第 1 回 日本企業が海外を目指す理由

I F S コ ラ ム ― 日 本 企 業 の グ ロ ー バ ル 化 へ の 対 応
第 1 回 日本企業が海外を目指す理由
株式会社ティーディー・アンド・カンパニー代表取締役
村山 忠昭
グローバル化の現状∼フィリピンからの概観
本稿、
フィリピンのマニラにて書いています。
フィリピン
は今後、数十年に渡って人口ボーナスの恩恵が受けら
れると言われているとおり、街は若い人・子供で溢れて
いて、小学校は校舎が足りずに午前と午後で入れ替え
制を用いているほどと聞いています。
マニラやバンコクなど、
アジアの新興国または中進
国の若い人達は、皆スマホを持ち、Facebookで食事や
旅行の写真をアップし、LINEで友達とメッセージのや
り取りをし、Youtubeで最新の音楽や情報を入手し、
ス
タバやCoCo壱番屋で食事やお茶をするといった、日
本の若者と全く変わらない光景を見ると、
グローバル
化・世界のフラット化が進んでいることを実感します。
企業のグローバル化とは、製品・サービスの海外展開、
生産拠点の海外への移転、資本・人のボーダレス化、
世界的なサプライチェーンの構築など、国という概念
を超えた経済活動を表します。
日本はこれまでどちらか
と言うと、
コスト削減の為に工場を海外の人件費の安
い国に移転し、1億2千万人のマーケットで販売すれば
ビジネスとして成り立つことが多かったのだと思われ
ますが、今後必ず起こる少子高齢化・人口減少の流れ
の中で、海外での商品販売・商品開発に移行せざるを
得ない状況に追い込まれるという漠然とした不安や閉
塞感が、今日のグローバル化ブームを作っているので
はないでしょうか。
国策により中小企業の海外進出が進むドイツ
先進国では多かれ少なかれ同じような状況が起きて
いて、各国それぞれの対応がありますが、ベンチマーク
として私が注目しているのはドイツの対応です。
日本と
同様の工業国で少子高齢化が進んでいて、ニート問題
や外国人労働力の活用など課題も似ていますが、特徴
的なのは国の輸出政策の結果として、直接輸出を行っ
ている中小企業が日本の約10倍多く、
また直接海外に
進出している中小企業は約50倍多いということです。
それらによって国全体の総輸出額を引き上げていま
す。
ドイツを訪問して感じるのは、年配の方々はみなさ
んが英語堪能な訳ではなく、街で道を聞いてもコミュ
ニケーション出来ない場面が少なくありません。
(自分
の英語のせいかもしれませんが…)一方、若い方は大
企業に勤めている方でなくても、留学や海外インター
ンシップの経験者が多く、英語でのコミュニケーション
に困ることはありません。
これらは国の方針やビジネス
サポート制度、教育制度によるので日本とは違うと言っ
てしまえば簡単ですが、今後は日本の中小企業ももっ
と海外に出て行っても良いのではないか、
ドイツに見
習う点があるのではないか、
と思います。
(日本でも最
近、JETROによる中小企業向けの海外インターンシッ
プの企画が行われています。)
弊社の関わったシステム導入案件でも、
ドイツ企業
の日本支社向け案件では、売上規模で見ると大企業で
はないお客様ですが、ニッチなマーケットの中で特徴
ある製品によって大きなシェアを取り、
グローバルなオ
ペレーション(人材管理、
レポーティング、予算管理等)
や、システムの海外展開を行うノウハウを持たれてい
る優良中堅企業を度々目にしてきました。
I F S コ ラ ム ― 日 本 企 業 の グ ロ ー バ ル 化 へ の 対 応
国内外7拠点で日本企業の海外進出をシステム
面から支援
弊社は2000年設立で最初の5年間は主に外資系企業
向けに日本へのシステム展開の支援を行っていまし
たが、欧州企業の海外進出をサポートした経験から、
今後は日本企業も海外を目指さざるを得なくなると考
え、当時社員は3名しかいませんでしたが、日系企業様
向けに海外展開をシステム面からサポートするという
経営方針に切り替えました。
そこからは積極的にバイリ
ンガル人材や外国人の採用、海外拠点の開設を進め
ていまして、現在はグループで50名ほどの小規模なシ
ステムコンサル会社ですが、社員が働きたい場所に拠
点を設けるという方針の下、日本・海外に7拠点、9か国
の国籍からなるダイバーシティー(という名のカオス)
を生んでいます。お客様からも各拠点に少数の社員で
支社を開いて商売になるの?と心配いただいておりま
すが、
自分が一番心配しています。
で新興国の貧困を見ると日本の製品・サービスの導入
によって現地の方々の暮らしが少しでも向上して欲し
いという両方の思いが自分の原動力になっています。
弊社では毎年、海外の日本人学校に通う小学生向
けに、地元のプロチームによりサッカー教室を開いて
いただき、スポーツを通した国際交流をサポートさせ
ていただいています。海外で活躍する日本人サッカー
選手は、子供達にとってグローバル化を実現されてい
る最もわかりやすい目標になると考え、将来の日本を
担う子供達の為に今後も続けていきたいです。
日本には海外にはない素晴らしい商品やサービスが、
日本人が気づかないだけで、
まだまだ沢山あり、それら
を海外展開することで日本にも現地にも貢献できるに
違いないと考えています。次回以降、海外展開を進め
る上での、
より具体的なエピソードや国による違い、社
内での対応方法などをお伝えしていきます。
日本の現状を憂う気持ちと新興国への思いが原
動力
日本人として国がこのままフラット化の下の方に引き
摺られていくのを見ていられないという思いと、その逆
筆者プロフィール
村山 忠昭(むらやま ただあき)
株式会社ティーディー・アンド・カンパニー代表取締役
山口県宇部市出身、横浜国立大学経済学部卒
外資系企業を経て、2000年にティーディー・アンド・カンパニーを設立、
現在に至る。グローバルシステムの導入・運用支援を専門とする。
詳細はティーディー・アンド・カンパニーのWebサイトへ
http://www.tdac.co.jp/
www.IFSWORLD.com