健育会グループ 研究事例 平成22年2月度 第4回看護・リハビリテーション研究会 経腸患者の嘔吐予防に対する水分先行投与の 有効性の確認 竹川病院 看護部 佐藤 雅子(共同:位坂 摂子、石亀 有希、木下 惠、富山 和江、平沼 久乃) 研 究 背 景 経腸栄養実施時には嘔吐が問題となることがある。経腸栄養実施中の嘔吐を予防 し、嘔吐によって起こりうる誤嚥性肺炎の防止ができればより患者の安全性を確保でき る。経腸栄養患者の嘔吐予防に対する水分先行投与の有効性の先行研究がある。 1)2)3)4)5) 研 究 目 的 経腸栄養患者の嘔吐予防に対する水分先行投与の有効性を確認し、当院の安全 な栄養方法として採用を検討する。 研 究 方 法 1. 対象 対象施設に入院中の経腸栄養実施中で半固形食の投与のない患者21 人。年齢64∼99歳(平均82歳)。男性6人・女性15人、経鼻胃管10人・胃瘻11人。 2. 期間 2009.7.13∼10.19 3. 介入内容 1. 対象者全員に水分後行投与・先行投与をそれぞれ2週間行った。 2. 原則的に患者それぞれの水分後行・先行での種類・量・温度6)は変更せず 行った(医師の指示による変更3人あり。) 3. 栄養剤投与時の滴下速度は300ml/時間まで、 水分投与時は800ml/時間ま でとした。2)4)7)8)9) 4. 経腸栄養中の体位は基本ギャッヂアップ30° 以上、30° が不可能な症例は 変更可能とした。8)9) 5. 研究期間に病 状の悪 化 等があった場合はその 対 象 者への研究の実 施 を中止した。 4. 調査内容、分析方法 嘔吐・逆流の有無;Mac Nemar検定。年齢の差;student t検定。投与量の差;対 応のあるt検定。経鼻胃管と胃瘻;Fisher’ s exact probability test。体位による違い; Fisher’ s exact probability test 5. 倫理的配慮 実施にあたり患者及び家族に説明・同意を得た。 また、発表においては匿名性を確保した。 健育会グループ 研究事例 平成22年2月度 第4回看護・リハビリテーション研究会 結 果 水 分 後 行 投 与で嘔 吐 ・ 逆 流した症 例が6 例 ( 2 8 . 6%) 、 水 分 先 行 投 与での嘔 吐 ・ 逆 流した症 例が 0 例でM a c N e m a rの検 定でp<0 . 0 5と有 意な関 連がみられた。つまり、 水 分 後 行 投 与から水 分 先行 投与に変えたことにより、有意に嘔 吐者が減 少した。尚、年 齢、 投 与量 、経 鼻胃管と胃瘻 、 体位 による違いを確認したが、嘔吐に影響を及ぼしたことを示す有 意 差はなかった。 考 察 胃からの排出時 間は「 水 分 ( 6 0 m lで7 分 ) 、 栄 養 剤( 6 0 m lで1 5 分 ) 」 7 )であり、 水 分を栄 養 剤の前 に投 与することで、胃内 貯 留 量を抑 制し、 結 果 的に逆 流の機 会が少なくなったと考えられる。尚、 年 齢、 投与量、 経鼻胃管と胃瘻、体位による違いはなかった。 結 論 水 分 先 行 投 与は、 経 腸 栄 養 時の実 施 時の嘔 吐 予 防 効 果が期 待でき、 有用と考えられた。尚、 年 齢、 投 与量 、 経鼻胃管と胃瘻、体位による違いはなかった。 ■引用参考文献 1) 宮澤靖;間違っていませんか?あなたの経腸栄養管理、 エキスパートナース2009;25(7)103-113 2) 真壁昇、 宮澤靖 他;新しい経腸栄養管理法による逆流予防の検討、 外科と代謝・栄養2005;39(1)73 3) 沖友香 他;経管栄養開始時の嘔吐予防に対する微温湯先行投与法の有効性、 静脈経腸栄養、2009;24(1)264 4) 真壁昇 他;OS-1Rを用いた新しい経腸栄養管理法-第2報-、静脈経腸栄養、2006;21(増刊)104 5) 小川滋彦 他;経皮内視鏡的胃瘻造設術の長期観察例における問題点-呼吸器感染症と胃排出機能における検討、 Gastroenterol Endosc、 1992;34(10):2400-2408 6) 川島みどり他;看護技術の科学と検証 日常ケアの根拠を明らかにする別冊「ナーシング・トゥディ」№9、 1997 7) 真壁昇他; 日本静脈経腸栄養学会、 2000 8) 村中陽子 他編著;学ぶ・試す・調べる看護ケアの根拠と技術、 医歯薬出版、 2005 9) 日本静脈経腸栄養学会編; コメディカルのための静脈経腸栄養ハンドブック、 南江堂、 2009
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