●サンヨー ・ プロダクト ・ トピックス● 自動車の燃費向上に貢献する 高性能潤滑油を支える 高性能粘度指数向上剤『アクルーブ』 シリーズ 地球温暖化防止に向けた環境対策が進めら れるなか、自動車の燃費向上の強化が図られ ています。その対策としては車体の軽量化、 エンジンの改良などがありますが、その一つ に潤滑油の高性能化があります。 自動車用潤滑油 自動車には、さまざまな個所で潤滑油が使 用されています。その代表的なものがエンジ ダー内壁や軸受けなどの摩擦を低減し、発生 ン油で、ピストンの往復運動で生じるシリン する熱を冷却する役割を持ちます。そして変 速機やデファレンシャルギアには駆動油が使 われています。こうした潤滑油の多くは、鉱 物油を主成分とし、それに各種添加剤を加え て作られます。今回紹介する粘度指数向上剤 ︵VII︶もこの潤滑油添加剤の一種です。 一般に、潤滑油は低温では粘度が高くなり、 高温では低くなります。粘度が高くなると粘 性抵抗によりエネルギーロスが生じ、低くな ると潤滑油本来の摩擦や摩耗を減らす機能が 低下します。この温度差による粘度変化を小 さく︵粘度指数を大きく︶するために潤滑油 に加えられるのがVIIで、鎖状の油溶性ポ リマーが用いられます。そのメカニズムは、 潤滑油中でのVIIのポリマー分子の挙動を 利用しています。つまり、潤滑油の温度が高 くなると分子鎖が広がって粘度低下を抑制し、 9 2013 夏 No.479 エンジンオイルに 逆に低温下では分子鎖が収縮して小さく丸 まった状態になって粘度上昇を抑制する、と いうわけです。VIIには、主にオレフィン コポリマー︵OCP︶系とポリメタクリレー ト︵PMA︶系があります。三洋化成の高性 能VII﹃アクルーブ﹄シリーズはPMA系 のポリマーを主成分としており、PMA系の 特長である温度変化による分子鎖の広がり、 収縮の差を大きくすることで、潤滑油の粘度 指数を大幅に向上させています。 さらなる高性能化への流れ VIIに求められる主な性能は粘度指数向 上とせん断安定性です。前述のとおり粘度指 数向上は分子の挙動変化を利用しており、V IIの分子量が大きい︵分子鎖が長い︶ほど この指数は大きくなります。一方、潤滑油は 使用すればするほど摩擦など大きな力のかか る部分でVIIの分子鎖が切断され、粘度低 下を起こします。この分子鎖切断による潤滑 油の粘度低下の割合はせん断安定性と呼ばれ、 VIIの分子量が小さいほど潤滑油の粘度低 下率が小さくなり、せん断安定性は向上しま す。このように粘度指数向上とせん断安定性 とは分子量に関して相反する関係にあります。 ﹃アクルーブ﹄はこの相反する性能に対し、用 途ごとまた求められる性能ごとに最適化する ことが可能です。 三洋化成ニュース 10 ■高性能 PMA 系 VII と従来 PMA 系 VII との比較 高 低 粘度指数 高性能PMA系Ⅶ 特殊モノマーでの高性能化 従来PMA系Ⅶ 小 大 粘度低下率(%) ■『アクルーブ V-5000』シリーズと従来品の性能比較 性能項目 単位 非分散/分散 − アクルーブ アクルーブ アクルーブ 従来品 V-5090 V-5110 V-5130 (PMA系) 従来品 (OCP系) 非分散 非分散 分散 非分散 非分散 HTHS粘度*1 (150℃) mPa・s 2.6 2.6 2.6 2.6 2.6 HTHS粘度 (100℃) mPa・s 4.9 5.2 5.1 5.7 7.5 HTHS粘度 (80℃) mPa・s 7.8 8.1 7.7 8.8 11.6 動粘度 (100℃) mm ²/s 7.32 7.87 7.18 8.70 8.05 動粘度 (40℃) mm ²/s 31.8 32.7 30.6 39.3 41.8 (−35℃) mPa・s CCS粘度*2 5,500 5,050 5,100 5,800 5,500 MRV粘度*3 (−40℃) mPa・s 10,200 13,200 14,000 15,800 15,000 29.8 32.7 25.0 35.0 22.0 Bosch SSI % *1 しゅう動部で起こる高温、高せん断下での最低粘度 *2 低温時でのピストンを上下する際の粘度 *3 低温時でのエンジン底にたまった油をポンプで吸い込むことができる粘度 エンジン油用粘度指数向上剤は、これまで はOCP系が主流でしたが、自動車の省燃費 に対するニーズの高まりとともに、PMA系 の中でも高性能な﹃アクルーブ﹄の需要が高 まっています。また駆動油でも、より厳しい せん断安定性が要求されることから﹃アクルー ブ﹄が活躍する場が広がっています。こうし た世界的な需要の広がりを受けて、三洋化成 では国内での増産体制を整えるほか、米国に も新たに生産拠点を稼働させ、この二年で﹃ア クルーブ﹄の生産能力を一・八倍に拡大し需要 増に対応しています。 自動車分野の環境対策ではハイブリッド車 や電気自動車が注目を集めていますが、さま ざまな燃費向上策の採用で、ガソリン車でも ハイブリッド車並みの燃費を誇る車種が登場 しています。しかし、今後はさらに厳しい燃 費基準の目標値が予定されており、潤滑油に もこれに対応した規格改訂が進められていま す。こうした流れに応える製品として期待さ れたことが﹃アクルーブ﹄の市場拡大につな がっている理由です。 三洋化成は、これまでもさまざまな分野で 省エネやグリーン調達に応える製品など環境 に貢献する製品開発を行ってきました。 ﹃アク ルーブ﹄シリーズにおいても、長年培ってき た高い技術を生かして、さらなる高性能な製 品開発に注力していきます。 2013 夏 No.479 11
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