二番(田中哲君) 今回は、青少年の健全育成に絞って近藤教育長に一般質問をしたいと 考えております。子供たちや地域にかかわることでございます。どうぞ、よろしくお願い を申し上げます。 さて、今年の九月八日、本区の女子中学生が集団リンチを行うという大変不幸な事件が 発生をいたしました。少女たちに最初の逮捕者が出たのが十月十八日。さらに、新聞にセ ンセーショナルに取り上げられましたのが今十一月十二日であります。この二か月余り、 教育委員会ではどんな対応を行い、どんな対策を立てていたのでありましょうか。 恐らくは被害者、加害者の双方の心のケアをはじめ、十分な対応や指導を図っておられ たことと信じておりますが。しかし、今回の事件発生の情報が余りに唐突に新聞紙上やテ レビのワイドショーなどの媒体からの情報だったために、一体どこの中学なんだ。どうも、 あそこの生徒らしいなどの憶測やうわさが飛び交い、保護者や子供たちの間では無用の動 揺が広がっているのもまた事実であります。 危機管理(クライシス・マネジメント)の最重要項目は情報の管理、すなわち流すべき 情報をきちんと流すということだと言われておりますが、果たしてどうお考えなのでしょ うか。今回、当事者の名前や個人の情報を流せというつもりもありませんし、プライバシ ーの保護には十分な配慮がなされるべきだと思っております。しかしながら、ある日突然、 新聞紙上やテレビなどの媒体からしかこうした情報が得られないとするならば、青少年の 健全育成にかかわる育成委員会や青少年委員、さらに保護者は一体どんな気持ちでおられ ることでしょうか。ある育成委員長は、こうした隠蔽体質は大変に問題であるとご立腹で、 同時に情けないと寂しそうに嘆いておられました。 本来、事件発生後、その情報は速やかに教育関連部門に流され、その重要度を判定し、 十分な対策を立てるのが当然の職務だと思いますが、今回は単なる怠慢なのか、あるいは 作為的な事情があった故なのか、きちんとした対応が図られているとは思えません。二度 と今回のような事件を起こさないという強い認識のもとで、墨田区民のすべてが納得でき るような再発防止策をお聞かせ願います。 さらに、学校選択制が実施されている現状において、学校の明確な情報を開示しなくて、 生徒、保護者が一体どういった判断を下すのでありましょうか。もし、誤った情報により 誤った選択が来年度の学校選択で行われたとしたならば、教育委員会事務局はどういった 責任をとるのでありましょうか。現在、行われております墨田区の学校選択制では、新一 年生のみの選択であり、学年途中からの選択変更はできないのであります。今回の事件を 入学後に知り得た生徒や保護者は、改めて学校を選び直すことはできないのであります。 当局は、今回の事件の学校名を開示し、情報を完全に明らかにした上で来年度の学校選択 のやり直しを図るべきなのではないでしょうか。 さらに、教育委員会の、子供たちは学校、家庭、地域で守るという基本方針からすると、 今回の事件は、学区域の自由化の負担が地域にかかり過ぎ、地域の目が十分に子供たちに 届かない故に起こった事件であり、余りに早急な自由選択制がもたらした不幸な事件だと 思われてなりません。 選択制三年目に入り、来年度の学校選択制の結果を見ますと特定の学校に選択が偏って おります。逆に極端に入学者が減少している中学校が出てきております。地域は、学校を 支えるべく環境整備などの支援を行っていますが、それに対応できないスピードで生徒が ほかへ流れていきます。教育委員会は、学校選択と学校統廃合は全く別の議論であると言 っておりますが、もし選択する生徒がゼロになっても学校を残すのでありましょうか。一 方、選択の拡大する学校では、特別教室を普通教室に転用して授業を行っている現状であ ります。新入生が四十を超える小学校から集まる教育現場の困難さを教育委員会は認識し ているのでしょうか。 現状の選択制では、当初の特色ある学校をつくり、学校間の競争意識を高めるとの意図 とは別の方向に進んでおります。このままでは地域コミュニティは破壊され、大変いびつ な形になってしまいます。改めて、通学区域の再構築と学校自由選択制の見直しを図るべ きだと考えますが、いかがお考えでしょうか。近藤教育長の明確なご回答を求めます。 現在、来年度からの二学期制を含めて教育改革の流れが出ておりますが、長期ビジョン のない対症療法では新たな弊害を生むばかりであります。山崎区長は、やさしいまちづく りの中で何よりも人づくりを掲げております。三十年後の墨田を支えるのは今回の中学生 の世代であります。 私にも今回、事件を起こしました子供たちと同年代の息子がおります。場合によっては、 同様な事件の被害者や加害者になり得たかもしれないと思うと、大変やるせない気持ちが いたします。近藤教育長、ぜひお役人として、仕事としての教育行政ではなく、教育長ご 自身のお子さんの教育としてとらえていただきますように強くお願いをして質問を終わら せていただきます。 ご清聴ありがとうございました。 〔教育長 近藤舜二君登壇〕 ◆ ◎教育長(近藤舜二君) 田中哲議員さんの青少年の健全育成についてのご質問に、昨 日の答弁と重なるところもありますが、お答えいたします。 九月八日の事件発生の報告を学校から受けて後、在籍校、警察署と連携しつつ、被害 生徒、加害生徒とも将来を見据え、保護者とともに一人ひとりの心に寄り添う指導・支 援を心がけました。十月にはほぼ落ち着いた生活を送ることができるようになっていた ところでございます。このような状況の中、今回の報道がありました。最初の逮捕者が 出た段階では、引き続き捜査中ということもあり、全員の逮捕があった時点で報道され るという情報を得ましたので、各方面へ情報として連絡したものでございます。 報道後の対応につきましては、今回の事件を墨田区全体の課題としてとらえ、すぐに 子供を守る、学校を支援する、事件の再発防止に万全を期する、の三点を基本姿勢とし て、マスコミ取材、苦情等対応の一本化、臨時校長会の開催、青少年育成委員会との連 携、地域ぐるみのサポート体制の充実、緊急時の連絡体制の確認など、具体的な対応を 行ってきたところでございます。 学校選択に際し学校名を公開しないことは、生徒・保護者の不利益になるというご指 摘でありますが、学校名を公開しないことにつきましては、第一に被害生徒、加害生徒 ともこの事件から立ち直るために、現在前向きに努力をしているところであること、第 二に関係校の生徒も落ち着いた生活を取り戻し学習に集中しているところであり、こう した中であえて学校名を公表することは新たな混乱を引き起こし、特に進学に向けて精 神的に不安定にある三年生にとってはよい影響は与えないという判断からであります。 そして、関係校においては、前にも増して他の学校より以上に生活指導の見直しや徹底 に努めております。 学校を選択した生徒にとって大切なことは、入学後、こうした事件の当該者になるこ とのないように学校が家庭、地域とともに適切な指導をどの学校でも行うことだと考え ているところでございます。 なお、今回のことで来年度の学校選択制をやり直すべきとのことでございますが、制 度の趣旨や先ほど申し上げました理由などにより、やり直すことはできないものと考え ております。 また今回の事件は、早急な自由選択がもたらしたものとのご指摘ですが、選択制度そ のものよりも、むしろ学校外での生徒の行動範囲が学区域を超えて広がり、学校や地域 を超えたさまざまなつながりができているなどの状況によるものではないかと考えて おります。 この事件を教訓とし、学校における健全育成の再点検を実施するとともに、家庭、地 域社会、学校との連携のあり方について、もう一度見直し、このような事件が二度と起 きないよう努力してまいりたいと存じます。 次に、学校選択制と地域コミュニティ等についてお尋ねがありました。 ご承知のとおり学校選択制の趣旨は、特色ある学校づくりの推進及び教職員の教育活 動の活性化と地域に開かれた学校づくり等のメリットを最大限生かす中で地域に愛さ れ、地域に根差した学校づくりを目指すことにあります。したがって、本制度の趣旨を 生かすためには、学校公開をはじめとする情報を公開することにより、学校が地域の皆 様の公共施設であることを認識していただくことが大切だろうと思います。 学校選択制度は、子供が自分に合った学校を選んだり、保護者が可能な限り子供に適 した教育を受けさせたいという希望を生かす中で、子供により適したよりよい教育を受 けさせたいという願いを学校がしっかりと受けとめ、新たな教育環境づくりに向けた施 策の展開を図ることが肝要であると存じます。 本制度が結果として児童生徒数の偏りを招き、学校の統廃合や地域コミュニティの破 壊等を加速するとのご意見がありましたが、確かに三年目を迎えた学校選択制度では、 学校によって応募者が集中する学校とそうでない学校との差が開いてきたことは事実 であります。今後、十分な原因分析が必要と考えておりますが、この制度は既存の学区 域を残しつつ、新一年生のみを対象としているものであり、このことによって直ちにコ ミュニティの破壊に結びつくとは考えておりません。 一方、学校の適正配置につきましては、先の第三回定例会においてお答えいたしまし たとおり、現在は第三順位グループ統合に向け準備を進めているところでございますが、 答申をいただいてから既に八年が経過しており、この間、児童生徒数の減少、学校小規 模化の進展等、学校教育を取り巻く環境が大きく変化している中で、墨田区全体を見据 えた区立学校のあり方について、通学区域の再構築等もあわせて改めて考えてみる必要 があるものと認識しております。 いずれにしましても、学校選択制度につきましては、制度発足早々の段階でございま すので、もう少し状況を見極めたいと考えているところでございます。 以上でございます。
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