TMI 中国最新法令情報 ―(2013 年 9 月号)

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TMI 中国最新法令情報
―(2013 年 9 月号)―
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皆様には、日頃より弊事務所へのご厚情を賜り誠にありがとうございます。
お客様の中国ビジネスのご参考までに、「TMI 中国最新法令情報」をお届けします。記事
の内容やテーマについてご要望やご質問がございましたら、ご遠慮なく弊事務所へご連絡下
さい。バックナンバーについては、弊事務所のウェブサイトに掲載させていただきますので、
併せてご利用下さい。(http://www.tmi.gr.jp/global/legal_info/china/index.html)
目次
一.中国最新法令
1. 中央法規
(1) 越境電子商取引による小売輸出を支援する関連政策の実施に関する意見
(2) 「本土と香港の更なる緊密な経済貿易関係の構築に関する取決め」(補充協定十)
(3) 中華人民共和国商標法(2013 年改正)
2. 司法解釈
(1) 「中華人民共和国企業破産法」の適用の若干問題に関する規定(二)
二.連載 中国企業法実務/第五弾:各種実務
(第 2 回 独占禁止法②(カルテルとリニエンシー)
三.中国法務の現場より
1.上海自由貿易試験区の始動
2.居留許可の手続期間延長(北京)
1
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一.中国最新法令(2013 年 8 月中旪~2013 年 9 月中旪公布分)
1.中央法規
(1) 越境電子商取引による小売輸出を支援する関連政策の実施に関する意見 1
国務院弁公庁
①
2013 年 8 月 21 日公布
同日施行
背景
近年、越境電子商取引は急速な発展を遂げ、伝統的な国際商取引に加わる国際貿易
の新たな取引形態となっている。特に、インターネットの普及と通信技術の発達に伴
い、電子商取引による国境を越えた海外個人客への小売販売が急増した。その結果、
海外個人客への商品配送に対し、国際貿易を監督・管理する税関、検査検疫、税務及
び為替(外貨転・人民元転)等の既存体制では対応しきれなくなっている。
この現状を踏まえて、昨年、商務部が「電子商取引のプラットフォームを利用した
対外貿易に関する若干の意見」
(商電発[2012]74 号)を公布し、また、発展改革委、財
政部、商務部等 8 部門の弁公庁が共同で「電子商取引の健康的かつ高速な発展を促進
することに関する業務の通知」(発改弁高技[2012]226 号)を公布し、さらに、税関総
署が上海、重慶、杭州、寧波、鄭州を越境電子商取引に関する通関業務の試行都市に
指定した。また、今年に入ってから、発展改革委、財政部、商務部等 13 部門の弁公庁
が共同で「電子商取引の健康的かつ高速な発展を更に促進することに関する業務の通
知」(発改弁高技[2013]894 号)を新たに公布したことなどを受け、今回、商務部等の
9 部門が、「越境電子商取引による小売輸出を支援する関連政策の実施に関する意見」
(以下「本意見」という)を国務院弁公庁に提出し、同意見は、国務院弁公庁の審査
を経て同庁により公布された。
②
主な内容
本意見では、
「越境電子商取引による小売輸出」を、中国の輸出企業がインターネッ
トを通じて海外へ商品を小売りし、郵便、クーリエ等の方法で商品を配送する経営行
為(即ち、越境電子商取引における企業対消費者の輸出行為)であると定義した。中
国の輸出企業が外国の卸売業者及びリテーターとインターネットを通じて商品の展示
及び取引を行い、一般的な貿易等の方法で輸出する経営行為(即ち、越境電子商取引
における企業対企業の輸出行為)は、本質上、伝統的貿易に該当するため、現行の貿
易政策の適用を受けるとされている。
また、本意見は、電子商取引の輸出業務を営む経営主体を、①自己が構築した越境
電子商取引の販売プラットフォームを通じて電子商取引による輸出を行う企業、②第
三者の越境電子商取引のプラットフォームを利用して電子商取引による輸出を行う企
業、③電子商取引の輸出企業に対して取引サービスを提供する越境電子商取引の第三
者プラットフォームの三種類に分類しており、越境電子商取引による小売輸出に当た
っての税関検査、検査検疫、為替決済、税務処理、信用管理等について、それぞれ包
括的な支援政策を定めている。
本意見は、越境電子商取引による小売輸出の規範化を図ろうとする政府各関連部門
1
《关于实施支持跨境电子商务零售出口有关政策的意见》(国务院办公厅第 89 号)
2
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の試みであり、後続の具体的な施策の公表を期待したい。
(2) 「本土と香港の更なる緊密な経済貿易関係の構築に関する取決め」(補充協定十)2
商務部
①
2013 年 8 月 29 日公布
同日施行
背景
2003 年、中国の中央政府が香港特別行政区政府と「本土と香港の更なる緊密な経済
貿易関係の構築に関する取決め」(以下「取決め」という)を締結して以来、2004 年
から 2012 年にかけて、取決めに関する九つの補充協定を結んでおり、補充協定十では、
香港から中国市場に参入する障壁が更に引き下げられた。
②
主な内容
今回締結された補充協定十では、従前の取決め及び補充協定のうえで、法律、建築、
パソコン及び関係サービス、不動産、市場調査、技術検査及び分析、人員提供及びア
レンジ、建物クリーニング、撮影、印刷、展示会、翻訳及び通訳、電信、視聴、ディ
ストリビューション、環境、銀行、証券、医療サービス、社会サービス、旅行、文芸、
体育、海運、航空運送、道路運送、貨物運送代理、商標代理等の 28 分野で更なる市場
参入の条件を引き下げ、複写サービス及び葬式施設の開放措置を取り入れている。
(3) 中華人民共和国商標法(2013 年改正)3
全国人大常委会
①
2013 年 8 月 30 日公布
2014 年 5 月 1 日改正施行
背景
中国の商標法は 1982 年に公布されて以来、1993 年の 1 回目及び 2001 年の 2 回目の
改正を経て、今回は 3 回目の改正となっている。これまでに、中国では外国著名商標
の駆け抜け登録をはじめ、商標権に対する悪質な侵害が多発し、今回の改正では、従
前に比べてより合理的でシンプルな手続で商標権を付与、保護し、悪質な商標権侵害
を効果的に抑止することが目的とされている。
今回の改正は、パブリック・コメント募集の段階から国内外の企業、政府機関から
多くのコメントと関心が寄せられ、来年 5 月 1 日の施行後における実務の運用にも注
目したい。
②
主な内容
2001 年改正版の旧商標法に比べ、今回の改正後の商標法(以下「新商標法」という)
は、条文数が従来の 64 条から 73 条までに大幅に拡充され、改正点が多方面に渡って
おり、日系企業を含む外資企業の中国における知財戦略に大きな影響を及ぼすものに
なると予想される。数多くの改正点のうち、次の三つを簡単に紹介する。
(一)商標範囲の拡充
今回の改正では、明確に「音声」も商標を構成する要素であるとされ(第 8 条)、
音声商標も商標法が保護する対象となり、改正前より商標の範囲が拡大された。音
声商標はこれまでの視覚で確認できる商標とは明らかに異なる性質を持っているた
め、出願方法を含めて今後の運用が興味深い。
(二)著名商標(馳名商標)に対する保護
2
3
《〈内地与香港关于建立更紧密经贸关系的安排〉补充协议十》(2013 年 8 月 29 日签订)
《中华人民共和国商标法(2013 修正)》(主席令第 6 号)
3
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著名商標は、個別の商標案件の処理において、認定する必要がある場合に認定す
るといった「個別認定、受動的保護」の原則が新商標法で確立された。また、これ
までに商品の包装、宣伝などで「馳名商標」の文字が頻繁に使われていたが、新商
標法によれば、これからは「馳名商標」という文字は商品の包装、宣伝活動、展示
館での使用は禁止されることになる(第 14 条)。
(三)商標の無効宣告制度
新商標法では、特許法と同様の、無効宣告の制度が導入された。同制度によれば、
商標として使用できないとされる商標法の規定(商標法第 10 条、第 11 条、第 12
条)に違反した場合、又は欺瞞的な手段もしくはその他の不正な手段で登録された
場合は、商標局が当該商標を無効宣告する(第 44 条)。また、登録済みの商標が商
標法に定められている一定の規定(商標法第 13 条第 2 項及び第 3 項、第 15 条、第
16 条第 1 項、第 30 条、第 31 条、第 32 条)に違反した場合、商標の登録日から 5
年以内に、先権利者又は利害関係者が商標評審委員会に当該登録商標の無効宣告を
請求することができる。但し、悪意による登録の場合は、著名商標の所有者による
請求は 5 年の期間制限を受けないとされている(第 45 条)。
2.司法解釈
(1)「中華人民共和国企業破産法」の適用の若干問題に関する規定(二) 4
最高人民法院
①
2013 年 9 月 5 日公布
同年 9 月 16 日施行
背景
最高人民法院は、
「中華人民共和国企業破産法」の適用の若干問題に関する規定(二)
(以下「司法解釈(二)」という)を公布した。同司法解釈は 9 月 16 日より施行され
る。企業破産の法定手続はかなり煩雑であり、手続法上及び実体法上の様々な権利が
設けられているものの、債務者財産に関して言えば、契約法、会社法、権利侵害責任
法、証券法、民事訴訟法等、数多くの法規定との整合性に問題があるため、人民法院
による破産案件の審理においては、債務者財産の認定基準が統一されておらず、債権
者の権利は十分に保護できていないのが現状である。
司法解釈(二)は、債務者財産の認定に係わる法律適用の問題に焦点をあてて制定
されたものであり、債務者財産の定義を正確に把握し、効率的に債務者財産を回収す
ることによって、債権者の利益保護の最大化等を図っている。最高人民法院が 2011
年に公布した「企業破産法」の司法解釈(一)に続いて、破産法の実務上の適用にお
いて極めて重要なガイドラインである。
② 主な内容
司法解釈(二)は、48 条から構成され、債権者財産の認定、取消権、取戻権、相殺
権、債務者財産の保全措置の解除及び執行中止などの多方面から、債務者財産に関す
る問題について定めている。以下では、その中から 2 点ほど紹介する。
(一)破産財産の認定
司法解釈(二)第1条によれば、債務者が所有する貨幣、実物以外に、債務者が
法に従って保有する、貨幣で評価でき、かつ法に従って譲渡可能な債権、株式持分、
4
《关于适用〈中华人民共和国企业破产法〉若干问题的规定(二)》(法释[2013]22 号)
4
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知的財産権、用益物権などの財産及び財産権益は、人民法院が債務者財産と認定す
る。また、司法解釈(二)第 2 条では、①債務者が貯蔵、保管、委託、代理販売、
借用、寄託、賃貸等の契約又はその他の法的関係に基づいて占有、使用する他人の
財産、②債務者が所有権留保条項のある売買において所有権をまだ取得していない
財産、③国に専属し譲渡不可の財産、④その他法律、行政法規の定めにより債務者
財産でないものを、債務者財産に含まないとされている。
(二)債務者対外的債権の訴訟時効
司法解釈(二)第 19 条によれば、債務者が対外的に有する債権の訴訟時効は、人
民法院が破産申請を受理した日から中断する。また、同条第 2 項によれば、債務者
が正当な理由なく期限が到来した債権について権利行使しないことによって、対外
的債権の訴訟時効が破産申請が受理される前の1年以内に過ぎた場合は、人民法院
が破産申請を受理した日より当該債権の訴訟時効の期間を計算し直す。
(彭涛、莊凌云・中国弁護士)
二.連載 中国企業法実務
第五弾:各種実務(第 2 回/全 6 回)
第1回
2013 年 8 月号
独占禁止法①(企業結合)
第2回
2013 年 9 月号
独占禁止法②(カルテルとリニエンシー)
第3回
2013 年 10 月号
価格法
第4回
2013 年 11 月号
商業賄賂
第5回
2013 年 12 月号
フランチャイズ
第6回
2014 年 1 月号
個人情報保護
第2回
独占禁止法②(カルテルとリニエンシー)
1.概要
本連載の第 1 回では、中国の独占禁止法 5(以下「独禁法」という)第 4 章に定める「企
業結合」に関する規制を紹介した。第 2 回の今回では、独禁法及びその関連法規・ガイド
ライン等で定められた大枠を概観した上、近時の重要事例を踏まえつつ、独禁法第 2 章に
定める「独占合意」(いわゆる「カルテル」)に関する規制について見ていきたい。
2.カルテルとリニエンシー
(1) カルテルの定義
独禁法において、カルテルとは、「競争を排除し、又は制限する合意、決定又はその他
の協調行為」と定義されている6。
「合意」とは、2 社以上の事業者が、書面又は口頭により合意することを意味し、「決
5
6
《反垄断法》(主席令第 68 号)
独禁法第 13 条第 2 項
5
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定」とは、企業グループ又はその他の形式の企業連合体が、決議の形式によってその構成
員たる企業に共同で行為させることを意味し、「その他の協調行為」とは、明確な合意、
決定は形成されなかったものの、意思の連絡により事業者間で実質的に協調(共同)して
行為を実施することを意味する。
したがって、カルテルは、書面によると口頭によるとを問わず、また、明示的なものに
限定されず、黙示的なものも含まれる。また、カルテルを認定するにあたり、カルテルに
参加した事業者の市場シェアは必ずしも要件とされていないことにも留意する必要があ
る 7。
(2) カルテルの類型
カルテルは、参加者同士の関係に応じて、「水平型(競業関係にある事業者同士間のカ
ルテル)」と「垂直型(事業者とその取引先との間のカルテル)」の 2 類型に分類される
ことが多い。
水平型の典型例は、同業者同士で商品や役務の価格を固定し又は変更する「価格カルテ
ル」8である。独禁法第 13 条第 1 項では、①価格カルテルと並んで、②商品の生産量又は
販売量を制限するカルテル9、③販売市場又は原材料購入市場を分割するカルテル 10、④新
技術若しくは新設備の購入を制限し、又は新技術若しくは新製品の開発を制限するカルテ
ル 11、⑤共同で取引を拒絶するカルテル 12、⑥国務院独占禁止法執行機関が認定したその
他のカルテルも禁止の対象として定められている。
垂直型については、独禁法第 14 条において、①商品の再販価格を固定するカルテル、
②商品の再販価格の下限を設けるカルテル、③国務院独占禁止法執行機関が認定したその
他のカルテルが禁止の対象として定められている。もっとも、③について、具体的にどの
ような違法類型を想定しているかは、なお不明確である。
(3) 適用除外規定
カルテルの外形を有する場合であっても、事業者に技術改良や新製品の共同研究開発、
標準規格の策定などといった正当な理由があるときは、独禁法第 13 条及び第 14 条の規制
の適用が免除されることがあり得る。
独禁法第 15 条第 1 項は、以下に掲げる目的につき適用除外を定めている 13。
①技術を改良し、新製品を研究開発するため
②製品の品質を向上させ、コストを削減し、効率を促進し、製品の規格を統一し、又は
専門化分業を実施するため
7
もっとも、「その他の協調行為」の認定においては、事業者の市場シェアが考慮される場合がありうる。
また、後述(3)の適用除外事由の検討では、カルテルが関連市場における競争を著しく制限するかが問題
とされる場合があり、この場合も、カルテルに参加した事業者の市場シェアは考慮されることになる。
8
具体的な類型は、
「 価格独占の禁止に関する規定」
( 国家発展改革委員会令第 7 号、2010 年 12 月 29 日公布、
2011 年 2 月 1 日施行)第 7 条に定められている。
9
具体的な類型は、
「工商行政管理機関による独占合意行為の禁止に関する規定」
(国家工商行政管理総局令
第 53 号、2010 年 12 月 31 日公布、2011 年 2 月 1 日施行)第 4 条に定められている。
10
具体的な類型は、脚注 9 に掲げる規定の第 5 条に定められている。
11
具体的な類型は、脚注 9 に掲げる規定の第 6 条に定められている。
12
具体的な類型は、脚注 9 に掲げる規定の第 7 条に定められている。
13
事業者においてカルテルの目的が適用除外される目的に該当することを証明する必要がある。
6
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③中小事業者の事業効率を高め、その競争力を強化するため
④省エネルギー、環境保護、災害救助等、社会公共の利益を実現するため
⑤経済的不況により、販売量の著しい減尐又は明らかな生産過剰を緩和するため
⑥対外貿易及び対外経済協力において正当な利益を保護するため
⑦法律及び国務院が定めるその他の状況
また、同条第 2 項によれば、上記①~⑤の場合については、事業者はさらに、カルテル
が関連市場における競争を著しく制限するものではないこと及び消費者がこれによりもた
らされる利益を享受できることを証明しなければならない。
(4) カルテルに対する制裁
カルテルに対する制裁の内容は、当該カルテル(形成された独占合意)が実施されたか
否かによって異なる。実施された場合には、違法行為の停止を命ぜられ、違法所得を没収
され、かつ、前年度の売上高の 1%以上 10%以下の過料を課されるのに対して、実施され
ていない場合の制裁は、50 万人民元以下の過料に留まる14。
かかる制裁に対して不服がある場合には、事業者の選択により、行政不服審査を申し立
て、又は、行政訴訟を提起することができる。
(5) 制裁減免(いわゆる「リニエンシー」)制度
事業者が独占禁止法執行機関に対して、カルテルに関する状況を自主的に報告し、かつ、
重要な証拠を提供した場合には、独占禁止法執行機関は、情状を酌量して当該事業者に対
する処罰を減軽し、又は免除することができる 15。
具体的には、価格カルテルとそれ以外のカルテルとで扱いが若干異なる。
価格カルテルにおいて、事業者がカルテルの状況を自主的に報告し、かつ、重要な証拠 16
を提出した場合には、独占禁止法執行機関は、申請者の処罰を減軽し、又は免除すること
ができ、処罰の減軽、免除の有無や幅については、以下のとおりとされている 17。
①第 1 順位:処罰を免除できる
②第 2 順位:50%を下回らない程度の処罰の減軽ができる
③その他の者:50%を上回らない程度の処罰の減軽ができる
他方、価格カルテル以外のカルテルにおいて、最初に自主的に重要な証拠18を提出する
などして全面的に調査に協力した報告者 19の処罰20はこれを免除するとされており、その他
の事業者については、自主的に報告した順位、提供した証拠の重要性の程度、カルテルの
14
独禁法第 46 条第 1 項
独禁法第 46 条第 2 項
16
重要な証拠とは、価格カルテルの認定において鍵となる証拠を意味する。
17
「価格独占の禁止に関する行政法執行手続規定」
( 国家発展改革委員会令第 8 号、2010 年 12 月 29 日公布、
2011 年 2 月 1 日施行)第 14 条
18
重要な証拠とは、工商行政管理機関による調査の開始又はカルテルの認定において鍵となる証拠を意味
し、具体的には、カルテルに関わった当事者、商品(役務)の範囲、カルテルの内容及び方式、具体的な実
施状況等を含むとされている。
19
「工商行政管理機関による独占合意、市場支配的地位の濫用案件の調査処理に関する手続規定」
(国家工
商行政管理総局令第 42 号、2009 年 6 月 5 日公布、2009 年 7 月 1 日施行)第 20 条第 1 項によれば、カルテ
ルの組織者(首謀者)に対しては減免規定の適用はないとされているので、留意が必要である。他方、価格
カルテルにおいて組織者(首謀者)がどのように扱われるかは不明である。
20
処罰とは、主に過料のことである。
15
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形成及び実施の状況並びに調査に対する協力の状況等を考慮して、制裁を免除し、又は減
軽できるとされている 21。
なお、価格カルテルとそれ以外のカルテルのいずれについても、リニエンシー申請の書
式や申請の受付を担当する部署は、未だ明確ではない。
3.近時の重要事例
(1) 液晶パネルのケース(水平型)
①事案の概要
2013 年 1 月 4 日、国家発展改革委員会は、6 年間の調査を経て、サムソン、LG、奇美及
び友達等の韓国と台湾の液晶パネルメーカー6 社が、国際価格カルテルに参加 22したと認定
し、上記 6 社に対して、取引先である中国液晶テレビメーカーから支払を受けた代金のう
ち市場価格を超える部分の返還、違法所得の没収、過料の支払を命じた 23。
この事案では、違法行為が行われた時期が、独禁法が施行された 2008 年以前であったた
め、独禁法ではなく、価格法に基づいて処罰がなされている。しかし、この事案は、価格
法及び独禁法を通じ、中国当局が外国企業による国際価格カルテルに対して行政処罰を課
した最初の事案であるため、価格カルテルに関する今後の独禁法実務に大きな影響を与え
るものと思われる。
②示唆及び留意点
国家発展改革委員会による価格カルテルに対する処罰事例として、昨年までは、中国国
内の業界団体が処罰対象とされる例がほとんどであった。今回、サムスンなどの海外メー
カーによる 2006 年以前の価格カルテルに対して処罰がなされたことは、尐なくとも、以下
の点を示唆するものと考えられる。
ア 国家発展改革委員会は、中国国内の業界団体による違法行為が目立つシンプルな事
案にとどまらず、複数の海外メーカーが絡んだ密室協議のような比較的複雑な事案に
ついても、長期間にわたって調査を継続し、最終的に処罰に持ち込めるだけのリソー
スを備えつつある。
イ 過去の違法行為であっても、その行為の終了後 2 年以内に何らかの通報(告発)等
がなされたことにより国家発展改革委員会が調査を開始した場合は、行政処罰法第 29
条第 1 項に定める「違法行為が 2 年以内に発見されなかったとき」には該当せず、数
年間の調査を経て最終的に価格法又は中国独禁法に基づく行政処罰がなされる可能性
がある。
ウ
一般消費者や取引の下流に位置する国内有力企業に大きな不利益を与えるカルテル
は取締りの的になりやすい24。
21
脚注 9 に掲げる規定の第 11 条乃至第 13 条
具体的には、当該 6 社が、2001 年から 2006 年までの間に、計 53 回の会議を開催し、液晶パネルの価格
について情報交換と協議を行ったうえで、中国で液晶パネルを販売する際に当該情報及び協議された価格
を利用し、液晶パネルの市場価格をコントロールしていたとの事実が認定された。
23
返還、没収、過料の合計金額は、6 社あわせて 3.53 億人民元(約 50 億円)に上った。詳細は、
http://finance.chinanews.com/cj/2013/01-04/4455353.shtml をご参照。
24
カルテルによって直接に不利益を被ったハイセンス、ハイアール又は TCL 等の中国国内テレビメーカー
は、中国における有力な企業グループであり、当局はこうした企業グループの声を真剣に受け止める必要が
あったと思われる。また、液晶テレビの購入は中国の一般家庭において大きな出費の一つであることから、
液晶テレビ価格の上昇(特に、液晶パネルの価格は、液晶テレビの最終価格の 8 割程度に相当するとされて
22
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また、この事案では、価格法に基づいて合計 1.44 億人民元の過料が課されていることも
注目に値する25。価格法において、過料を算定する際のベースは売上 26ではなく、違法所得
(利益)であるため、仮に今後、類似の事案で独禁法に基づいて過料を算出する場合には、
桁が違うほど高額になる可能性は否定できない。
さらに、この事案では、台湾液晶パネルメーカーの友達は、最初に自主的な情報提供を
行い、国家発展改革委員会の調査に協力したため、1,034 万人民元の違法所得を没収され
たものの、過料については課されなかった 27。また、この事案に関して開かれた記者会見
において、国家発展改革委員会の担当者は、各社の自主的な情報提供に鑑みて処罰を減軽
した旨を強調しており、今後、独禁法に基づいて処罰を行う場合も含め、リニエンシー制
度を積極的に運用していく姿勢が窺える。
もっとも、前述のとおり、最初にリニエンシー申請を行い、調査に協力した場合でも必
ず処罰が減免されるわけではなく、当局の裁量によって減免される場合があるにすぎない
28
。また、具体的な申請手続もまだ確立していない。したがって、今後、国家発展改革委
員会がリニエンシー制度を積極的に運用するであろうことは想定し得るものの、リニエン
シー制度そのものは未だ利用しにくいものといわざるを得ない29。
(2) 白酒ブランドのケース(垂直型)
①事案の概要
2013 年 2 月 22 日、貴州省物価局及び四川省発展改革委員会は、中国の白酒ブランドと
して有名な茅台酒と五糧液の販売業者が、両社から製品を購入し再販売する流通業者の最
低再販価格を拘束した行為30が、競争を排除及び制限し、独禁法第 14 条に違反するとして、
それぞれ 2 億 4700 万元及び 2 億 200 万元の過料を課した31。
これらの事案は、再販価格維持に対して、過料が課された初めての事案である。
②示唆及び留意点
茅台酒の事案では、貴州省物価局の公告文は僅か数行程度であり、過料の額以外には、
茅台社が契約を通じて流通業者の再販価格を限定したことが市場競争を排除及び制限し、
いる)は一般消費者の間で強い不満を招くことにつながる。そのため、このような事案での取締りの実績な
ら国民にアピールしやすい、という側面もあったのではないかと推測される。
25
これは、中国において、競争法分野で課された過料として過去最高額である。
26
後述する五糧液社に対する四川省発展改革委員会の処分においては、過料の算定ベースに用いられたの
は、案件(カルテル)に関わる部分の売上であったように読める。
27
この点、価格法には、リニエンシー制度のような制裁減免に関する規定が設けられていないため、この
事案では、行政処罰法第 27 条第 1 項第 3 号により処罰が減軽されたと推測される。
28
カルテルの組織者(首謀者)の取り扱いについては、脚注 19 をご参照。
29
この意味でも、カルテルに関わっており又は関わったことがある事業者においては、リニエンシー申請
を行うか否かについては、慎重に判断する必要がある。具体的には、①当該カルテルが中国市場にどれほど
の影響を及ぼすか、②影響を及ぼす場合、一般消費者又は国内の有力企業にどれほどの不利益をきたすか
等の点を中心に考慮すべきである。また、仮にリニエンシー申請を行わないことを決定したとしても、常
に競争当局及び同業他社の動きを見極め、当局から何らかの形で声がかかった場合には速やかに対応でき
る体制を準備しておく必要があるように思われる。
30
茅台社と五糧液社は、それぞれの販売代理店に対して再販価格の最低額を設定し、これに違反した販売
代理店から保証金を没収するとともに、商品の買戻しを求め、さらに、五糧液社の場合は、販売代理店に対
して販売地域と販売ルートについても厳しく制限していたとされる。
31
2013 年 2 月 22 日付け貴州省物価局公告(2013 年第 1 号)及び 2013 年 2 月 22 日付け四川省発展改革
委員会ウエブサイト上の記事(「五糧液公司が価格カルテルを実施し、2.02 億元の過料を課された」)
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消費者の利益が損なわれたこと、及び、茅台社が調査を受けてから積極的に調査に協力し
たことぐらいしか言及していない。
他方、五糧液の事案では、四川省発展改革委員会の公表文は、五糧液社が市場における
強い立場を利用して垂直型価格カルテルを実施したこと 32が、ブランド内の流通業者間の
競争を排除しただけでなく、白酒業界におけるブランド間の競争をも制限したなどと言及
しており、過料の額についても、同社が調査に積極的に協力したなどとして前年度の売上
(案件に関わる部分)の 1%に減軽したと言及している。
これらの言及は、尐なくとも、以下の点を示唆するものと考えられる。
ア
垂直型価格カルテルの競争に与える影響を判断するにあたり、当事者の市場におけ
る立場や、その当事者が実際に行った措置が考慮される。すなわち、知名度が高く、
市場で有力な立場を有するブランドは注意を要し、また、再販価格維持に関する条項
を契約に設けただけでなく、その実効性を確保するために一連の管理、監督を行い、
違反行為に対して供給停止、供給削減、保証金の没収、リベートの減額等の処罰措置
を実行した場合は特に注意を要する。
イ
積極的な調査協力により、過料の額は相当程度減軽される可能性があり、案件に関
わる売上の金額によっては、法律上の下限とされる 1%にまで引き下げられることも
十分ありうる。
(3) まとめ
これまで、カルテル規制よりも企業結合規制がより注目を浴びていたためか、独禁法の
エンフォースメントにおいては、当局が、外国企業に対して厳しく、国内企業に対して甘
く運用する傾向にあるのではないかと囁かれていた。しかし、前出液晶パネルのケースの
直後に有名な国内企業を捕らえて現に高額な過料を課した白酒ブランドのケースは、国内
外を問わず、また、水平型と垂直型を問わず、価格カルテルを厳しく取り締まっていくと
いう当局の強い決心を改めて印象付けたものといえる33。
したがって、尐なくとも中国で比較的高い市場シェアを有する日本企業においては、今
一度、中国独禁法に反する行為に関わっていないか、早急に確認する必要があると思われ
る。特に、中国ビジネスの実務上、再販価格の維持及び再販地域の限定が広い範囲で行わ
れていることに鑑みると、こうした取り決めの適法性について検討をしておくべきであろ
う。
[応用編]
近時、日系企業において、コンプライアンスの徹底という観点から、カルテル行為をし
ない、させないための体制づくりを行っている例が多く見受けられる。カルテルに関与し
た者に対して厳しい処分で臨むことは当然であるが、その者の上司に対しても、管理責任
を尽くしていない場合は厳しい処分を行うべきであろう。
32
具体的には、同社が、契約での約定等を通じて、最低再販価格を守らない流通業者に対し、供給停止、
供給削減、保証金の没収、リベートの減額等の制限行為を行ったことが認定された。
33
この事案への当局の対処については、公的な宴会等で茅台酒や五糧液のようなブランド白酒が定番とし
て振舞われることが多く、高価なブランド白酒の流通が官僚の腐敗や汚職を連想させうるという背景もあっ
たと思われる。
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また、業務の関係で競合他社との会合が避けられない場合も考えられるため、予防的な
見地から、こうした会合について一定の社内ルールを設けるべきと思われ、具体的には、
例えば、以下の対応が考えられる。
まず、会合の前に、会合の目的、議題、参加者、資料等の詳細について社内での確認、
承認手続を設け、価格の調整や市場の棲み分け等に関わる疑いのある会合には参加しな
い、させないようにする。
次に、会合においては、社内で確認、承認された目的、議題の範囲内で会合を実施し、
確認、承認された目的、議題から逸脱した話合いとなったときは、場合によっては、離席
も辞しない断固とした対応を取るようにする。
最後に、会合の後で、会合の議事内容について議事録等を作成しておき、社内で事後的
に確認するようにする。こうすることによって適法に会合に参加したことが証拠化され、
違反行為を問われるリスクが軽減される。
もっとも、実際のところ、業務内容に直結する会合ばかりではなく、懇親会、ゴルフコ
ンペ、表敬訪問といった親睦系の会合も尐なくないであろう。会合の目的が曖昧な場合に
は、議論の内容が意図せざる分野に及び、違法な状態に巻き込まれる可能性があるため、
参加するかどうかを判断するにあたり、慎重な対応が望ましいと言える。
(王嶺・弁護士、中国弁護士)
三.中国法務の現場より
1.上海自由貿易試験区の始動
先月号で取り上げた「中国(上海)自由貿易試験区」が、9月29日正式に成立し、前市長
(現在中国共産党政治局委員、上海市党委書記)の韓正、商務部部長の高虎城、現市長の
楊雄らが出席して式典が行われた。これに先立ち、9月27日に、国務院は「中国(上海)自
由貿易試験区総体方案」(以下「総体方案」という。)を公布した。
自由貿易試験区は保税区のバージョンアップ版とも言われている。今までの保税区は、
外高橋保税区のように英語で「Free Trade Zone」という呼称を付けていながら、実際には、
完全に自由なわけではなく、いわゆる「境内関内」
(国内かつ税関内)の管理体制を採って
きたのに対し、上海自由貿易試験区は「境内関外」
(国内だが税関外)を目指しており、
「一
線を徐々に徹底的に開放し、二線を安全で効率よく管理し、区内の流動を自由にする。」と
の政策を採る。ここでの一線とは国境線、二線とは試験区以外のエリアとの境界線のこと
を指す。即ち、自由貿易試験区では貨物が国内にあっても、国外にあるとみなし、税関の
管轄外とし、本当の貨物の自由流通を実現しようとするものである。
上海自由貿易試験区の決定に関与した上海市人民代表大会常務委員会法制工作委員会主
任の丁偉教授は、9 月 22 日に開催された上海自由貿易試験区に関する講演会で、総体方案
の 98 項目のうち、54 項目は制度の革新に関するものであると説明した。制度の革新の中
で、一番注目されるのは、「投資設立前国民待遇」とネガティブリストを中心とする新しい
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投資管理体制である。
現在の中国における外商投資企業に対する投資管理体制は、
「投資設立後国民待遇」が採
用されている。すなわち、外商投資企業を設立する場合は、内資企業と異なり、まず商務
部門による審査・認可を受けてからでなければ工商登記することができない。これに対し、
今回の総体方案によると、上海自由貿易試験区で外商投資企業を設立する場合は、
「投資設
立前国民待遇」に転換されることになった。即ち、ネガティブリストに列挙された以外の
産業については、商務部門による審査・認可が不要になり、届出にとどまり(ただし、国
務院が審査・認可を必要と定める国内投資プロジェクトを除く。)、その後は内資企業と同
じように直接工商登記手続を行えば済むこととなった。また、総体方案によると、外商投
資企業の合弁契約、定款に対する審査・認可制も届出制に変更された。
ネガティブリストとは今まで外商投資企業が投資できる産業を明確にするポジティブリ
ストとは反対に、外商投資企業が投資できない分野を明確にするものを指す。即ち、今ま
での「法に明確な規定がなければ、実行することができない。」政策から「法に禁止がなけ
れば、実行することができる。」政策に移転する。ネガティブリストは 9 月 29 日付で公布
された 34。ネガティブリストの前書きの説明文によると、ネガティブリストは外国投資に
関する法律法規、総体方案及び「外商投資産業指導目録(2011 年改正版)」35等に基づいて
作成されたものであり、上海自由貿易試験区内における外国投資プロジェクトや外商投資
企業に対する、国民待遇等とは異なる措置を明示している。例えば、ネガティブリストは、
大型テーマパークの建設、経営を制限し、インターネットカフェの経営を禁止している。
「投資設立前国民待遇」とネガティブリスト、この二つの政策変化は、外商投資企業に
とって大きなメリットであり、報道によると、上海自由貿易試験区の成立と同時に登録さ
れた第 1 期の 36 社の企業のうち、11 社が外商投資企業である。なお、9 月 29 日の自由貿
易試験区に関する説明会で、上海自由貿易試験区管理委員会副主任の戴海波氏は、「以前、
外商投資企業の設立登記までの期間としては、29 日間とのお約束をしていたが、これから
は最短 4 日間で営業許可証、組織機構コード証と税務登記証等を取得することができる。」
と語っていた。
総体方案は、要件を満たす外資金融機関に全面的に開放し、自由貿易試験区における外
資銀行、合弁銀行の設立をサポートすると定めている。即ち、上海自由貿易試験区では、
従来の外資銀行に対する多くの制限が緩和されることになる。シティバンクと DBS 銀行は
既に上海自由貿易試験区における第 1 期の外資銀行になっている。
国務院が全国人民代表大会常務委員会に提出した提案には、「文化財保護法」第 55 条 3
項の「合弁企業、合作企業と外資独資企業の形態による文化財販売店又は文化財のオーク
ションを経営するオークション会社の設立を禁止する。」という規定の実施を一時的に停止
するとの内容があり、文化財オークション業務が開放されるとの報道がなされたが、文化
財の流出が心配されることや、「文化財保護法」が改正されたばかりであることなどから、
同内容は全国人民代表大会常務委員会の決定 36では削除され、9 月 29 日付け公布のネガテ
ィブリストにも、禁止類に挙げられた。
34
http://zbw.sh.gov.cn//UpFile/2013-9-30/负面清单(2013 版).pdf
《外商投资产业指导目录(2011 年修订)》
36
《全国人民代表大会常务委员会关于授权国务院在中国(上海)自由贸易试验区暂时调整有关法律规定的行政
审批的决定》
35
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上海自由貿易試験区の設立に伴い、多くの既存の法令の実施が試験区内では停止されるこ
とになる。これらの法令が適用されなければ、区内ではどの法令を適用して運営していく
かが課題になっている。上海市政府は 9 月 29 日に、「中国(上海)自由貿易試験区管理弁
法」、
「中国(上海)自由貿易試験区外商投資プロジェクト届出管理弁法」37、
「中国(上海)
自由貿易試験区対外投資プロジェクト届出管理弁法」38、
「中国(上海)自由貿易試験区外
商投資企業届出管理弁法」 39及び「中国(上海)自由貿易試験区対外投資企業設立届出管
理弁法」40の 5 つの規定をまとめて公布した。これらの規定がどのように運用されていく
か、今後注目する必要がある41。
(山根基宏・弁護士)
2.居留許可の手続期間延長(北京)
本年 7 月 1 日施行の「出入国管理法」、9 月 1 日施行の「外国人入境出境管理条例」に基
づき、公安当局における外国人居留許可の延長・切替等に要する期間が、従来の 5 営業日
程度から 15 営業日(約 3 週間)へと大幅に延長された。
地方によっては、天津市(5 営業日)や上海市(7 営業日)のように、実務上の所要期間
を短縮する運用が発表されているのに対し、北京市においては同様の運用が発表されてい
ないことから、市当局の対応に注目が集まっていた。
そんな中、9 月 12 日に北京市公安局の担当者らによる出入国管理法令改正に関する説明
会が開かれ、筆者を含む多くの日本人駐在員が出席した。当該説明会において出席者から、
天津市や上海市のような「期間短縮」運用が北京でも実施されるか否かについて質問がな
されたが、公安局の担当者は「北京市においては、国が定めたとおり『15 営業日』以内に
居留許可の審査手続を行う」とのつれない回答であった。もっとも、当該担当者は、今後、
期間短縮を行う可能性については否定せず、検討を行う旨の含みを持たせていたため、早
期の運用改善を期待したい。
手続期間の延長によって不便が最も懸念されるのが、交通機関の利用である。手続期間
中はパスポートを当局に提出するため、出国できなくなるばかりか、中国国内便のフライ
トや高鉄(新幹線)のように搭乗時にパスポートの提示が必要となる交通機関が利用でき
なくなるおそれがある(従来、パスポートに代わる顔写真入り預り証が発行される地域も
あったが、北京では発行されなかった)。
この点については、本年 9 月 1 日以降、北京においても、パスポートを公安機関に預け
た際に顔写真入りの全国統一様式の預り証(受理回執)が発行され、これを身分証明書と
して利用できるようになった。上記公安局の担当者によると、
「預り証を身分証明書として
扱うかどうかは交通機関が判断することであって公安局は関知しない」との説明であった
37
《中国(上海)自由贸易试验区外商投资项目备案管理办法》
《中国(上海)自由贸易试验区境外投资项目备案管理办法》
39
《中国(上海)自由贸易试验区外商投资企业备案管理办法》
40
《中国(上海)自由贸易试验区境外投资开办企业备案管理办法》
41
関連法令等の資料は、上海自由貿易試験区のウェブサイト
(http://zbw.sh.gov.cn/WebViewPublic/homepage.aspx)にて閲覧できる。
38
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が、近時の情報(中国日本商会のメルマガ等)によると、預り証で中国国内便の飛行機や
高鉄に無事搭乗できたという事例がいくつか報告されているようである。
(野中信孝・弁護士)
TMI 中国最新法令情報―2013 年 9 月号―
発
監
行:TMI 総合法律事務所
修:何連明・外国法事務弁護士
編集主幹:山根基宏・弁護士
発 行 日:2013 年 9 月 30 日
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