全文情報 - 労働委員会関係 命令・裁判例データベース

神奈川、平8 不1、平 11.3.2
命
令
申立人
A
申立人
B
申立人
C
申立人
D
被申立人
日本石油化学 株式会社
主
1
書
文
被申立人 は 、申立 人A 、同B、 同C及び 同Dに対し 、 平成6年 度の基 本給
の額を日本石 油労働組 合が賃金実態 調査一覧 表で示すモデ ル賃金の 各人 に対
応する基本給 の額に是 正し 、当該額 と既に支 払った額との 差額 に相 当する額
を支払わなけ ればなら ない。
2
被申立人 は 、申立 人A 、同B、 同C及び 同Dについて 平成6年 5月 21日以
降、それぞれ 班長又は 班長相 当職の 職にある ものとして処 遇しなけ ればなら
ない。
3
被申立人 は 、申立 人A 、同B、 同C及び 同Dに対し 、 第1項及 び第2 項に
定める措置に 伴い 、 平 成6年度の前 期賞与金 及び付加給 、 役付手当 その他給
与を是正し、 当該額と 既に支払った 額との差 額に相当する 額を 支払 わなけれ
ばならない。
4
被申立人 は 、第1 項及び第3項 に規定す る差額に相当 する額に 、支払 われ
るべき日の翌 日から支 払済みに至る まで 、年 率5分の割合 による金 員相当額
を加算して支 払わなけ ればならない 。
5
被申立人 は 、申立 人らに対し 、 その正当 な組合活動を 理由とし て同人ら の
賃金、賞与及 び昇進に ついて不利益 な取扱い をしてはなら ない。
6
被申立人 は 、本 命 令受領後 、速やかに 次 の文書を縦1 メートル 、横1.5メー
トルの白紙に 楷書で明 瞭に記載し 、 川崎工場 及び浮島工場 の入 口付 近の従業
員の見やすい 場所に 、 毀損すること なく 10日間掲示しなけ ればなら ない。
記
当社が、貴殿 らの賃金 及び昇進につ いて不利 益な取扱いを したこと は 、神
奈川県地方労 働委員会 において労働 組合法第 7 条第1号及 び第3号 に 該当す
る不当労働行 為である と認定されま した。
今後、このよ うな行為 を繰り返さな いように いたします。
平成
年
月
日
A
殿
B
殿
C
殿
- 1 -
D
殿
日本石油化学 株式会社
7
申立人ら のその余 の申立てを棄 却する。
理
第1
由
認定し た事実
1
当事者等
⑴
被申立人 日本石油 化学株式会社(以下「 会社」という 。)は 、石油化 学
製品の製造、 加工 、売 買等を目的と する株式 会社であり 、 肩書地に 本 社
を置き、川崎 市に川崎 事業所 、本社 機構の研 究部等を設け ている。 川 崎
事業所は、川 崎工場及 び浮島工場の 二つの工 場(製造部門 )と管理 部 門
とから構成 されている。平成10年6月20日現 在における従業員 数は、1,672
名である。な お 、会社 では従業員に ついて高 等学校や中学 校を卒 業 後直
ちに入社した 者を「順 調入社者」と 、それ以 外の者を「途 中入社 者 」と
して区分して いる。
⑵
申立人A は、 昭和 40年3月に中 学校を卒 業し 、同年4 月1日付 けで技
能職(現在の 技術職) として会社に 採用され た順調入社者 であり 、 昭和
41年1月に川 崎 工場製 造1課第3エ チレン係 に配属された 後 、同年 10月
に同課第1エ チレン係 に 、昭和45年6月に再 び同課第3エ チレン係 に 、
昭和60年5月に浮島工 場動力2課動 力1係に 、昭和63年8月に同課 動力
2係に配置転 換となり 、以降、引き 続き勤務 し 、現在に至 っている 。
Aは、申立外全 国 石油産業労働 組合連合 会日本石油労 働組合( 以下「日
石労組」とい う。) の 組合員であり 、浮島支 部に所属して いる。
⑶
申立人B は 、 昭和 41年3月に中 学校を卒 業し 、同年4 月l日付 けで技
能職(現在の 技術職) として会社に 採用され た順調入社者 であり 、 昭和
42年1月に川 崎工場製 造1課第3エ チレン係 に配属された 後 、昭和 45年
6月に浮島工 場のパイ ロットプラン を運転す る職場に 、昭 和48年 12月に
同工場品質管 理2課品 質管理3係に 、昭和59年4月に川崎 工場製造 2課
コンパウンド 係(製造 2 課は平成2 年 12月にCPセンター と改称) に 、
平成7年3月 に同工場 環境保全1課 消防警備 係(現名称は 、防 災安 全 係)
に配置転換と なり 、以 降、引き続き 勤務し 、 現在に至って いる。
Bは、日 石労組の 組合員であり 、川崎支 部に所属して いる。
⑷
申立人C は 、 昭和 41年3月に中 学校を卒 業し 、昭和45年6月21日付け
で技能職(現 在の技術 職)として会 社に採用 された途中入 社者であ り 、
昭和45年6月に浮島工 場品質管理2 課品質管 理3係に配属 された 後 、引
き続き勤務し 、 現在に 至っている。
Cは、日 石労組の 組合員であり 、浮島支 部に所属して いる。
⑸
申立人D は 、 昭和 48年3月に高 等学校を 卒業し 、同年 4月1日 付けで
技能職(現在 の技術職 ) として会社 に採用さ れた順調入社 者であり 、昭
和48年4月に 浮島工場 品質管理2課 品質管理 3係に配属さ れた後 、 平成
- 2 -
5年3月に川崎工場 品 質管理1課品質管 理3係に配置 転換となり、以降、
引き続き勤務 し 、現在 に至っている 。
Dは、日 石労組の 組合員であり 、川崎支 部に所属して いる。
⑹
日石労組 は 、 会社 、申立外日本 石油株式 会社及び申立 外日本石 油精 製
株式会社の従 業員によ り組織されて おり 、組 合員数は本件 申立時約 6,400
名である。な お 、日石 労組と会社と の労働協 約により 、会 社の社 員 は、
特別の定めが あるもの を除くほかは 、組合員 でなければな らないと され
ている。
2
申立人ら の組合活 動等
⑴
組合にお ける役職 等
申立人ら の組合に おける役職や 活動は 、 次のとおりで ある。
ア
Aは、昭 和 48年に川崎支部青年 部地区委 員を 、昭和49年に職場 委員
を務めた。一 方 、平成 7年以降 、浮 島支部執 行委員選挙に 立候補し て
いるが、落選 し続けて いる。
イ
Bは、昭 和 47年に職場委員を努 めた。一 方 、平成9年 に初めて 川崎
支部執行委員 選挙に立 候補したが 、 落選した 。
ウ
Cは、平 成 9年に 初めて浮島支 部執行委 員選挙に立候 補したが 、落
選した。
エ
Dは、昭 和 48年に浮島支部青年 部の地区 委員を 、昭和49年に同 部常
任委員を、昭 和 50年に同部事務長を 、昭和51年及び昭和52年に同部 副
部長を努めた 。一方 、 平成9年に初 めて川崎 支部執行委員 選挙に立 候
補したが、落 選した。
⑵
労災被災 者への支 援活動
Dは、昭 和48年5月11日に川崎 工場にお いて発生した 労災事故 で被災
した社員が同期入社 者 であったことから入 院 先に見舞いに行き 、その際、
同社員から「 労災打ち 切りをほのめ かされ 、 担当の医師か ら手首の 切断
あるいは固定 を言われ た。」と 訴えを受 けた ので 、神労委 平成6年 (不)
第13号事件( 以下「一 次事件」とい う。)の 申立人である Eに相談 の上 、
他の病院の医 師を紹介 したところ 、同社 員は その病院に転 院した 。一方 、
Eは、労災打 切りに関 し 、弁護士と 共に川崎 南労働基準監 督署に事 情を
訴えた。
⑶
新城第二 寮での事 件を巡る活動
Dは、昭 和50年、教育寮として 高卒新入 社員が入寮し ていた新 域第二
寮で寮管理人 が寮生に 対して暴力を ふるって いるとの訴え を受け 、 青年
婦人部で解決 に向け取 り組むことを 同部の常 任委員会に提 起すると とも
に、周辺住民 からの聞 取り調査を実 施して暴 力事件の事実 が確認さ れた
との調査結果を支部執 行部に示し、解 決への取組をするよう申し入れた。
⑷
出向協定 を巡る活 動
申立人ら は 、 昭和 59年当時、会 社社員の 出向者数が相 当数に上 ってい
たところ、出 向協定が なかったので 、組合と して出向協定 を締結す べき
- 3 -
であるとして 活動を始 めた。
Dは、社 内報「こ うもり」の人 事異動欄 により昭和 58年の出向 者数 、
出向先を調査 し 、他の 申立人ら及び 一次事件 の申立人であ るE 、 F 、G
及びH(以下 、
「一 次 申立人ら」と いう。)に対して 、122名の労 働者が出
向させられ、 ① 出向先 から更に別の 会社に出 向させられる いわゆる 二段
出向、②出向 者が 高齢 労働者であり 、原職復 帰ができずそ のまま退 職と
なる実質「中 高年労働 者の切り捨て 政策」と なっていると 説明した 。
C及びD は 、 Eら と共に 、近隣 の企業等 における出向 協定の有 無 、そ
の内容、法律 や行政上 の出向に関す る保護政 策等を調査し 、出向に 当た
っての本人の 同意 、派 遣先での同一 労働条件 の確保及び出 向期間の 明示・
公表の三つを 「出向3 条件」として まとめた 。
申立人ら 及び一次 申立人らは 、
「 出向3 条件」を後 記 ⑹の職 場 新聞「は
んどる」に掲 載し 、出 向からの労働 者保護の 必要性 、出向 協定を締 結す
べきことなど を訴える とともに 、職 場集会で も同旨の発言 をした。
⑸
職場新聞 「波紋」 及び「新工事 ニュース 」の発行・配 布
申立人ら は 、 昭和 50年代前半、 日石労組 の機関紙とは 別に 、独 自に職
場新聞として 「 波紋 」、「新工場ニュ ース」を 発行・配布し た。
ア
「波紋」
Aは、昭 和 51年9月、川崎工場 のH、ら と共に「波紋 編集委員 会」
名 義 の 「 波 紋 」 の 発 行 を 始 め 、 昭 和 52年 6 月 ま で に 全 5 号 を 発 行 し 、
郵 送 や 訪 問 な ど の 方 法 に よ り 配 布 し た 。「 波 紋 」 の 記 事 に は 、 春 闘 要
求、一時金闘 争 に関す るものがあっ た。
イ
「新工場 ニュース 」
B、C 及びDは 、昭和52年以降、浮島 工 場のF 、F 、Gらと 共 に「新
工場ニュース 編集委員 会」 名義の「 新工場ニ ュース」を全 4号まで 発
行し、郵送や 社宅の郵 便受けに投入 する方法 により配布し た。同 年 8
月発行の新工 場 ニュー ス3号には 、 職制によ る組合役員選 挙への 介 入
の記事や、立 候補にお ける執行部推 薦につい て 、組合幹部 の政権 た ら
い回しに都合 のよいや り方である旨 の記事が 掲載された。
⑹
職場新聞 「はんど る 」の発行・ 配布
申立人ら は 、 一時 申立人らと共 に 、昭和 54年から平成 7 年2月 まで 、
日石労組の機 関紙とは 別に 、独自に 職場新聞 として「はん どる」を 発 行
し、郵送や社 宅の郵便 受けに投入す る方法に より配布した 。その発 行名
義は、
「は んどる作 製 有志」、
「はんど る編集 委員会」又は「は んど る有志」
であり、発行 部数は 、 各1,000部程度で あっ た。
「はんど る」 の発 行が開始され た頃の川 崎工場勤労課 勤労係長 は 、そ
の配布者を目 撃 した場 合には知らせ るよう 、 勤労課員に指 示した。
「はんど る」には 、次のような 記事が掲 載された。
ア
春闘、一 時金に関 するもの
(ア) 昭和54年 、昭和55年、昭和59年から昭和 61年まで、昭 和63年、平
- 4 -
成元年及び平 成6 年の 春闘並びに昭 和 58年及び昭和60年の一時金交
渉の際の日石 労組の要 求案や会社の 回答内容 が掲載された 。
(イ) 昭 和 63年 2 月 発 行 の 「 は ん ど る No- 34」 に は 、「 会 社 に 主 導 権 を
とられた『 連 合』路線 をのりこえ 、 …(略) …大巾賃上げ 、 要求実
現に向けガン バリまし ょう! 」との 記事が掲 載された。
イ
出向協定 に関する もの
(ア) 昭和59年2月発行 の「はん どる 21号」か ら昭和 60年3月発行の「は
ん ど る No- 24」 ま で の 4 号 に は 、「 休 職 派 遣 ( 出 向 ) を 考 え る 」 と
題し、出向 3 条件を盛 り込んだ出向 協定の締 結が必要であ る旨の 記
事が連載され た。
(イ) 昭和63年2月発行 の「はんどる 号外」に は 、会社と日 石労組と が
締結する見通 しの出向 協定に出向3 条件が何 一つ含まれて いない旨
の記事や、 日 石労組が 出向協定に関 し組合員 に提案を行わ なかった
旨の記事が掲 載された 。
ウ
日石労組 の方針等 に関するもの
(ア) 昭 和 62年 8 月 発 行 の 「 は ん ど る 号 外 」 に は 、「 今 秋 発 足 す る 全 民
労連とは、 労 資協調を 旗じるしとし た同盟が 中心となって 右翼的労
働 運 を 結 集 す る も の で す 。」、「 ま た 毎 年 の 役 選 時 等 に お け る 会 社 職
制を使った介 入は 、い まや公然の事 実となっ ています。こ うしたこ
とに現在の労 働組合は 抗議しないば かりか …(略)… 」との記 事 や、
「日石」の 1,000名の 要員削減など について の記事が掲載 さ れ た。
(イ) 昭 和 63年 6 月 発 行 の 「 は ん ど る 」 に は 、「 今 日 の 組 合 の 態 度 に 対
する批判を大 会で 、役 選で追及し労 働組合の あるべき姿を とりもど
そうではあり ませんか !」との記事 が掲載さ れた。
(ウ) 平成3年 8月発行 の「はんどる №36」には、日石労組 の「運動 方
針案なんか変 ですね」 との記事や 、 独身寮に 関する会社の 提案 、自
衛隊のペル シ ャ湾派遣 等に関す る記 事が掲載 された。
エ
消防警備 部門の交 替制度等に関 するもの
昭和63年6月発行 の「はんど る No-36」には、
「 消防警備 部門 に 不安
全不健康な3 直24時間交替制度の提 案出る」との見出しと ともに 、
「…
(略)…一非 人間的な 合理化を絶対 許す事は できません。 …(略) …
組合が組合の 役割を果 たしていない 事に各職 場から批判の 声があが っ
ています…( 略) …皆 の団結で組合 をかえ『 合理化』攻撃 をハネ返 し
ましょう 。」との 記事 が掲載された 。
オ
日石エン ジニアリ ングへの出向 に関する もの
(ア) 昭和63年6月発行 の「はんどる No-35」には、工務メ ンテナン ス
部門を新会社 「日石エ ンジニアリン グ」とし て独立させる 旨の会社
の提案と、 実 質的強制 出向である旨 の記事が 掲載された。
(イ) 昭 和 63年 6 月 発 行 の 「 は ん ど る No- 36」 に は 、「 新 会 社 設 立 に よ
る(日石エン ジニアリ ング)労働条 件の低下 を許すな」と の見出し
- 5 -
とともに、 別 会社化に 「労働組合は 断固反対 を貫くべき」 との記事
が掲載され 、また、同 日付け「はん どる」に は 、
「『こう言 われた ら 』
十 ケ 条 で す 。」 と し て 、 出 向 を 拒 否 す る た め の 受 答 え の 例 が 掲 載 さ
れていた。
カ
塩浜ケミ カル倉庫 の労働条件に 関するも の
昭和60年6月発行 の「はんどる No-26号」には、塩浜 ケミカル 倉庫
株式会社に出 向してい る組合員が従 事する屋 外での 油精製 品搬出入 作
業について、一 刻も早 い組合の対応が望 まれる旨の記事が掲載 された。
⑺
日石労組 支部執行 委員選挙にお ける立候 補支援活動
ア
申立人ら の選挙支 援活動
申立人ら は 、日石 労組の支部執 行委員選 挙に一次申立 人らが立 候補
した際、同僚 などに対 して職場や会 社外で直 接に 、あるい は電話に よ
り一次申立人 らへの投 票を依頼する などの選 挙支援活動を 行った。 そ
の時期等につ いては 、 次のとおりで ある。
Aは、昭 和 60年からE及びGを 支援し 、 平成元年から はHにつ いて
も支援した。
Bは、昭 和 50年からE及びGを 支援し 、 昭和60年からはH(平 成4
年まで)及び Fを支援 した。
Cは、昭 和 50年からE及びGを 支援し 、 平成5年から はHにつ いて
も支援した。
Dは、昭 和 50年からE及びGを 支援し 、 平成5年から はFを支 援し
た。
イ
一次申立 人らの選 挙活動等
(ア) 選挙にお ける立候 補の方法等
日石労組 の支部執 行委員選挙に おける立 候補には 、執 行委員会 推
薦 ( 執 行 部 推 薦 )、 職 場 委 員 会 推 薦 、 職 場 推 薦 ( 職 場 の 20名 以 上 の
推 薦 )、 個 人 立 候 補 な ど の 方 法 が あ っ た 。 浮 島 支 部 に お い て E は 、
昭和51年以降 、Gも昭 和 53年以降、 個人立候 補を続けてい る。同支
部においては 、昭和50年以降、E、 G及びH 以外に個人立 候補の例
はない。一方 、川崎支 部ではH及び Fが昭和 60年以降、同 じく個人
立候補を続け ている。 川崎支部にお いては 、 昭和60年以降、 個人立
候補は、H及 びFのほ か 、一、二例 があった 。
支部選挙 管理委員 会は 、立候補 者の氏名 、主張、立候 補の方法 な
ど を 掲 載 し た 文 書 ( 以 下 「 選 挙 公 示 」 と い う 。) や 選 挙 結 果 を 組 合
掲示板で公示 しており 、会社は、こ れにより 立候補者の氏 名 、立候
補の方法、 定 数、候補 者別の得票数 を把握し ていた。
(イ) 選挙公示 における E 、G及びH の主張
a
昭和59年選挙公示
Eの主張 は 、休職 派遣について 「基本的 に反対し 、最 低限 ①本
人の同意②賃 金を含む 同一労働条件 の確保③ 派遣期間の明 示 、を
- 6 -
… ( 略 ) … 協 定 化 す る こ と が 急 務 と 考 え ま す 。」 な ど と い う も の
であり、 Gの 主張は 、 出向3条件を 含む出向 協定が必要で あるな
どというもの であった 。
b
昭和62年選挙公示
Eの主張 は 、「日 石・日精」の 1,000名の要員削減の 問題など を
取り上げ 、「全民 労 協 路線では我々 の生活も 権利も守れま せん 。」
などというも のであり 、Gの主張は 、全民労 協が「労資協 調」で
あ り 、 ま た 、 合 理 化 に よ る 労 働 強 化 等 の 問 題 を 取 り 上 げ 、「 会 社
に ハ ッ キ リ も の の 言 え る 組 合 が 必 要 で す 。」 な ど と い う も の で あ
った。
c
昭和63年選挙公示
Eの主張 は 、
「 非人 間的勤務形態 と夜勤の タダ働き(消警職 場)、
実質的定年短 縮となる 工務部門の大 量出向( 新エンジ設立 )…(略 )
…労働者を守 る立場の 労働組合が存 在する職 場とは思えな い実態
を作り出して います 。」などという ものであ り 、Gの主張 は 、「非
人間的な勤務 形態 」、「 新エンジ設立 による実 質的な定年短 縮を含
む労働条件の 低下 」、「 組合が組合員 の利益代 表としてのチ ェック
機能を果たし ていない 現在 、役 選こそ機 能回 復の チャンス である 」
などというも のであっ た。
d
平成元年 選挙公示
Eの主張 は 、「消 警職場等の『 合理化 』・労働条件の 改悪をな ん
の抵抗もせず に認めて しまう 、おか しいと思 いませんか? 変えま
しょう、 圧力 に屈する こと無く 、働 く者のた めの組織に」 などと
いうものであ り 、Gの 主張は 、消防 警備職場 の 24時間勤務 形態や
「日石エンジ 」への出 向といった問 題を取り 上げ 、「『合理 化』か
ら守れる組合 を。労働 者を守れる執 行委員を 」などという もので
あった。
e
平成3年 選挙公示
E及びG の主張は 、独身寮の一 人一部屋 制について取 り上げた
ものなどであ った。
f
平成5年 選挙公 示
E の 主 張 は 、「 安 全 、 健 康 無 視 の 人 減 ら し の 推 進 、 中 高 年 者 に
対する出向 、 消警の24時間勤務体制 …(略) …など、今、 組合が
取り組むべき 問題は山 積みです。 会 社の言う がままの組合 をもう
変えようであ りません か。」な どという もの であり 、Gの 主張は 、
「組合の変化 を求めて 立候補します 。」などと いうものであ った 。
Hの主張は 、「こ れ以 上の労働 強化 は許せま せん。」 などとい うも
のであった。
(ウ) 川崎支部 執行委員 選挙公示にお けるH及 びFの主張
a
平成元年 選挙公示
- 7 -
H の 主 張 は 、「 消 防 ケ イ ビ 係 の 非 人 間 的 で 実 質 的 人 べ ら し の 交
替 勤 務 」 な ど と い う も の で あ り 、 F の 主 張 は 、「 消 警 職 場 の 合 理
化」などに関 して取り 上げ 、「 組合の顔 が会 社の方を向い ている 」
などというも のであっ た。
b
平成3年 選挙公 示
H の 主 張 は 、「 日 石 労 組 の 存 在 意 義 が 問 わ れ て い ま す … ( 略 )
…38才で独身 寮から追 い出し社宅一 戸に3人 で入れという 無茶な
会社提案」な どという ものであり 、 Fの主義 は 、湾岸戦争 に対す
る日石労組の 姿勢につ いて取り上げ たものな どであった。
ウ
川崎支部 執行委員 選挙に関する 調査の申 入れ
H及びF は 、昭和 60年8月に会 社が実施 した班長研修 の出席者 への
聞取りから、Hらが会 社に敵対 的であるため当選させないでほしい旨 、
勤労課長が話 したこと が明らかにな ったとし て 、支部執行 委員長に 調
査を申し入れ た。
3
申立人ら に関する 上司の発言 、 観察記録 等
⑴
Aの上司 の発言
浮島工場 動力2 課 動力1係の係 長は 、A が昭和 60年5月に同係 に配属
されるに当り、あらか じめ係員全員 を集め 、
「今度配属され てくる Aは 共
産党員だから 気を付け るように」 と 発言した 。
Aが昭和63年8月 、浮島工場動 力2課動 力2係へ異動 した際の 歓迎会
で、同係の係 長は、
「 おまえはもう活動をやめたと聞いているがどうなの。」
とAに質した 。
⑵
Bの上司 の発言
Bが昭和59年4月 、川崎工場製 造2課コ ン パウンド係 に配属さ れた直
後、同係 長は 、Bを事務 所へ呼び出し 、
「 勤労か らいろいろ聞 いている が 、
政治的なこと をやって いるのか 。」と質 した 。
⑶
Dの上司 の発言
Dが平成 5 年3月 、川崎工場品 質管理1 課3係に配属 されたと き 、上
司の職長らが 係員 に 「
、 Dとつき合う と人事に 目を付けられ て昇進に 不 利
となる、だか ら注意し て つき合うよ う」など と述べた。
⑷
D及びB に係る観 察指導表の記 載
会社は、 平成元年 まで職務遂行 状況の把 握 、人材育成 、配置転 換・異
動資料等の目 的で 、「 観察指導表( 第一線監 督者用)」を従業 員ご とに 作
成していた。 川崎事業 所では 、観察 指導表に ついて 、組長 が一次観 察 者
として記入し た後 、職 長の二次観察 、係長の 三次観察 、課 長の最終 観 察
を経て、川崎 工場及び 浮島工場の勤 労課に提 出していた。
Dについ て昭和 56年に上司の組 長が作製 した観察指導 表の観 察 者特記
事項欄には 、
「共 産党 に入党してい るかは? がE 、F、C等その 方 の勉 強
会には出席し ている様 子。 最近は社 内で『は んどる』と言 う新聞を 作 り
他課の人間に 発送して いる事も明ら かになっ ている。」と記載さ れて いた
- 8 -
Bについて上司の組長が作成した観 察指 導表の観察者特 記事項 欄には、
「共産党には 入ってい ない様だが 、 E、F、 D、C等党の 勉強会に はた
まに出席して いる様子 」と記載され ていた。
⑸
Aに対す る大会申 込書の返送
Aは、会 社の体育 部マラソン班 に所属し ており 、マラ ソン班の 班長ら
から何か大会 があった ときには班の マ ネージ ャーに大会申 込書を送 付す
るよう言われ ていたた め 、平成6 年の夏頃 、
「新体連 」主催の 横浜 ロー ド
レース大会の 参加申込 書を同マネー ジャーに 送付したとこ ろ 、後日 、
「新
体連」は共産 党の団体 なので申し込 むことは できないとい う理由が 記載
された手紙と ともに 、 上記申込書が 返送され てきた。なお 、このマ ネー
ジャーは勤労 課に所属 しており 、また 、
「 新 体連」は「左翼 勢力の 職場浸
透策57パターンとその 対策事例」との 題名の 図書において 、
「企 業 浸透工
作と関係の深 い団体」 の一つで「日 共系体育 ・スポーツセ ンタ ーと して
発足した 。」と記 載さ れて いた。
4
会社の外 部研修等 について
⑴
会社は、 昭和 45年以降、係長、 班長(組 長)以上の「 監督者」 に新た
に任命した社 員につい て 、小田原市 に所在す る民間の研修 センター の研
修に出張の扱 いで派遣 し 、その費用 を負担し ている。同研 修への出 席は
任意であるが 、 ほとん どの者が出席 している 。
昭和55年2月開催 の研修では 、 2日間の 日程で「日共 の最近の 戦略・
戦術」、「北辰 電機労働 組合 、民主化 への斗い 」、「 日共・民 青問題と 監督
者の姿勢」などのテ ー マで講演が行 われた 。このうち 、
「北辰 電機 労働組
合、民主化へ の斗い」 については労 働組合顧 問が講師とな っており 、そ
の内容につい て参加者 の 一人は、会 社に対し て「 …(略) …労働 組 合は
どのようにし て 、日共 と斗ってきた か、…( 略)…職制が いかにし て対
処したかを話 しの中で 聞かされた」 と報告し た。
昭和52年に上記研 修に参加した 技術員は 、昭和53年9月頃、ア ルキベ
ンゼン職場の ミーティ ングにおいて 、同年の 川崎支部執行 委員 選挙 に関
し、
「 執行委員 のわく をはみだして いる 」、
「 代議員に一人 多く出た 、そう
いう思想的な 人がいる ような噂話し もある 。」などと述べ 、また 、「小田
原の研修」に おいて共 産党の見付け 方や共 産 党に会社を潰 されてし まう
ということな どについ て教わった旨 述べた。
⑵
川崎工場 勤労課勤 労係長は 、昭 和54年2月から、「民青対 策 100例集」
との題名の図 書を約3 年間、
「 左翼勢 力の職場 浸透策 57パターンとそ の 対
策事例」との題名 の図 書を約 1年間 、会 社の 図書館から借 り出して いた。
また、同課員 数名も 、 これらの図書 を長期間 借り出してい た。
5
会社の賃 金及び昇 進の制度
⑴
賃金制度
賃金は、 給与規則 及び日石労組 との労働 協約により定 められ 、 基準内
賃金(基 本給 、付加給(基本給 の一定割 合に 定額を加えた もの )、家族手
- 9 -
当、勤務地手 当 、住宅 手当及び役付 手当 )、諸手当(早出 残業手当 、休日
出勤手当等 )、休 職手 当 、退職手 当及び賞 与 金から構成さ れている 。毎月
の給与の支給 日は 25日とされ、基準 内賃金の 計算の対象期 間は 、 支 給月
の前月21日から当月 20日までである 。
このうち 、基本給 の昇給と賞与 金につい ては 、次のと おりとな ってい
る。
ア
基本給の 昇給
(ア) 概要
会社は、 毎年3月 21日付けで昇 給を実施 し 、新たに決 定した基 本
給 の 額 ( 以 下 「 新 基 本 給 」 と い う 。) を 5 月 の 給 与 支 給 の 際 、 各 社
員に「基本給 決定通知 書兼給与精算 額明細書 」(以下 「 昇給明 細 書」
と い う 。) に よ り 通 知 す る と と も に 、 差 額 を 支 給 し て お り 、 平 成 6
年度の昇給を 平成6年 3月 21日付けで実施し 、平成7年3 月 25日支
給の給与まで 適用して いた。 会社は 、平成6 年度の新基本 給の 通知
を平成6年5 月 24日に、差額の支給 を同年5 月 25日に行っ た。
(イ) 昇給の基 準に関す る日石労組と 会社との 協定
日石労組と会社は、平成6年度の基本給の昇給の基準について、
賃金、労働協 約改定交 渉を行い 、協 定を締結 した。
(ウ) 昇給査定
a
対象者及 び調査対 象期間
会社は 、 毎年3月 20日現在の在 籍社員で 同日現 在55歳未満の者
を対象に 、前 年3月 21日から1年間 を調査対 象期間として 基本給
の昇給査定を 実施して おり 、平成6 年度の昇 給査定の調査 対象期
間は、平成5 年3月 21日から平成6 年3月 20日までの1年 間であ
った。
b
査定者等
昇給査定 は 、第一 次査定及び第 二次査定 を経て最終決 定が行わ
れる。第一次 査定は 、 日常の業務遂 行におけ る指揮命令の 権限を
有する各所属 の課長級 社員が行い 、 第二次査 定は 、川崎事 業所に
あっては各次 長(平成 6年7月以降 は「部長 」に改称)又 は工場
長が行ってい る。
川崎事業 所の技術 職の査定は 、部 門別査 定 会議におけ る「調 整 」
及び次長会議 の検討を 経て 、川崎事 業所長の 権限で最終決 定 され
ており、 平成 6年度に ついては同年 3月 15日に決定された 。
c
査定方法 等
⒜
査定 対象 者の区分
会社は 、 3月20日現在の職階・ 待遇によ り 、班長、職 長 、技
術職(非役付 ) の区分 ごとに 、4月 l日現在 の年齢により 、25
歳以下の者を 技術職 ⑶ 、26歳以上45歳以下の 者を技術職 ⑵ 、46
歳以上の者を 技術職 ⑴ と区分し、各 区分ごと に昇給査定を 実施
- 10 -
している。
⒝
査定基準
会社は 、 職階・待 遇ごとに各査 定ランク の要件(業務 遂行能
力とその達成 度 、学歴 別入社年次基 準 、適用 される昇給査 定ラ
ンクの上限と 下限など の基準)を定め た「職 階別査定ガイ ド 表 」
( 以 下 「 査 定 ガ イ ド 」 と い う 。) に よ り 昇 給 査 定 を 実 施 し て お
り、この査定 ガイドは 、管理職に限 って開示 されている。
具体的に は 、次の 5項目につい て評価し 、総合勘案し て決定
している。
①
具体的 にどのよ うな成果を上 げたか。
②
業務を遂行するに当たりどの程度意欲的に取り組んだか。
③
上司・ 部下・同 僚に対してど の程度プ ラス面での影 響を与
えたか。
④
部下あるいは後輩の指導を、どの程度積極的に行ったか。
⑤
自ら提 案した業 務上の問題点 をどのよ うに解決した か。
⒞
考課ラン ク及び昇 給査定ランク
会社は 、 考課ラン ク(査定ガイ ドにおい て年齢ごとに 設定し
た 3 段 階 か ら 5 段 階 ま で の ラ ン ク を い う 。) の 範 囲 が 同 一 で あ
る一定の年齢 幅ごとに ブロック化し たものを 群として 、 群 ごと
に査定を行っており、申立人らの属する技術職⑵においては、
41歳以上 45歳以下を第 1群 、36歳以上40歳以下を第2群 、32歳
以上35歳以下を第3群 、30歳以上31歳以下を 第4群とする 4つ
の群が設定さ れていた 。
会社は 、 考課ラン クを昇給査定 ランクと 対応付け 、昇 給査定
ランクに従い 具体的な 査定昇給額を 決定して い る。申立人 らに
適用された平 成6年度 の昇給査定における順 調入社者の年 齢( 平
成6年4月1 日現在) と考課ランク 及び昇給 査定ランクと の対
応関係は 、別 表1のと おりであり 、44歳であ るA及び 43歳であ
るB及びCに ついては 、第1群に区 分される ため 、第1ラ ンク
から第4 ラン クまでの 考課ランクが 適用され 、これに対す る昇
給査定ランク としては 、技術職⑵S Bから技 術職 ⑵Cまで が対
応付けられ 、 また、39歳であるDに ついては 、第2群に区 分さ
れるため 、極 めて優秀 な者に対して 例外的に 使用す るラン クで
ある特別ラン ク及び第 1 ランクから 第4ラン クまでの考課 ラン
クが適用され 、これに 対する昇給査 定ランク としては 、 技 術職
⑵SAから技 術職 ⑵C までが対応付 けられて いた。
なお 、会 社は、途 中入社者に対 しても 、 卒業年次に従 い査定
ガイドを適用 している ため 、年齢と 考課ラン ク及び昇給査 定ラ
ンクとの対応 関係は 、 順調入社者の 場合と同 一である。
イ
賞与金
- 11 -
(ア) 概要
会社は、 社員に対 して毎年 11月下旬に前 期賞与金(冬 季賞与金 )
を、6月下旬 に後期賞 与金(夏季賞 与金)を 支給しており 、 平成6
年は、6月 29日に平成 5年 度後期賞 与金を 、 11月30日に平成6年度
前期賞与金を 支給した 。
(イ) 賞与金支 給額の算 出方法
会社は、 基本給及 び付加給の合 計額に普 通賞与金支給 率と出勤 率
を乗じて算出 する「普 通賞与金」と 、会 社が 査定により決 定する「 特
別賞与金」 と の合計に より賞与金支 給額を決 定している。 普通 賞与
金支給率は月 数で示さ れる「支給 係数」と「 普通賞与金の 配分比率 」
とを乗じて算 出されるが、これらは労 使交渉 により決 定されている。
会社は、賞与 金支給額 の総額につい て 、支給 日に「賞与金 支給明細
書」により各 社員に通 知している。
(ウ) 賞与金に 関する組 合との協議
賞与金の 支給基準 は 、労働協約 において 、その都度協 議して定 め
ることとされ ており 、 日石労組と会 社は 、毎 年交渉を行い 協定を締
結している。
なお、査 定の基準 について協定 されたこ とはなかった 。
(エ) 特別賞与 金の査定
会社は、 前期賞与 金に係る特別 賞与金の 査定について は 、 毎年 3
月21日から9 月 20日までを査定対象 期間とし て 10月から11月にかけ
て実施し、 後 期賞与金 の特別賞与金 の査定に ついては 、毎 年9月 21
日から3月 20日までを 査定対象期間 として6 月に実施して いる 。
なお、後 期賞与 に おける査定は 、原則と して前期賞与 金におけ る
査定がそのま ま適用さ れ 、さらに、 特別賞与 金の査定は 、 昇給査定
と基本的に 連 動してい た。
⑵
昇進制度
会社は、 職階に欠 員が生じた場 合に 、こ れを補充する 目的で下 位の職
階の者の中か ら後任者 を任命する「 職階昇進 」と 、昇進機 会の公平 を期
する趣旨で設 けた職階 に相当する職 である待 遇職を毎年定 期的に決 定し
任命する「待 遇 職昇進 」とを行って いる。技 術職の昇進は 、班長又 は班
長待遇(以下「班 長級 」という。)職 長又は 職長待遇(以下「 職長 級」と
いう。)の 順に発令 し 、直近の上位職 階を飛び 越 しての発令 及び昇進 した
翌年の更に上 位への発 令は 、原則と して行わ ないこととし ていた。
ア
候補者の 選定
待遇職昇 進の候補 者については 、本社に あっては部長 が 、川崎 事業
所にあっては 所長が選 定し 、人事部 長に申請 している。
川崎事業 所では 、 各課長が提出 する申請 書を部門ごと に開催す る課
長会議、工場 長及び次 長が出席する 次長会議 で審査の上 、 事業所と し
ての申請を決 定してい る。
- 12 -
イ
対象者の 決定及び 発令等
人事部で は 、待遇 職への昇進申 請につい て 、例年4月 下旬から 検討
を開始し、5 月中旬ま でに昇進対象 者を決定 し 、所属課長 が内示を 行
った上、氏名 を社内掲 示板に公示し ている。 昇進の発令は 、昭和 59年
度以降、毎年 5月 21日付けで行われ ている。
なお、職 階昇進の 発令者は 、川 崎事業所 の技術職につ いては川 崎事
業所長であっ た。
ウ
班長・班 長待遇の 要件
会社は、 班長・班 長待遇に求め る要件を 職階別職務基 準におい て次
のように定め ている。
(ア) 知識、技 術 、経験
・
一定範 囲の製造 装置 、工程及 び関連す る事項の専門 的な実務 知
識を有する。
・
設備に 関する豊 富な経験と習 熟した設 備の運転ない し保守等 の
技能を有する 。
(イ) 理解力、 判断力、 企画力
・
一定範 囲の設備 の運転状況を 把握し 、 運転状況の変 更 、 緊急 事
態の発生に当 たっても 適切な判断と 処理がで きる 。
・
作業上 の改善 、 品質の向上及 びコスト ダウン等に関 して 、問 題
点を発見し適 切な改善 案を創意工夫 して作成 できる。
(ウ) 指導力、 協調性、 安全意識
・
職場の チームワ ーク向上のた めに小集 団活動等にお いて率先 垂
範してことに 当たるこ とができる。
・
部下を 統率しな がら担当業務 を遂行す ることができ る。
・
会社の 定める安 全管理計画を 把握して 、常に安全活 動に努め る
とともに 、部 下・下級 者に対 しても 適切な指 導ができる。
(エ) 仕事に取 り組む姿 勢
・
生産性 の向上や 経費節減等の 会社方針 を理解し 、そ の方向に 沿
って部下を指 導するこ とができる。
・
どうす れば効率 的かつ効果的 に担当業 務を遂行でき るかを考 え
提案すること ができる 。
・
エ
常に自 分の知識 ・技能を向上 させよう とする意欲が 高い。
候補者の 選定要件
昇進候補 者の選定 に当たり 、次 の班長級 昇進候補者の 選定要件 を満
たした者の中 から 、上 記ウの要件に 照らし合 わせて昇進候 補者を選 定
している。
(ア) 昇進可能 な最低年 齢に到達して いること 。
(イ) 直近にお ける昇給 査定ランクが 低くとも 技術職 ⑵A又 は技術職 ⑴
A以上に あること 。
オ
待遇職昇 進の人数 枠等
- 13 -
班長待遇 への昇進 については 、 昇進可能 年齢に達して から5年 度目
まで一定数の 人数枠を 設けて昇進さ せ 、その 期間内に昇進 しない者 は
原則として昇 進させず 、6年度目以 降に昇進 させる場合は 、従来に 比
して極めて成 長度 ・向 上度が大きく 、任命す ることにより 本人のモ ラ
ールアップを 期待でき るとともに 、 所属職場 に好影響を与 えると考 え
られる者に限るとの運用になっていた。技 術 職の昇進可能最 低年齢 は 、
4月1日現在 の年齢で 36歳であった 。
なお、人 数枠につ いては 、開示 されてい ない。
6
申立人ら の基本給 及び賞与金の 支給状況 等
⑴
日石労組 の賃金実 態調査とモデ ル賃金
日石労組 調査部は 、毎年5月の 新基本給 の通知後に 、 組合員を 対象と
して「賃金調 査カード 」により賃金 実態調査 を実施し 、そ の結果を 「賃
金実態調査一 覧表 」と して公表して いる 。賃 金調査カード の記入項 目は 、
氏名、3月31日現在の 年齢 、所属、 学歴、入 社年月日 、順 調入社・ 途中
入社の別、3 月 20日現在の職種、昇 給前及び 昇給後の賃金 額などで あっ
た。
賃金実態 調査一覧 表は 、順調入 社者を学 歴及び職種に より区分 し 、年
齢別に集計し た平均賃 金が「学歴別 モデル賃 金」
(以 下「モデル 賃 金」と
いう。)として 示され ている。なお 、平成4 年度以降は 、技術 職の 学 歴別
の区分はなく なってい る。また 、モデ ル賃金の 算出上の役職 について は 、
平成6年度で は技術職 の場合 35歳で班長に、 44歳で職長に 昇進する もの
として取り扱 われ 、平 成5年度以前 について も 、技術職に ついては 35歳
で組長(班 長)に 、44歳で職長に昇進 するもの として取り扱 われてい た。
⑵
申立人ら の基本給
昭和59年度から平 成6年度まで の間の申 立人らの基本 給の額及 びモデ
ル賃金におけ る基本給 の額は 、次表 のとおり である。なお 、次表に おけ
る年齢は、各 年3月 31日現在のもの である。
ア
A
年度
本人①
モデル②
171,700円
172,550円
60年度
182,350
184,850
2,500
35
61年度
193,500
197,700
4,200
36
62年度
200,750
203,800
3,050
37
63年度
209,350
213,000
3,650
38
平成元年度
218,300
223,000
4,700
39
2年度
230,900
237,550
6,650
40
3年度
244,050
253,450
9,400
41
4年度
257,450
268,600
11,150
42
5年度
269,850
281,500
11,650
43
昭和59年度
- 14 -
差額(②-① )
850円
年齢
34歳
6年度
278,250
297,450
19,200
44
本人①
モデル②
差額(②-① )
年齢
162,300円
166,900円
4,600円
33歳
60年度
172,750
177,750
5,000
34
61年度
183,700
190,600
6,900
35
62年度
191,150
198,950
7,800
36
63年度
199,900
208,850
8,950
37
平成元年度
209,000
215,500
6,500
38
2年度
221,650
230,950
9,300
39
3年度
234,850
245,950
11,100
40
4年度
248,250
260,900
12,650
41
5年度
260,700
274,200
13,500
42
6年度
269,300
287,850
18,550
43
本人①
モデル②
差額(②-① )
年齢
160,100円
166,900円
6,800円
33歳
60年度
169,900
177,750
7,850
34
61年度
180,500
190,600
10,100
35
62年度
187,350
198,950
11,600
36
63年度
195,450
208,850
13,400
37
平成元年度
203,900
215,500
11,600
38
2年度
215,850
230,950
15,100
39
3年度
228,350
245,950
17,600
40
4年度
241,050
260,900
19,850
41
5年度
252,800
274,200
21,400
42
6年度
260,800
287,850
27,050
43
本人①
モデル②
差額(②-① )
年齢
144,550円
144,550円
60年度
154,600
154,900
300
30
61年度
165,100
165,750
650
31
62年度
172,100
173,050
950
32
63年度
180,300
181,550
1,250
33
平成元年度
188,850
187,400
-1,450
34
2年度
200,950
202,850
1,900
35
3年度
213,550
218,550
5,000
36
4年度
226,350
232,100
5,750
37
イ
B
年度
昭和59年度
ウ
C
年度
昭和59年度
エ
D
年度
昭和59年度
- 15 -
0円
29歳
⑶
5年度
238,250
245,200
6,950
38
6年度
246,600
258,100
11,500
39
申立人ら の賞与 金
ア
普通賞与 金
昭和60年度から平 成6年度まで に申立人 らに支給され た賞与金 の う
ち ,普 通 賞 与 金 の 額 及 び モ デ ル 賃 金 に つ い て 計 算 し た 普 通 賞 与 金 の 額
( 以 下 「 モ デ ル 普 通 賞 与 金 」 と い う 。) は 、 次 表 の と お り で あ る 。 な
お 、 日 石 労 組 は ,賞 与 金 に つ い て 職 種 ・ 学 歴 ・ 年 齢 別 の 平 均 支 給 額 は
発表していな い。
(ア) A
年度
昭和60年度
本人①
モデル②
差額(② -① )
1,438,600円
1,452,000円
11,400円
61年度
1,523,800
1,550,800
27,000
62年度
1,538,400
1,566,700
28,300
63年度
1,610,300
1,636,600
26,300
平成元年度
1,696,700
1,729,700
33,000
2年度
1,777,700
1,822,300
44,600
3年度
1,945,900
2,010,800
64,900
4年度
2,064,700
2,148,000
83,300
5年度
1,813,000
1,890,100
77,100
6年度
1,836,200
1,937,600
101,400
本人①
モデル②
差額(② -① )
(イ) B
年度
昭和60年度
1,361,300円
1,400,300円
39,000円
61年度
1,445,100
1,493,200
48,100
62年度
1,462,700
1,520,000
57,300
63年度
1,535,500
1,601,300
65,850
平成元年度
1,662,200
1,683,700
61,500
2年度
1,704,800
1,766,900
62,100
3年度
1,871,400
1,953,800
82,400
4年度
1,990,100
2,086,400
96,300
5年度
1,750,800
1,839,300
88,500
6年度
1,776,400
1,882,000
105,600
本人①
モデル②
差額(② -① )
(ウ) C
年度
昭和60年度
1,340,800円
1,400,300円
59,500円
61年度
1,420,600
1,493,200
72,600
62年度
1,435,300
1,520,000
84,700
63年度
1,503,200
1,601,300
98,100
- 16 -
平成元年度
1,584,400
1,683,700
99,300
2年度
1,662,000
1,766,900
104,900
3年度
1,821,700
1,953,800
132,100
4年度
1,934,500
2,086,400
151,900
5年度
1,699,600
1,839,300
139,700
6年度
1,722,200
1,882,000
159,800
本人①
モデル②
差額(② -① )
(エ) D
年度
昭和60年度
イ
1,215,400円
1,216,600円
1,200円
61年度
1,296,000
1,299,800
3,800
62年度
1,315,700
1,321,900
6,200
63年度
1,383,800
1,392,400
8,600
平成元年度
1,464,500
1,463,800
-700
2年度
1,544,400
1,546,200
1,800
3年度
1,701,700
1,729,500
27,800
4年度
1,814,800
1,858,400
43,600
5年度
1,600,600
1,643,600
43,000
6年度
1,627,400
1,688,000
60,600
平成6年 度の賞与 金
平成6年 度におい て申立人らに 支給され た賞与金とモ デル賃金 につ
いて計算した 平成6年 度賞与金の額 は 、次表 のとおりであ る。
申立人
備考
本人①
モデル②
差額(② -① )
A
1,932,800円
2,091,400円
158,600円
B
1,876,300
2,007,200
155,100
C
1,787,400
2,007,200
244,000
D
1,724,000
1,822,100
98,100
A のモデル 賞与金額は 、 日石労組 の機関誌「日 石労」に 掲載
された中卒班 長の平均 賞与金額及び 平均特別 賞与金額から 、班
長における特 別賞与金 の平均配分割 合を求め 、モデル賃金 に適
用したもので あり 、B 及びCのモデ ル賞与金 額は 、夏季賞 与金
については 中 卒技術職 の、冬季賞与 金につい ては班長の各 々の
平均賞与金 額 及び平均 特別賞与金額 から 、夏 季賞与金につ いて
は中卒技 術職 における、冬季賞 与金については班長 における各々
の特別賞与金 の平均配 分割合を求め 、モデル 賃金に適用し たも
のであり 、ま たDのモ デル賞与金額 は 、高卒 班長の平均賞 与金
及び平均特別 賞与 金額 から 、班長に おける特 別賞与金の平 均配
分割合を求め 、モデル 賃金に適用し たもので ある。
7
申立人ら の昇進状 況
⑴
A
- 17 -
ア
平成6年 5月 21日現在の中卒技 術職の在 籍状況は別表 2のとお りで
あり、全在籍 者 355名のうち職長級 が 48名、班長級が210名、いず れに
も 昇 進 し て い な い 者 ( 以 下 「 非 役 付 技 術 職 」 と い う 。) が 97名 で 、 約
73%の258名が班長級 以上に昇進し ていた。
昭和40年卒業者は Aを含め 27名が在籍し 、そのうち23名が班長 級の
職にあり、非 役付技術 職はAを含め 4名であ った。なお 、 川崎地区 及
び浮島地区に 勤務する 社員のうちA と同期入 社 、同学歴の 者では 、 平
成 7年 6 月 20日 現 在 、 班 長 級 の 者 は 17名 で あ り 、 非 役 付 技 術 職 は A を
含めて2名で あった。
イ
昭和40年卒業者の 昭和 59年度から平成6 年度までの在 籍状況は 別表
4のとおりで あり 、昭 和63年度には28名中過 半数の 15名が班長級の 職
に昇進してい た。
なお、昭 和 59年度前に25名が退職し、昭 和62年度又は 昭和 63年度に
1名が、昭和 63年度又 は平成元年度 に 1名が 退職していた 。
⑵
B及びC
ア
別表2に より平成 6年5月 21日現在の昭 和 41年卒業者 の在籍状 況を
見ると、B及 びCを含 め 19名が在籍 し 、その うち 10名が班長級の職 に
あり、非役付 技術職は 同人らを含め 9名であ った。なお 、 川崎地区 及
び浮島地区に勤務する社員のうち、Bの同期入社・同学歴の者では、
平成7年6月 20日現在 、5名が班長 級であり 、Bを含めた 3名が昇 進
していなかっ た。一方 、Cの同期入 社・同学 歴の者では 、 平成7年 6
月20日現在、 1名が班 長級であり 、 C1名が 昇進していな かった。
イ
昭和41年卒業者の 昭和 59年度から平成6 年度までの在 籍状況は 別表
5 の と お り で あ り 、 平 成 6 年 度 現 在 、 19名 中 10名 が 班 長 級 で あ っ た 。
なお、昭和59年度前に 20名が退職し ていた。
ウ
Cは定時 制高等学 校を卒業して いるが 、 会社は、技術 職の人事 上の
取扱において 、定時制 高校卒業者に ついては 、学歴年次は 中学校卒 業
の年次をもっ て管理し ている。
⑶
D
ア
平成6年 5月 21日現在の高卒技 術職(順 調入社者のみ )の在籍 状況
は 別 表 3 の と お り で あ り 、 全 在 籍 者 191名 の う ち 、 班 長 級 の 者 が 在 籍
す る 昭 和 52年 以 前 の 卒 業 年 の 者 に つ い て 見 る と 、 在 籍 者 134名 の う ち
班長級が98名 、非役付 技術職が 36名で、約73%の者が班長 級に昇進 し
ていた。
昭和48年卒業者( 順調入社者の み)はD を含め 23名が在籍し 、 その
うち22名が班長級の職 にあり 、D1名が 非役 付技術職であ った 。な お 、
川崎地区及び 浮島地区 に勤務する社 員のうち 、Dの同期入 社・同学 歴
の者では、平 成7年6 月 20日現在、 4人が係 長 、l人が主 任 、 22名が
班長級、D1名が昇進していなかった。このうち、係長及び主任は、
技術職から職 種転換し た者である 。
- 18 -
イ
昭和48年卒業者の 昭和 59年度から平成6 年度までの在 籍状況は 別表
6のとおりで あり 、平 成4年度現在 、34名中25名が班長級 となって い
る 。 な お 、 昭 和 59年 度 前 に 5 名 、 昭 和 62年 度 又 は 昭 和 63年 度 に 1 名 、
平成4年度又 は平成5 年度に 1名が 退職して いた。
8
申立人ら の昇給査 定
⑴
平成6年 度の昇給 査定
ア
川崎事業 所のA 、 B及びCを含 む中卒技 術職の中卒技 術職 ⑵ の 41歳
以上45歳以下の年齢区 分に属する 31名に対す る昇給査定は 、次のと お
りであった。
技術職⑵SB (第 1ラ ンク )4名
技術職⑵A
(第2ラ ンク) 20名
技術職⑵B
(第3ラ ンク)5名
技術職⑵C
(第4ラ ンク) 1名
その他のラン ク
1名
(注)その他 のランク は例外的に成 績が不良 な者に適用さ れた。
イ
川崎事業 所の Dを 含む高卒技術 職の技術 職 ⑵の36歳以上40歳以下の
年齢区分に属 する 46名に対する昇給 査定は 、 次のとおりで あった。
技術職⑵SA (特別ラ ンク)0名
技術職⑵SB (第 1ラ ンク) 13名
ウ
技術職⑵A
(第2ラ ンク) 28名
技術職⑵B
(第3ラ ンク)3名
技術職⑵C
(第4ラ ンク)2名
川崎事業 所の技術 職 372名のうち 、技術職 ⑴の38名及び技術職 ⑵ の86
名 の 計 124名 が 班 長 級 昇 進 の 候 補 者 の 選 定 基 準 に 達 し て い た 。 こ の う
ち、47名については各 部門長が昇進 の申請を 行い 、技術職 ⑴の6名 及
び技術職⑵の 18名の計 24名について は 、川崎 事業所長が班 長待遇任 命
人数枠に従い 、昇進の 申請を行った 。これら の 24名の者の 昇給査定 ラ
ンクは、技術 職 ⑴SA の者が6名 、 技術職⑵ SAの者が2 名 、 技術 職
⑵SBの者が 13名、技 術職⑵Aの者 が3名で あった。
また、環境保安 1課において班長 待 遇に1名欠員が生じたことから、
同課所属の社 員の中か ら選考し 、昇 進の申請 を行った。
川崎事業 所長が人 事部長に昇進 申請を行 った上記の 25名全員が 、班
長待遇に昇進 した。
エ
申立人ら に対する 昇給査定は 、 次のとお りであった。
Aの第一 次査定者 及び第二次査 定者は 、 同人について 昇給査定 ラン
クを技術職⑵ B(第3 ランク)とし て申請し 、最終的な川 崎事業所 長
による決定も 技術職 ⑵ Bであり、班 長級昇進 候補者として の申請は 行
われなかった 。
Bの第一 次査定者 及び第二次査 定者は 、 同人について 昇給査定 ラン
クを技術職⑵ A(第2 ランク )とし て申請し 、最終的な川 崎事業所 長
- 19 -
による決定も 技術職 ⑵ Aであり、班 長級昇進 候補者の選定 基準を満 た
していた。し かし 、第 一次査定者及 び第二次 査定者が 、B について C
Pセンター製 造設備全 般の運転知識 ・技能が 不足し 、運転 設備の異 常
事態に対して 的確な判 断と処置がで きるか疑 問であり 、部 下への統 率
力・指導力も 弱いとし ていたため 、 班長級昇 進候補者とし ての申請 は
行われなかっ た。
なお、C Pセンタ ーでは 、Bの ほかに4 名の技術職が 班長級昇 進候
補者の選定基 準を満た していたが 、 この4名 についても昇 進候補者 と
して申請は行 われなか っ た。
Cの第一 次査定及 び第二次査定 者は 、同 人について昇 給査定ラ ンク
を技術職⑵C (第4ラ ンク)として 申請し 、 最終的な川崎 事業所長 に
よる決定も技 術職 ⑵C であり 、班長 級昇進候 補者としての 申請は行 わ
れなかった。
Dの第一 次査定者 及び第二次査 定者は 、 昇給査定ラン クを技術 職 ⑵
B(第3ラン ク)とし て申請し 、最 終的な川 崎事業所長に よる決定 も
技術職⑵Bであり、班 長級昇進候補 者としての申請は行われなかった。
⑵
平成5年 度までの 昇給査定の結 果
当委員会 は 、 申立 人らに係る昭 和 59年度から平成5年 度までの 昇給査
定及び同人ら に適用さ れた査定区分 における 昇給査定ラン ク別の人 数分
布について会 社に釈明 を求めたが 、 会社は、 本件申立ての うち 、 平 成6
年度の賃金の 昇給是正 を求める部分 以外はす べて除斥期間 に抵触し 、却
下されるべき ものであ るとして 、回 答しなか った。
9
自己申告 、面接の 状況
⑴
自己申告 、面接等 の制度
会社は、 平成元年 度まで各社員 に2年に 1回自己申告 書を提出 させ 、
毎年、観察者 が各社員 について観察 指導表を 作成し 、面接 を実施し てい
た。平成2年 度以降は CDP(キャ リア・デ ベロップメン ト・プロ グラ
ム)制度を導 入し 、毎 年、8月頃に 各社員に 業務の達成度 や配属の 希望
などについて 記入した C DPシート を提出さ せ 、それに基 づき上司 が面
接を実施して いる。
⑵
申立人ら のCDP シート及び面 接状況
Aは、平 成7年度 のCDPシー トに「昇 給 、昇格明確 化の基準 を教 え
て欲しい」と記入し 、係長との面接 の際に 、
「何故私は 昇給で差 を 付 けら
れ、昇格さ れないの か 教えて欲しい 」と質 問 した。これ に対して 係 長は 、
「この兼に関 しては 、 私には分りま せん」と 答えた。
Dは、平 成5年度 及び平成6年 度のCD Pシートに「 賃金の差 別(同
期との)を無 くするこ とを要望する 」と記入 し 、また、平 成7年度 のC
DPシートに も「賃金 の差別を無く すること を要望する」 と記入し て提
出するととも に 、平成 4年度 、平成7年 度及 び平成8年度 の面接の 際に 、
賃金が同期と 比べて低 い理由を質問 した。
- 20 -
一次申立 人H は、 昭和62年12月の品質管 理 1課長との 面接にお いて 、
組長に任命さ れない理 由を尋ねた。こ れに対 して同課長は 、
「会 社 の方 針
に沿わないも のを職制 にする訳には いかない だろう。」と答え た。
Hは、平 成6年度 のCDPシー トに「私 に対する昇給 、昇格差 別をい
つやめるのか ?」と記 入し 、同年の 品質管理 2課品質管理 3係 長と の面
接の際、昇格 昇給差別 についてどう 思ってい るのかを質問 した。こ れに
対して同係長 は 、
「 H さに対して差 別等して いないのでは ないです か。た
だ、Hさんの ように会 社の方針に反 対ばかり していたので は昇格は 無 理
ではないです か。 私は そう思います が」と答 えた。
10
申立人ら の業務遂 行状況
⑴
A
ア
Aの平成 5年度の 担当業務等
Aは、動 力2課動 力2係交替班 に所属し 、受変電設備 などの運 転管
理設備を運転 していた 。 交替班は、 1班当た り 、班長1名 、計器室 で
各設備の制御 及び工場 内の各プラン トとの調 整・ 連絡を行 うチーフ コ
ントロールマ ン及びサ ブコントロー ルマン各 1名、課 内各設備 の点 検・
調整を行うフ ィールド マン3名の合 計6名で 構成され 、1 日を3区 分
して交替勤務 する4 班 3交替制をと っていた 。
イ
ユーパッ クの操作
動力2係 では 、分 散型コンピュ ータコン トロールシス テムであ るユ
ーパックを使 用してい た。 このユー パックを 操作するのは 、1 万9 千
KWタービン の定期修 理の際の停止 時・スタ ート時と毎年 6月から 9
月の電力受電 量を減ら すための調整 の時とで あったが 、前 者につい て
は、1年に1 度、4回 の操作をする 程度であ り 、後者につ いては 、 交
替制の者が全 員順次、 計器室担当と して作業 していた。な お 、 その 作
業時間は二、 三分もか からない程度 であった 。また 、ユー パックの 操
作の練習とし て 、「警 報値の入れ替 え」と「 画面展開」が あった 。「警
報値の入れ替 え」 とい うのは 、その 日の受電 ピークに合わ せてある 警
報値を違った数値にセットした後、すぐ元に戻すというものであり、
上 司 の 課 長 は 、 そ の 操 作 を し て い る 者 を 実 際 に 見 た こ と は な い 。「 画
面展開」とい うのは 、 受電のライン が書いて ある画面や警 報画面 な ど
様々な画面を 展開して みるというも ので 、操 作自体はボタ ンを押 す だ
けのものであ った。 な お、同課長は 、画面展 開している者 が誰か 具 体
的には覚えて いない。
ウ
資格の取 得状況等
動力2係 において は 、平成 5年当時 、班長 あるいは班長 待遇の者 で 、
3名が「高圧 ガス乙」 の資格を持っ ておらず 、うち2名は 「ボイラ 1
級」の資格も 持ってい なかった。 ま た、この 2つの資格の 取得につ い
ては、会社に おいて昇 進の推薦をす る際のl つの要件とさ れていた も
のではなく、 上司の課 長が個人とし て 1つの 要件と考えて いたもの で
- 21 -
あった。
エ
ビッグフ レッシュ マン運動の指 導員
ビッグフ レッシュ マン運動は 、 高卒製造 系新入社員の 早期戦力 化を
目的として、 入社後5 年以内に 「危 険物乙4 」、「 高圧ガス 乙」、「ボ イ
ラ2級」の三つの資格を取得することなどを内容としたものである。
指導員には、 基本的に チーフコント ロールマ ンを充ててお り 、 それ 以
外 の 者 で は 、「 ボ イ ラ 1 級 」 及 び 「 高 圧 ガ ス 乙 」 の 資 格 を 持 つ 者 を 1
名充てたこと があるの みである。チ ーフコン トロールマン は 、 係長 が
裁量により申 告し 、課 長が認めるも ので 、そ の際、資格保 有の 有無 に
ついては確認 しておらず、現 に平成 5年度 に指導員に充 てられた者 は、
チーフコント ロールマ ンであったが 「高圧ガ ス乙」の資格 を 保有し て
いなかった。
⑵
B
ア
平成5年 度の担当 業務等
Bは、C Pセンタ ー製造係交替 班に所属 して いた。交 替班は 、 A系
列、B系列、 C系列及 びD系列の4 系列の製 造設備により 、1 日を 3
区分して交替 勤務する 4 班3交替の 勤務体制 をとっており 、コン パ ウ
ンド(低密度 ポリエチ レンに高密度 ポリエチ レン及びポリ プロピレ ン
を練り合わせた製品など)を製造していた。上記4系列にあっては、
C・D系列か らA・B 系列 、またそ の逆のロ ーテーション で仕事が 行
われ、そのサイ クルは l年ないし2 年であっ た。また 、C・D系 列 は 、
トラブルが多 く運転管 理も難しい仕 事であっ た。Bは、平 成元年か ら
平成3年まで C・D系 列の仕事に従 事した後 、ローテーシ ョンに従 い
A・B系列に 移り 、そ の運転管理を していた 。
なお、平 成5年度 、Bに部下は いなかっ た。
イ
「高圧ガ ス乙」の 検定試験
CPセン ターにお いては 、平成 5年度に Bを含む4名 が「高圧 ガス
乙」の検定 試験を受 験 したが 、全 員不合格 で あった。こ の4名の う ち 、
B以外は班長であったところ、最も成績の良かったのはBであった。
上司の課長は 、Bが他 の職場に異動 した翌年 も 、再度受験 するよう 薦
めに行った。
⑶
C
ア
平成5年 度の担当 業務等
Cは、品 質管理2 課品質管理3 係の機器 管理グループ に属し 、 イソ
プ ロ ピ ル ア ル コ ー ル ( I P A )、 ノ ル マ ル パ ラ フ ィ ン 製 造 装 置 の プ ロ
セスガスクロ (連続分 析計) の保守 管理業務 を担当してい た。
イ
プロセス ガス クロ の切換え
浮島工場 の各製造 装置に当初設 置された プロセス ガス クロ は 、 計測
機器メーカーとユーザーである会社が協力して開発したものであり 、
この旧式のプ ロセス ガ スクロ は、保 守管理に 手間のかかる ものであ っ
- 22 -
た。品質管理 2課3係 では 、計測機 器メーカ ーである横河 電機が信 頼
性の高いプロ セスガス ク ロを開発し たことに 伴い 、機器の 信 頼性の 向
上と保守管理 の省力化 を目的に 、平 成元年度 から順次 、旧 式のもの か
ら横河電機製 のものへ と切換えてき ており 、 平成5年には 、ノルマ ル
パラフィン製 造装置及 び IPA製造 装置の一 部を除き 、切 換えは 、 ほ
ぼ終了してい た。横河 電機製のプロ セス ガス クロ は、故障 もほとん ど
なく、また、 同社との 間の年間保守 契約によ り定期的な保 守点検サ ー
ビスを受ける ことによ り 、保守管理 業務の負 担は 、大幅に 軽減され て
おり、かつて は 、熟練 者が担当して いたプロ セス ガスクロ の保守管 理
業務も、新人 (プロセ ス ガスクロ保 守管理業 務未経験者) がローテ ー
ションで担当 するよう になっていた 。
ウ
PGC( プロセス ガスクロ)修 理点検報 告書
品質管理 2 課品質 管理3係では 、PGC 修理点検報告 書により 、プ
ロセスガスク ロ の故障 履歴及び故障 時の対応 について 、記 録に残す こ
とにしていた 。Cは 、 平成5年度、 PGC修 理点検報告書 を3件提 出
した。
なお、会 社は 、プ ロセス ガスク ロ の作動 異常の発生回 数及び頻 度を
把握しておら ず 、作動 異常があった かどうか 把握している のはCの み
であった。
エ
改善提案 の提出
川崎事業 所では 、 職場内又は職 場横断的 にサークルを 組織し 、 業務
に関する問題 の解決を 図る「小集団 活動」が 奨励されてお り 、 各サ ー
クルは、テー マごとに 担当を決めて 検討した 成果を改善提 案として 提
出し、それに 対して会 社が 、採用、 不採用又 は保留を決定 し 、 採用 分
については、 A級から D級までの提 案賞を授 与して表彰し 、賞金を 支
払っていた。 この提案 提出件数につ いては 、 課の目標が年 間 1 人当 た
り2件である のに対し て 、Cは1件 であった (係平均は 、 年間l人 当
たり1.8件であっ た。)。
なお、C は 、平成 6年度には共 同提案 1 件を含め3件 の改善提 案を
提出した。
オ
旧式プロ セス ガス クロ のマニュ アル
旧式プロ セス ガス クロにはマニ ュアルが なかった。 C の上司の 係長
は、平成5年 のCDP の面接のとき に 、旧式 プロセス ガス クロ の作 業
内容を文書化 し 、提出 するよう業務 上の要望 として述べた 。なお 、 こ
の事例以外に 、Cが上 司からマニュ アルの不 備を指摘され 、あるい は
作業報告書の 提出を催 促されたりし たことは なかった。
また、旧 式プロセ ス ガスクロに ついては 、Cの前任者 の時を含 め 、
十数年にわた ってマニ ュアルは存在 しなかっ た。 上司の係 長は 、当 時
残っていた旧 式プロセ ス ガスクロに ついては Cがすべて保 守管理を 担
当していたた め 、Cの 不在時に他の 機器管理 グループ員が 確実に旧 式
- 23 -
ロセスガスク ロ の保守 管理をするた めにもマ ニュアルが必 要と考え た
ものであり、 具体的な 問題が起きた ために必 要となったも のではな か
った。
さらに、 上司の係 長が平成5年 にマニュ アル作成の指 示を出し た旧
式プロセスガ スクロ は 、Cの担当し ていたノ ルパラ装置と IPA装 置
であるが、ノ ルパラ装 置は平成6年 に 、IP A装置は平成 7年に 、 そ
れぞれ新式の ものに転 換する予定と なってい たもので 、実 際に転換 さ
れた。
なお、C は 、平成 6年度に「ナ フテH
DGC
操作 方法」及 び「I
PA-EL・ IPA( SA 20)中の不純物の 測定法」とい うマ ニュ ア
ルを作成し、 提出した 。
カ
IPAの トフプル
平成5年 のIPA 製造装置の定 期修理後 のスタートア ップの際 、触
媒の活性が強 すぎるた め通常生成し ない不純 物が生成し 、 製品中に 混
入した。この 時 、Cは 、スタートア ップ後の プロセス ガス クロ の点 検
作業をしており、点検していたチャートから製品の異常に気付いた。
Cは、IPA プラント のトラブルか 、PGC のトラブルか の原因究 明
が最優先課題 と判断し 、そのために は 、一体 となって作業 している プ
ラント運転員 への報告 が第一と考え 報告し た 。このため、 製造課で は
迅速な処置を 採り製品 が不合格品と なること を防ぐことが できた。 上
司の課長は、 製造担当 課長にCの工 場長表彰 の申請を依頼 し 、 Cは 工
場長表彰を受 けた。
⑷
D
ア
平成5年 度の担当 業務等
Dは、川 崎工場品 質管理 1課品 質管理3 係の製品管理 グループ に属
し、塩浜地区 の入出荷 製品の試験 、 検査及び これらに関す る検討業 務
を行っていた 。
なお、同 係で行わ れている電気 特性試験 という試験は 、Dの前 職場
である浮 島工場品 質管 理2課にはない試 験項 目であり、上司 の課長 は、
製品管理グル ープに所 属する者は 、 1年ない し2年ででき るように な
れば問題がな いと判断 していた。
イ
技術報告 書につい て
技術報告 書は 、プ ラントの検討 事項等の 業務を対象と して 、 そ れら
に係る試験等 を行い 、 レポート化し た品質管 理職場におけ る正式な 報
告書であり、 技術員、 職長、班長等 が試験方 法等の検討や 検討文書 の
作成等をし、 技術職の 社員が技術員 等からの 要求に基づき 試験デー タ
の採取等を行 っていた 。
また、技 術報告書 をまとめる際 には 、作 成に関与した 係員全員 の名
前を記載する ことにな っており 、平 成5年度 の製品管理グ ループの 係
員で記載があ った件数 は 、24件が1人、14件が1人、10件が1 人、 3
- 24 -
件が1人、1 件が1人 、0件が2人 のところ 、Dは、0件 であり 、 平
成6年度の件 数は 、10件がl人、7 件が 1人 、3件が1人 、2件が 2
人、1件が2 人のとこ ろ 、Dは1件 であった 。
なお、平 成5年度 当時の製品管 理グルー プは 、Dのほ か班長 1 名、
サブリーダー1名、その他の社員4名の合計7名で構成されていた。
ウ
改善提案 の提出に ついて
品質管理3係では、年間1人 当たり3.9件の改善提案実績 であったが、
Dの提案はな かった。
なお、D は 、平成 6年度に「自 動グリー ブランド開放 式引火 点 器ト
ラブル防止対 策」 とい う改善提案を 、平成7 年度に「FG Pサンプ ル
採取方法の改 善」 とい う改善提案を それぞれ 提出した。
11
一次事件
一次申立 人らは 、平成6年12月22日、会 社の賃金 、賞与及び 昇 格差別は 、
正当な組合活 動を嫌悪 して行った不 利益取扱 であり 、不当 労働行為 に該当
するとして、 当委員会 に救済を申し 立てた。
当委員会 が平成9 年6月10日に賃金是正 等を内容とす る命令を 発したと
ころ、会社は 再審査を 申し立て 、中 央労働委 員会に係属中 である。
12
本件救済 申立て等
申立人ら は 、平成 8年 1月8日 、会社を 被申立人とし て 、①昭 和 59年4
月1日に遡っ て 、 申立 人らの資格( Aにあっ ては昭和 60年に班長、 平成6
年から職長、 B及びC にあっては昭 和 61年から班長、Dに あっては 平成2
年から班長に 是正する こと)、基 準内賃金 及 び一時金を申 立人らと 学歴 、勤
続年数の同一 又は近似 の従業員の平 均(モデ ル)以上に是 正しなけ ればな
らないこと、 ②申立人 らが受けるは ずであっ た賃金及び一 時金額と 既支 給
額との差額に 年6 分の 割合による金 員を加算 して支払わな ければな らない
こと、③会社 は昇給 、 昇格、任用等 について 組合活動を理 由として 差別 を
行わないこと 、④ 陳謝 分の掲示を求 め 、不当 労働行為の救 済申立て をした。
なお、本件結審 時 において 、申立人ら に ついては 、いずれも 従 前どおり 、
非役付技術職 として昇 給及び賞与が 決定され ており 、また 、昇進し ていな
い。
第2
判断
1
却下の主 張につい て
⑴
被申立人 の主張
平成6年 度の昇給 に係る人事考 課 、昇給 査定 、昇給額 の決定及 び昇給
後の賃金の支 給並びに 昇進に係る決 定及び発 令 (公示)並 びに賞与 に係
る賞与額の決 定 、通知 及び支給は 、 本件申立 時までに 1年 を経過し てお
り、本件申立 ては労働 組合法第 27条第2項に 定める申立期 間内にな され
たものではな いから 、 そのすべてが 却下され るべきである 。
仮に、査 定に基づ く最後の賃金 の支払い が 1年以内に なされた もので
あれば、これ に係る申 立ては適法な ものであ ると解する場 合におい ても
- 25 -
平成6年度の 昇給に係 る申立て以外 の申立て は 、すべて却 下される べき
である。
平成7年 度以降の 昇給 、昇進及 び賞与に ついては 、申 立てがさ れてい
ないのである から 、救 済の余地はな い。
⑵
当委員会 の判断
被申立人 は、 本件 申立てが労働 組合法第 27条第2項に 定める申 立ての
期間を経過し た申立て であるとして 、その全 部又は平成6 年度 の昇 給に
係る申立て以 外の全部 が却下される べきであ ると主張する 。
しかしな がら 、平 成6年度の昇 給査定に ついては 、そ れにより 決定さ
れた基本給が 、 申立て から 1年前以 内である 平成7年3月 25日まで 支給
されていたの であるか ら審査を行う ことがで きるものであ り 、また 、昇
進については 、 格差が 現に生じてい ることに 関して救済を 申し立て てい
るのであり、 しかも 、 本件において は基本給 の昇給査定と 昇進とが 運動
して密接不可 分のもの であることか らして審 査を行うこと ができる もの
であり、さら に 、賞与 金については 、基本給 及び付加給を 計算の基 礎と
するため、昇 給後の基 本給の額に格 差がある とすれば賞与 金におい ても
必然的に格差 が発生し 、更にある年 度の昇給 査定が 、その 年度の前 期賞
与金及び後期 賞与金の 特別賞与金の 査定に基 本的に 連動す るところ 、平
成6年度の昇 給査定を 審査の対象と するので あるから 、賞 与金につ いて
も同じく審査 を行うこ とができるも のである 。
以上のと おりであ るから 、本件 申立ては 、却下事由に 該当しな いもの
と判断する。
2
申立人ら の活動に 対する会社の 認識の有 無について
⑴
申立人ら の主張
申立人ら は 、 資本 から独立した 自主的・ 民主的労働組 合活 動を 推進す
る自主的・民 主的グル ープの中心的 なメンバ ーとして 、昭 和40年代から
活動を続けて おり 、同 グループは労 資協調派 が主流を占め る現在の 日石
労組において 、 反主流 派(少数派) に位置付 けられる。
自主的・ 民主的グ ループへの所 属の有無 は 、組合役員 選挙への 立候補
の際の政策提 言 、支援 活動等により 社内にお いて歴然とし ており 、 同グ
ループの見解 はその発 行する職場新 聞に よっ て会社が熟知 するとこ ろで
ある。さらに 、 会社は 、自主的・民 主的グル ープを日常的 に監視し 、そ
の活動に格別 の注意を 払っている。
⑵
被申立人 の主張
申立人ら は自主的 ・ 民主的グル ープの構 成員 、人数を 明らかに してお
らず、グルー プが存在 するかどうか すら明瞭 ではない。ま た 、申立 人ら
が行ってきた と主張し ている組合活 動は 、い ずれも会社及 び日石労 組が
それぞれの立 場で 、又 は両者が協議 の上で実 施したもので あったり 、会
社及び日石労 組が知る すべもない方 法・ 手段 により行われ たものば かり
である。した がって 、 申立人らが自 主的・民 主的組合活動 の成果で ある
- 26 -
と主張すると ころも 、 その過程にお いて申立 人らが関わっ たもので はな
く、申立人ら が独自に 組合活動を行 っていた と主張したと しても被 申立
人が全く知り 得ないと ころであるか ら 、その 活動ゆえに申 立人らを 嫌悪
するというこ となどあ り得ず 、本件 申立ては 棄却されるべ きである 。
⑶
当委員会 の判断
被申立人 は 、自主 的・民主的グルー プが 存在するか否 か明瞭で はなく 、
申立人らが独 自に組合 活動を行って いたと主 張しても全く 知り得な いと
ころであると 主張する 。
確かに、 前期第 1 の2の⑸及び ⑹で認定 したとおり 、 申立人ら がその
主張を組合員 に表明す る手段として 発行した「波紋」、
「新工場 ニュ ー ス」
及び「はんど る」には 、発行者とし て申立人 らの氏名や自 主的・民 主的
グループの名 称は 記載 されておらず 、単に編 集委員会等の 名称が記 載さ
れたに過ぎず 、 その配 布も郵送や社 宅の郵便 受けへの投入 などによ り行
われていたの であり 、 また、一次事 件の審問 におけるE及 び本件審 問に
おけるAの証 言による と 、同グルー プは 、そ の名義で会社 に対して 要求
を行い、あるいは 会社 との間で交渉 、折 衝等 を持ったりし たことは なく 、
さらに、同グ ループに は規約が存在 せず 、加 入・脱退手続 もなく 、 構成
員の範囲は支 部執行委 員選挙の際に 同グルー プから立候補 した者を 支援
し協力する者 であるか 否かを基準と し 、役職 者もおいてお らず 、 構 成員
の氏名を外部 に 公表し たこともなか ったので あるから 、外 形上、 同 グル
ープの行為であると認 識され得るものではなかったと言わざるを得 ない。
しかしな がら 、労 働者のある活 動がその 所属する団体 を明らか にして
公然と行われ たもので ないことが 、 使用者に おいてその活 動の主体 ない
しグループ性を知り得 なかったとの認定に直 ちに結びつくものではなく、
労働者の活動 の内容や 方法により 、 あるいは 労働者の活動 に対する 取組
等から使用者 において これを了知し ていたと 認め得る場合 もある。
そこで、 申立人ら の活動の内容 及び方法 、それに対す る会社の 取組等
を検討し、会 社が申立 人らの活動を 認識し得 たか否かにつ いて 、 以 下、
判断する。
ア
申立人ら は 、前記 第1の2の⑺ のアで認 定したとおり 、日石労 組の
支部執行委員 選挙にお いて一次申立 人らが立 候補した際に 、同僚な ど
に対して職場 や会社外 で 、直接ある いは電話 で一次申立人 らへの投 票
を依頼するな どの選挙 支援活動を長 期間にわ たり行ってい た。
この選挙 における 一次申立人ら の主張は 、前記第1の 2の⑺ の イで
認定したとお り 、合理 化等の会社の 施策に反 対の立場を表 明し 、労 働
組合として反 対するこ との必要性を 訴え 、日 石労組の姿勢 が「労資 協
調的」である と批判し て選挙におけ る支持を 訴えるもので あった。
イ
前記第1 の2の ⑹ のイ、ウ 、エ及び オで 認定したとお り 、
「は んどる」
の掲載記事は 、上記ア で述べた一次 申立人ら 各人の選挙に おける 主 張
と共通点を有 し 、かつ 、時期的にも 選挙の時 期と符号する ものであ っ
- 27 -
た。
ウ
川崎工場勤労課勤労係長は、前記第1の2の⑹で認定したとおり、
「はんどる」 の配布者 を目撃した場 合には報 告するよう部 下に指示 を
出していた。
また、会 社は 、前 記第1の3の ⑷で認定 したとおり 、 B及びD に係
る観察指導表 に 、同人 らが共産党員 か否かに ついて 、また 、既 に昭 和
56年には「は んどる」 が発行されて いる事実 及びその発行 にDが関 わ
っている事実 を把握し ている旨を 、 及びB、 C、D、E、 F等が共 産
党に関わる勉 強会を行 っていた旨を 記載して いる。
エ
会社は、 前記第 1 の4で認定し たとおり 、昭和45年以降、係長 、班
長(組長)以 上の「監 督者」に新た に任命し た社員への研 修を行っ て
いるが、昭和 55年2月 に開催された 同研修の 内容は 、ほと んどが共 産
党対策であっ た。
また、川 崎工場勤 労課の勤労係 長以下数 名の社員が共 産党対策 の図
書を会社の図 書館から 長期に借り出 していた 。
さらに、 昭 和52年に同研修に参 加した技 術員は 、職場 のミーテ ィン
グ に お い て 、 同 年 の 川 崎 支 部 執 行 委 員 選 挙 に 関 し 、「 執 行 委 員 の わ く
をはみだして いる 」、「 代議員に一人 多く出た 、そういう思 想的な人 が
い る よ う な 噂 話 し も あ る 。」 な ど の 話 を し 、 同 じ 席 上 、 同 研 修 に お い
て、「共 産党の見 付け 方」や 、「共産党 に会 社を潰されて しまう」 とい
うことなどに ついて教 わった旨の話 をしてい る。
以上のこ とを総合 して判断する と 、会社 は、労務政策 の根本に 反共
思想を置いて おり 、そ の一環として「はん ど る」の発行 に関心を 抱 き 、
その発行者及び配布者の把握に努めていたところ、一次申立人らは、
「はんどる」 と同旨の 主張を掲げて 支部執行 委員選挙に立 候補して い
たのであるか ら 、これ ら一次申立人 らの活動 を「はんどる 」を介し て
相互に関連性 を有する ものとして認 識し得た ものであり 、 また 、そ の
同調者を監視 する中で 、組合支部執 行委員選 挙において 、 同僚など に
対して、一次 申立人ら への投票を依 頼するな どの支援活動 を行い 、 あ
るいは「はん どる」を 配布するとい った同一 行動を取る申 立人らの 活
動についても 同じく認 識し得たもの であると 言わざるを得 ない。
したがっ て 、申立 人らの行った 組合活動 について 、全 く知り得 なか
ったとする被 申立人の 主張は採用で きない。
3
格差の存 否につい て
⑴
申立人ら の主張
賃金につ いては 、 基本給におけ る査定昇 給額及び特別 賞与金の 査定の
差別の結果、 モデル賃 金との間で著 しい格差 が生じている 。
また、昇 進につい ては 、日石労 組が示す モデルに近い 形で 、各 職種ご
とに、勤続期 間 、年齢 、学歴が等し い場合は 、一、二年の 前後はあ って
も、ほぼ同時 期に昇進 ルートに従い 昇進が行 われていると ころ 、 申 立人
- 28 -
らにあっては 今日に至 っても全く昇 進してい ないため日石 労組の示 すモ
デルとの間で 著しい昇 進格差が存在 す るとと もに 、かかる 差別によ り役
付手当の支給 額 、べ一 スアップ額等 においで 格差が生じて いる。
⑵
被申立人 の主張
会社の事 業発展へ の寄与度・ 貢 献度に応 じて 、社員の 賃金に差 を設け
るのは被申立 人として 当然の行為で あり 、与 えられた業務 の遂行度 、能
力発揮度、勤 務態度・ 意欲を評価し て基本給 昇給額及び特 別賞与金 額を
決定した結果 、 社員間 に賃金格差が 生じても 、差別に当た らない。
また、昇 進候補者 の決定におけ る最も重 要な条件であ る昇給査 定ラン
クが昇進に必 要な最低 条件のランク に達して いないため 、 申立人ら の昇
進を見送った のは 当然 である。
⑶
当委員会 の判断
ア
給与格差
(ア) 格差の比 較方法
日石労組のモデル賃金は、前記第1の6の⑴で認定したとおり、
組合員を対象 に実施し た賃金実態調 査の結果 に基づき 、順 調入社者
の平均賃金を 年齢別に 算出したもの であるか ら 、順調入社 者である
A、B及びD の給与を 比較する対象 として信 頼するに足り るものと
認められると ころ 、他 にこれに代わ るべき資 料がないので 、 モデル
賃金により格 差を比較 する方法が相 当である と考える。
途中入社 者のモデ ル賃金につい ては発表 されていない ので 、前 記
第1の5の ⑴ のアの(ウ)のcの(c)で認定した とおり 、会社 は途中入
社者に対し 、 原則とし て卒業年次を 基準とし て査定を実施 し 、Cに
対する平成6 年度の昇 給査定でも同 人の卒業 年である昭和 41年の順
調入社者に対 して適用 する技術職 ⑵ 第1群を 適用して査定 を実施し
ているのであ るから 、 同人の賃金に ついても 、モデル賃金 により格
差を比較する 方法が相 当であると考 える。
(イ) 基本給に おける格 差
会社は、 前記第1 の5の⑴のア で認定し たとおり 、年 1回の基 本
給の昇給において査定を実施し、それにより新基本給を決定して、
その後の賃金 を支給し ていることか ら 、賃金 の格差につい ては 、基
本給の額において比較することが相当であると考えるので、以下、
前記第1の6 の ⑵で認 定した申立人 らの基本 給額とモデル 賃金に係
る基本給額と の比較で 見ることとす る。
a
A
Aの基本 給の額は 、昭和59年度から平成 6年度までの 各年度に
おいてモデル 賃金の基 本給の額を下 回ってお り 、その差額 は、昭
和59年度が 850円、昭和60年度が2,500円、昭和61年度が4,200円、
昭和62年度が 3,050円、昭和63年度が3,650円、平成元年度 が 4,700
円、平成2年 度が 6,650円、平成3年度 が 9,400円、平成4 年度が
- 29 -
11,150円 、平成5年度 が 11,650円、平成6年 度が 19,200円 となっ
ている。
b
B
Bの基本 給の額は 、昭和59年度から平成 6年度までの 各年度に
おいてモデル 賃金の基 本給の額を下 回ってお り 、その差額 は 、昭
和 59年 度 が 4,600円 、 昭 和 60年 度 が 5,000円 、 昭 和 61年 度 が 6,900
円、昭和 62年度が7,800円、昭和63年度が8,950円、平成元 年度 が
6,500円、 平成2 年度 が 9,300円、平成 3年 度が 11,100円、 平成4
年度が12,650円、平成 5年度が 13,500円、平成6年度が18,550円
となっている 。
c
C
Cの基本 給の額は 、昭和59年度から平成 6年度までの 各年度に
おいてモデル 賃金の基 本給の額を下 回ってお り 、その差額 は 、昭
和59年度が 6,800円、 昭和60年度が7,850円、昭和61年度が 10,100
円、昭和 62年度が11,600円、昭和63年度が13,400円、平成 元年度
が11,600円、平成2年 度が 15,100円、平成3 年度が 17,600円、平
成4年度が 19,850円、平成5年度が21,400円、平成6 年度が 27,050
円となってい る。
d
D
Dの基本 給の額は 、昭和59年度は格差が ないものの 、 昭和 60年
度から平成6 年度まで の各年度にお いて平成 元年度を除き モデル
賃金の基本給 の額を下 回っており 、そ の差額 は 、昭和60年度が 300
円、昭和 61年度が650円、昭和62年度が950円、昭和63年度が 1,250
円、平成2年 度が 1,900円、平成3年度 が 5,000円、平成4 年度が
5,750円、 平成5 年度 が 6,950円、平成 6年 度が 11,500円となって
いる。
イ
賞与金に おける格 差
前記第1 の5の ⑴ のイの(イ)で認定した とおり 、会社は基 本給 及び付
加給を計算の 基礎とし て普通賞与金 を算出し ているところ 、付加給 に
ついては基本 給を基礎 として自動的 に算出し ているのであ るから 、 基
本給において 格差があ る場合には普 通賞与金 において格差 が生じる こ
とが認められ 、また、 特別賞与金の 査定は昇 給査定と 連動 している の
であるから、 昇給に格 差が存在する 場合には 特別賞与金に おいて格 差
が生じること は明らか である。
賞与金に おける格 差の比較方法 について は 、日石 労組が職 種 、学 歴、
年齢別の平均 支給額を 発表しておら ず 、また 、他にこれに 代わるべ き
資料がないの で 、A及 びDについて は 、前記 第1の7の⑴ 及び7の ⑶
で認定したと おり 、同 一卒業生の社 員のほと んどが班長級 に昇進し て
いる実態に鑑 み 、平成 6年度につい ては班長 における特別 賞与金の 配
分割合を適用 する比較 方法が相当で あると考 える。一方 、 B及びC に
- 30 -
ついては、前 記第 1の 7の⑵で認定 したとお り 、平成6年 5月 21日現
在においては 、同一卒 業年の社員の うちの過 半数の者が班 長級以上 に
昇進している 実態 、及 び夏季賞与金 は3月 20日現在の職階 と基本給 を
元に計算し支 給するも のであるとこ ろ 、平成 6年3月 20日現在にお い
ては、同一卒 業年の社 員のうちの過 半数の者 が非役付技術 職である 実
態に鑑み、夏 季賞与金 については中 卒技術職 の 、冬季賞与 金につい て
は班長級にお ける配分 割合を採用し て算出し たモデル賞与 金の額に よ
る比較が相当 であると 考える。
以上の比 較方法に 基づき申立人 らの平成 6 年度支給の 賞与金に つい
て比較すると 、前記第 1の6の⑶の イで認定 したとおり 、A は158,600
円、Bは155,100円、 Cは244,000円、Dは98,100円、それぞ れモ デル
賞与を下回っ ている。
ウ
昇進格差
会社にお ける昇進 の状況及び申 立人らに 対する昇進の 位置付け につ
いて、以下、 検討する 。
(ア) 中卒技術 職の昇進 状況
a
全在籍者 の昇進状 況等
前記第 1 の7の⑴ のとおり、中 卒技術職 の平成6年5 月 21日現
在の全在籍者 355名の うち 、約73%の258名が班長級以上 に昇進 し
ている。 また 、別表2 のとおり 、班 長級には 昭和 44以前の各年 及
び昭和49年の卒業年の 在籍者がおり 、職長級 には昭和 37年以前 の
各年及び昭和 39年の率 業年の 在籍者 がいると ともに 、昭和 43年以
前の各卒業年 の在籍者 において過半 数が班長 級以上に昇進 してい
る。
以上のこ とからす ると 、中卒技 術職の昇 進状況は 、一 定の勤続
期間、年齢に 応じてす べての社員が 一律に昇 進するもの で はない
ものの、 年齢 の上昇に 応じて順次昇 進の発令 を行っている ことが
認められる。
b
Aの昇進 の位置付 け
前記第 1 の7の⑴ で認定したと おり 、昭 和40年卒業者 では 、昭
和63年度には 過半数が 班長級に昇進 しており 、平成6年5 月 21日
現在において は 、非役 付技術職はA を含めて 4名であり 、 Aは昇
進の面で低く 位置付け られている。
c
B及びC の昇進の 位置付け
前記第 1 の7の⑵ で認定したと おり 、昭 和41年卒業者 では 、平
成6年度には 過半数が 班長級に昇進 し 、平成 6年5月 21日現在に
おいては 、非 役付技術 職はB及びC を含めて 9名であり、 B及び
Cは昇進の面 で低く位 置付けられて いる。
(イ) 高卒技術 職におけ る昇進状況
a
全在籍者 (順調入 社者)の昇進 状況等
- 31 -
前記第 1 の7の⑶ のとおり、高 卒技術職 の順調入社者 の平成6
年 5 月 21日 現 在 の 在 籍 者 は 、 全 在 籍 者 191名 で あ り 、 そ の う ち 、
班長級の者が在 籍する昭和 52年以前の卒業年 の者について見ると、
在 籍 者 134名 の う ち 、 約 73% の 98名 が 班 長 級 に 昇 進 し て い る 。 ま
た、別表3の とおり 、 班長級には昭 和 52年以前の各年の卒 業年の
在籍者がおり、昭和47年の卒業 年の在籍者 において班長 級が4名 、
非役付技 術職 が4 名と 同数であるこ とを除き 、昭和43年以前の各
卒業年の在籍 者におい て過半数が班 長級に昇 進している 。
以上のこ とからす ると 、高卒技 術職の昇 進状況は 、一 定の勤続
期間、年齢に 応じてす べての社員が 一律に昇 進するもので はない
ものの、 年齢 の上昇に 応じて順次昇 進の発令 を行っている ことが
認められる。
b
Dの昇進 の位置付 け
前記第 1 の7の⑶ で認定したと おり 、昭 和48年卒業者 では 、平
成4年度には 過半数が 班長級に昇進 しており 、平成6年5 月 21日
現在において は 、非役 付技術職はD 1名のみ であり 、Dは 昇進の
面で低く位置 付けられ ている。
4
本件格差 の不当労 働行為性
以上で見 たように 、申立人らの 賃金 、昇 進に格差(以 下「本件 格差」と
いう。)があるこ とは 明らかである ので 、以 下、申立人 らの活動 に 対する会
社の対応等を 検討し 、 その不当労働 行為性に ついて判断す る。
⑴
前記第1 の2の ⑷ 、⑸及び⑹で 認定した 申立人ら及び 一次申立 人らの
活動は、労働 組合の内 部において執 行部を批 判する活動と いう側面 を有
する一方で、 被申立人 との関係にお いては 、 その施策への 反対を呼 び掛
けるという点 において 対立する活動 であった ことは言うま でもなく 、そ
の活動は、出 向拒否の ための受答え を「はん どる」に掲載 するなど 、単
に労働組合の 内部への 影響を与える にとどま らず 、被申立 人の施策 の推
進にも直接の 影響を与 える可能性を 持つもの であったと認 められる 。
⑵
前記第1 の9の ⑵ で認定したと おり 、H が昭和 62年の品質管理 1課長
との面接にお いて 、組 長に任命され ない理由 を尋ねたこと に対して 同 課
長は、「 会社の方 針に 沿わないもの を職制に する訳に行か ないだろ う。」
と述べた。ま た 、平成 6年度の面接 において 、品質管理2 課品質 管 理3
係長は「Hさ んのよう に会社の方針 に反対し てばかりいた のでは 昇 格は
無理ではない ですか 。」と発言し ている。こ れらの発言か らすると 、被申
立人は、申立 人らの活 動を被申立人 の施策に 対立するもの として問 題視
していたと言 わさるを 得ない。
⑶
前記第1 の3の ⑴ 及び⑶で認定 したとお り 、Aが昭和60年5月 に浮島
工場動力2課第1係に配属されるに当たり、同係長は係員全員に対し、
「今度配属 されてくるAは共産 党員だから気 を付けるように」と発 言し、
また、Dが平成5年3月に川崎工場品 質管理 1課3係に配属されたとき、
- 32 -
上司の職長ら が係員に 「
、 D とつき合 うと人事 に目を付けら れて昇進 に不
利となる、だ から注意 して つき合う よう 」な どと述べてい る。 これ らの
ことからする と 、被申 立人は、Aと Dを職場 において孤立 させよう とし
ていたと言わ ざるを得 ない。
以上のこ とを総合 して判断する と 、本件 格差は 、被申 立人が申 立人らが
行った「はん どる」の 発行・配布や 、一次申 立人らに対す る選挙支 援活動
などについて 、被 申立 人の施策と対 立する独 自の組合活動 として嫌 悪し 、
申立人らの活 動の封じ 込め 、あるい はその弱 体化を意図し 、その一 環とし
て同人らの賃 金及び昇 進について不 利益な取 扱いをしたこ とによる もので
あると推認せ ざるを得 ない。
5
格差の合 理的理由 の存 否につい て
⑴
被申立人 の主張
被申立人 は 、 査定 基準に従い各 社員の業 務遂行度 、能 力発揮度 、勤務
態度、意欲等 を評価し て賃金 、賞与 に反映さ せている。昇 進につい ても
一定の基準を 設けて厳 正な人事評価 に基づい て任命してお り 、申立 人ら
の賃金、賞与 及び職階 における現状 は 、公正 かつ厳正なる 人事考課 の結
果である。
申立人ら に対する 平成6 年度の 昇給査定 における評価 は 、次の とおり
である。
ア
A
Aの各評 価項目を 評価した結果 、第3ラ ンクと判定し 、技術職 ⑵B
と決定した。
評価項目 別の評価 は 、次のとお りであっ た。
(ア) 業務上の 具体的な 成果
指示され た作業は 遂行したが 、 中堅社員 として期待さ れた役割 ・
行動に見るべ きものが なかった。
(イ) 業務への 取組方
積極性を 持つこと 、資格試験を クリアす べく努力する ことを提 言
したが、結 果が出て い なかった。具体例と し て 、ユーパ ックを日 常 、
積 極 的 に 操 作 し て い る と こ ろ を 見 た こ と が な い こ と 、 ま た 、「 ボ イ
ラー1級」及 び「高圧 ガス乙」の試 験に合格 していないこ とが挙げ
られる。
(ウ) 上司・同 僚へのプ ラス面での影 響
取り立て て述べる べきものはな い。
(エ) 後輩への 指導
積極性の なさが影 響して 、見る べき成果 がなかった。 本来なら ビ
ッグフレッシ ュマン( 新入社員) の 指導員を させたかった が 、知識
(「 ボ イ ラ 1 級 」 資 格 試 験 の 燃 焼 理 論 や 「 高 圧 ガ ス 乙 」 資 格 試 験 の
窒素発生設備 の理論 、 空気圧縮機の 理論)と 積極性を持っ ていなか
ったため指名 できなか った。
- 33 -
(オ) 自ら提起 した業務 上の問題点の 解決
特記事項 なし 。
イ
B
Bの各評 価項目を 評価した結果 、業務を 遂行する上で 際立った 成果
を出しておら ず 、また 、業務遂行能 力 、仕事 に取り組む姿 勢 、 後輩 へ
の指導力は他 の社員と の相互比較に おいて見 劣りしたが 、 本人な り に
努力したこと 、上司の 指示に素直で あったこ と 、CPセン ターの方 針
や諸活動に協調 的であったこと等を総合勘 案 し、第2ランクと判定 し、
技術職⑵Aと 決定した 。
したがっ て 、Bは 、班長待遇へ の昇進候 補者の選定対 象となる ため
の要件である 「昇進可 能な最低年齢 に到達し ていること」 及び「直 近
の昇給査定が 低くとも 「A」以上に あること 」を満たして いたが 、 C
Pセンター製 造設備全 般の運転知識 ・技能が 不足し 、運転 設備の異 常
事態発生に対 し的確な 判断と処置が できるか 疑問であり 、 また 、部 下
への統率力・ 指導力も 弱いため 、昇 進申請を 見送っ た。
評価項目 別の評価 は 、次のとお りであっ た。
(ア) 業務上の 具体的な 成果
担当業務 は 、作業 の処理速度 、 正確性、 信頼性にやや 問題があ る
ものの一応こ なしてい た。押出機の スクリュ ー清掃作業へ の取組み
は、一定 の成果が あっ たと評価でき る。運転 管理に不安が あるので 、
トラブルが多 くて難し いC・D系列 の運転管 理を任せられ ず 、A・
B系列を担当 させてい た。
(イ) 業務への 取組方
・
上司の指 示には素 直に従い 、本 人なりに ひたむきに努 力してい
た。
・
自発的で はなく指 示待ち型で 、 業務を遂 行していた。
・
押出機の スク リュ ー清掃作業は 、厄介な 根気のいる作 業であっ
たが、もくも くと取り 組み 、また、 作業の時 間短縮 、効率 化の課
題にも取り組 んだ。
・
「高圧ガ ス乙」受 験への取組み について は 、勉強会に 1 回も休
まず出席し 、 他の受験 者と同様に不 合格であ ったが 、取り 組み姿
勢は評価し得 るもので あった。
(ウ) 上司・同 僚へのプ ラス面での影 響
小集団活 動の会合 や自主安全活 動の各種 委員会では 、 特に活発 に
発言するとか 問題提起 をするという ことはな かったが 、一 応協力的
であった。
(エ) 後輩への 指導
特記事項 なし 。( 人事1課長)
Bは、職 場の先輩 として 、会得 した作業 方法 、作業手 順 、 運転 知
識やノウハウ を転入社 員に教育・ 指 導する必 要と機会は十 分あった
- 34 -
が、そのよう な場面は ほとんど見ら れず 、む しろ、転入社 員に先を
越されて教わ るほうが 多かった 。(上司 の課 長)
(オ) 自ら提起 した業務 上の問題点の 解決
特記事項 なし。
ウ
C
Cの各評 価項目を 評価した結果 、長い経 験によって培 った知識 、技
術を確実に文 書に残す ことにより新 人 に伝え 、指導するこ とが期待 さ
れていたが、 特に目立 った成果が認 められな かったため 、 第4ラン ク
と判定し、技 術職 ⑵C と決定した。
評価項目 別の評価 は 、次のとお りであっ た。
(ア) 業務上の 具体的な 成果
・
担当業務 の個々の 保守点検業務 は 、相応 に実施してい たが 、文
書作成を苦手 としてい て作業報告書 の類の文 書による記録 をほと
んど残してお らず 、業 務貢献度は十 分なもの ではなかった 。具体
的には、 PG C修理点 検報告書が年 間で3件 しか報告され ていな
い。
・
課の活動 目標で 、 業務改善活動 と位置付 けていた改善 提案提出
件数について 、目標未 達であった。
(イ) 業務への 取組方
係内諸活 動への関 心は薄く 、業 務改善の 柱としていた 業務標準 化
にも消極的で あった。 具体的には、 旧式プロ セス ガスクロ の作業内
容を文書化し 提出する ことを求めた が 、文書 提出はなかっ た。
(ウ) 上司・同 僚へのプ ラス面での影 響
プラント の運転状 況を含め日常 の業務報 告を 、タイム リーに上 司
へ報告してい ない。 例 としては 、工 場長表彰 の対象となっ たIPA
のトラブル時 に報告が なく製造担当 課からの 連絡により初 めてトラ
ブル発生を知 った。
(エ) 後輩への 指導
Cの後輩 に対する 指導は 、マン ツーマン の実地指導型 であり 、 プ
ロセスガスク ロ に長く 携わることに より得た 知識・ 技術を 文書に残
し、後輩に確 実に伝え ていくと いう 姿勢に欠 けていた。
(オ) 自ら提起 した業務 上の問題点の 解決
特記事項 なし
エ
D
Dの各評 価項目を 評価した結果 、目立っ た業務上の具 体的成果 は認
め ら れ ず 、 業 務 へ の 取 組 方 ( 意 欲 等 )、 上 司 ・ 部 下 ・ 同 僚 へ の プ ラ ス
面での影響、 後輩への 指導 、自ら提 起した業 務上の問題点 の解決の 各
項目で不十分 であった ため 、第3ラ ンクと判 定し 、技術職 ⑵Bと決 定
した。
評価項目 別の評価 は 、次のとお りであっ た。
- 35 -
(ア) 業務上の 具体的な 成果
ルーチン 業務を行 うことが専ら であり 、 電気特性試験 のような 特
殊な試験、 検 討試験 、 依頼分析はで きず 、業 務上の具体的 な成果は
認められなか った。
また、査定 期間内 に作成に関 与した技術 報告書は1件もなかった。
さらに、 諸活動に ついても 、課 や係の目 標に対して 、 その実績 は
程遠い内容で あった。 具体的には、 小集団活 動に関して 、 自分でテ
ーマを探して きて改善 を行おうとす る意欲的 な姿勢は見ら れず 、課
内の小集団活 動発表会 でも自ら発表 したりア シスタントを 買って出
るという積極 性もなか ったため 、D の名前に よる提案は平 成5年度
には1件も提 出されて いない。
(イ) 業務への 取組方
自分から 積極的に 不十分な業務 を 習得し たり試験法や 業務の改 善
を検討するこ ともなく 、業務を意欲 的に遂行 しようとする 姿勢に欠
けていた。
(ウ) 上司・同 僚へのプ ラス面での影 響
上 司 ・ 部 下 ・ 同 僚 へ の プ ラ ス 面 で の 影 響 は な か っ た 。( 人 事 1 課
長、上司の課 長)
むしろ空き時間には、他社員と控え室にたむろし、雑談したり、
ぶらぶらして いること が多く 、その 業務への 取組方から他 社員に弊
害を与える面 が多かっ た。(上 司の課長 )
(エ) 後輩への 指導
後輩に比 較して係 内での業務経 験が少な いこともあり 、後輩を 指
導できるよう な状態で はなかった。
(オ) 自ら提起 した業務 上の問題点の 解決
特記事項 なし。
⑵
申立人ら の主張
昇進には 基準が存 在しないが 、 それに等 しい運用がさ れ 、被申 立人の
言う昇給にお ける査定 基準 、査定制 度なるも のは全くの創 作に過ぎ ず 、
被申立人は自 由に基本 給における昇 給額及び 特別賞与金の 額を決定 し 、
昇進を遅らせ 、 又は昇 進させないこ とが可能 であり 、申立 人らの能 力論
に立ち入るま でもなく 、大量観察的 方式によ り差別は歴然 としてい る。
さらに、申立 人ら各人 の能力の優秀 性はそれ ぞれ明らかに されてお り 、
申立人らに対 する格差 には合理性が 認められ ない。
⑶
当委員会 の判断
ア
査定にお ける基準 の存否につい て
申立人ら は 、会社 には昇給査定 及び昇進 の決定に全く 基準が存 在し
ないと主張す る。
し か し な が ら 、 前 記 第 1 の 5 の ⑴ の ア の (ウ)の c の (b)及 び イ の (エ)
並びに⑵のエ で認定し たとおり 、昇 給査定は 、職階及び待 遇ごとに 各
- 36 -
査定ランクの 要件を定 めた「職階別 査定ガイ ド表」に基づ き実施さ れ
ており、ま た 、特 別賞 与の査定は 、昇給査 定 と基本的に運 動してお り 、
さらに、昇進 候補者の 選定に当たっ ては 、昇 給査定ランク がその選 定
基準となって いること が認められる のである から 、申立人 らの主張 は
採用できない 。
イ
被申立人 に おける 昇給・昇進制 度及び運 用の実態につ いて 、 以 下、
検討すること とする。
(ア) 技術職に おける昇 進の状況等
技術職 の班長 級昇 進は、前記第 1の5の⑵のエで認 定したとおり、
昇進可能最低 年齢に達 していること 及び直近 における昇給 査定ラン
クが技術職A 以上(第 2 ランク以上 )にある ことという二 つの要件
を満たした上 でその候 補者となり得 た。
また、前 記第1の 5の⑵のオで 認定した とおり 、昇進 可能最低 年
齢に達してか ら5 年度 目まで昇進人 数枠を設 けて昇進させ 、 それ以
降の昇進につ いては限 定的な取 扱い をする運 用となってお り 、した
がって、4月 1日現在 の年齢で 36歳から40歳までの期間が 班長級に
昇進するため の期間と なっていた。
しかしな がら 、A を含む昭和 40年卒業者 については 、 別表4の と
おり昭和61年度(36歳)に初めて班長 級への昇 進が発令され て以降 、
平成2年度( 40歳)の 時点では 27名中21名が班長級に昇進 し 、その
後も昇進の発 令が行わ れ 、平成6年 度( 44歳)の時点では 、 班長級
が23名、非役 付技術職 は4名となっ ており 、 平成3年度(41歳)以
降で2名が班 長級に昇 進した。
B及びC を含む昭 和 41年卒業者 について は 、別表5の とおり昭 和
63年度(37歳)に初め て班長級への 昇進が発 令されて以降 、 平成3
年度(40歳)の時点で は 19名中5名 が班長級 に昇進し 、そ の後も昇
進の発令が行 われ 、平 成6年度( 43歳)の時 点では 、班長級 が 10名、
非役付技術職 は9名と なっており 、 平成4年 度( 41歳)以降で4名
が班長級に昇 進した。
Dを含む 昭和 48年卒業者につい ては 、別 表6のとおり 平成2年 度
(35歳)に初 めて班長 級への昇進が 発令され 、平成6年度 ( 39歳)
の時点では 33名中26名が班長級に昇 進してい る。
これらの ことから す ると、班長 級への昇 進における年 齢の基準 の
運用は、実際 には被申 立人が主張す るほど厳 格な運用がさ れている
ものではなく 、班長級 に昇進するた めの期間 を経過した後 でも昇進
が発令されて おり 、年 齢の上昇に応 じて緩や かに昇進を実 施してき
たものと認め られる。
(イ) 考課ラン クの適用 状況
次に、考 課ランク の適用状況に ついてで あるが 、前記 第1 の8 の
⑵で認定した とおり 、 被申立人が当 委員会の 釈明に応じな かったた
- 37 -
め、平成5年 度以前の 適用状況につ いては不 明であるので 、 平成6
年度の適用状 況につい て検討するこ ととする 。
前記第1 の8の⑴ のアで認定し たとおり 、A、B及び Cに対し て
適用された中 卒技術職 ⑵の第1群に おいては 、査定対象者31名に対
し、第4ラン ク(技術 職 ⑵C)は1 名(3.2%)、第 3ランク は5 名
(16.1%)となってい る。
また、前 記第 1の 8の⑴のイで 認定した とおり 、Dに 対して適 用
さ れ た 高 卒 技 術 職 ⑵ の 第 2 群 に お い て は 、 査 定 対 象 者 46名 に 対 し 、
第4ランク(技術 職 ⑵ C)は2 名( 4.3%)、第 3ランクは3 名( 6.5% )
となっている 。
これらのことからすると、技術職における第4ランクの適用は、
年齢による査 定区分の 別を問わず著 し く低い 位置付けであ り 、特別
な理由あるい は事情が ある場合以外 には 、通 常は適用され ることの
ないランクで あると考 えられ 、第3 ランクの 適用は 、第4 ランクが
極めて少数の 実績しか ないことから 、実質的 には最低 ラン クとして
位置付けられ るととも に 、年齢によ る査定区 分の別を問わ ず 、第3
ランクが適用 される者 の比率は低い ものと認 めることがで きる。 し
たがって、 上 記以外の 者は第 1ラン ク又は第 2ランクに考 課されて
いたのである から 、平 均的な業務成 績を上げ た者に対して は第 1ラ
ンク又は第2 ランクが 適用されてい たものと 考えざるを得 ない。
以上を総 合すると 、平成5年度 以前の考 課ランクの適 用状況に つ
いては明らか ではない ものの 、被申 立人の技 術職における 昇給査定
においては 、 平均的な 成績を上げて いた社員 に対しては 、 第 1ラン
ク又は第2 ラ ンクに考 課して昇給を 実施する とともに 、班 長級昇進
の面では昇進 候補者に 該当させ 、昇 進可能最 低年齢に到達 後 、毎年
順次昇進を実 施したも のと考えざる を得ない 。
ウ
平成6年 度の昇給 査定の評価の 公正性に ついて
被申立人 は 、申立 人別に平成6 年度の昇 給査定におけ る項目別 評価
を示して、査 定が公正 かつ厳正に行 われたと 主張するので 、申立人 ら
に対する被申 立人の評 価が公正なも のか否か 、以下、判断 する。
(ア) A
a
被申立人 は 、「業 務上の具体的 な成果」 及び「業務へ の取組方 」
において 、A が成果を 上げていない とする具 体例として 、 ユーパ
ックを日常 、 操作して いるところを 見たこと がないこと 、 並びに
「ボイラー 1 級」及び 「高圧ガス乙 」の試験 に合格してい ないこ
とを挙げてい る。
先ず、 ユ ーパック の作業につい て見ると 、前記第1の10の⑴の
イで認定した とおり 、 業務として作 業するの は定期修理の 際と電
力受電量を減 らすため の調整の時と であった が 、前者につ いては
1年に1 度、 4回の操 作をする程度 であり 、 後者について は交替
- 38 -
制の者が全員 順次 、作 業しており 、 また、そ の作業時間は 二 、三
分もかからな い程度で あった。 また 、ユーパ ックの操作の 練習と
し て 、「 警 報 値 の 入 れ 替 え 」 と 「 画 面 展 開 」 が あ っ た が 、 こ の う
ち 、「 警 報 値 の 入 れ 替 え 」 と い う の は 、 そ の 日 の 受 電 ピ ー ク に 合
わせてある警 報値を違 った数値にセ ットした 後 、すぐ元に 戻すと
いうものであ り 、上司 の課長は 、そ の操作を している者を 実際に
見 た こ と は な く 、 ま た 、「 画 面 展 開 」 と い う の は 、 受 電 の ラ イ ン
が書いてある 画面や警 報画面など様 々な画面 を展開してみ る とい
うもので 、操 作自体は ボタンを押す だけのも のであり 、上 司の課
長は、画面展 開してい る者が誰か具 体的には 覚えていない 。
以上のこ とからす ると 、Aは、 電力受電 量を減らすた めの調整
の時には 、ユ ーパック の操作をして いるが 、 上司がそれを 見てい
ないにすぎな いと認め られ 、また、 その他の 例についても 、Aが
操作している のを見た ことがないこ とをもっ て 、直ちに日 常 、操
作していない とまでは 認定できない 。
次に、 資 格試験に ついて見ると 、前記第 1の10の⑴のウで認定
したとおり 、 平成5年 当時の動力2 課に限っ ても 、班長あ るいは
班長待遇の者で、3名が「高圧ガス乙」の資格を持っておらず、
うち2名は「 ボイラー 1級」の資格 も持って いなかったこ と 、ま
た、この2つ の資格の 取得について は 、被申 立人において 昇進の
推薦をする際 の要件と されていたわ けではな く 、上司の課 長が個
人として要件と考えていたものであること、以上をもってすると、
Aが資格試験 に合格し ていないこと をもって 評価を低くし ている
ことは公正な 評価とは 言えない。
b
被 申 立 人 は 、「 後 輩 へ の 指 導 」 に お い て 、 積 極 性 の な さ が 影 響
して、見るべ き成果が なかったとし て 、ビッ グフレッシュ マンの
指導員に指名 でき なか ったことを挙 げている 。
前記第 1 の10の⑴のエで認定し たとおり 、会社は、ビ ッグフレ
ッシュマンの 指導員に は 、基本的に チーフコ ントロールマ ンを充
て て お り 、 そ れ 以 外 の 者 で は 、「 ボ イ ラ ー l 級 」 及 び 「 高 圧 ガ ス
乙」の資格を持つ者を1名充てたことがあるのみであり、また、
チーフコント ロールマ ンは 、係長が 裁量によ り申告して課 長が認
めるもので、その際資格保有の有無については確認しておらず、
現に平成5年 度に指導 員に充てられ た者は 、 チーフコント ロール
マ ン で あ っ た が 、「 高 圧 ガ ス 乙 」 の 資 格 を 保 有 し て い な か っ た こ
とからすると 、チーフ コントロール マンでな いAが「 ボイラ l級」
の資格等を持 っていな いことをもっ てビッグ フレッシュマ ンの指
導員に指名で きなかっ たとする被申 立人の評 価は 、公正な ものと
は言い難い。
c
そ の 他 の 評 価 項 目 に つ い て は 、「 取 り 立 て て 述 べ る べ き も の は
- 39 -
ない。」 ないし「 特記 事項なし 。」とい うこ とであり 、少 なくとも
マイナスの評 価ではな いと認められ る。
以上のと おり 、被 申立人の挙げ るマイナ ス評価につい ては 、い ず
れも直ちには 信用し難 いと言わ ざる を得ない 。
(イ) B
a
被 申 立 人 は 、「 業 務 上 の 具 体 的 な 成 果 」 に お い て 、 運 転 管 理 に
不安があるの で 、トラ ブルが多くて 難しいC ・D系列の運 転管理
を任せられず、A・B系列を担当させていたことを挙げている。
前記第1 の10の⑵のア で認定したと おり 、C Pセンターに おいて
は、C・D系 列からA ・B系列 、ま たその逆 のロー テーシ ョンで
仕事が行われ、そのサイクルは1年ないし2年であったところ、
Bは、平 成元年か ら平 成3年までC・D 系列 の仕事に従事 した後 、
ローテーショ ンに従い A・ B系列に 移ったも のと認められ 、約3
年間にわたってC・D系列の運 転管理 をしていたことから考えて、
C・D系列の 運転管理 を任せられず 、A・B 系列 を担当さ せてい
たとの被申立 人の主張 は信用し難い 。
b
「 後 輩 へ の 指 導 」 に つ い て は 、 人 事 1 課 長 に よ る 評 価 は 、「 特
記事項なし 。」で ある のに対し 、上 司の課長 による評価は 、「 職場
の先輩として 、会得し た作業方法 、 作業手順 、運転知識や ノウ ハ
ウを転入社員 に教育・ 指導する必要 と機会は 十分あったが 、その
ような場面は ほとんど 見られず 、む しろ、転 入社員に先を 越され
て 教 わ る ほ う が 多 か っ た 。」 で あ り 、 評 価 に 違 い が あ る こ と は 、
かえって査定 の信頼性 を疑わしめる ものであ り 、かつ、そ の内容
についても 、 具体的な 事実が挙げら れておら ず 、信ずるに 足るも
のとは言い難 い。
c
「 自 ら 提 起 し た 業 務 上 の 問 題 点 の 解 決 」 に つ い て は 、「 特 記 事
項 な し 。」 と い う こ と で あ り 、 少 な く と も マ イ ナ ス の 評 価 で は な
いと認められ る。
d
「業務へ の取組方 」については 、押出機 のスクリュー 清掃作業
に対する取組及び「高圧ガス乙」試験の受験への取組に対して、
積極的に評価 している と認められる 。
以上のと おり 、被 申立人の挙げ るマイナ ス評価につい ては 、い ず
れも直ちには 信用し難 いと言わざる を得えず 、また、プラ ス評価も
挙 げ て お り 、 前 記 第 1 の 10の ⑵ の イ で 認 定 し た と お り 、 特 に 、「 高
圧ガス乙」試 験 の結果 から見ると 、 それなり の知識と技能 を持って
いたと考える のが相当 である。
さらに、 昇進候補 者の選定基準 を満たし ていたが 、昇 進候補者 と
しての申請が 行われな かった理由に ついて見 ても 、具体的 な事実が
挙げられてお らず信用 し難いと言わ ざるを得 ない。
(ウ) C
- 40 -
a
被 申 立 人 は 、「 業 務 上 の 具 体 的 な 成 果 」 に お い て 、 業 務 貢 献 度
が十分でない 例として 、PGC修理 点検報告 書が年間で3 件しか
報告されてい ないこと 、改善提案の 提出件数 が課の目標未 達であ
ったことを挙 げている 。
先ず、 P GC修理 点検報告書の 件数につ いて見ると 、 前 記第1
の10の⑶ のウ で認定し たとおり 、被 申立人は 、プロセスガ スクロ
の作動異常の 発生回数 及び頻度を把 握してお らず 、作動異 常があ
ったかどうか 把握して いるのはCの みなので あるから 、P GC修
理点検報告書 の件数が 少ない旨の被 申立人の 主張は失当で あると
言わざるを得 ない。
次に、 改 善提案の 提出件数につ いて見る と 、前記第1 の 10の⑶
エで認定した とおり 、 課の目標が年 間 1人当 たり2件であ り 、係
の 平 均 が 年 間 1 人 当 た り 1.8件 で あ る の に 対 し て 、 C は 1 件 で あ
り、それほど 大きな差 とまでは言え ず 、また 、Cは、平成 6年 度
は、共同提案 1件を含 め3件の改善 提案を提 出したことか らする
と、同年度 の課 ないし係の実績 については明 らかではないものの 、
Cが改善提案 の提出に ついて 、格別 消極的で あったとも思 われな
い。
なお、 改 善提案に ついて 、人事 1課長は 、一次事件の 審問にお
いて、改善提 案に至る 努力や成果に ついては 賞金で報いて いるの
で、提案の件 数が多い ことが良い査 定につな がることはな く 、小
集団のメンバ ーが順番 に提案者とし て名前を 載せているよ うな職
場もあると思 うと証言 し 、また、D の上司の 課長が 、本件 審問に
おいて、 改善 提案はグ ループ全体で 評価する ものであるこ とを認
めている。
以上のこ とからす ると 、Cの上 司の課長 が 、その陳述 書におい
て課内活動に 対する取 組姿勢の消極 性を示す ものとして 、 改善提
案の提出件数 が少ない ことを挙げた 旨述べて いるが 、この ことは
むしろ、 被申 立人の査 定の公正さに ついて疑 念を生ぜしめ ると言
わざるを得な い。
b
被 申 立 人 は 、「 業 務 へ の 取 組 方 」 に お い て 、 業 務 標 準 化 に 消 極
的であるとし て 、旧式 プロセス ガス クロ の作 業内容を文書 化し提
出することを求めたが、文書提出はなかったことを挙げている。
前記第 1 の10の⑶のオで認定し たとおり 、被申立人が 旧式プロ
セスガスクロ の作業内 容を文書化し 提出する ことを求めた という
のは、平成5 年のCD Pの面接のと きに上司 の係長が 、業 務上の
要望として述 べたこと を指している のであり 、上司の課長 も業務
命令とは言えないかもしれないと本件 審問において証言しており、
この事例以外 に 、Cが 上司からマニ ュアルの 不備を指摘さ れたり
作業報告書の 提出を催 促されたりし たことは なかったこと を併せ
- 41 -
て考えると 、 被申立人 の評価は公正 なものと は言い難い。
また、 前 記第1の 10の⑶のオで 認定した とおり 、旧式 プロセス
ガスクロ につ いては 、 Cの前任者の 時期を含 め 、10数年にわたっ
てマニュアル は存在し ておらず 、上 司の係長 は 、当時残っ ていた
旧式プロセスガスクロはすべてCが保守管 理 を担当していたため、
Cの不在時に 他の機器 管理グループ 員が確実 に旧式プロセ ス ガス
クロの保守管 理をする ためにもマニ ュアルが 必要と考えた のであ
り、何か具体 的な問題 が起きたため に必要と なったと考え たわけ
ではないこと 、上司の 係長が平成5 年にマニ ュアル作成の 指示を
出した旧式 プ ロセス ガ スクロ は、C の担当し ていたノルパ ラ装置
とIPA装置 であるが 、ノルパラ装 置は平成 6年に 、IP A装置
は平成7年に 、それぞ れ新式のもの に 転換す る予定となっ ていた
もので、 実際 に転換さ れていたこと からする と 、平成5年 度にお
けるマニュアルの必要性については疑わしいと言わざるを得ない。
なお、 C は、前記 第1の10の⑶のオで認 定したとおり 、 平成6
年度に「ナフ テH
D GC
操作方 法」及び 「IPA-E L・I
PA(SA 20)中の不 純物の測定法 」という マニュアルを 作成し
提出している ところで あり 、このこ とからす ると 、必要な マニュ
アルは作成す るという 姿勢であった と認めら れる。
以 上 の と お り 、「 業 務 へ の 取 組 方 」 に お け る 被 申 立 人 の 評 価 は
公正なものと は言い難 く 、また 、信用 し難いと 言わざるを得 ない。
c
被 申 立 人 は 、「 上 司 ・ 同 僚 へ の プ ラ ス 面 で の 影 響 」 に つ い て 、
プラントの運 転状況を 含め日常の業 務報告を タイムリーに 上司へ
報告していな いとして 、工場長表彰 の対象と なったIPA のトラ
ブル時に報告 がなく製 造担当課から の連絡に より初めてト ラブル
発生を知った というこ とを挙げてい る。
前記第 1 の10の⑶の力で認定し たとおり 、IPAのト ラブル時
において 、I PAプラ ントのトラブ ルか 、P GCのトラブ ルかを
探ることが最 優先課題 であったので 、Cは、 まず、プラン ト運転
員への報告が 第一と考 え 報告した。 被申立人 は 、その後、 上司の
係長への報告 がなかっ たと主張して いるが 、 上司の課長が 製造担
当課長にCの工場長表 彰を申請してもらっていることからすると、
この時のCの対応について、問題があったとは思われず、また、
この事例以外 に 、上司 への報告がな かったと いう事例を挙 げてい
ないことを併 せて考え ると 、被申立 人の主張 は疑わしいと 言わざ
るを得ない。
d
被 申 立 人 は 、「 後 輩 へ の 指 導 」 に つ い て も 、 プ ロ セ ス ガ ス ク ロ
に長く携わる ことによ り得た知識・ 技術を文 書に残し 、後 輩に確
実に伝えてい くという 姿勢に欠けて いたと主 張するが 、前 記第1
の10の⑶ のオ で認定し たとおり 、C は、平成 6年度に「ナ フテ H
- 42 -
DGC
操作 方法」及 び「IPA- EL・I PA(SA 20)中の
不純物の測定 法」とい うマニュアル を作成し 提出している ことか
らすると 、必 要と思わ れるマニュア ルについ ては作成する という
姿勢であると 思われ 、 また、被申立 人は 、ど の程度の頻度 ・ 数の
文書を作成す べきこと も明らかにし ていない のであるから 、被申
立人の評価に は具体性 がなく失当で ある。
e
「 自 ら 提 起 し た 業 務 上 の 問 題 点 の 解 決 」 に つ い て は 、「 特 記 事
項 な し 。」 と い う こ と で あ り 、 少 な く と も マ イ ナ ス の 評 価 で は な
いと認められ る。
以上のと おり 、被 申立人の挙げ るマイナ ス評価につい ては 、い ず
れも直ちには 信用し難 いと言わざる を得えな い。
(エ) D
a
被 申 立 人 は 、「 業 務 上 の 具 体 的 な 成 果 」 に お い て 、 電 気 特 性 試
験のような特 殊な試験 等はできない こと 、技 術報告書が 1 件も な
かったこと及 びDの名 前による提案 が 1件も 提出されてい ないこ
と を 挙 げ て お り 、 ま た 、「 業 務 へ の 取 組 方 」 に お い て も 、 自 分 か
ら積極的に不 十分な業 務を習得した り試験法 や業務の改善 を検討
することもな く 、業務 を意欲的に遂 行しよう とする姿勢に 欠けて
いたとして 、 電気特性 試験ができな いことを 挙げている。
まず、 電 気特性試 験について見 ると 、D は、前記第1 の ⑴の⑸
及び10の ⑷のアで認定 したとおり 、 平成5年 3月に川崎工 場品質
管理1課品質 管理3係 に異動したも のであっ たところ 、電 気特性
試験は、 浮島 工場品質 管理2課には ない試験 項目であり 、 上司の
課長は、 製品 管理グル ープに所属す る者は 、 1年ないし2 年でで
きるようにな れば問題 ないと判断し ていたの であるから 、 被申立
人の評価は公 正とは言 い難い。
次に、 技 術報告書 について見る と 、前記 第1の10の⑷イで認定
したとおり 、 試験方法 や試験データ を 検討し たり検討文書 を書く
ことは、技術員、職長、班長等が専ら担当し、技術職の社員は、
技術員等から 要求に基 づき試験デー タを取っ たり 、試験デ ータを
表やグラフに まとめた りといったこ とを行っ ていた。また 、技術
報告書をまと める際に は 、これらの 検討業務 に関与した係 員全員
の名前を記載 すること となっていた 。平成 5 年度の製品管 理グル
ープの係員で 技術報告 書に名前の記 載があっ た件数を見る と 、確
かに10件以上に名前が 記載されてい る者が3 名いるが 、残 りの4
名は3件以下 であり 、 製品管理グル ープの中 で誰が何件な のかの
内訳は明らか でないも の の、同グル ープ7名 の中には班長 l名と
サブリーダー 1名が含 まれているの であり 、 また、平成6 年度の
件数を見ても 、10件と7件の2名を 除けば3 件以下のとこ ろ 、D
は1件である からする と 、異動後1 年目にお いて 、技術報 告書に
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Dの名前の記 載がなか ったとしても 格別消極 的に評価すべ きもの
とも思われな い。
次に、 改 善提案の 提出件数につ いて見る と 、前記第1 の 10の⑷
の ウ で 認 定 し た と お り 、 品 質 管 理 3 係 で は 、 年 間 1 人 当 た り 3.9
件の改善提案 実績のと ころ 、Dの名 による提 案はなかった のであ
るが、Cの評 価におい て判断したと おり 、改 善提案を査定 の対象
としたことに ついては 、むしろ、被 申立人の 査定の公正さ につい
て疑念を生ぜ しめると 言わざるを得 ない。
b
「上司・ 同僚への プラス面での 影響」に ついては 、人 事 1課長
に よ る 評 価 は 、「 上 司 ・ 部 下 ・ 同 僚 へ の プ ラ ス 面 で の 影 響 は な か
った。」 であるの に対 し 、上司の課 長による 評価は 、「むしろ 空き
時間には 、他 社員と控 え室にたむろ し 、雑談 したり 、ぶら ぶらし
ていることが 多く 、そ の業務への取 組方から 他社員に弊害 を与 え
る 面 が 多 か っ た 。」 と 消 極 的 な こ と ま で 挙 げ て い る が 、 評 価 に 違
いがあることは、かえって査定の信頼性を疑 わしめるものであり、
かつ、その内容についても、具体的な事実が挙げられておらず、
信ずるに足る ものとは 言い難い。
c
「後輩へ の指導」 については 、 後輩に比 較して係内で の業務経
験が少ないこ ともあり 、後輩を指導 できるよ うな状態では なかっ
たとのことだ が 、具体 的な事実が挙 げられて おらず 、現に 人事 1
課長は、 マイ ナス評価 の具体的な事 例の指摘 があったこと は聞い
ていないので あり 、少 なくともマイ ナスの評 価ではないと 認めら
れる。
d
「 自 ら 提 起 し た 業 務 上 の 問 題 点 の 解 決 」 に つ い て は 、「 特 記 事
項 な し 。」 と い う こ と で あ り 、 少 な く と も マ イ ナ ス の 評 価 で は な
いと認められ る。
以上のと おり 、被 申立人の挙げ るマイナ ス評価につい ては 、い ず
れも直ちには 信用し難 いと言わざる を得ない 。
以上(ア)から (エ)において述べた ことから すると 、申立 人らに対 する
平成6年度の 昇給査定 における評価 は 、いず れもそのまま には信用 し
難く、また、真に公正に行われたものであるとは認められないこと、
そもそも、被申立人は、評価項目として5つの項目を挙げているが、
これ以上の細 かい評価 基準や 、項目 ごとのウ ェイトなどに ついて明 ら
かにしておら ず 、評価 項目自体も抽 象的であ り査定者の主 観的判断 に
委ねられる部分 が大 きいと思 われること、人 事1課長 による陳述書 は、
申立人らの上司の各課長から聞いた結果を記載したものであったが、
人事1課長に よる陳述 書と第一次査 定者であ る申立人らの 上司の各 課
長による陳述 書には 、 評価項目の記 載内容等 に若干の相違 が見られ た
こと、及び被 申立人は 申立人らが成 果を挙げ ていないと主 張するも の
の、被申立人 側の立証 には 、申立人 らの属す る群の他の査 定対象者 の
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評価について 何ら 疎明 がないのであ るから 、 大半の者が第 2ランク 以
上とされた他の査定対 象者の上げた成果についても明らかでないこと、
これらを総合 すると、 申立人らの賃 金 、賞与 及び職階にお ける現状 が
公正かつ厳正 なる人事 考課の結 果で あるとす る被申立人の 主張につ い
ては、採用す ることは できない。
以上のこ とを総合 して判断する と 、申立 人らの本件格 差には合 理的
な理由がない ものと言 わざるを得な い。
6
不当労働 行為の成 否について
本件格差 について は 、前記4で 見たよう に 、被申立人 がその施 策と対立
する申立人ら 独自の組 合活動を嫌悪 し同人ら の活動の封じ 込め 、あ るいは
その弱体化を 意図して 行ったことに より生じ たものと推認 されると ころ 、
上記5で述べ たとおり 、合理的理由 が 認めら れず 、したが って 、申 立人ら
に対する本件 不利益な 取扱は 、同人 らが組合 活動を行った ことを理 由とす
る不利益取扱 及び支配 介入として労 働組合法 第7条第 1号 及び第3 号に該
当する不当労 働行為で あると判断す る。
7
救済の範 囲及び方 法について
当委員会 は 、申立 人らの賃金及 び昇進に おける不利益 な取扱 が 、 不当労
働行為に該当 すると判 断したところ であり 、 その救済の範 囲及び方 法につ
いて、当委員 会の裁量 に基づき 、次 のとおり とする。
⑴
基本給に ついて
基本給に ついて 、 本件において は 、査定 とそれに基づ く決定及 び支払
いが全体とし て一つの 行為と認める のが相当 であるので 、 主文第 1 項の
とおり、平成 6年度の 昇給実施後の 基本給の 額を日石労組 のモデル 賃金
の基本給の各 人 に対応 する額に是正 し 、当該 額と既に支払 った額と の差
額に相当する 額を支払 うよう命ずる こととす る。
⑵
昇進につ いて
昇進につ いては 、 平成6年度の 昇給に係 る査定を最も 重要な要 件とし
て決定される 同年度の 昇進を是正す ることと し 、主文第2 項のとお り 、
平成6年5月21日以降 、同一学歴の 同一卒業 年の者の過半 数が在籍 する
班長又は班長 相当職に あるものとし て処遇す るよう命ずる こととす る。
⑶
賞与金に ついて
賞与金に ついては 、主文第 3項のと おり 、上記⑴及び⑵ の措置に 伴い、
平成6年度前 記賞与金 を是正し 、当 該額と既 に支払った額 との差額 に相
当する額を支 払うよう 命ずることと する。
⑷
付加給、 役付手当 その他給与の 是正につ いて
付加給 、役付 手当 その他給与の 是正につ いては 、主文第3 項の とおり 、
上記⑴及び⑵ 措置に伴 う是正を行い 、当該額 と既に支払っ た額との 差額
に相当する額 を支払う よう命ずるこ ととする 。
⑸
不利益な 取扱いの 禁止について
今後、同 様な行為 が繰り返され るおそれ なしとしない ので 、主 文第5
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項のとおり命 ずること とする。
⑹
文書の掲 示につい て
本件格差 が明らか に不当労働行 為意思に 基づきなされ た不利益 取扱で
あることを考 慮し 、職 場における組 合活動の 自由を具体的 に保障す ると
ともに、本件 格差が不 当労働行為意 思に基づ いてなされた ものであ るこ
とについて、 他の従業 員にも周知せ しめるこ とが相当であ ると考え るの
で、主文第6 項のとお り文書の掲示 を命ずる こととする。
よって、労働 組合法第 27条及び労働 委員会規 則第 43条を適用し、主 文のと
おり命令する 。
平成11年3月2日
神奈川県地方 労働委員 会
会長
「別表
略」
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複本
勝則
㊞