会
日 時:平成19年9月15日(土)午後2時
場 所:ホテル ザ・エルシィ武蔵小杉
6.
Ⅰ. 一般演題1
1.
帝王切開術後、両側肺動脈主幹部に血栓塞
栓症をきたした1例
腹腔鏡手術の合併症:トロッカー穿刺によ
る膀胱損傷の1例
昭和大 臨床研修センター
矢崎病院
田中 雄大
昭和大 北部病院
聖医大
五十嵐 豪 鈴木 直 木口 一成
清河 翠 佐々木 康 栗城亜具里
石塚 文平
小山寿美江 小谷美帆子 近藤 哲郎
入江 裕子(研修医)山本 明和(研修医)
安藤 直子 小川 公一 高橋 諄
2.
精巣性女性化症候群に発生した過誤腫の1例
7.
小迫 優子 松澤由記子 平尾 薫丸
当院における周産期水痘の発生とその院内
感染予防対策
堀 祐子 永井 宣久 山本百合恵
聖医大
けいゆう病院
徳山 承明(研修医)
田村みどり
細沼 信示 高江 正道 五十嵐 豪
泉福 明子 中野眞佐男 甘 彰華
青木喜美恵 新橋成直子 石山めぐみ
3.
術後、急速に ARDS に至った卵管留膿症
の1例
中村 真 井槌慎一郎 石塚 文平
Ⅲ. 一般演題2
済生会横浜市東部病院
増田 健太 青野 一則 梅津 桃
後藤優美子 中林 章 秋葉 靖雄
8.
脊椎骨端異形成症合併妊娠の症例
横浜市大 母子医療センター
渡邉 豊治 小西 康博
小川 幸 長谷川哲哉 最上 多恵
4.
妊娠中期に腹腔内大量出血を認めた1例
斉藤 圭介 佐治 晴哉 高橋 恒男
横浜市大
東海大 専門診療学系産婦人科
奧田 美加 澤井かおり 平原 史樹
田中 優貴 高橋 千果 東郷 敦子
近藤 朱音 内田 能安 森 晃
和泉俊一郎 三上 幹男
9.
胎児敗血症ショックにより急激な経過で死
産となった1例
県立こども医療センター
Ⅱ. 研修医発表演題
小澤 克典 丸山 康世 永田 智子
長瀬 寛美 石川 浩史 山中美智子
5.
最近経験した Yolk Sac Tumor の3例
日医大 武蔵小杉病院
奈良 慎平
(研修医)三輪 佳雅
(研修医)
石川 浩子(研修医)
柿栖 睦美
10. 当 院 に お け る 周 産 期 麻 疹 の 発 生 と そ の
2次・3次感染予防対策
聖医大
嶋田 彩子 田村みどり 細沼 信示
佐藤 杏月 倉品 隆平 吉田 有里
高江 正道 五十嵐 豪 青木喜美恵
坊 裕美 立山 尚子 西田 直子
新橋成直子 石山めぐみ 中村 真
金 栄淳 深見 武彦 松島 隆
井槌慎一郎 石塚 文平
土居 大祐 可世木久幸 朝倉 啓文
62
(62)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
11. 前置胎盤と診断した奇胎合併妊娠:妊娠
27週帝王切開分娩後の推移
Ⅳ. 特別講演
『母体保護法に関する諸問題』
日医大 武蔵小杉病院
吉田 有里 柿栖 睦美 佐藤 杏月
神奈川県医師会母体保護委員会委員
倉品 隆平 坊 裕美 立山 尚子
八十島唯一
西田 直子 金 栄淳 深見 武彦
『医療保険に関する諸問題』
松島 隆 土居 大祐 可世木久幸
朝倉 啓文
川崎市立川崎病院
関 賢一
12. 神奈川県救急医療中央情報センターにおけ
る周産期救急受入医療機関紹介業務の現況
について
Ⅴ. 教育講演
『胎児の評価法−胎児評価による分娩方針
の決定』
神奈川県産科婦人科医会周産期医療対策部
山中美智子 天野 完 井槌慎一郎
神奈川県立こども医療センター
井上 裕美 小川 幸 小川 博康
山中美智子
加藤 良樹 小松 英夫 澤田 真紀
『女性外来のための基礎知識:ライフサイ
クルに対応した内分泌ケアを中心に』
代田 琢彦 多和田哲郎 平吹 知雄
堀 裕雅 毛利 順 森 晃
中野眞佐男 平原 史樹 八十島唯一
東海大学医学部付属病院
和泉俊一郎
第380回 日本産科婦人科学会神奈川地方部会
日 時:平成19年11月11日(日)午後1時
場 所:小田急ホテルセンチュリー相模大野 8階 フェニックスⅠ
4.
Ⅰ. 一般演題1
1.
穿通胎盤であった急性腹症の1例
北里大
2.
流産術後、大量性器出血を来たし子宮鏡下
に治療し得た1例
昭和大 北部病院
沼田 彩
安藤 直子 佐々木 康 小谷美帆子
菊地 信三 金井 雄二 庄田 隆
小山壽美江 清河 翠 栗城亜具里
天野 完 海野 信也
近藤 哲郎 小川 公一 高橋 諄
中村 元美(研修医)
妊娠超初期正常経過と正確な妊娠日数の同
定による胎芽初期胎児の予後判定
5.
子宮動脈結紮が有用であった子宮頚管妊娠
の1例
けいゆう病院
ますだ産婦人科
平尾 薫丸 小迫 優子 松澤由記子
増田 惠一
堀 祐子 永井 宣久 山本百合恵
3.
当院で経験した子宮内反症例について
泉福 明子 中野眞佐男 甘 彰華
横浜市大 母子医療センター
小山麻希子 小川 幸 榎本紀美子
長野 研二 八木 瑞穂 元木 葉子
横浜市大
6.
治療に難渋した臨床的侵入奇胎の1例
聖医大
桑原真理子 大原 樹 吉岡 伸人
鈴木 靖子 佐藤 綾 三原 卓志
渡邊 弓花 吉岡 範人 渡邊 敦子
田野島美城 佐治 晴哉 斉藤 圭介
和田 康菜 奥田 順子 鈴木 直
奥田 美加 高橋 恒男
小林 陽一 木口 一成 石塚 文平
平原 史樹
平成20年7月(2008)
Ⅱ.母体保護法指定医師研修会
『1. 母体保護法に関する諸問題』
63 (63)
9.
子宮筋腫摘出術後 8 年目で発生した骨盤内
平滑筋肉腫の1例
東海大 専門診療学系産婦人科
佐藤 茂 村松 俊成 西島 義博
県産婦人科医会 母体保護委員
杉山 太朗 平澤 猛 和泉俊一郎
西脇 俊幸
三上 幹男
『2. 医療保険に関する諸問題』
県産婦人科医会 理事 社保担当
坂田 壽衛
10. 低ゴナドトロピン性無精子症に r-FSH 治療
後 ICSI にて妊娠に成功した1例
ソフィアレディスクリニック
Ⅲ. 研修講演
佐藤 芳昭 阿久津 正
『胎児の評価法』
北里大学医学部産婦人科講師
庄田 隆
11. 腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)における膀胱
損傷の検討
平塚市民病院
笠井 健児 本田 能久 東條龍一郎
Ⅳ. 一般演題2
古谷 正敬 藤木 喜展 齋藤 優
持丸 文雄
7.
子 宮 頚 部 に 発 生 し た Adenoid cystic
carcinoma の1例
北里大
Ⅴ. 特別講演
関口 和企 沼田 彩 今井 愛
小野 重満 角田 新平 上坊 敏子
海野 信也
『習慣性流産と母性について考える』
日本医科大学 産婦人科学教室主任教授
竹下 俊行
8.
子宮原発悪性リンパ腫の1例
横浜労災病院
野中 愛子 門脇 綾 梅津 信子
杉浦 賢 中山 昌樹
64
(64)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
抄録
第379回 日本産科婦人科学会神奈川地方部会
水痘は水痘帯状疱疹ウイルス VZV の初感染時の臨床像である。
感染経路は、空気感染と接触感染があり、胎児へは経胎盤感染に
腹腔鏡手術の合併症:トロッカー穿刺による膀胱損
傷の1例
よって感染する。潜伏期間は14日から16日で、垂直感染時の潜
伏期間は9日から15日である。感染力を持つ期間は発疹出現の2
日前から水疱が痂皮化するまでであり、感染力が最も強いのは発
疹出現の2日前から発疹出現日までである。水痘は VZV の上気
矢崎病院
道粘膜感染から2週間の経過で発症し、さらに水疱が痂皮化する
田 中 雄 大
までに1週間の経過を要する。
聖医大
五十嵐 豪 鈴 木 直 木 口 一 成
本邦では幼児期に水痘に感染するのが一般的であり、成人の
95%が抗体を保有する為、妊婦が水痘を発症することは稀であ
石 塚 文 平
る。ただし妊婦が水痘を発症した場合、妊娠週数によっては胎児
婦人科領域の手術における臓器損傷の中で、最も頻度が高いの
に大きな影響を及ぼす事があり、注意が必要である。
は膀胱損傷である。腹腔鏡手術においては、トロッカー挿入や熱
妊娠20週までに母親が水痘を発症すると、2%程度の確率で胎
凝固などの操作が、膀胱損傷のリスクを更に上げるといわれてい
児に先天性水痘・水痘胎芽症を引き起こし、四肢の低形成、視覚
る。今回、再発子宮内膜症に対して腹腔鏡手術を行った際、トロ
器障害、中枢神経障害等の症状が出現する。妊娠20週から分娩
ッカー挿入時に膀胱を穿孔した症例を経験したので報告する。症
21日前までの期間に母親が水痘を発症すると、児の水痘発症は
例は33歳、既往歴として、開腹1回、腹腔鏡2回の計3回の子宮
見られず、9%に乳幼児帯状疱疹を発症する。分娩21日前∼分娩
内膜性嚢胞切除術を施行している。挙児希望にて他院を受診後、
5日前の期間に母親が水痘を発症すると30∼40%の児に水痘の発
エコー上 4 cm 大の嚢腫を指摘され当院を紹介受診し、腹腔鏡手
症が見られるが、母親からの移行抗体の影響で軽症∼中等症の経
術を施行した。癒着剥離及び嚢腫切除術施行後、腹腔内を洗浄し
過をたどり、死亡者は無い。最も危険な場合は分娩5日前から分
ていたところ、突然尿バッグがガスで膨張し始めた。尿道カテー
娩2日以内に母親が水痘を発症した場合で、水痘を発症した児は
テルよりインジゴカルミンを逆行性に注入していったところ、恥
重症化し、死亡率は30%である。
骨上部のトロッカー刺入部より色素のリークを認めた。トロッカ
今回、周産期に水痘を発症し、その後当院にて分娩となった1
ー挿入部より膀胱が穿孔し、ここから腹腔内の炭酸ガスが尿バッ
症例を経験した。症例はフィリピン出身で、地域的に水痘の流行
グに漏出したものと診断した。腹腔内より2-0モノクリルにてZ
が稀である為、VZV に対する抗体を保有していなかったと思わ
縫合をかけ膀胱壁を修復し、手術を修了した。患者は術後6日目
れる。
にバルーンを抜去し、7日目に退院した。本症例では計3回の手
近医にて水痘の診断を受けてから、分娩、退院に至った経過と、
術の既往があり、膀胱がつりあがっている可能性は十分に予測で
当院が実施した院内感染予防対策、また周産期水痘発生について
きた。そのため、前回の創部よりも頭側にトロッカーを挿入した
の今後の展望について概説した。
にも関わらず膀胱を破損してしまった。恥骨上部トロッカーは、
縦切開創部上より挿入したため、皮膚及び皮下組織が非常に硬化
しており、腹膜をテンティングさせてしまったことも損傷の要因
脊椎骨端異形成症合併妊娠の症例
の1つと思われた。手術終了直前に尿バッグが充満したことで膀
胱損傷を疑うことができたが、さもなければ損傷に気づかずに手
横浜市大 母子医療センター
術を終了していた可能性が高く、瘻孔形成に至った可能性も否定
小 川 幸 長谷川 哲 哉 最 上 多 恵
できない。ブラントチップの普及などにより、腹腔鏡手術におけ
斉 藤 圭 介 佐 治 晴 哉 高 橋 恒 男
るトロッカー挿入時の合併症は減少していると思われる。しかし、
手術既往を有する患者では思わぬ所に落とし穴があり、注意が必
横浜市大
奧 田 美 加 澤 井 かおり 平 原 史 樹
要である。
緒 言 : 脊 椎 骨 端 異 形 成 症 ( Spondyloepitherial Dysplasia
Congenita, SEDC)は、100万人に1∼2人とまれな骨系統疾患で
当院における周産期水痘発生とその院内感染防止対
策
ある。低身長、樽状胸郭、胸椎後弯、腰椎前弯などが特徴であ
る。SEDC 合併妊娠の1例を経験したので報告する。
症例:28歳0経妊0経産、生後8ヶ月で SEDC と診断。家族歴
なく弧発例と考えられた。27 歳時、両側大腿骨頭置換術施行。
聖医大
田 村 みどり
股関節への負担から、帝切分娩の方針となった。結婚し遺伝相
細 沼 信 示 高 江 正 道 五十嵐 豪
談受診、カウンセリングを受けたのち妊娠した。外来管理して
青 木 喜美恵 新 橋 成直子 石 山 めぐみ
いたが、子宮増大につれ日常生活困難となり 24 週 4 日入院。妊
中 村 真 井 槌 慎一郎 石 塚 文 平
娠30週頃より腹緊の訴えあり、特に切迫早産徴候みられなかっ
徳 山 承 明(研修医)
平成20年7月(2008)
たが、症状軽減目的に塩酸リトドリン内服頓用とした。児発育
は良好で週数相当であった。妊娠 32 週で労作時の呼吸苦出現、
65 (65)
当院における周産期麻疹の発生とその2次・3次感
染予防対策
歩行困難となり、SpO2 も低下、骨盤への負担を考え、経母体ス
テロイド投与ののち分娩の方針とした。32 週 2 日選択的帝切施
聖医大 行(全身麻酔下)
、1806 g 女児分娩、Apgar 7/8、UApH 7.263 で
嶋 田 彩 子 田 村 みどり 細 沼 信 示
あった。母体経過良好にて、帝切7日後に退院、1ヶ月健診も問
高 江 正 道 五十嵐 豪 青 木 喜美恵
題なく終診した。新生児は NICU 入院となり、RDS の診断で人
新 橋 成直子 石 山 めぐみ 中 村 真
工呼吸管理するも翌日抜管。経過良好にて日齢24日に退院した。
井 槌 慎一郎 石 塚 文 平
現在までに SEDC の徴候はみられていない。
考察: SEDC 合併妊娠報告は極めて少なく、我々が検索した
近年、ワクチン摂取の普及により麻疹の流行状況が変化し、
限りでは、双胎妊娠で37週選択的帝切となった Boor らの報告症
十分な免疫のない成人が増加している。これに伴い妊婦麻疹、
例、33週時呼吸機能低下し帝切にて分娩に至った Yoshimura ら
新生児麻疹、先天性麻疹の発生が散見されている。
の報告症例のみであった。本症例は子宮増大に伴う愁訴が多か
妊婦麻疹は非妊婦に比し重症化しやすく、流早産率も30%と
ったが、切迫早産徴候はみられず、児の発育は良好であった。
高率であると言われている。分娩直前・分娩後に母体が発症し
しかし母体の呼吸機能低下、QOL 低下と骨盤への負担から分娩
た時は、児の先天性麻疹、新生児麻疹の発症に注意が必要とな
時期を決定せざるを得なかった。
る。今回当院において、分娩直前に発症した妊婦麻疹を経験し
迅速な対応で2次・3次感染を予防し得た。当院産婦人科・小児
科職員(平均年齢33.7歳)の麻疹抗体保有率は98%で、2次・3
胎児敗血症から早期新生児死亡となった1例
次感染を起こすような麻疹感受性者は存在しなかった。
麻疹の妊婦・胎児・新生児に対する影響を考えると、医療従
県立こども医療センター
事者の免疫獲得状況の把握が重要と考える。妊婦における麻疹
小 澤 克 典 丸 山 康 世 永 田 智 子
の抗体保有率は、当院及び他施設の研究でも90%前後で、感染
長 瀬 寛 美 石 川 浩 史 山 中 美智子
の可能性を留意すべきと考える。
今後妊娠可能年齢女性の麻疹感受性者が増加する恐れがあり、
【緒言】今回、preterm PROM による絨毛羊膜炎から急激な経
小児期のワクチン摂取を徹底するとともに、医療従事者や生殖
過をたどり、早期新生児死亡となった症例を経験した。剖検等
可能年齢女性における麻疹抗体価測定・ワクチン摂取を徹底す
の結果、児は胎児敗血症による死亡と診断された。
るなどの対策の必要性が示唆された。
【症例】33歳、2経妊1経産。妊娠26週5日、前期破水にて前
医に入院。妊娠 27 週 0 日、当院に母体搬送された。入院時、体
温36.7℃、WBC 15700/μl、CRP 0.49 mg/dl。児は骨盤位、推定
体重は1071 g、AFI 3.1 cm、羊水ポケット 1.3 cm。NST:baseline
前置胎盤と診断した奇胎合併妊娠:妊娠 27 週帝王
切開分娩後の推移
150 bpm、variability あり。塩酸リトドリン持続点滴、抗生剤(ビ
クシリン 2g / day)点滴、腟洗浄、クロマイ腟錠挿入を行う。
妊娠 27 週 3 日 WBC 12600 /μl、CRP 2.60 mg /dl。悪寒出現し、
日医大 武蔵小杉病院
吉 田 有 里
体温 39.6 ℃ に上昇。NST で baseline 180∼190 bpm、variability 低
下がみられたため CAM、NRFS と診断し、速やかに緊急帝王切
正常胎児と全胞状奇胎を同時に認める胎児共存奇胎は、文献
開術にて児を娩出。1020 g 男児 Apgar 0-0 であり、児の蘇生を試
上1∼10万妊娠に1例との報告がある。また、妊娠継続した場合、
みるも反応せず、早期新生児死亡となった。新生児の検査で
続発症の発症が懸念される疾患といえる。今回我々は、前置胎
IgM < 9 mg/dl、UmApH 7.113。動脈血液培養、及び肺、肝臓擦
盤と診断したが実際は胎児共存奇胎であり、分娩後、侵入奇胎
過培養にて E.coli が検出された。
に至った1例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。
【考察】絨毛羊膜炎から出生した早産児の敗血症発生頻度は
症例は31歳、0経妊0経産。排卵誘発後 AIH にて妊娠成立し、
有意に高く、周産期死亡が約 6 % に発生し、その多くはグラム
近医にて妊娠経過をフォローアップされていたが、妊娠22週よ
陰性菌が原因とされる。大腸菌は、極低出生体重児の早発型敗
り度重なる不正性器出血を認め、全前置胎盤の診断で、妊娠 24
血症の起因菌として最も多く、約 50 % を占める。胎児心拍モ
週 0 日当院紹介初診となった。初診時、性器出血が持続してお
ニタリング所見及び母体臨床症状から急速遂娩を選択したが、
り、超音波断層法にて内子宮口に接する胎盤と思われる画像が
早期新生児死亡を防ぐ事が出来なかった。絨毛羊膜炎による胎
得られたため、管理入院となった。
児感染症の中には劇症型の経過をたどる一群が存在する可能性
がある。
入院後、塩酸リトドリンの投与、腟洗浄を連日施行した。妊
娠26週に入り、突然、血圧上昇・尿蛋白の出現を認め、降圧剤
の投与及び硫酸マグネシウムの投与を開始したが、症状増悪の
ため、妊娠 27 週、母体搬送となった。妊娠 27 週 2 日、硫酸マグ
ネシウム投与するも血圧上昇し、抑制不能となったため、帝王
切開術施行。胎盤娩出時、肉眼上胞状奇胎と思われる腫瘤を同
66
(66)
時に多量娩出し、病理組織検査でも正常胎盤と胞状奇胎を認め
る胎児共存奇胎との診断であった。奇胎嚢胞部は FISH 法にて X
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
妊娠超初期正常経過と正確な妊娠日数の同定による
胎芽初期胎児の予後判定
染色体のみ検出された。
奇胎娩出後、hCG の下降が不良であったため、産褥30日、精査
ますだ産婦人科
及び加療目的に当院へ再紹介となった。精査を行ったところ、
増 田 恵 一
転移性病変は認めず、臨床的侵入奇胎の診断でメトトレキセー
ト単剤投与による化学療法を開始した。化学療法後は順調に
【背景】従来、妊娠超初期から初期の胎芽胎児の発育成長に
hCG の低下を認め、現在、 hCG 値はカットオフ値以下で経過し
はある程度の個体差が存在し正確な妊娠日数(受精後 +14 日)
ている。
及び分娩予定日を確認することは、事実上不可能とされてきた。
しかし、正確な妊娠日数は胎芽初期胎児の予後判定には必須
であり、早産 予定日超過妊娠の管理対処の基準となる。
【目的】種々のパラメーター測定により正確な在胎期間を同
第380回 日本産科婦人科学会神奈川地方部会
定し、それに基づいた初期の胎芽胎児の発育成長の経過観察か
ら予後の推移推定を試みる。
穿通胎盤であった急性腹症の1例
【対象と方法】
対象 妊娠超初期(受精後16日以降)の胎芽胎児
北里大 総合周産期母子医療センター
方法 5MHz 経腟走査法(Aloka ssd 6500 ssd 5500)使用
中 村 元 美 沼 田 彩 菊 地 信 三
正確な排卵日の同定(LHサージ検出、エコー上の卵胞
金 井 雄 二 庄 田 隆 天 野 完
消失、子宮内膜変化、腹水貯留、頚管粘膜変化、基礎
海 野 信 也
体温)出来た 314 例(期間 2004 年 1 月から 2007 年 5 月)
胎嚢(GS)
、卵黄嚢(YS)
、頭臀長(CRL)胎児心拍数
癒着胎盤の頻度は約 0.01 % で、穿通胎盤の頻度はその約 5 %
といわれている。胎盤剥離時に大量出血から出血性ショックに
陥る可能性が高く、産科的に重要な疾患の一つである。
今回腹腔鏡下筋腫核出後の妊娠例で妊娠24週に急性腹症で発
見された穿通胎盤の症例を経験したので報告する。症例は35歳、
(FHR)測定
【結果】以下日数は受精後の実日数 カッコ内は通常の妊娠
日数
16日目(妊娠4週2日)胎嚢(GS)径1.5mm出現
21日目(5週0日)まで GS 径1日 0.9 mm 増大 以後 GS 径は
2経妊1経産。IVF-ET にて二絨毛膜性双胎の妊娠成立。これまで
の妊娠経過では特に異常を認めず妊娠 24 週 3 日に腹痛を訴え受
個体差が大きく同定不可能
23日目(5週2日)卵黄嚢(YS)100 % 出現 YS 径 4.6 mm 以
診し、切迫早産の診断で入院となった。既往歴は14歳で SLE を
診断されプレドニン 2 mg を内服中で、29歳時に腹腔鏡による子
上予後不良
26日目(5週5日)後半 頭臀長(CRL)1.7 mm 胎芽心拍動
宮筋腫と卵巣のう腫の核出術を、32 歳で稽留流産のため子宮内
容除去術を施行していた。入院時現症はバイタルサインに著変
検出
27日目(5週6日)後半 CRL 2.5 mm 胎芽心音聴取可能
は認められなかったが子宮体部に圧痛と反跳痛を認めた。入院
FHR 中心値 100 b /s 以後 38 日目(7 週 3 日)まで 1 日 4
時検査所見では貧血と炎症反応の上昇を認めた。不規則な子宮
b/s心拍増加
収縮を認め、超音波検査では、胎児、胎盤に明らかな異常所見
CRL は1日 0.7 mm 増大(3時間 0.1 mm)
は認められなかったが母体腹腔に軽度の液体貯留像を認めた。
予後良好な場合は、個体差による計測値の分散は小さ
切迫早産の診断のもと塩酸リトドリンを投与し子宮収縮を抑制
したが、腹痛の増強及び腹膜刺激症状の持続、腹腔内出血を疑
い。
38日目(7週3日)FHR 150 b/s 以後 FHR は変動が大きく妊
い緊急 CT を施行し腹腔内に血腫の存在を認めた。Hb の低下も
娠日数同定不可能
あり試験開腹術を施行した。子宮表面に血管腫様の腫留を認め
【考察】受精後38日以前には各パラメーターの日令変化の個
その表面から出血を認めた。出血部の切除、修復は困難と判断
体差は少ない。発生学的に胎芽と胎児の移行はこの時期とされ
し帝王切開術を施行した。児は 714 g と 688 g で NICU 管理とな
ており、胎芽期の精密な測定をすることによってより正確な妊
った。胎盤娩出時に血管腫様の部分は穿通胎盤と判明し、子宮
娠予後推定が可能になる。臨床的には切迫流産(出血等)の概
筋層欠損部を切除し縫合した。術中出血量は 3600 g で MAP 6 単
念変化を促し、子宮外妊娠 胞状奇胎 等妊娠異常早期対処に
位と FFP 2 単位の輸血を施行、術後経過は順調で退院となった。
よる予後改善に貢献する。
妊娠24週に急性腹症をきたし穿通胎盤であった筋腫核出術後の
【まとめ】受精後16日以降21日まで GS 径測定。受精後23日
双胎妊娠を経験した。胎盤穿通部は筋腫核術出部にほぼ一致し
までに YS(4.6 mm 以上予後不良)出現確認。受精後 26 日以降
ており子宮筋腫核出術後妊娠では癒着胎盤の可能性を考慮いた
は FHR 測定(38日まで)
。CRL 測定により正確な妊娠日数(受
慎重な妊娠分娩管理が必要であると考えられた。
精後+14日)及び分娩予定日(受精後266日)の同定が可能であ
る。
平成20年7月(2008)
流産術後、大量性器出血を来たし子宮鏡下に治療し
得た1例
67 (67)
の肥厚を認めた。入院後、直ちにメソトレキセート隔日全身投
与計 4 日間(1 mg /kg)を開始した。胎嚢様エコーの扁平化を
認めるも、性器出血が持続、病理組織検査では少数の
昭和大 北部病院
Trophoblast を混じた凝血塊を認めるのみであった。投与終了後4
安 藤 直 子 佐々木 康 小 山 壽美江
日目の骨盤腔 MRI 所見では、子宮頚部後壁に T2 強調画像で
小 谷 美帆子 清 河 翠 栗 城 亜具里
10×5 mm 程度の高信号域を認め、扁平に変形しているものの、
近 藤 哲 郎 小 川 公 一 高 橋 諄
動脈相早期で辺縁に造影効果を認め、vascularity の存在が疑われ
た。出血持続するため、緊急手術施行、子宮頚部3時方向及び9
胎盤ポリープ、絨毛遺残は、産褥や流産後に大出血または不
時方向に Polysorb 糸で二重に結紮を加えた後に、8時方向の頚管
正性器出血をきたす疾患であり、安易に盲目的な子宮内掻爬を
内容物を胎盤鉗子にて緩徐に摘出した。病理組織学的検査では
行うと大量出血を引き起こし、場合によっては子宮摘出を余儀
頚管内容に Chorionic Villi 及び Decidual Tissue を認めた。その後、
なくされる可能性もある。今回我々は 2 回の子宮内掻爬の 47 日
薬物療法は追加せず、順調に尿中 hCG が低下、出血も減少した
後に、大量性器出血をきたし、子宮鏡下に止血し、その 8 ヶ月
ため、第24病日に退院となった。
後に正常妊娠に至った症例を経験したので報告する。症例は 38
【考察】
歳1経妊0経産。稽留流産の診断後子宮内容除去術を施行したが、
本方法は子宮頚管妊娠に対する薬物療法後の補助療法として、
術後 1 日目の超音波検査にて子宮内に遺残があり、患者様に説
有用な選択肢の一つであると考えられた。
明し承諾をいただき、再度子宮内容除去術を施行。術後30日間
性器出血が持続し、尿中 hCG も陰性化せず、超音波検査にて腫
瘤性病変を認めたため、MRI 検査を施行。子宮からの血流が豊
治療に難渋した臨床的侵入奇胎の1例
富である腫瘤を認めたため、子宮鏡下の切除手術を予定してい
たところ大量性器出血が出現した。緊急子宮鏡下止血手術を施
行し、止血しえた。子宮鏡下手術は安全かつ確実な方法であり、
聖医大
桑 原 真理子
従来の盲目的な子宮内掻爬に代わりうる手技であると考えられ、
特に子宮温存が必要とされる症例には有効な治療法であると思
【抄録】
われる。
侵入奇胎はメソトレキセート(MTX)単剤療法が第一選択で
あるが、15∼20 % の症例で MTX に抵抗性を示し、多剤併用療
法が必要となることがある。今回、我々は MTX 単剤療法及び
子宮動脈結紮が有用であった子宮頚管妊娠の1例
MA 療法が無効のため、MEA 療法を施行したところ血中 hGG
が測定感度以下になったにもかかわらず、副作用により子宮全
けいゆう病院
摘出術を余儀なくされた臨床的侵入奇胎の 1 例を経験したので
平 尾 薫 丸 小 迫 優 子 松 澤 由記子
報告する。
渡 邊 広 是 堀 裕 子 永 井 宣 久
【症例】
山 本 百合恵 泉 福 明 子 中 野 眞佐男
28歳 0経妊0経産。胞状奇胎の疑いで当院紹介受診し、子宮
甘 彰 華
内容掻爬術を 2 回施行した。術後 2 週間後、血中 hCG の再上昇
及び子宮内に再び多数の無エコー域を認めた。絨毛癌診断スコ
【背景】
アより臨床的侵入奇胎と診断し、WHO 予後スコアで低リスク群
子宮頚管妊娠は頻度が低いものの、その子宮温存療法におい
であったため、MTX 単剤療法を施行した。3クール施行した結
ては、薬物療法による妊娠中絶に加えて、出血のコントロール
果、効果認めなかったため、MA 療法に変更した。2クール施行
を目的とした治療を必要とされることが多い。今回我々は、薬
後、血中 hCG は110.523 mlU/ml から34 mlU/ml まで低下し、
物療法後に経腟的子宮動脈下行枝結紮を併用した頚管内容清掃
MRI 上も腫瘍の著明な縮小を認めた。3 クール目を予定してい
術により軽快し、大量出血を予防しえた症例を経験したので報
たが、grade 4 の好中球減少症、grade 3 口内炎を認め、本人・家
告する。
族が化学療法継続を拒否し、手術を希望したため、子宮全摘術
【症例】
を施行した。術後、血中 hCG は測定感度以下となったが、治療
24歳女性、1経妊0経産。2年前より約18ヶ月間、月経不順・
難治性であったこと、肺転移を認めていたことにより、MTX 単
不正出血のためソフィア C を処方されていた。
無月経5週5日にて前医受診。妊娠反応陽性で、経腟超音波断
層法では子宮内に胎嚢の所見を認めず、子宮頚管部に 3∼4 mm
剤療法を4クール追加し、血中 hCG の再上昇のないことを確認
し、現在外来にて経過観察中である。
【考察】
程の Echo Free Space を認めた。妊娠6週2日(排卵日で5週0日
難治性絨毛性疾患に対する化学療法は、支持療法が発達した
相当)には不正出血のため受診。子宮頚管部の Echo Free Space
現在においても、副作用により治療を継続できず子宮全摘術を
の増大を認めたため、子宮頚管妊娠の診断にて当院紹介受診と
余儀なくされた症例が多数報告されている。若年者に多い疾患
なった。
であるため、今後は投与量や投薬スケジュールの検討が必要で
来院時子宮頚管に 9.1 mm 胎嚢様エコー所見と子宮内膜 19 mm
あると考えられる。
68
(68)
子宮原発悪性リンパ腫の1例
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
更に増加、16 週で 7.2 × 106 ml、2.8 ml と更に上昇。20 週目で
9 × 106 ml、3.3 %、40 週目に 8.1 × 106 ml、20 %と運動率も上昇
横浜労災病院
したため、これらの精子を用いて19年2月末に ICSI を施行した
野 中 愛 子 門 脇 綾 梅 津 信 子
が、新鮮卵移植では妊娠せず、引きつづいて 19 年 7 月に再度
杉 浦 賢 中 山 昌 樹
ICSI を施行し、今回は胚盤胞 1 ヶ移植にて妊娠成立。その後順
調であったが 10 W 3 d で児心拍●となりD&C施行した。
子宮原発の悪性リンパ腫は全子宮悪性腫瘍中の 0.05 % と極め
て少ない。今回我々は著明な水腎症と腸管狭搾を伴った子宮原
【結論】
MHH は頻度は多くないが、r-FSH の治療により精子の出現が
発悪性リンパ腫を経験したので報告する。患者は 66 歳、女性。
期待でき、かつ ICSI 法によれば、数少ない運動精子でも妊娠が
2経妊2経産、HBV 陽性。腰痛、下腹部痛を主訴に来院、11 cm
可能で、かつ男性への外科的侵襲も必要ないので、TESE に入る
大に腫大した子宮と著明な右水腎症を認めた。検査データは
前に一度は試みてもよい方法と考えられる。
LDH 283 IU/l、Cre 1.05 mg/dl と軽度上昇を認めたが、子
宮頚部・内膜細胞診は陰性、腫瘍マーカーの上昇はなかった。
CT、MRI では著明に腫大した子宮をみとめ、連続した腫瘤が左
腎盂まで到達、傍大動脈リンパ節は腫大、肝表面には播種と思
腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)における膀胱損傷の検
討
われる像を呈していた。また注腸造影では S 状結腸から直腸上
部まで腫瘍の圧迫による狭搾を認めた。精査中に子宮は更に増
平塚市民病院
大し、子宮肉腫を疑い手術の方針としたが DIP にて左腎は描出
笠 井 健 児 本 田 能 久 東 條 龍一郎
されず、右腎は著明な水腎症があったため術前に右腎瘻を造設
古 谷 正 敬 藤 本 喜 展 齋 藤 優
した。子宮腫瘤は S 状結腸、膀胱、左後腹膜に硬く浸潤してお
持 丸 文 雄
り、子宮腫瘤核出術と人工肛門造設術を行った。摘出された腫
瘤は L- 26(+)
、UCHL- 1(−)
、ビメンチン(−)であり diffuse
46歳女性(4経妊、1経産)に対し、子宮腺筋症・子宮内膜症
large B-cell Lymphoma と診断。S-IL2R は 13,300 IU/L と高値で
の 根 治 手 術 と し て 腹 腔 鏡 下 子 宮 全 摘 術 ( total laparoscopic
あった。骨髄穿刺は異型細胞を認めず Ann Arbor 分類Ⅳ期、子
hysterectomy:TLH)を施行した。定型的に手術を進め、腟パイプ
宮原発とされ、R-THP-CO(リツキサン、ピラルビシン、シクロ
を経腟的に円蓋部に留置し、腟壁を harmonic scalpel にて切開・
フォスファミド、ビンクリスチン)による化療を開始(B 型肝
切断し子宮・両側付属器を経腟的に摘出した。腟断端を腹腔鏡
炎既往のためプレドニンは使用せず)
。化療後、残存腫瘤は急速
下に 2-0 vicryl 糸で縫合した時点で軽度の血尿を認め、尿バッグ
に縮小、右水腎症も改善し腎瘻を抜去。現在 7 コース終了した
の膨張傾向を察知した。trocar を抜去し閉創した後、膀胱造影及
が腫瘤は消失し、経過は順調である。
び膀胱鏡を施行したところ、膀胱後壁粘膜に 8 mm 程度の線状
創を確認診断した。膀胱切開にて膀胱粘膜の裂創を確認し 3 層
の縫合でこれを修復した。膀胱造影を行い造影剤の漏出がない
低ゴナドトロピン性無精子症に r-FSH 治療後 ICSI
にて妊娠に成功した1例
ことを確認し手術終了とした。術後 9 日目に再度膀胱造影を施
行し、漏出がないことを確認し膀胱内留置カテーテルを抜去し
た。術後 3 ヵ月時に施行した膀胱鏡では粘膜面に特に所見は認
ソフィアレディスクリニック
佐 藤 芳 明 阿久津 正
めず治療を終了した。手術の記録映像をもとに、膀胱損傷の部
位・時期・原因について検証を行ったところ、切断した腟管か
ら子宮を摘出する段階で、腟断端やや腹側の膀胱後壁に熱変性
最近男性不妊症のうち、低ゴナドトロピン性無精子症(MHH)
所見のない鈍的挫創が明瞭に確認された。経腟操作で腟パイプ
に対して、遺伝子操作による r-FSH が使用され、好結果が報告
が直接膀胱に触れ、恥骨側に圧した結果挫減が生じ損傷したと
されている。今回我々も TESE を予定した MHH に対して、まず
考えられた。腟壁が解放された後は腟パイプなどの non-powered
r-FSH 療法を施行、精子の出現をみたため、ICSI にて妊娠した
device が脆弱な軟部組織に直接触れる機会が増え、思わぬとこ
症例を経験したので報告する。
ろで損傷を来たす可能性がある。TLH を行う術者・助手は、術
症例は 32 歳で結婚後 4 年、他医で精液検査にて無精子症と診
視野のみならず「見えない術野」にも注意を払い、non-powered
断され、当院を受診。初診時検査では、精液中に数匹の不動精
device による鈍的損傷を回避する努力が必要である。術中に強
子を認めるのみでA200 SPERMIA と診断。血中 FSH 0.7 mIU/ml、
度の血尿や尿バッグの膨張など膀胱損傷を疑う徴候を認めた場
LH1.8 mIU/ml、T 2.0 mg/ml とホルモン的には MHH と診断さ
合には、麻酔覚醒前に膀胱鏡を施行、損傷を診断し、膀胱粘膜
れた。女性側のチェックでは大きな不妊要因は認めなかった。
及び平滑筋層を個別に縫合した 2 層以上の縫合を行うことが望
18年9月より前処置として週3回 hCG 5000 注を5週間行った
ところ、FSH 0.2 iu/ml、T 12 mg/ml と T の有意の上昇をみとめ
たが、精液検査では A20 のままであった。10 月より週 3 回、rFSH1 50 iu + hCG 5000 iu の同時注射を開始。8週間後には21匹/
全視野の運動精子が出現。12週で1.4×106 /ml、運動率2.6%と
ましい。
平成20年7月(2008)
69 (69)
編集後記
平成19年より編集部会委員を担当させていただいております加藤久盛です。今回は13題の原著論文を頂き編集部会と
しても丁寧に査読させていただきました。目立ったのは腹腔鏡関連の演題であり、6題と多く投稿を頂きました。確かに
腹腔鏡手術は患者に対して侵襲が少なくメリットも多い術式です。一方、術前診断が難解な症例の存在、あるいは術中
の副損傷の発生など多数の臨床例の中では遭遇することも事実であります。このような問題点とその考察が盛り込まれ
た今回の論文は、腹腔鏡を手がける臨床医に多いに役立つと思われました。また、希少な悪性腫瘍の報告、周術期管理
を要した症例、新生児管理関連の報告、また周産期医療対策部からは神奈川県救急医療中央情報センターの業務の現状
を報告頂きました。私も他誌の査読編集を手がけておりますが、本誌の編集部会は内容及び表現について細部にわたり
目を配っていると感じています。会員から頂いた貴重な論文をより洗練されたものになるよう編集部員として努力して
まいります。
神奈川県立がんセンター婦人科 加藤久盛
70
(70)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
神奈川県産科婦人科医会会則
日本産科婦人科学会神奈川地方部会会則
第1章 総 則
第1条 本会は社団法人日本産科婦人科学会定款第3条に規定され
第4章 会 議
第15 条 本会は総会と理事会の会議を開く。
た地方部会で、名称を神奈川地方部会と称し、事務所を神奈
第16条 本会の総会は代議員制により行う。代議員制による議員の
川県横浜市中区富士見町3丁目1番地 神奈川県内総合医療
名称は地区代議員とし、総会は地区代議員をもって構成され
会館4階に置く。
る。地区代議員以外の会員は総会に出席し議長の了解を得て
第2条 本会は、社団法人日本産科婦人科学会定款第6条に規定さ
れた神奈川県内の会員をもって当てる。
第3条 本会は、産科学および婦人科学の進歩発展に貢献し、併せ
て会員相互の親睦を図ることを目的とする。
第4条 本会は、前条の目的を達するために次の事業を行う。
学術集会の開催、機関紙および図書などの刊行、社団法人
意見を述べることができる。ただし表決に参加することはで
きない。
第17条 通常総会は年1回会長が招集し、事業計画の決定、予算の
審議、決算および監査の事項の承認、その他重要事項の協議
決定を行う。
2.臨時総会は、理事会が特に必要と認めた場合、または会員
日本産科婦人科学会が行う事業への協力、その他本会の目的
現在数の3分の1以上から会議に付議すべき事項を示して、
を達成するために必要な事業。
総会の招集を請求されたときは、その請求のあった日から30
日以内に招集しなければならない。
第2章 入会・退会・除名
3.総会の議長及び副議長は、出席地区代議員の互選で定める。
総会の開催は地区代議員定員数の過半数以上の者の出席を必
第5条
本会に入会を希望する者は、別に定めるところによりその
旨を申し出て会長の承認を得なければならない。
第6条
会員は別に定める入会金及び会費を納入しなければならな
い。なお会費は別に定めるところにより免除することができ
る。また、既納の入会金及び会費はいかなる事由があっても
返還しない。
第7条 会員は次の事由によりその資格を喪失する。
退会したとき、死亡したとき、除名されたとき、会長が認
めたとき。
要とする。
4.地区代議員が出席できない場合は予備地区代議員を充てる
ことができる。総会の議事は、出席者の過半数をもって決し、
可否同数のときは議長の決するところによる。
第18条 理事会は、会長が招集し、会長及び理事をもって構成する。
会議は原則、毎月1回開催される。ただし、会長が認めたと
き又は理事の2分の1以上から理事会開催の請求があったと
きは臨時理事会を30日以内に招集しなければならない。理事
会は、その過半数が出席しなければ会議を開くことはできな
い。
第3章 役員および地区代議員
第19条 監事、議長、副議長、日本産科婦人科学会役員並びに代議
員、および会長が必要と認め理事会で承認されたものは理事
第8条
本会に、次の役員を置く。
a 地方部会長(1名)
、理 事(約11名)
、
s
会に出席して意見を述べることができる。但し、表決に加わ
ることはできない。
監 事(2名)
第5章 会 計
第9条 地方部会長、理事及び監事は、別に定めるところにより総
会で選任する。
第10条 途方部会長は本会の職務を総理し、本会を代表する。理事
第20条 本会の会員は所定の会費を負担しなければならない。ただ
は、会長を補佐し、理事会の議決に基づき、日常の会務に従
し別に定める会員は、会費を免除される。本会の会計は会員
事し、総会の議決した事項を処理する。
の会費等をもって当てる。総会において会計報告をしなけれ
第11条 理事は、理事会を組織して、この会則に定めるもののほか、
本会の総会の権限に属せしめられた事項以外の事項を議決
ばならない。本会の会計年度は4月1日に始まり、翌年3月
31日に終わる。
し、執行する。
第6章 会則の変更
第12条 監事は、本会の業務及び財産を監査し、その結果を総会に
おいて報告するものとする。
第13条 本会の役員の任期は2年とする。重任を妨げない。
会則の変更
第14条 本会は、会則の定める職務を遂行するために、別に定める
第21条 本会の会則の変更は、理事会及び総会において、おのおの
ところにより、会員中より選任された地区代議員を置く。地
区代議員は、この会則に定める事項を審議し、又は本会の目
的について会長に意見を述べることができる。
その構成員の3分の2以上の議決を経なければならない。
平成20年7月(2008)
71 (71)
第7章 補 則
細 則
付 則
この会則は、平成14 年4月1日より実施する。
第22条 この会則の施行についての細則は、理事会および総会の議
決を経て、別に定める。
日本産科婦人科学会神奈川地方部会における
社団法人日本産科婦人科学会役員及び代議員選出に関する細則
第1章 総 則
第9条 選挙管理委員長は、役員及び代議員候補一覧表を作成し、
地区代議員に速やかに通知しなければならない。
第1条 本細則は、社団法人日本産科婦人科学会定款(以下定款)
、
第6章 選挙管理業務
および社団法人日本産科婦人科学会役員および代議員選任規
定(以下選任規定)に基づき、本会における社団法人日本産
科婦人科学会役員及び代議員候補者を選出するための方法を
第10条 投票は、選挙管理委員会の定めた方法にて無記名投票する。
定めたものである。
第11条 役員及び代議員の選挙は、有効投票の最多数の投票数を得
2.役員とは神奈川地方部会長、理事、監事とする。
た者、又は得票数の多い順に以って当選人とする。同数の場
第2条 本会は、社団法人日本産科婦人科学会の求めた数の役員及
合は当該候補者による決選投票とする。再度同数のときは抽
び代議員候補者を、神奈川地方部会所属の地区代議員によっ
選とする。日本産科婦人科学会代議員の選挙については、次
て選出するものとする。
点、次次点を補欠とする。但し、その有効期限は前任者の残
任期間とする。
第2章 役員及び代議員の任期
第12条 投票表紙の様式は、選挙管理委員長がこれを定める。
2.投票は、選挙する役職の定数に応じ、単記又は、連記とす
第3条 本細則で選出された役員及び代議員の任期は、2年とする。
る。
3.正規の用紙でない票、候補者以外の氏名を記載した票、候
第3章 選挙権・被選挙権
第4条 役員及び代議員候補者は、会員中より選出される。
補者の氏名が判読できない票、定められた数に満たないか、
超えた票は無効とする。
第13条 候補者の数が定数を超えないときは、出席地区代議員の議
第4章 選挙管理
第5条 役員及び代議員選挙を行うために、選挙管理委員会を設け
決により、投票を行わないで候補者を当選とすることができ
る。
る。
2.社団法人日本産科婦人科学会から役員及び代議員選出の依頼
第14条 議長は、地区代議員の中から選挙立会人3名を指名し、投
を受けた場合、速やかに選挙管理委員会を組織し、選出作業を
票および開票に立ち会わあせなければならない。また選挙管
開始しなければならない。
理委員長は、選挙立会人立ち会いの上、開票し、結果をただ
3.選挙管理委員は、候補者および推薦者以外の会員若干名を
当て、選挙に関する一切の業務を管理する。
4.選挙管理委員長は、委員の互選による。委員会は選挙終了
ちに議長に報告しなければならない。
第15条 役員及び代議員が選出されたとき、議長は速やかに当選人
の氏名および得票数を神奈川県産科婦人医科会会長に報告し
なければならない。同医会長は速やかに当選人に当選の旨を
後解散する。
通知し、かつ、当選人の氏名を会員に告知しなければならな
第5章 選挙の方法
第6条 地方部会長は代議員選挙の期日の20日前までに会員に公示
い。
付 則
しなければならない。
第7条 役員及び代議員候補者、またはこれを推薦するものは選挙の
期日10日前までの公示された日時に、選挙管理委員会に文書
で届けなければならない。
第8条 届出文書には、立候補者の役職名、氏名、住所、生年月日
を記載しなければならない。推薦届出文書には、前記記載の
ほか、推薦届出書者2名の氏名、年令を記載しなければなら
ない。
本規定は平成14年4月1日より施行する。
72
(72)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
日本産婦人科医会神奈川県支部会則
第1章 総 則
第15条 本会の総会は地区代議員制により行う。代議員制による議
員の名称は地区代議員とし、総会は地区代議員をもって構成
第1条 本会は社団法人日本産婦人科医会定款第3条に規定された
される。地区代議員以外の会員は、総会に出席し議長の了解
支部で、名称を神奈川県支部と称し、事務所を神奈川県横浜
を得て意見を述べることができる。ただし表決に参加するこ
市中区富士見町3丁目1番地 神奈川県総合医療会館4階に
とはできない。
第16条 総会は年1回支部長が招集し、事業計画の決定予算の審議、
置く。
第2条 本会は、社団法人日本産婦人科医会定款第3条に規定され
た神奈川県内の会員をもって当たる。
第3条 本会は社団法人日本産婦人科医会で規定された事業を行う
ことを目的とする。
決算および監査事項の承認、その他重要事項の協議決定を行
う。
2.臨時総会は、支部長が特に必要と認めた場合、または、会
員現在数の3分の1以上から会議に付議すべき事項を示し
て、総会の招集を請求されたときは、その請求のあった日か
第2章 入会・退会・除名
ら30日以内に招集しなければならない。
3.総会の開催は地区代議員定数の過半数以上の者の出席を必
第4条 本会に入会を希望する者は、別に定めるところによりその
旨を申し出て支部長の承認を得なければならない。
第5条 会員は別に定める入会金及び会費を納入しなければならな
い。なお会費は別に定めるところにより免除することができ
る。また、既納の入会金及び会費はいかなる事由があっても
要とする。
4.地区代議員が出席できない場合予備地区代議員を充てるこ
とができる。総会の議事は、出席者の過半数をもって決し、
可否同数のときは議長の決するところによる。
第17条 理事会は、支部長が招集し、原則毎月1回開催される。た
だし、支部長が認めたとき又は理事の2分の1以上から理事
返還しない。
第6条 会員は次の事由によりその資格を喪失する。
会開催の請求があったときは臨時理事会を30日以内に招集し
退会したとき、死亡したとき、除名されたとき、支部長が認
なければならない。理事会は支部長、及び理事をもって構成
めたとき。
し、理事の過半数が出席しなければ会議を開くことはできな
い。
第3章 役員および地区代議員
第18条 監事、議長、副議長、日本産婦人科医会役員並びに代議員、
第7条 本会に、次の役員を置く。
および支部長が必要と認め、理事会で承認されたものは理事
(1) 支部長(1名)
、理事(約11名)
会に出席して意見を述べることができる。但し、表決に加わ
(2) 監事(2名)
ることはできない。
第8条 支部長、理事及び監事は、別に定めるところにより総会で
第5章 会 計
選任する。
第9条 支部長は本会の職務を総理し、本会を代表する。理事は、
支部長を補佐し、理事会の議決に基づき、日常の会務に従事
し、総会の議決した事項を処理する。
第10条 理事は、理事会を組織して、この会則に定めるもののほか、
第19条 本会の会員は所定の会費を負担しなければならない。ただ
し別に定める会員は、会費を免除される。本会の会計は会員
の会費等をもって当てる。総会において会計報告をしなけれ
本会の総会の権限に属せしめられた事項以外の事項を議決
ばならない。本会の会計年度は4月1日に始まり、翌年3月
し、執行する。
31日に終わる。
第11条 監事は、本会の業務及び財産を監査し、その結果を総会に
第6章 会則の変更
おいて報告するものとする。
第12条 本会の役員の任期は1年とする。ただし重任を妨げない。
第13条 本会は、会則の定める職務を遂行するために、別に定める
第20条 本会の会則は、理事会及び総会において、おのおのその構
成員の3分の2以上の議決を経なければならない。
ところにより、会員中より選任された地区代議員を置く。地
区代議員は、この会則に定める事項を審議し、又は本会の目
第7章 補 則
的について支部長に意見を述べることができる。地区代議員
は支部正会員の中から選出し、その任期は 1 年とする。ただ
し重任を妨げない。
第4章 会 議
第14条 本会は総会と理事会の会議を開く。
第21条 この会則の施行についての細則は、理事会および総会の議
決を経て、別に定める。
付 則
この会則は平成14年4月1日より実施する。
平成20年7月(2008)
73 (73)
日本産婦人科医会神奈川県支部における
社団法人日本産婦人科医会役員及び代議員選出に関する細則
第1章 総 則
第8条 届出文書には、立候補の役職名、氏名、住所、生年月日を
記載しなければならない。推薦届出文書には、前記記載のほ
第1条
本細則は、社団法人日本産婦人科医会定款(以下定款)、
および社団法人日本産婦人科医会役員および代議員選任規定
(以下選任規定)に基づき、本会における社団法人日本産婦
か、推薦届出者2名の氏名、年令を記載しなければならない。
第9条 選挙管理委員長は、役員及び代議員候補一覧表を作成し、
地区代議員に速やかに通知しなければならない。
人科医会役員及び代議員候補者を選出するための方法を定め
第6章 選挙管理業務
たものである。
2.役員とは神奈川県支部長、理事、監事とる。
第2条 本会は、社団法人日本産婦人科医会の求めた数の役員及び
代議員候補者を、神奈川県支部所属の地区代議員によって選
出するものとする。
第10条 投票は、選挙管理委員会の定めた方法にて無記名投票とす
る。
第11条 有効投票数の最多数の投票数を得た者又は得票数の多い順
を以って当選人とする。同数の場合は該当候補者による決選
第2章 役員及び代議員の任期
投票とする。但し、再度同数のときは抽選とする。
日本産婦人科医会代議員の選挙については順位をつけ定数
第3条 本細則で選出された代議員の任期は、1年とする。但し、
重任を妨げない。
外を補欠とする。補欠にも順位をつけ、その有効期間は前任
者の残任期間とする。
第12条 投票用紙の様式は、選挙管理委員長がこれを定める。
第3章 選挙権・被選挙権
2.投票は、選挙する役職の定数に応じ、単記又は、連記とす
る。
第4条 代議員候補者は、会員中より選出される。
3.正規の用紙でない票、候補者以外の氏名を記載した票、候
補者の氏名が判読できない票、定められた数に満たないか、
第4章 選挙管理
超えた票は無効とする。
第13条 候補者の数が定数を超えないときは出席代議員の議決によ
第5条 役員及び代議員選挙を行うために、選挙管理委員会を設け
り、投票をおこなわないで候補者を当選とすることができる。
第14条 議長は、地区代議員の中から選挙立会人3名を指名し、投
る。
2.社団法人日本産婦人科医会から役員及び代議員選出の依頼
票および開票に立ち会わせなければならない。また選挙管理
を受けた場合、速やかに選挙管理委員会を組織し、選出作業
委員長は、選挙立会人立ち会いの上、開票し、結果をただち
を開始しなければならない。
に議長に報告しなければならない。
3.選挙管理委員長は、候補者および推薦者以外の会員若干名
を当て、選挙に関する一切の業務を管理する。
4.選挙管理委員長は、委員の互選による。委員会は選挙終了
第15条 役員及び代議員が選出されたとき、議長は速やかに当選人
の氏名および得票数を神奈川県産科婦人科医会会長に報告し
なければならない。同医会長は速やかに当選人に当選の旨を
通知し、かつ、当選人の氏名を会員に告知しなければならな
後解散する。
い。
第5章 選挙の方法
付 則
第6条 支部長は代議員選挙の期日の20日前までに会員に公示しな
ければならない。
第7条 役員及び代議員候補者は、またはこれを推薦するものは選
挙の期日10日前までの公示された日時に、選挙管理委員会に
文書で届けなければならない。
本規定は平成14年4月1日より施行する。
74
(74)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
神奈川県産科婦人科医会会則
(前 文)
第4章 会 員
本会は、産婦人科領域で車の両輪とも称される日本産科婦人科
学会神奈川地方部会と日本産婦人科医会神奈川県支部とが合体し
た医会形式をとることによって、両者の運営が円滑に行われ、か
つ会員が産婦人科医として必須の医学・医療の進歩、変遷の実態
(会員の資格)
第7条
会員は、原則として社団法人日本産科婦人科学会並びに
を把握するに便であるという理由により、昭和 51 年以降、医会形
式をとって現在に至っている。
社団法人日本産婦人科医会の会員でなければならない。
(入 会)
第8条
第1章 名称及び事務所
本会に入会しようとする者は、別に定める様式による入
会申込書に必要事項を記入の上、会員1名以上の推薦を得
て本会に提出し、理事会の承認を得なければならない。
(名 称)
第1条
2.届出事項に変更を生じたときも同様とする。
本会は、神奈川県産科婦人科医会(KANAGAWA
MEDICAL
ASSOCIATION
OF
OBSTETRICS
AND
GYNECOLOGY)と称する。
(事務所)
(退 会)
第9条
本会を退会しようとする者は、別に定める様式による退
会届出書を本会に提出しなければならない。
(会費及び負担金)
第2条 本会は、事務所を神奈川県横浜市中区富士見町3丁目1
番地 神奈川県総合医療会館4階に置く。
第 10 条 会員は、会費及び負担金を納めなければならない。
2.会費及び負担金の決定並びに徴収方法は、総会でこれを
定める。
第2章 組 織
3.退会し、又は除名された会員が既に納入した会費及び負
担金は返還しない。
(組 織)
第3条
(会員の義務)
本会は、神奈川県内に在住又は勤務する産科婦人科医師
を以て組織する。
第 11 条
会員は、本会の会則を守り、その秩序を維持するように
努めなければならない。
2.前項以外の者であって、本会に特に入会を希望する者は、
理事会の承認を経て準会員となることができる。
(会員の権利)
第 12 条 会員は、役員に立候補することができる。
第3章 目的及び事業
2.会員は、本会の会務に関し、本会に意見を述べることが
できる。
(会員の除名)
(目 的)
第4条
本会は、会員の学術向上並びに医道の高揚を図り、併せ
て会員相互の親睦を期することを目的とする。
第 13 条
本会会員にして、本会の名誉を損なう言動をなす者、又
は故なくして会員の義務を怠る者は、総会の議を経て、会
長がこれを除名することができる。
(名誉会員)
(事 業)
第5条
本会は、前条の目的を達成するため次の事業を行う。
(1) 学術集会、講演会並びに研修会に関する事項
(2) 研究、調査に関する事項
第 14 条
会長は、総会の議を経て、本会に功労のあった者に、名
誉会員の称号を与えることができる。
2.名誉会員の称号は終身とする。
(3) 社団法人日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医
第5章 役員及び顧問
に関する事項
(4) 医療保険に関する事項
(5) 母子保健に関する事項
(6) 会員福祉に関する事項
(7) 会誌、広報に関する事項
(8) その他必要な事項
(事業部)
第6条 本会の事業を遂行するため、次の各部を置く。
(1) 総務部 (7) 医療対策部
(2) 経理部 (8) 広報部
(3) 学術部 (9) 異常分娩先天異常対策部
(4) 編集部 (10) 悪性腫瘍対策部
(5) 医療保険部 (11) 周産期医療対策部
(6) 母子保健部 (12) その他
(役 員)
第 15 条 本会に次の役員を置く。
会 長 1名 副会長 2名
理 事 11 名 監 事 2名
2.役員の任期は2年とし、原則として同一役種の連続再任
は3期を限度とする。但し、理事はこの限りでない。
3.副会長は、1名は日本産科婦人科学会地方部会長、1名
は日本産婦人科医会神奈川県支部長とする。
(役員の職務)
第 16 条 会長は、本会を代表し、会務を総理する。
2.副会長は会長を補佐し、会長事故あるときはその職務を
代行する。その順位はあらかじめ理事会の議を経てこれを
平成20年7月(2008)
決める。
4.地区代議員会及び予備地区代議員は本会の役員を兼ねる
3.理事は、会長の旨をうけて会務を分掌する。
4.監事は会務を監査する。
(役員の選挙)
第17条
75 (75)
ことはできない。
5.地区予備代議員は、地区代議員に事故あるとき、その職
務を代行する。
役員等の選挙は、日本産科婦人科学会神奈川地方部会及
6.地区代議員及び地区予備代議員の任期は2年とする。欠
び代議員の選出に関する細則、日本産婦人科医会神奈川県
員により就任した地区代議員会及び予備地区代議員の任期
支部役員及び代議員選出に関する細則により、総会におい
は、その前任者残任期間とする。
て選出する。神奈川県産科婦人科医会会長の選出について
も適応することとする。
(役員の補欠選挙)
第18条
(地区代議員の職務)
第 25 条 地区代議員は、会則その他の規定に定める事項を審議し、
又は本会の目的について会長に意見を述べることができる。
役員に欠員が生じたときは、原則として1年以内に補欠
第8章 総 会
選挙を行う。
2.補欠として選任された役員の任期は、前任者の残任期間
とする。
(定時総会および臨時総会)
(顧 問)
第 26 条
第19 条 本会に顧問を置くことができる。
2.顧問は、総会の議を経て会長がこれを委嘱する。その任
総会は、代議員制とする。地区代議員以外の会員は総会
に出席し、議長の許可のもと発言することはできるが、議
決権はない。
期は委嘱した会長の任期終了までとする。
3.顧問は、会長の諮問に応え、本会の各種の会議に出席し
2.定時総会は年1回とし、原則として3月会長が招集する。
て意見を述べることができる。但し裁決に加わることはで
3.臨時総会は、理事会の議を経て、会長が招集する。又は
3分の1以上の会員の要請があった場合には、会長は速や
きない。
かに総会を開かなければならない。
第6章 理事会
(総会の招集)
第 27 条
(理事会)
第20条 理事会は、会長、副会長、及び理事を以て構成する。
総会の招集は、10 日以前にその会議において審議すべき
事項、日時及び会場を通知しなければならない。但し、緊
急を要する場合は、その期間を短縮することができる。
2.理事会は、会長が招集してその議長となる。
3.理事会は、その過半数が出席しなければ会議を開くこと
ができない。
(理事会の任務)
第21条
次の事項は理事会において討議、議決を経なければなら
ない。
(総会の任務)
第 28 条 次の事項は、総会の議決又は承認を経なければならない。
1.会則、付帯細則並びに諸規則の変更
2.事業報告
3.収支決算
(1) 総会の招集及びこれに提出する事項
4.事業計画並びに予算
(2) 会務運営に関する事項
5.会費の賦課並びに負担金
2.議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のとき
は議長の決するところによる。
(理事会への出席、発言)
第22条
監事、議長、副議長、日本産科婦人科学会及び日本産科
婦人科医会の役員並びに代議員、及び会長が必要と認め、
理事会で承認された者は理事会に出席して意見を述べるこ
とができる。但し、表決に加わることはできない。
(委員会)
第23条
会長は、必要と認めたときは、理事会の議を経て、委員
会を置くことができる。
6.地区代議員並びに地区予備代議員の変更
7.その他の事項
(総会の議長及び副議長の選挙並びに職務)
第 29 条 総会に議長及び副議長各 1 名を置く。
2.総会の議長及び副議長は、地区代議員の中から総会で選
出する。
3.議長及び副議長の任期は、各々の地区代表議員の任期終
了までとする。
4.総会の議長は、総会の秩序を保持し、議事を整理し、総
会を代表する。
5.副議長は、議長に事故あるときはその職務を代行する。
第7章 地区代議員および地区予備代議員
(総会の議決)
第 30 条
(地区代議員の定数及び予備地区代議員の定数)
第24 条 本会に地区代議員および予備地区代議員を置く。
2.地区代議員および予備地区代議員の選出は会員の互選に
よる。
3.その定数は別に定める規定により選出する。
総会の議決は、出席者の過半数を以てし、可否同数の時
は議長がこれを決める。
(総会への役員の出席発言)
第 31 条
本会の役員は総会に出席し、意見を述べることができる
が、表決に加わることはできない。
76
(76)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
第9章 会 計
付 則
(会 計)
第32条
1.本会則は昭和 51 年4月1日より施行する。
本会の会計は、会費、負担金、寄付金及びその他の収入
を充てる。
1.本会則は昭和 55 年4月1日より施行する。
1.本会則は平成元年4月1日より施行する。
2.必要のある場合は、臨時会費を徴収することができる。
1.本会則は平成8年4月1日より施行する。
3.既納の会費又は負担金は理由の如何を問わずこれを返還
1.本会則は平成9年4月1日より施行する。
しない。
1.本会則は平成10年4月1日より施行する。
(会計年度)
第 33条
1.本会則は平成12 年8月1日より施行する。
本会の会計年度は毎年4月1日に始まり、翌年3月 31 日
に終わる。
1.本会則は平成13 年6月1日より施行する。
1.本会則は平成14 年4月1日より施行する。
第 10 章 雑 則
(第 34 条 本会の会則の変更は、総会の出席者の3分の2以上の同
意を要する。
(細則及び規定)
第35条 本会則に必要な細則及び規定は別に定める。
神奈川県産科婦人科医会施行細則
(規程の制定)
第1条 この細則は、会則第 35 条によりこれを設ける。
(会員種別、所属等の異動)
第2条
会員の種別、又は住所あるいは就業所に変更があるとき
は、別に定めるものとする。
(会費未納者の退会)
第3条
督促にも拘らず、2年以上会費を納めない会員は、これ
を退会者とする。
2.会員死亡のときは自然退会とする。
(地区代議員の定数)
第4条
会則第 24 条による地区代議員は、理事会で承認した地区
(会員種別)
第 7 条 本会の会員種別は、次の通りとする。
(1) A会員 病院、診療所等の医療施設の産科 婦人科責任
者、又はこれに準ずる者
(2) B会員 日本産科婦人科学会専門医又は母体保護法指定
医で A会員以外の者
(3) C会員 日本産科婦人科学会専門医及び母体保護法指定
医のいずれでもない者
(4) 準会員 会則第3条第2項による者
(本会の会費)
第 8 条 本会の会費は次の通りとする。
毎に会員 20 につき1名、その端数 10 名を超えるときは1名
(1) A会員 年額 33,000 円
を加える。会員 20 名未満のときは1名とする。
(2) B会員 年額 22,000 円
2.横浜市、川崎市及びその他の県域との間に定数格差が生
(3) C会員 年額 14,000 円
じたときは、代議員会改選の年に比例配分による調整を行
(4) 準会員 年額 7,000 円
うものとする。
2.本会の入会金は 3,000 円とする。
3.前項の代議員定数の基準となる会員数は、改選直前の 12
月末日における会費完納の A,B 及び C 会員数とする。
4.地区代議員は予備地区代議員1名を指名する。
(役員等の選挙)
第 5条 本会役員、日本産科婦人科学会代議員、日本産婦人科医会
3.名誉会員並びに高齢会員(77 才以上で本会に 20 年以上在
籍)は、本会会費を免除することができる。
(上部組織の会費)
第 9 条 本会会員は、上記会費の他に次の上部組織の会費を併せて、
本会に一括納入するものとする。
代議員は、別に定める選挙規定により総会において選出す
(1) 日本産科婦人科学会費
る。但し、本会理事のうち2名は会長指名とする。
(2) 日本産科婦人科学会関東連合地方部会費
(事業部)
第 6条 会則第6条による事業部の構成は、概ね次の通りとする。
(1) 部長1名
(2) 部員若干名(原則として 10 名以内)
2.部長は、理事がこれにあたる。部員は会長が委嘱する。
(3) 日本産婦人科医会費
(4) 日本産婦人科医会関東ブロック会費
(職員規程)
第10条 本会職員に関する諸規程は別にこれを定める。
平成20年7月(2008)
77 (77)
付 則
1.本細則は昭和 55 年4月1日より施行する。
1.本細則は平成元年4月1日より施行する。
1.本細則は平成6年4月1日より施行する。
1.本細則は平成8年4月1日より施行する。
1.本細則は平成9年4月1日より施行する。
1.本細則は平成 12 年8月1日より施行する。
1.本細則は平成 14 年4月1日より施行する。
1.本細則は平成 15 年4月1日より施行する。
神奈川県産婦人科医会役員選挙規定
(役員等の選挙)
第1条
会則第 17 条及び施行細則第6条に基づく役員の選挙は、
本規程の定めるところによる。
(選挙に関する公示)
第2条
会長は、役員に立候補又は候補者を推薦しようとすると
きは、選挙の期日の 20 日前までに全会員に公示するととも
に、選挙管理委員会を委嘱しなければならない。
2.選挙管理委員は、候補者及び推薦者以外の会員より若干
名を以てこれに充てる。
3.選挙管理委員会は、選挙に関する一切の業務を管理し、
選挙終了後解散する。
4.選挙管理委員長は、委員の互選によりこれを定める。
(役員の任期)
第3条 医会会長、理事、監事の任期は2年とする。
(立候補の届出)
第4条 役員に立候補又は立候補を推薦しようとするときは、選挙
の期日 10 日前までの公示された日時に、選挙管理委員会に
文書で届出なければならない。但し、郵送による届出は認
めない。
(届出の様式)
第5条 前条の届出文書には、立候補の役職名、氏名、住所、生
年月日を記載しなければならない。
2.推薦届出文書には、前項記載のほかに推薦届出書者2名
(選挙立会人)
第9条 議長は、地区代議員の中から選挙立会人3名を指名し、
投票及び開票に立ち会わせなければならない。
(開 票)
第 10 条
選挙管理委員長は、選挙立会人の立合いの上投票箱を開
き、投票を正確に点検し、その点検が終わり次第、その結
果を直ちに議長に報告しなければならない。
(無効投票)
第 11 条
投票者の数が定数を超えないときは、出席地区代議員の
議決により、投票を行なわないで候補者を当選することが
できる。
(当選人の決定)
第 12 条
役員の選挙は、有効投票の最多数の投票数を得た者を以
って当選人とする。
2.投票同数の場合は決選投票とする。但し、再度同数の場
合は抽選とする。
(当選決定の報告)
第 13 条
当選人が決定したときは、議長は、速やかに当選人の氏
名及び得票数を、医会会長に報告しなければならない。
(当選人への当選決定の通知)
第 14 条
医会会長は、前条の規定による当選人決定の報告を受け
たときは、速やかに当選人に当選の旨を通知し、且つ、当
選人の氏名を告知しなければならない。
以上の氏名、住所を記載しなければならない。
3.以上に伴う書式はこれを定める。
付 則
(候補者の公示)
第6条 選挙管理委員長は、候補者一覧表を作成し、地区代議員
に速やかに通知しなければならない。
第7条 投票用紙の様式は、選挙管理委員長がこれを定める。
2.投票は、選挙する役職の定数に応じ、単記又は連記とす
る。
(無効投票)
第8条 次の投票は無効とする。
(1) 正規の用紙を用いないもの
(2) 候補者でない者の氏名を記載したもの
(3) 候補者の氏名を確認できないもの
(4) 役職に規定された定数を記載しないもの
1.本規程は昭和 55 年4月1日より施行する。
1.本規程は平成元年4月1日より施行する。
1.本規程は平成8年4月1日より施行する。
1.本規程は平成 12 年8月1日より施行する。
1.本規程は平成 14 年4月1日より施行する。
78
(78)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
神奈川産婦人科医会総会会議規定
第1章 総 則
(会 議)
第3章 発 言
(発言の許可)
第1条 会則第26条の総会の会議は本規定による。
(参 集)
第 10 条 地区代議員が発言しようとする時は、挙手して「議長」
と呼び、自己の議席番号を告げ、議長の許可を得なければ
第2条 総会は、開会定刻前に参集しなければならない。
2.議長は、開会前に着席地区代議員を、総務部員により報
告させる。
ならない。
(議長の議席での発言)
第 11 条 議長が、地区代議員として発言しようとする時は、副議
(会議中の出席及び退席)
第3条 地区代議員は、会議中に出席したときは自らその旨を議
長に報告し、また、退席しようとするときは議長の許可を
得なければならない。
(議席の決定及び議長選挙前の議長代行)
長を議長席につかせ、議席において発言しなければならな
い。副議長についても同じとする。
(発言内容の制限)
第 12 条
発言はすべて簡明を旨とし、当該議題の範囲を超えては
ならない。
第4条 総会の議席は、横浜市、川崎市及び県域の3ブロックの
2.議長は、その発言が前項の規定に反すると認めるときは
順送りとし、地区代議員個人は各ブロックの報告名簿順に
注意をし、なお、これに従わないときは発言を禁止するこ
従って決める。
とができる。
2.議長及び副議長が選挙されるまでは、出席地区代議員の
互選により仮議長を定める。
3.一般会員は総会に出席することはできるが、採決には参
(発言時間の制限)
第 13 条
議長は、必要があると認めたときは、あらかじめ発言時
間を制限することができる。
加することはできない。発言のある時は、議長の許可を必
第4章 表 決
要とすることはできるが、採決には参加することはできな
い。発言のある時は、議長の許可を必要とする。着席場所
は地区代議員と別にする。
一般会員の入退室は総務部員より議長に報告しなければ
(表決の宣言)
第 14 条
議長は、表決をとろうとするとき、表決に付する議案又
は動議の内容を明示しなければならない。
ならない。
2.宣告の際、議場にいない地区代議員は表決に加わること
(総会の開閉)
第5条 総会の開会及び閉会は、議長が宣言する。
(会議中の定足数の欠如)
第6条 議長は、会議中に定数を欠くと認めた時は、休憩又は延
会を宣言することができる。
2.議長は、会長と協議の上、改めて総会の招集を求めるこ
とができる。
はできない。
(表決の方法)
第 15 条
議長が表決をとろうとするときは、議題を可とする者を
起立又は挙手させ、その多数を認定して可否の結果を宣告
する。
2.議長が起立又は挙手者の多数を認定しがたいとき、又は
出席代議員の5分の1以上の者から異議の申立があったと
第2章 議 事
きは、議長は、投票で表決をとらなければならない。
3.前項の投票は、記名投票又は無記名投票とする。
(議題の宣告)
第7条
議長は、会議に付する案件を議題とするときは、その旨
(表決後の宣告)
第 16 条 表決の終ったときは、議長は、その結果を宣告する。
を宣告する。
第5章 動 議
(一括議題)
第8条
議題は、必要に応じて2件以上の議案を一括して議題と
することができる。
(案件の説明、質問及び表決)
第9条
会議に付する案件は、会議において提出者の説明を聞き、
質問、討論の後、表決する。
2.発言が尽きない時は、地区代議員から質疑又は討論集結
の動議を提出することができる。
3.前項の動議が採択されたときは、議長は討論を経ないで、
会議にはかってこれを決する。
(動議成立の条件)
第 17 条
地区代議員が提出する動議は、発議者のほかに2名以上
の賛成者がなければ、議題とすることができない。但し、
議事進行に関する動議はこの限りではない。
平成20年7月(2008)
79 (79)
第6章 議事録並びに書記
(議事録署名人)
第 21 条
議事録に署名すべき代議員の数は2名とし、議長がこれ
を指名する。
(議事録並びに書記)
第18 条 総会に書記を若干名置く。
付 則
2.書記は、議長がこれを選任する。
3.書記は、議長の命を受けて総会の事務を掌理し、議事録を
1.本規程は平成8年4月1日より施行する。
作成する。
1.本規程は平成 12 年8月1日より施行する。
(議事録の作成)
第19条
議長は、総会の会期ごとに、議事録を確認しなければな
1.本規程は平成 14 年4月1日より施行する。
1.本規程は平成 15 年4月1日より施行する。
らない。
(議事録の公表)
第20条
議事録の要旨は、神奈川県産科婦人科医会会報に掲載し
て、会員に公表する。
神奈川県産科婦人科医会傷病見舞金並びに弔慰金給付規程
第1条
この規程は会則第 42 条によりこれを定める。
付 則
(目 的)
第2条
本規程は、本会会員の長期傷病による休業又は死亡の際、
傷病見舞金又は弔慰金を給付することを目的とする。
(傷病見舞金)
第3条
1.本規程は昭和 55 年4月1日より施行する。
1.本規程は平成元年4月1日より施行する。
1.本規程は平成8年4月1日より施行する。
本会会員が傷病のため1ヵ月以上休業する場合は、傷病
1.本規程は平成 15 年4月1日より施行する。
見舞金 30,000 円を給付する。
(弔慰金)
第4条
本会会員が死亡の際は、弔慰金 50,000 円を給付し、更に、
生花又は花輪1基を贈る。
神奈川県産科婦人科医会旅費規程
(趣 旨)
第1条
この規程は会則第 43 条によりこれを定める。
(2) 交通費(運賃)は実費を支給する。
(3) 県外出張宿泊費 15,000 円
(目 的)
第2条 本会役員、会員及び職員が会務のため出張したときは日
付 則
当、旅費その他を支給する。
(1) 出張地域により次の日当を支給する。
1.本規程は昭和 55 年4月1日より施行する。
イ.居住地と同一の郡市医師会 3,500 円
1.本規程は平成元年4月1日より施行する。
ロ.隣接する郡市医師会 4,000 円
1.本規程は平成8年4月1日より施行する。
ハ.その他の郡市医師会 4,500 円
ニ.県 外 5,000 円
80
(80)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
神奈川県産科婦人科医会役員
会 長
八十島 唯 一
副 会 長
海 野 信 也
今 井 一 夫
監 事
杉 俊 二
東 條 龍太郎
理 事
明 石 敏 男
平 原 史 樹
石 塚 文 平
中 山 裕 樹
三 上 幹 男
持 丸 文 雄
高 橋 恒 男
中 野 眞佐男
朝 倉 啓 文
坂 田 寿 衛
田 島 敏 久
日本産科婦人科学会代議員
明 石 敏 男
朝 倉 啓 文
天 野 完
石 塚 文 平
和 泉 俊一郎
海 野 信 也
可世木 久 幸
甘 彰 華
木 口 一 成
榊 原 秀 也
坂 田 壽 衛
茂 田 博 行
白 須 和 裕
高 橋 諄
高 橋 恒 男
多和田 哲 雄
東 條 龍太郎
中 野 眞佐男
中 山 裕 樹
中 山 昌 樹
三 上 幹 男
宮 本 尚 彦
持 丸 文 雄
八十島 唯 一
日本産婦人科医会代議員
黒 沢 恒 平
近 藤 俊 朗
内 出 洋 道
桃 井 俊 美
神奈川県産科婦人科医会名誉会員
安 達 健 二
雨 宮 章
安 西 節 重
和 泉 元 志
岩 本 直
植 村 次 雄
内 田 勝 次
梅 内 正 利
遠 藤 哲 広
太 田 徹
片 桐 信 之
川 内 香 苗
岸 野 貢
倉 品 治 平
小 坂 順 治
小 松 英 夫
後 藤 忠 雄
斎 藤 真
佐 賀 正 彦
佐 藤 和 雄
佐 藤 啓 治
島 田 信 宏
代 田 治 彦
菅 原 章 一
鈴 木 健 治
住 吉 好 雄
関 口 允 夫
平 健 一
田 中 洋
多和田 金 雄
出 口 奎 示
戸賀崎 義 洽
西 岡 延一郎
根 岸 達 郎
林 茂
堀 健 一
前 原 大 作
矢内原 巧
八 木 伸 一
渡 辺 英 夫
日本産科婦人科学会名誉会員
雨 宮 章
佐 藤 和 雄
牧 野 恒 久
矢内原 巧
平成20年7月(2008)
81 (81)
日本産科婦人科学会功労会員
安 達 健 二
安 西 節 重
石 原 楷 輔
植 村 次 雄
内 田 勝 次
太 田 徹
長 田 久 文
片 桐 信 之
岸 野 貢
蔵 本 博 行
斉 藤 真
佐 賀 正 彦
佐 藤 啓 治
篠 塚 孝 男
島 田 信 宏
代 田 治 彦
鈴 木 健 治
住 吉 好 雄
関 口 允 夫
田 中 洋
出 口 奎 示
戸賀崎 義 洽
根 岸 達 郎
野 嶽 幸 正
林 茂
前 原 大 作
桃 井 俊 美
八 木 伸 一
神奈川県産科婦人科医会事業部
総 務 部
高 橋 恒 男
今 井 一 夫
内 出 洋 道
奥 田 美 加
川 内 博 人
小 西 康 博
齋 藤 克
齊 藤 寿一郎
齋 藤 優
佐 藤 善 之
杉 俊 隆
鈴 木 真
今 井 一 夫
高 橋 恒 男
小 平 博
塩 崎 一 正
茂 田 博 行
田 中 信 孝
石 塚 文 平
中 山 裕 樹
明 石 敏 男
岩 田 壮 吉
小 山 秀 樹
齊 藤 寿一郎
齋 藤 裕
榊 原 秀 也
佐 藤 芳 昭
庄 田 隆
白 須 和 裕
土 居 大 祐
西 井 修
平 澤 猛
中 山 昌 樹
経 理 部 小清水 勉
濱 野 聡
学 術 部
編 集 部
三 上 幹 男
平 原 史 樹
石 川 雅 彦
石 本 人 士
遠 藤 方 哉
岡 本 真 知
小 川 幸
可世木 久 幸
加 藤 久 盛
佐々木 茂
佐 藤 美紀子
上 坊 敏 子
鈴 木 隆 弘
高 島 邦 僚
高 橋 諄
田 村 みどり
平 尾 薫 丸
村 瀬 真理子
吉 田 浩
吉 原 一
林 保 良
植 村 次 雄(顧問)
高 安 義 弘
中 原 優 人
医療保険部
中 野 眞佐男
坂 田 壽 衛
内 田 伸 弘
岡 井 良 至
河 村 栄 一
根 本 明 彦
牧 野 英 博
母子保健部
坂 田 壽 衛
朝 倉 啓 文
飛鳥井 邦 雄
池 川 明
内 田 伸 弘
蛯 原 照 男
可世木 久 幸
窪 田 与 志
黒 沢 恒 平
近 藤 雅 子
鈴 木 真
鈴 木 理 絵
谷 内 麻 子
堀 敬 明
増 田 恵 一
田 島 敏 久
持 丸 文 雄
小 関 聡
土 田 正 祐
塗 山 百 寛
福 田 俊 子
持 丸 文 雄
田 島 敏 久
和 泉 玲 子
草 場 徳 雄
高 橋 尚 彦
徳 山 真 弓
中 村 秋 彦
星 野 眞也子
宮 本 尚 彦
医療対策部
小 澤 陽
光 永 忍
広 報 部
82
(82)
異常分娩先天異常対策部
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
朝 倉 啓 文
石 塚 文 平
安 藤 紀 子
石 川 浩 史
井 槌 慎一郎
内 田 能 安
小 川 公 一
後 藤 誠
斉 藤 圭 介
松 島 隆
丸 山 浩 之
望 月 純 子
中 山 裕 樹
三 上 幹 男
雨 宮 清
小野瀬 亮
小 林 陽 一
小 山 秀 樹
角 田 新 平
土 居 大 祐
仲 沢 経 夫
秦 和 子
林 康 子
林 玲 子
宮 城 悦 子
村 松 俊 成
横 山 和 彦
悪性腫瘍対策部
周産期救急対策部
平 原 史 樹
中 野 眞佐男
天 野 完
石 川 浩 史
石 本 人 士
井 槌 慎一郎
井 上 裕 美
小 川 博 康
小 川 幸
加 藤 良 樹
小 松 英 夫
澤 田 真 紀
代 田 琢 彦
多和田 哲 雄
平 吹 知 雄
堀 裕 雅
毛 利 順
神奈川県産科婦人科医会委員会
勤務医委員会
大 野 勉
茂 田 博 行
近 藤 朱 音
齋 藤 剛 一
杉 浦 賢
助 川 明 子
土 田 正 祐
平 原 史 樹
星 野 眞也子
小清水 勉
佐 藤 亀代司
田 中 信 孝
松 島 隆
IT 委員会
内 田 伸 弘
福 田 俊 子
奥 田 美 加
横 山 和 彦
医事紛争対策委員会
谷 昭 博
親睦委員会
高 橋 恒 男
萩 庭 一 元
関 本 英 也
伊 東 亨
金 子 清
持 丸 文 雄
渡 部 秀 哉
医療事故安全対策委員会
海 野 信 也
学校医委員会
植 田 啓
八十島 唯 一
東 條 龍太郎
高 橋 恒 男
有 澤 正 義
秦 和 子
林 玲 子
田 中 信 孝
平成20年7月(2008)
83 (83)
神奈川県産科婦人科医会代議員及び予備代議員
平成19年4月∼21年3月
議 長 伊 東 亨 副議長 吉 邨 泰 弘
番号
地区
代議員
予備代議員
33
横須賀
加藤 良樹
増田 良平
1
川 崎
吉邨 泰弘
泰 和子
34
〃
後藤 誠
内出 洋道
2
〃
宮本 尚彦
林 保良
35
鎌 倉
高山 正義
黒川 民男
3
〃
宮坂 昌人
熊澤 哲哉
36
平 塚
小清水 勉
平園 賢一
4
〃
可世木久幸
松島 隆
37
小田原
桑田 鈴木 秀行
5
〃
木口 一成
小林 陽一
38
茅ヶ崎
下田 隆夫
木島 武俊
6
〃
砂田 裕和
渡部 秀哉
39
座間・綾瀬
金子 清
代田 琢彦
7
〃
中原 優人
光永 忍
40
海老名
増田 恵一
武岡 豊文
8
〃
鈴木 真
諏訪 八大
41
藤 沢
新井 克巳
吉田 洋一
9
青 葉
脇田 幸一
林 茂隆
42
秦伊中
和泉俊一郎
杉 俊隆
10
〃
服部 一志
辻井 孝
43
〃
小田 力
西 健
11
旭
小松 英夫
栗山 勲
44
足柄上
野澤 昭
柴田 光夫
12
泉
和泉 元志
中沢 龍一
45
厚 木
並木 俊始
田中 信孝
13
磯 子
中田 裕信
香西 洋介
46
逗 葉
土田 正祐
丸山 浩之
14
神奈川
和泉 玲子
大石 和彦
47
相模原
和泉 滋
飯田 盛祐
15
金 沢
関本 英也
岩本 直
48
〃
吉村喜久緒
田所 義晃
16
市 大
石川 雅彦
奥田 美加
49
〃
岡井 良至
近藤 正樹
17
〃
榊原 秀也
吉田 浩
50
〃
上坊 敏子
天野 完
18
〃
宮城 悦子
佐藤美紀子
51
〃
西迫 潤
佐藤亀代司
19
〃
茶木 修
鈴木 理絵
52
大 和
田宮 親
向井 治文
20
港 南
市川 敏明
大吉 繁男
53
三 浦
塩崎 一正
橘田 嘉徳
21
港 北
石田 寛
小林 勇
22
栄
蛯名 勝忠
柳澤 和孝
23
瀬 谷
堀 裕雅
安達 敬一
24
都 筑
林 方也
塚原 睦亮
25
鶴 見
天野 善美
星野眞也子
26
戸 塚
伊東 亨
田林 正夫
27
中
戸賀崎義洽
太田 徹
28
〃
菅野 光
多田 聖郎
29
西
木村 知夫
浜野 聡
30
保土ケ谷
吉田 正
茂田 博行
31
緑
近藤 雅子
戸田 裕也
32
南
飯田 啓
市川 典彦
84
(84)
日産婦神奈川会誌 第45巻 第1号
日産婦神奈川地方部会誌投稿規定
a 本会誌掲載の論文は原則として会員のものに限る。
s 地方部会における一般講演は原著論文とし、またシンポジウム、特別講演は原則として依頼原稿として掲載
する。また、講演当日800字以内の抄録を提出し、これを掲載する。
d 論文の長さは表題、所属、著者名、要旨、本文、文献、図表、写真などを含めて8,000字以内とする
(図表、写真は一点400字に相当とする)。原稿にはページ番号を記載する。この範囲を越えたもの及
び特に費用を要する図表並びに写真に対しては実費を著者負担とする。
(文、タイトルの大文字・小文字に注意)
f 表 題、所属、著者名には英文も併記し、下記の様に記述する。
表 題: Autoradiographic study on the distribution of gonadotropin - releasing hormone in the rat ovary
所 属:1)Department of Obstetrics and Gynecology , Yokohama City University School of Medicine ,
Yokohama
2)Department of Obstetrics and Gynecology , Yokohama Minami Kyosai Hospital , Yokohama
姓 名:Taro YAMAKAWA
g 要旨は和文600字以内とし、下に和文5語以内のKey word を付記する。
h 図表、写真は順番をつけ、本文中に挿入部位を明示すること。図表中の文字は、縮小された場合にも明
瞭であるように留意すること。
j 文献は引用順とし、著者名全員と論文の表題を入れ、次のように記載する。
1)新井太郎、谷村二郎:月経異常の臨床研究、日産婦誌、1976;28:86−90
2)岡本三郎:子宮頸癌の手術、塚本治・山下清臣編、現代産婦人科学Ⅱ、東京:神田書店、1976;1
62−168
3) Brown H, Smith CE . Induction of labor with oxytocin . Am J Obstet Gynecol.
1976;124:882−890
4)Harris G. Physiology of pregnancy. In : Green P , eds. Textbook of Obstetrics , 2nd. New York &
London : McLeod Co.,1976;45−55
尚、本邦の雑誌名は日本医学雑誌略名表(日本医学図書館協会編)に、欧文誌は Index Medicus による。
本文中での引用部位の右肩には文献番号1)2)を付ける。
k 投稿の際、別頁の投稿規定チェックシートをチェックし添付する。
l 論文の採否は査読者の意見を参考にして編集会議で決定する。また、原稿は編集方針に従って加筆、削
除、修正などを求める場合がある。
¡0 掲載原稿の著作権は日産婦神奈川地方部会に帰属する。
¡1 論文投稿の際は原稿と共にコピー1部を添付する。
¡2 別冊を必要とする場合には原稿に必要部数を朱書すること。但し、別冊30部は無料とする。
¡3 印刷の初校は著者校正とする。
¡4 プライバシー保護のため症例報告の場合、個人が特定されないように患者氏名はもちろんのこと、初診
日、入退院日、手術日等の記述に十分注意すること。
¡5 投稿はフロッピーディスク、CD− ROM、MOなどの電子媒体を用いること。
その際、必ずプリントアウトしたものを添付すること。ウィンドウズ、マッキントッシュどちらでも良
く、ドキュメント形式、またはテキスト形式で保存したものとし、ファイル名、使用ソフト名を明記する。
¡6 投稿先:
〒232−0024横浜市南区浦舟町4−57 横浜市立大学附属市民総合医療センター婦人科内
神奈川地方部会誌編集部宛
Tel 045(261)5656, Fax 045(242)2275
改訂1990.9.19 1992.3. 3 2001.2.15
2003.9.11
2004.9. 9
2005.
12. 1
2007.1.25
平成20年7月(2008)
85 (85)
投稿規程チェックシート
□ 論文の長さは 8,000字以内になっているか
(図表、写真は一点につき 400字相当とする)
□ 表題、所属、著者名には英文も併記してあるか
□ 和文 600字以内の要旨はついているか
□ 和文5語以内の Key word は付記されているか
□ 文献の記載方法は正しいか
著者名全員が記載されているか
︵
キ
□ 症例報告の場合、個人が特定されないような記述になっているか
リ
ト
リ
︶
著者サイン *投稿の際、本シートをチェックし原稿に添付し送付してください
編集担当理事
三上幹男、平原史樹(副担当)
編集部員
石川雅彦、可世木久幸、加藤久盛、佐々木茂、佐藤美紀子、上坊敏子、菅野 光、
鈴木隆弘、高島邦僚、高橋 諄、高安義弘、田村みどり、平尾薫丸、村瀬真理子、
吉田 浩、吉原 一、林 保良、植村次雄(顧問)
「日本産科婦人科学会地方部会会誌」 第45巻1号(年2回発行)
平成20年7月20日印刷・平成20年7月25日発行
発 行 所
〒231-0037 横浜市中区富士見町3−1(神奈川県総合医療会館内)
日本産科婦人科学会神奈川地方部会
電 話 045(242)4867 http://www.kaog.jp/
編集兼発行人
日本産科婦人科学会神奈川地方部会
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