(12/1号) 販促プロモーション特集

現在、TV広告やチラシなど、消費者を対象とするプロモーションは様々な形態があり、
消費財メーカーは最大限の効果を狙って、それぞれの目的に合わせた手法を実施、模索している。
しかし、インターネット広告市場の伸長や、原材料の高騰による利益率の低下などから、
マスを意識した広告の予算は縮小傾向にある。そこで、特定の情報を必要とするターゲットに向けて
確実にリーチすることが可能なメディアが求められている。
カタリナ マーケティング ジャパン㈱の提供する「レジ・クーポンR」を初めとするサービスは、
ターゲットを確実に捕え、また、フレキシブルな対応が可能という点から、
まさにこのような時代に求められているメディアと言えよう。
カタリナ マーケティング ジャパン㈱
代表取締役社長
その仕組みと、同社が取り組んでいるさらなる新しい手法について、
若林 学氏
同社代表取締役社長 若林 学氏に聞いた。
コンシューマー、ショッパー、
カスタマーを明確に分けた
マーケティング手法
ている」
という状況だ
(図表 1 )
。
違いに目を向け、きめ細かく対応していくこ
たとえば、ベビー用品のコンシューマー
とが重要になる。
は赤ちゃんであるが、ショッパーは親であっ
たり祖父母であったり、コンシューマーと
日本のTV広告は、戦後のテレビの普
ショッパーが全く違う。百貨店協会が始め
及とともに伸長し、最近のある調査では
た
「孫の日」は、まさにコンシューマーであ
約 3 .5 兆 円 規 模と言われている。メ
ディアとして、非常に巨大ではあるもの
の、昨今、その規模は毎年縮小傾向
にある。
TV広告などのマス・メディアを消
図表 1 カタリナマーケティングの新しい取り組みとビジョン
米国においても、過去 3 年間のメ
チラシ、DM、店頭での試食販売や
これに当たるが、他のターゲット・メ
Web広告は約 15 %、店頭広告
(ショッ
ディアに比べると、事前準備に時間
パーズ・マーケティング)
は約 22%も
を要しないという特長がある。
カラー(宣伝)
SiD(何を/誰が)
伸びていることが分かっている。
すなわち、チラシやDMには事前の
店舗ネットワーク拡大
つまり、メディアに構造的な地殻変
動が起きつつあり、メディアの再分化と
代表取締役社長 若林 学氏によると、
て発信するターゲット・メディアには、
2)
。カタリナの「レジ・クーポンR」
も
Consumer
戦略
る支出は減っている。これに対して、
カタリナ マーケティング ジャパン㈱
費者向けとすれば、購買者を特定し
特売などを挙げることができる
(図表
ディア調査によれば、TV広告に関す
再編成が必要になっているのである。
実施までのリードタイムが
大幅に少ないフレキシビリティも
大きな特長
メーカー連合
印刷、配布が必要であり、試食や特
カタリナクラブ
売には計画的な発注、店頭での大
Shopper
戦略
Customer
戦略
「すでに、グローバルカンパニーと言わ
陳も必要だが、レジ・クーポンRは、
その場で発券して、ターゲットとした購
買者に手渡すだけ。非常にフレキシ
ブルな対応が可能となる。
れる大手メーカーでは、コンシューマー(消
る孫のために、ショッパーである祖父母に
とくに、マーケット情報が国境を越え、
費者)
、ショッパー(店頭での購買者)
、カ
アプローチする一例となろう。
しかも瞬 時に広がる激 動の現 代で、メ
スタマー(メーカーにとっての顧客=小売
SMなどでも、実際に買う客と本当に消
ディアのフレキシビリティは重要な要素と
業)
に分けて、マーケティング戦略を立て
費する人が違うことは多々ある。こうした
なろう。
図表 2 マスメディアとカタリナ ターゲットメディアの比較
媒体
対象
目的
マ スメ ディア
テレビ、ラジオ、
雑誌、新聞
消費者
マス
(広く・浅く)
マーケティング
タ ー ゲットメ ディア
カタリナ
レジ・クーポンR
購買者
ターゲット
(狭く・深く)
マーケティング
ROI
GRP
(累積到達率)
売上増大、知見・洞察、
バリューチェーン、広告・宣伝
広告ツールとしての
「レジ・クーポンR」のポテンシャル
情 報を得たその場で購 入できるWebを
「SiDの「i」には、個人を識別するときの
使ったショッピングなどは、店頭と競合す
「I」、メディアミックスとしてのインテグレー
る新たな業態と言えるかもしれない。
ションの頭文字、日本語の「愛」
など複数
つい最近の米国の『ウォールストリート・
実は、米国のカタリナのレジ・クーポ
の意味が込められている」(若林社長)
と
ジャーナル』に、カタリナの事例が掲載さ
ンRはカラー化されて、ビジュアル的な表
のことだ。
れた。
現が格段に進んだ。日本でも、再来年に
重要なことは、POSデータ、購買履歴
たとえば、LVMHは、カタリナの仕組み
はカラー化が予定されており、そのときま
データなど過去のデータも、カタリナマー
を使って、売り込みたいカリフォルニアワイ
でに米国や欧州でのカラー化の事例も
ケティングの仕組みと連動させることによ
ンと同価格帯のワインを過去に買ったこと
蓄積されているので、すぐにも効果的な
り購買者への具体的な働きかけにつなげ
のある客だけに、カリフォルニアワインの
使い方をすることができるだろう。
ることができ、その結果を瞬時に検証する
味や品質、相性のいい料理などの情報を
ことが可能になるという点。
いるという。
購買履歴に基く情報提供で、
リアルタイムな効果の検証も可能に
つまり、カタリナのレジ・クーポンRは、
日本の小売業にも、FSPカード
(ポイン
は、GMSとSMの売上高の7 割を超える
割引などの販促ツールとしてだけでなく、
トなどの顧客カード)
を導入するところが増
シェアをネットワークが有することになろう。
純粋に広告ツールとしても効果が高い。
えているが、米国ではこのカードを活用し
このネットワークによるシンジケーション
(連
なぜなら、すべての顧客ではなく、過去
たカタリナのマーケティング手法も一般化
合 )は、情 報を伝 達するためのプラット
の購買行動から買ってもらえる確率の高
している。
フォームとして強力なバリューとなる。かつ
伝えることで、効率的に売上げを伸ばして
日本でのカタリナの店舗ネットワークは、
現在 2000 店舗規模である。数年のうちに
い顧客をセグメントしてアプローチできるか
従来のカタリナマーケティングでは、購
て、TVが普及するにつれて、情報伝達の
らだ。これをウォールストリート・ジャーナル
入した商品
(何を買ったか)
によって、伝え
強力なバリューを持ったのと同じように。
紙では
「Personalized Store Ads(各個
るメッセージを変えてきた。これは、POS
人向けの店頭広告)」
と表現している。
図表 3 SiDの概要
まさに、究極の個人向け広告が可能と
なる。
ピンポイントな情報提供が、
店舗 へのロイヤルティーの
向上につながる
高
70 %+
高 上位
25 %
現代は情報が溢れ、本当に必要な
中位
25 %
情報を探すのに苦労するほどだ。しか
も、Webの発達で迷惑メールなども横
行するようになった。いかに不要な情
低
下位
50 %
セル 1
ブランドロイヤルティ
30 -70 %
セル 2
低
1 -30 %
セル 3
非購買
セル 4
店舗の手を煩わせることなく、
クロスMDを可能にする仕組み
すでに、カタリナの仕組みを活用す
るメーカー間では、カタリナを共通のプ
ラットフォームに、協働する事例が増え
ている。
セル 5
セル 6
セル 7
セル 8
セル 9
セル 10
セル 11
セル 12
たとえば、ひとつのレシピに対して、
必要な商品を何社かがそれぞれ出し
合い、連合してクーポンを発券する。
つまり、ある種のクロスMDである。
通常、店頭でクロスMDを仕掛ける
ターゲット
場合には、複数の部門の担当者によ
ばならない。ここでも、パラダイムシフトが
データと連動することで可能となる。
る話し合いが必要で、売場でも大陳する
起きている。
さらに、顧客カードと連動すれば、過去
など、小売業側の負担は少なくない。しか
少なくとも、カタリナの仕組みを使えば、
の購買履歴をもとに、購入した人
(誰が
し、カタリナの仕組みを使えば、小売業
報を排除するかに、労力を使わなけれ
情報を必要としていない顧客に情報を伝
買ったか)
によって、伝えるメッセージを変
の担当者の手を煩わせることなく、しかも
えることはない。その分、少しでも購買の
えることもできる。これが、カタリナの「SiD
時期を逃すこともなく、クロスMDを仕掛
可能性のある顧客に情報を届けることが
(ショッパーズ・アイ・ダイレクト)」である
できる。
(図表 3 )
。
けることができる。
今年から、カタリナの仕組みを活用して
さらに、顧客は情報を手に入れた場所
たとえば、ある商品を訴求するのに、複
いるメーカーや小売業が、自主的な勉強会
で、商品を購入する傾向にある。
数購入や同カテゴリー・別カテゴリーから
(カタリナクラブ)
をはじめるようになった。カ
とくに、店頭は商品を購入するために来
のトライアルを促すメッセージを流すのが
タリナをいかに効果的なメディアとして活用
ている場所なので、顧客の記憶に残りや
従来の手法とすれば、ブランドロイヤル
するか。各社、各連合の事例を研究した
すい。TVなどで見た広告を頼りに扱って
ティ×カテゴリー購買量マトリクスの任意
り、今後の活用法を提案したり。ここから、
いる店舗を探すよりも、ずっと手間なく、確
の条件のセルに入った人にメッセージを流
新たな店頭マーケティングの法則が生まれ
実に購入することができる。その意味で、
すしくみがSiDとなる。
るに違いない。