原油価格から見ると割安な水準のカナダドル

2014年7⽉8⽇
原油価格から⾒ると割安な⽔準のカナダドル
カナダはG7の⼀⾓を占める先進国でありますが、世界有数の資源⼤国としても知られています。今回はそ
のカナダの株価指数と為替レートと、直近で上昇傾向にある原油価格の関係を調べてみました。その結果、
株価指数は原油価格⽔準からすると妥当な⽔準にありましたが、為替レートは原油価格から⾒ると割安な
⽔準にあるということが分かりました。
<カナダの株価は原油価格に連動>
図1は原油価格(WTI原油先物価格)とカナダの
株価指数であるS&Pトロント総合指数の推移です。
カナダの株価指数は原油価格に連動しているのが
よくわかります。2007年ごろに乖離が⾒られます
が、リーマンショック時にはピタリと⼀致してい
ます。リーマンショック後の上昇局⾯でも原油価
格と株価指数の関係は⾮常に強いことがわかりま
す。2011~2013年では原油価格を下回っていた
株価指数ですが、2013年後半以降の上昇により原
油価格に追いついています。このチャートを⾒る
限り、株価指数は現在の原油価格でみると妥当な
⽔準にあると⾔えます。
<図1
原油価格とカナダ株価指数>
(ドル/バレル)
なぜ、カナダの株価指数はこれほど原油価格に連
動するのでしょうか。図2の円グラフはカナダ株
価指数の2014年6⽉30⽇時点での業種構成⽐です。
エネルギーセクターの構成⽐は27.1%もあります
が、最も構成⽐の⾼いセクターはエネルギーとは
直接関係のない⾦融セクターとなっています。た
だ、⽶国の10.9%、⽇本の1.2%と⽐較するとエ
ネルギーセクターの構成⽐が⾼いことと、この15
年間でのエネルギー価格の変動率が⾮常に⼤き
かったことが、原油価格と株価指数の相関を⾼め
たと⾔えます。
160
(2000年1⽉~2014年6⽉)
140
20,000
18,000
120
16,000
100
14,000
80
12,000
60
10,000
40
8,000
原油価格(左軸)
20
S&P トロント総合指数(右軸)
0
00
02
04
<図2
06
08
10
6,000
4,000
14 (年)
12
カナダ株価指数の業種構成⽐>
⽣活必需品,
ヘルスケア,
公益事業,
2.6
1.9
情報技術,
(単位:%)
1.8
2.8
電気通信,
4.5
⼀般消費財,
5.3
⾦融, 33.7
資本財, 7.9
素材, 12.3
エネルギー,
27.1
(2014年6⽉30⽇時点)
出所:Bloomberg
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2014年7⽉8⽇
<カナダドルの⽅がより連動>
図3は原油価格とカナダドル(対⽶ドル)の推移
です。カナダドルは株価指数以上に原油価格に連
動しているのが⾒て取れます。2006年の原油価格
が下落した時に株価は上昇を続けましたが、カナ
ダドルは原油価格に連動して下落しています。為
替レートの決定要素の⼀つとしてその国の貿易収
⽀があげられます。カナダの主要な輸出品はもち
ろん⽯油関連製品であるため、原油価格が上昇す
ればカナダの貿易収⽀も改善します。するとそれ
に合わせるようにカナダドルも上昇することとな
るのです。カナダの株価指数に占めるエネルギー
銘柄のウェイトよりも、貿易収⽀に与える原油価
格の寄与度が⾼いため、カナダドルの⽅が株価指
数よりも原油価格により連動すると考えられます。
原油価格と⾮常に連動性の⾼いカナダドルですが、
2013年後半から原油価格との乖離が⾒られます。
カナダ中央銀⾏により景気刺激のための低⾦利政
策が継続されていることなどから軟調に推移して
いたカナダドルは、特に2014年1⽉に⼊って利下
げ懸念から売り込まれました。2014年初についた
両者の乖離は現時点でも解消されていません。こ
のチャートを⾒る限りカナダドルは売られ過ぎで
あると⾔えるでしょう。
カナダ中央銀⾏は6⽉4⽇の政策⾦利発表の声明⽂
で「カナダドル安と外需拡⼤が輸出の回復を⽀援
する」としています。通貨安がカナダの⽯油製品
の競争⼒強化につながるため、今後、貿易収⽀の
改善が⾒込まれます。それに伴って、カナダドル
の上昇が予想されるため、原油価格との乖離は解
消していくものと予想しています。
<図3
(ドル/バレル)
原油価格とカナダドル>
(カナダドル)
160
(2000年1⽉~2014年6⽉)
140
1.35
1.15
120
100
0.95
80
60
40
0.75
原油価格(左軸)
20
カナダドル/⽶ドル(右軸)
0
00
02
04
<図4
06
08
10
12
0.55
14(年)
原油価格とカナダドル(週次)>
(ドル/バレル)
120
(カナダドル)
(2013年1⽉4⽇~2014年7⽉4⽇)
1.15
100
1.05
80
0.95
原油価格(左軸)
60
2013/1
カナダドル/⽶ドル(右軸)
2013/5
2013/9
2014/1
0.85
2014/5 (年/⽉)
出所:Bloomberg
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2014年7⽉8⽇
<原油は2000年代後半に⼤きく上昇>
図5は2000年以降のWTI原油先物価格の推移と原油価格に影響を与えた⼤きな出来事を表しています。
図5以前の1986年から1999年までの間の原油価格は、1990年の湾岸戦争が起こった時期と、1998年12⽉の
アジア通貨危機によって10ドル台まで下落した時期を除いて、20ドル前後を安定して推移していました。
2000年後半にはOPECの⽣産調整により30ドル台に上昇していましたが、2001年9⽉11⽇に⽶国同時多発テロ
が発⽣、⽶国景気の冷え込みと⽯油需要減退から再び20ドルを割り込みました。2003年のイラク戦争で乱⾼下
したあとは、中国など新興国の需要拡⼤に加えて、低⾦利政策をとっていた国から投機資⾦が原油に流⼊したこ
となどから原油価格は⼤きく上昇し、2008年7⽉には147.3ドルの史上最⾼値をつけました。しかし、その後は
⽶国の不動産バブル崩壊とリーマンショックから40ドル台へと⼀気に下落しました。中国政府による経済対策
によって中国経済が息を吹き返すと、それを牽引役に新興国の経済も回復局⾯を迎えるとともに⽯油需要が再び
増加、原油価格は再上昇を始めました。2011年にはリビア内戦、2012年にはイラン核開発問題による制裁発動
など供給⾯での不安もあり、その後の原油価格は100ドル強と⾼い⽔準で推移しています。
最近ではイラクでの宗派間の対⽴激化により、中東の地政学リスクが再び⾼まりつつあります。また、これまで
⾜を引っ張っていた中国経済や欧州経済の底打ち等から世界全体の⽯油需要も少しずつ改善していくことが予想
されるため、今後も原油価格は強含んで推移するものと⾒込まれます。
(ドル/バレル)
<図5
2000年以降のWTI原油先物価格と重要イベント>
(2000年1⽉~2014年6⽉)
160
リーマンショック
140
⽶イラン制裁強化
120
100
対イラク戦争開始
80
60
⽶国メキシコ湾油⽥
ハリケーン被災
リビア内戦
⽶国同時多発テロ
EUイラン産原
油輸⼊禁⽌
中国の景気回復
40
中国など新興国の需要拡⼤
投機資⾦の流⼊拡⼤
20
0
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14 (年)
出所:Bloomberg
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