第1学年 道徳学習指導案 研究主題 1 主題名 「心を耕す集団作り~自己表現できる生徒の育成~」 内容項目名 真の友情 (内容項目 2-(3) ) (資料名「音楽室で」 出典「中学校の新しい道1」 ) 2 主題設定の理由 (1) 価値について 項目2の(3)は,友情の尊さを理解して心から信頼できる友情を持ち,お互いに励まし合い,高め 合いながら真の友情を育てていくことをねらいとしている。 中学校時代は,お互いに誤解を生じたり,偏見や噂話によって他人を判断したりすることもある。 しかし,この時期は生涯の友達を得る絶好の機会でもある。多感な思春期において,友達との会話や葛 藤がもたらす成長は,はかりしれない。友達との付き合いの中で,人と人とのかかわりを考え,自己 主張や譲り合を重ねながら視野を広げていくものである。中学生の中にも,様々な悩みや問題を抱え ている者も多い。自分中心の世界に生きてきたそれまでとは違い,他者の価値観や状況を受け入れ, 真に相手を理解していくことが人間的な成長にもつながる。そのためにも,お互いに信頼し合い,励ま し合える,そして窮地に立った時には助け合える友情を育てていきたいと考え,本主題を設定した。 (2) 生徒の実態(男子 13 名 女子 18 名 合計 31 名) 現在、転入生1名以外の生徒は1小1中で小学校から同じメンバーであり,学級の雰囲気はおだやか である。男女も班活動等で協力しあうことができており,授業においても同じである。道徳の授業では、 感想用紙の記入など、書くことに対しては非常に積極的で気持ちのこもったものが多い。しかし,発表 は消極的で指名をすれば答えは述べるが,恥ずかしさからか自信のなさを感じる面もある。 アンケートの結果を見ると,ほとんどの生徒が学校内に仲の良い友達がおり,友情の存在は大切だと 考えている生徒が多い。しかし,友達がいて良かったと思うことについては,物の貸し借りや楽しめた時 など,表面的なことで留まっている生徒が多い。 また,携帯やスマートフォン機器を利用している生徒も多く,物を通じてコミュニケーションは頻繁 にとっているが,それがすなわち人との人間関係作りに役立っていないという実態がある。人と仲良く するにはどうしたら良いか,相手のことを正しく理解し,誤解や偏見で相手を判断することのないよう に,人と付き合うことが不可欠であり,それが真の友情につながることに気づかせたい。 真の友情という点では,1 小 1 中という学区の特徴もあり,小学校時代から構築された人間関係が中学 校でも続いていることが多くある。その反面,自分と考えの違う個人や集団に対しては,なかなか理解を 示そうとしない面もある。また,校外での生徒同士のコミュニケーション手段として,携帯電話などを媒 体としたものが多くなってきている。この学級でも,携帯電話が普及し始めている。しかし,これらの電 子機器を媒体としたコミュニケーションでは,相手を知るには不十分である。今回の授業を通じて,コミ ュニケーション不足が偏見や誤解,思い込みにつながるということに気づかせ,真の友情とは何かにつ いて考えさせたい。 ○携帯・スマートホンのアンケート調査より ○QU アンケートより(クラス集計結果)12 月実施 ○人と仲良くする方法を知っている ○校内に気軽に話せる友人がいる。 回答 大変当てはまる だいたい当ては まる どちらとも言え ない ほぼ当てはまら ない 全く当てはまら ない 回答 学級 学年 全国 69% 74.2% 64.9% 27.6% 20.2% 25.5% 0% 3.4% 5.9% 3.4% 1.1% 2.2% 0% 1.1% 1.5% 事前アンケートの結果 学級 大変当てはまる だいたい当ては まる どちらとも言え ない ほぼ当てはまら ない 全く当てはまら ない 学年 全国 13.8% 28.1% 26% 44.8% 42.7% 33.6% 24.1% 15.7% 28.3% 13.8% 9% 7.8% 3.4% 4.3% 4.5% (回答29名 欠席 2 名) 1:あなたにとって友達とはどんな存在ですか? ・楽しむために必要な存在 ・一緒に笑える存在 ・良いところも悪い所も見つけてくれる存在 ・大切な存在 ・頼れる存在 ・一緒に遊べる存在 ・話せる存在 ・支えてくれる存在 2:友達がいてよかったと思った時は、どんな時ですか? ・助けてもらった時 ・楽しめた時 ・一緒に話せる(相談できる)時 ・物を貸してもらった時 ・テストが終わった時 ・嫌なことを乗り切れる、勇気をくれた時 ・辛いときに慰めてくれる時 3:友達と親友の違いは、何だと思いますか? 友達=話せる・楽しい・一緒にいる・遊べる・仲の良い人 親友=心から信用(信頼)できる存在・悩みを話せる存在・隠さず本音で言える存在 助け合える存在・自分のことのように心配してくれる存在・過ごす時間が多い人・友達の中の友達 (3) 資料について 吹奏楽部の真理子は,病気がちで同級生との付き合いが苦手だった。彼女の友達である春美は,そん な彼女の唯一の理解者といってもよかった。ある日,偶然楽器の壊れた現場にいた真理子は,普段から快 く思われていない裕子と里美に見られ,壊したと疑われる。そんな時,真理子を信じ,かばってくれた のは春美だった。春美は真理子の中学生になるまでの状況や真理子の性格を切々と語り,二人の誤解を 解いた。お互いを理解し合った三人は,コンクールに向けて気持ちを新たにするのだった。 中学生の日常生活において,ささいな誤解や思い込みからトラブルに発展することはよくある。本資 料でも,孤立しがちな真理子がふとしたできごとによって,裕子・里美の二人から非難される。 周囲のものにとって目立ちたがりの言動と映っているが,それは真理子の生真面目な性格から発して いることを,十分とらえさせたい。また,長い入院生活や自宅療養によって周囲と話が合わなくなること が多いことにも着目させたい。 裕子や里美が特別に意地悪なのではなく,お互いのコミュニケーション不足から悪感情を抱いたこと にトラブルの一因がある。そして何より,春美の真理子を信じる気持ちをつかませる必要がある。自分 が窮地に立ったとき,信頼し続けてくれる友達がいることは,心の支えとなる。春美が裕子・里美・ 真理子のぎくしゃくした関係を改善し,お互いの理解を深めさせていく過程をしっかりととらえさせた い。友情とは,お互いを深く理解し,信じることから始まることを感じ取らせたい。 (4)指導観 本校は,「心を耕す集団作り~自己表現できる生徒の育成~」を研究テーマとして掲げ,日々教育活動 に当たっている。今回の授業展開では,身近な「友情」というテーマを用いて展開していく。その中で 「友達とは、自分にとってどんな存在か。」など,じっくり考えさせ,生徒一人ひとりの気持ち の変容をみていきたい。また、感情の行き違いや考え方の違いを感じて,一時的に人間関係のきしみな どが生じても,自分自身を振り返り,言動に表すことでそれらを克服し,より深い友情が築かれることに も気づけるきっかけとして期待する。 本時の指導に当たっては,友達に対し,ある瞬間を共に楽しめることだけを追求するのではなく,時に は課題を乗り越えながら,お互いに相手の成長を心から願って励まし合い,高め合える関係を築こうと する意識を育てたい。 3 本時の指導 (1) ねらい 互いに信頼し,相手を深く理解しあい,励ましあいながら友情を深めようとする態度を育てる。 (2) 展開 過程 導入 時 学習活動と主な発問 配 ・予想される生徒の反応 5 1.友達について話し合う。 分 支援の手立てと指導上の留意点 資料 ・コの字型。 ・アン ・事前アンケートの結果を画面上 ケート ○あなたにとって友達ってどんな存在で パワーポイントを用いて提示し, 結果掲 すか。また友達がいてよかったと思った 自由に発言させる。 示 のはどんな時ですか。 ・楽しい存在。 ・大切な存在。 ・相談にのってくれたことが嬉しかった。 展開 5 35 分 分 2.資料を提示する。 ・資料を読む。 (教師が範読) ・教師の範読後,人間関係について黒 板を用いて確認する。 ・あらすじを確認。 場面絵 ・裕子と里美が悪人ではなく,誤解と 5 3.音楽室でのできごとについて話し合う コミュニケーション不足からきてい 分 ○裕子と里美は真理子をどう思っている ることに着目させる。 のだろう。 ・真理子は目立ちたがりだから 5 ・まじめで話しにくい 分 ○楽器が壊れ二人に非難されたとき,真 ・真理子の孤立した状態をとらえ,そ の気持ちを共感させたい。 ワーク シート 理子はどんな気持ちがしたのだろうか。 ・私がやったわけではない。 ・どうして疑うの。くやしい。 ・どうして私の言うことを信じ てくれないの。 4.疑いをかけられて沈んでいる真理子に ・春美の真理子への信頼を理解させ, ついて話し合う 春美の一途な思いをとらえさせたい。 10 ○春美は真理子をどんな思いで弁護した 分 のか。 ・春美の信頼を確信した真理子の気持 ・真理子は嘘をつかない。 ちに十分着目し,真の友情の大切さを ・入退院の小学校時代があるから。 理解させ,主題に迫りたい。 10 ○助けられた真理子は,どんな気持ちに 分 なっただろうか。 ・とても嬉しい。 ・春美がいなかったらもっとダメだった かもしれない。 終 10 5.真理子と春美の関係から,自分の生活 末 分 を振り返り,友情のあり方について考え る ○真の友達とはどういう友達なのかを書 ・なるべく多くの生徒に発表させ, ワーク く。 真の友達とは何か気づかせたい。 シート ・楽しいだけではなく, 困った時に助け 合える存在。 ・お互いのことがわかり合える存在。 (3) 板書計画 「 真 の 友 達 と は 」 イラスト 春 美 里 美 と 裕 子 イラスト 真 理 子 ( 主 人 公 ) 4 他の教育活動との関連 ピア・サポートでの内容の関連や,学校行事や学級活動など集団で行動する際や日々の生活の中で折りにふれ て指導していきたい。
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