B型肝炎ワクチン - 株式会社メディコン

44
2011年9月発行
株式会社メディコン
この記事に関しては、メールアドレス:[email protected] までお問い合わせ下さい。
B型肝炎ワクチン
B型肝炎ワクチンの接種シリーズでは3回の筋肉内注射(当日、
1ヶ月後、6ヶ月後)が実施される。すべての医療従事者には必ず
接種すべきワクチンであるが、一般の人々や患者にも接種されて
いる。B型肝炎ワクチンについて再確認すべきことをCDCホーム
矢野 邦夫先生
浜松医療センター
副院長 兼 感染症科長 兼
臨床研修管理室長 兼 衛生管理室長
'81年 名古屋大学医学部卒業。名古屋第二
赤 十 字病院、名古屋大学病院を経て、'89年
フレッドハッチンソン癌研究所、'93年 県西部
浜松医療センター。'96年 ワシントン州立大
学感染症科エイズ臨床、エイズトレーニング
センター臨床研修修了。'97年 感染症科長/
衛生管理室長に就任。2011年4月より現職。
ページより抜粋する※1。
接 種 前 に B 型 肝 炎 の 免 疫 検 査 を 実 施 す べ き か?
歴史的に、接種前のHBs抗体検査をルチーンに実施することは推奨されていな
い。ワクチンに対する費用対効果が確認されていないからである。しかし、慢性
HBV感染の治療において抗ウイルス薬が利用できるようになったため、慢性HBV
感染の人を同定するために新しい勧告がなされた。現在、CDCは下記の人々を対
象に、ワクチン接種前のHBs抗原およびHBs抗体の検査を推奨している。
・ 血液透析患者
・ 妊婦
・ HBVに曝露したことが判明しているか疑われる人
(HBV感染の母親から生まれた幼児、HBV感染者の家庭内接触者、
感染性血液や体液に職業上曝露またはその他の曝露をした人)
・ HBV感染者の多い国で生まれた外国人
・ HIV感染者
接 種 シリー ズ 完 了 後 に は H B s 抗 体 検 査 を
実 施 す る 必 要 が あ るか?
海外への赴任や旅行する人々では、渡航先や渡航期間によってはB型肝炎ワクチ
ン接種が推奨される。もちろん、3回接種が必要であることは医療従事者と同様であ
る。医療従事者に接種した場合、接種シリーズの完了後1∼2ヶ月経過した時点で
HBs抗体検査が実施されている。海外への赴任や旅行する人々にも抗体検査が必
要なのであろうか?
実は、抗体検査が推奨されるのは、
「HBs抗原陽性の母親から生まれた幼児」
「血
液・体液による針刺しや粘膜曝露の危険性が高い医療従事者や保健所職員」
「血液
透析患者、HIV感染者、その他の免疫不全患者(造血幹細胞移植患者や抗ガン治療
を受けている患者など)」
「慢性B型肝炎ウイルス感染者の性的パートナー」など、
免疫状態を知っていることが、引き続く臨床的行為に関連する人のみに推奨される
のである。従って、海外渡航するとか震災地域に行くということでB型肝炎ワクチン
を接種した人においては必ず抗体検査を実施しなければならないということはない。
H B s 抗 体 検 査を実 施 する場 合 、
ど の よ うなタイミング で 検 査 す べ き か?
HBs抗体検査のタイミングであるが、接種シリーズが完了してから1∼2ヶ
月後に実施するのが一般的である。HBs抗原陽性の母親から生まれた幼児
についても、3回接種が完了してから1∼2ヶ月後に検査する(これは生後9
∼18ヶ月頃になる)。投与されたB型肝炎用免疫グロブリンのHBs抗体を検
出してしまうのを防ぐために、かつ、HBVの遅延感染の検出を最大限にする
ために、HBs抗体検査を生後9ヶ月以前に実施すべきではないし、最後のワ
クチン接種4週間以内に実施すべきでもない。
接 種 シリー ズ に お い て 製 造 元 が 異 な る
ワクチン を 接 種 し て も よ い か?
3回接種の途中で、病院を移動しなければならなくなることがある。この場
合、移動前の病院と移動後の病院では、B型肝炎ワクチンの製造元が異なる
場合がある。3回接種を異なる製造元のワクチンにて実施してもよいかとい
う疑問を持つ人がいるが、これについては全く問題ない。ワクチンの製造元
が異なっても、免疫反応には差がないことが観察されている。
接 種シリーズ が 途 中 で 中 断し てしまった 場 合 は
どうし たらよ い か?
移動先の接種プログラムが移動前の病院と異なっていて、プログラムが
一時的に中断してしまうことがある。また、移動によって接種するのを忘れて
しまうこともある。この場合、接種シリーズを最初からやり直す必要があるの
だろうかという疑問を持つ人がいるが、再スタートする必要はない。1回目接
種のあとに、接種シリーズが中断された場合には、2回目をできるだけ早く接
種する。2回目と3回目は少なくとも8週間の間隔を空けなければならない。3
回目接種のみが遅れた場合は、できるだけ迅速に接種する。過去に何回接
種したか判らない人がいるが、この場合はワクチンを追加接種(4回目以上
の接種になるかもしれない)
したり、接種シリーズを最初から繰り返しても構
わない。
B 型 肝 炎 ワクチン を 他 の ワクチンと 同 時 接 種
し て も よ い か?また 、妊 娠 中 お よ び 授 乳 中 に
接 種 し て も よ い か?
B型肝炎ワクチンは他のワクチンと同時接種してもよい。同時に接種して
も、抗体反応には影響はないからである。ただし、同時接種するときには、異
なる部位に接種し、異なる注射器を用いる。
妊娠中および授乳中に接種しても構わない。B型肝炎ワクチンには生きた
ウイルスは含まれていないので、妊娠および授乳は接種の禁忌とはならない。
妊婦に接種することによって、胎児の発達に悪影響がみられることはないか
らである。むしろ、接種せずに妊婦がHBVに感染してしまうと、母親が重症
肝炎になったり、新生児が慢性感染してしまう可能性がある。
本 社 大阪市中央区平野町2丁目5ー8(平野町センチュリービル1F)
06(6203)6541(代)