技術士資格取得ための通信

技術士資格取得ための通信
《合併号》第一次試験
第5号
第二次試験
第6号
発行者:江平 英雄、発行日:2009 年 1 月7日
メールアドレス:rdsnx187@ybb.ne.jp
明けましておめでとうございます。
2009 年が受験者の皆さんには、思い出となる良い年であることを念願しな
がらメールを作成しています。元旦の朝日新聞「天声人語」には、「英雄のい
ない時代は不幸だが、英雄を必要とする時代はもっと不幸だ」と言う言葉が、
米国の大統領リンカーンの話と共に記述しされていました。確かに、わが国に
は、英雄と言われる人が実在していないが、それでも、その時代、時代をクリ
アして今日の社会が築かれてきていますね。豊臣秀吉、徳川家康等の武将は、
日本国を統一するために、精魂を込めて、その事業を行ってきています。国家
を一つに統一しようとするには、それなりの仲間、賛同者が実在していました。
明治維新にしても、日露戦争や日清戦争の時にも、わが国には、外国勢力に屈
しない何かが存在していたと思います。その何かは、精神的な「心」だったか
も知れません。その「心」は、人間愛の中に産まれたものだったと推測するこ
ともできます。そこには、一人の英雄でなく、全ての人が英雄と称えられてい
たのではないかと思います。「英雄」と言う言葉には、何となく独裁者的なニ
ュアンスが感じられますね。更に、その欄には、啄木の「何となく、今年は良
いことがあるごとし、元旦の朝晴れて風なし」の詩が記述されていました。こ
の詩にあるように、仙台の元旦の朝は、「初日の出」が拝める素晴らしい夜明
けでした。今年は、「丑年」にふさわしいように、ゆっくり、のんびりと、確
実に、学んできた知識を復習し、その知識を応用できる能力を育て、資格取得
に挑戦しましょう。
1. ニュースの裏側
小泉内閣は、慶応大学教授竹中平蔵郵政民営化担当大臣を配置し、わが国の
公共事業の一部を民営化しました。道路公団、郵政の民営化は、本当にわが国
の政策として必要であったのだろうか?それは、国民が望んでいた改革だった
のだろうか?どうも、わが国の政策は、米国追従の形で行われていたように思
われてなりません。私の友人の T 記者は、「日本の政治は米国の「年次改革要
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望書」に従っているだけ・・」と話していたことがあります。そして、昨年末
には、米国のサブプライムにはじまる世界的な金融不安を招き、日本経済も危
機状態に陥って、石油危機、雇用・解雇問題、円高問題等を生じさせました。
このような動向は、米国指導型による内需拡大、流通機構改革、公共事業の民
営化、海外企業の日本進出等による結果であるように考えられています。
フリーライター東谷暁氏は、著書「民営化という虚妄」の中に、特殊法人の
民営化問題についていろいろ記述しています。この著書を読んだ私には、何故、
道路公団の民営化が行われたのだろうかと思うことがあります。道路公団の事
業は、ワトキンス調査団の報告書に「工業国として、これほど、道路を無視し
ている国はない」と記述されているほど、現在のような整備された道路がなく、
舗装された道と言えば、ごく一部の区間しかなく、ほとんどの道と言えば、砂
埃の立つ砂利道でした。
私の中学生時代の記憶には、国道 38 号線で毎年春先になると、凍上・融解
を繰り返している道路路面に砂利を補充している様子を見ながら、何で、こん
なことが毎年繰り返されるのだろうと疑問に思ったりしたことがありました。
そして、何故、こんなことを繰り返すことのないような道路が造れないのだろ
うかと疑問に思ったことが、私の人生の出発点になってしまったのかも知れま
せん。凍上を起す原因は、地下水、気温、土中の毛管現象にあることや、それ
を遮断するために必要な処置として、熱伝導率、毛管現象、土の粒径等の研究
が世界各国で行われていることを知らされました。だが、敗戦国のわが国では、
国民の生活もままにならない状況下にあって、インフラ整備を大々的に実施す
ることなどできるような状況にありませんでした。ワトキンスの報告書に書か
れた文言は、敗戦国のわが国の状況を的確に表現したものです。
時の吉田首相は、諸外国のような道路整備の必要性を痛感し、アメリカでの
有料制度を導入することを考えていたのだが、明治維新後のわが国の道路制定
をめぐっての議論や、諸事情とも重なって、ようやく大正 8 年に制定された「道
路法」の精神、「道路無料公開の原則」が謳われていることもあって決断まで
に至らなかったと言われています。しかし、工業立国を目指すわが国では、道
路整備の重要性を鑑みて、昭和 27 年に旧道路整備特別措置法の制定すると共
に、有料道路制を導入することになりました。そこには、大正 8 年に制定され
た道路法の精神を貫くために、莫大な資金を必要とすることや、それを国民に
負担させることもできない状況であって、田中角栄等の国会議員の総意に基づ
いて導入しています。(議員立法と言われています)
有料道路制度の施行にあたっては、建設費用を捻出するために必要な資金を
償還する義務が生じてきます。そこには、道路利用者の利便価値を徴収する利
用金額、徴収期間を定めて、償還計画を立案するための採算検討が行われる義
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務が付帯されています。有料道路の導入は、昭和 28 年に特別道路財源措置法、
昭和 29 年に第一次道路整備五カ年計画の査定、昭和 31 年に道路整備特別措
置法の改定及び日本道路公団法の制定、並びに設立、昭和 33 年道路整備緊急
措置法と特別道路財源会計法の制定等の法制定に伴って実施されています。日
本道路公団は、昭和 35 年に名神高速道路建設のための第一次世銀借款契約を、
続いて東名高速道路建設のための借款契約を成立させています。道路整備は、
世銀借款と言う状況下で行われています。このように、わが国のインフラ整備
は、その基本的事業である道路整備をわが国の財源で賄うことができずに、世
銀からの借款契約に基づいてはじめられています。その結果、わが国は、今日
の繁栄をもたらされているのです。現在の財源は、郵貯による財投資金が融資
財源になっています。これらの仕組みは、「民営化」という美名の下で、全て
が無能化してしまいます。もし、「民営化」が可能であるならば、これまでの
道路財源は、誰の責任で返還するのか?大きな借金を抱えて、誰が民営化に応
えられる会社が存在するのか?そんな議論もないままに、わが国の有料道路が
民営化されてしまっています。その責任は、小泉首相にあると思うのだが・・。
もし、わが国の財源が豊富であるならば、税負担を低減させるなり、旧道路
法の精神に基づいて無料化すべきであって、「民営化」と言う制度は、論外で
あると言うべき問題であると言えます。煙草、消費税問題を議論する中におい
て政府は、何を考え、何をしようとしているのか?先の見えない施策を講じて
いるように見えてなりません。政府の責任とは、投げ出せば良いと言うことで
はないと思うのだが・・。
東谷暁氏によれば、英国の道路は、BOT(ビルド・オペレイト・トランスファ―)
と言われる方式、道路建設・運営し、利用料で投資金額を回収したら所有権を
政府に移管するものと、PFI(private finance initiative⇒社会資本の整備・運営に
おいて、民間の資金や運営力を活用して公共と民間が協力して行う事業方式)の手法を用
いた設計・建設・資金調達・運営を民間企業に任せ、完成後、利用者に無料で
使用させ、政府が決めたルールに従い民間会社に使用料を支払う方式の二通り
あり、イタリアのアウトストラーデ社とフランス ASF 社の場合は、高速道路の
建設・管理・運営を請負、通行料を徴収して政府や金融機関等から受けた融資
資金の返済にあて、一定期間の後に道路を返還する方式を紹介すると共に、JR
東海社長であった葛西敬之(よしゆき)氏の言葉「高速道路の経営主体が永続
的に受益者から料金を徴収し、それによって既存の高速道路網を効率的に維
持・運営していく仕組みとするならば、株式会社化はあり得ると思う。しかし、
その民営化した会社を上場し、高速道路の株主として私有化すべきでない。一
般道路網があってはじめて高速道が生きてくる。道路は全体で一つのネットワ
ークなっているのだから、その大部分を納税者の負担で建設・維持する一方、
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高速道路だけは株主のものにしてしまうのは、システムとしての一貫性を欠け
ていると思う。道路は公有物だというのが世界の常識であり、日本もその世界
の常識に従うべきである」と記述しています。
これらの歴史的背景には、いろいろな人たちが考え、行動する中に、その行
為が国民のためになると考えられています。その制度を破棄するためには、先
人の考えを理解し、その主旨を尊重し、慎重に対応することが大切だと思いま
す。日本道路公団初代総裁岸道三氏は、「法律と言うものは、人が創ったもの
である。その法律が現状にあわないならば、法律を改定するようにすれば良い」
と話していたが、私もその通りだと思っています。そこでは、何故なのか?ど
う変えるべきか?・・などを考え、最も理想的な方法を選択することが必要で
あります。そこにあるべきことは、わが国の国民が理解し、支援してくれるよ
うな説明責任が存在していなければなりません。思いつきとか、人に言われた
からでは、国民不在の施策になってしまいます。
しかも、市場万能主義については、1970 年代末の英国サッチャー改革、米
国のレーガン改革、80 年代の社会主義国の崩壊による米国型経済体制の屹立
(きつりつ)、並びに他の地域がそれに追従する形で、政府や公的部門が行っ
てきた事業が、民営化されて市場に組み込まれれば、もっと効率が良い公正な
取引が行われるとする新自由主義と国家や公的セクター介入を最小限に止める
べきだとする新保守主義が結合し、80 年代から 90 年代の支配的な思想になっ
てきています。その思想は、全てが国民を無視する政策として欧米でも批判さ
れています。1 月 4 日の朝日新聞の一面には、米国の医療費問題を取り上げて
いますが、リンカーンの言葉ではないが、「人民の、人民による、人民のため
の政治」をしっかりと行って欲しいと思われてなりません。
米国の格差社会は、移民を受け入れることによって維持されてきています。
ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)やプレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)が証券
化を引き受ける住宅ローンは、プライム(優良)な制度だと言われていました。
サブ(下位)プライムの言葉には、住宅ローンの対象者が、貧しい黒人層やヒス
パニック系住民である下層階級のサブ(下層)の意味が込められています。ニュ
ースは、単に活字の上で読めば良いと言う訳でなく、その背景を考えることが
大切なことです。サブプライム問題は、民営化問題に端を発していると思われ
てなりません。このような問題を調べれば、調べるほど、そこには、人間の賢
さ、狡さ等が見え隠れしています。人間は、一つの課題について調べ、考える
ことを大切にしなければ、鴨長明の描いた「方丈記」的な生き方になってしま
うのではないでしょうか?
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2. 資格試験の扉を開く「カギ」は?
新年早々に届いた「日経コンストラクション」のパンフレットには、新連載
記事「技術士合格一直線」の紹介が添付されていました。その内容は、2008
年の出題傾向と 2009 年への戦略(1 月)、専門論文の出題傾向と知識の整理(2、
3 月)、受験申込書の書き方(4 月)/専門論文の添削例(4、5 月)、国土交通白
書の解説/一般論文への取り組み方(6 月)、一般論文の添削例/直前対策(7 月)、
経験論文の添削(8、9、10 月)、口頭試験対策(11、12 月)となっていました。
その他にも、このパンフレットには、一級施工管理士、コンクリート技士/コ
ンクリート主任技士、RCCM、一級舗装施工管理技術者、コンクリート構造診
断士、VE リーダー/VE スペシャリスト等の出題傾向や合格ノウハウを伝授す
る予定であることを記述しています。
では、技術者に求めている資格とは、「何であるのか」「何故 必要なのか」
と考えたことがあるのだろうか?そこには、「人が取得しているから・・」、
あるいは「会社の上司に言われているから・・」とか、曖昧な気持ちが存在し
ているのではないかと思われることがあります。それでは、資格を取得するこ
とができません。
資格は、技術者の勲章です。資格は、社会に信頼され、信用される技術者に
与えられる証です。一人前の技術者として誇れる技術者になるためには、この
資格が必要になります。資格には、名称資格と職業資格があります。技術士資
格は、名称資格です。職業資格には、医師、弁護士、会計士、建築士等が該当
します。曾て、わが国のエリートには、「学士」集団がありました。その時代
には、大学出が僅か 10%以下の人々でしたが、今では 70%以上の人々が大学
出ですのでエリートとは言われません。「学士」には、学士としてのプライド
があり、誇れる知識を持っています。現在では、誰でもが同じような知識を持
ち、全てが同じであると見なされてしまっています。そこには、優劣をつける
ものがなくなってしまっているとも言えます。そこで登場したのは、一流大学、
二流大学、駅弁大学と言った大学差別用語です。この差別用語は、東南アジア
からもたらされています。何故ならば、東南アジアからの日本留学生が、母国
に還ってきた時の能力には、違った知識であったことに起因し、日本への留学
生が減少して、米国留学生が増えたと言われています。大学教育の質には、米
国とわが国に隔たりがあると言われています。そして、今、日本教育では、理
科離れ、知識の低下等が問題になっています。この現象は、科学立国を目指す
わが国として、大変悲しむべき問題になります。わが国の技術士資格は、APEC
エンジニアとして活躍することもできます。そのような認証が必要になったの
は、技術者資格を明確にすることが要求されているからです。このように技術
資格は、技術者教育を受けただけの認証ではなく、専門家としての技術者とし
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て認められる人に与えられるものです。そこには、技術士試験制度における
JABEE 過程修了者と、そうでない者に区別されていることからも知ることがで
きます。このように考えれば、教育内容には、何らかの違いを認めたものを感
じさせられます。
日本技術士会では、「Consultant Engineer」の英語訳を「Professional
Engineer」に変更しています。私がスイスの大学教授とアスファルト舗装につ
いて話を交わした時、教授に渡した名刺には、「Consultant Engineer」と
書いていましたが、教授が「日本の博士か」と聞かれ、
「Consultant Engineer」
であると答えても通じなかったことがありました。その時、「Professional
Engineer」と答えていたら教授は、納得してくれたのかなぁと思ったりしてい
ます。「Doctor」とは、故土光敏夫日経連会長の「学理を開発した学者には「博
士」と言う称号が与えられる。これに対し、技術を産業界に応用する能力を有
すると認められた技術者には「技術士」と言う称号が与えられる」の言葉のよ
うに、一つの学理を問題に開発した者に与えられる称号です。一方、「技術士」
とは、「技術を産業界に応用する能力を有する者」に与えられる称号です。技
術士は、技術を産業界に応用する能力を有する者であって、学理を開発する学
者ではない。「応用する能力」とは、人間社会や自然界に生じる現象を捉える
能力を発揮し、技術的知識を人間社会の安全・安心できる環境を構築する技術
力のことです。それだけ、技術士には、いろいろな社会的知識を読み取る能力
が要求されています。それは、正しく「Professional Engineer」的技術者で
あることになります。
技術者を目指してきた技術者は、この資格を取得することの意義が、国家資
格であると同時に、APEC Engineer として世界に羽ばたくためにも必要な資
格であると思います。とにかく、「技術士資格」は、技術者として取得すべき
ものであると考えるべきです。資格取得は、社会からも、有資格者として認め
られ、会社においても、ケネディ米国大統領が「Ask not what your
country can do for you.Ask what you can do for your
country(諸君のために、諸君の祖国が何をなすべきかを問うのではなく、諸君
こそ、即国のために何をなすことができるか)」と言っているように、会社に
対して貢献できる能力を示すことになります。
私の経験では、建設省との予算折衝でも、いろいろな機関からの講師依頼に
あっても、この資格を有効に活用することができました。資格は、名称資格で
すので、必ずしも職業として生活上に直接反映されないかもしれませんが、こ
の資格取得によるメリットに計り知れないものがあります。是非、今年は、個
の資格取得を目指して、自分の能力を高めて下さい。
このメールは、これからも、続けるつもりでいますが、質問や意見があれば、
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それを教材にしたいと思いますので、どしどしお寄せください。今回のメール
は、第一次・第二次受験者を合同にした内容になっています。
以上
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