Hong Kong Tax Alert

Hong Kong
Tax Alert
13 May 2016
2016 Issue No. 8
不動産に関するトレーディング目的 vs 投資目的保有 の議論にお
ける証拠に対する規則
- IRDが、その決定自体ではないものの、税務裁判における不完全な事実認定プロセス
への申立に成功
内国歳入庁長官 対 Crown Brilliance Limited [HCIA 1/2015] の案件に対する先般
の判決においては、調停機関(以下「BOR」)の税務審判に不動産に関するトレー
ディング目的 対 投資目的保有の議論を訴えるために、BORの公聴会で納税者の
意図について説明できる者が証言を行うことを強く推奨しています。
また、不服申立とそのプロセスの各段階において必要とされる証拠の内容及びそ
の表明方法は複雑な問題となります。関連の事象がある場合は、貴社の税務担当
者にご相談下さい。
概要
納税者は、資本金2香港ドルで香港に設立された有限
責任会社でした。その取締役は許氏とその妻で、納税
者の発行済株式の実質的な受益者でもありました。
1997年1月23日付の仮売買契約によって、納税者は
3,080万香港ドルで香港の居住者用フラット、ブロード
ビュー・ビラ(以下「本物件」)の購入に合意し、1997年5
月30日付で購入手続が完了しました。本物件の購入は、
1997年11月に終了する既存賃借人の存在を前提とした
ものでした。
その後、1997年6月10日付の仮売買契約によって、納税
者は3,950万香港ドルで当該既存賃借人付きの本物件
を売却し、売却手続は1997年7月28日に完了しました。
この結果、納税者が本物件を保有したのは6ヶ月未満で
あり、本物件取得完了日である1997年5月30日から11
日以内に同一物件が売却されました。
該当年度の事業所得税申告において、納税者の主要
営業活動は、「賃貸目的の不動産投資」と記載されてい
ました。1998年6月30日終了事業年度における財務諸
表では、物件の売却益である約710万香港ドルは特別
項目として取り扱われ、税務申告書では非課税のキャ
ピタルゲインとして申告されました。
しかしながら、内国歳入庁副長官(以下「DCIR」)は、本物
件の売却益が課税対象となるトレーディング利益である
と判断しました。その後納税者は、DCIRの決定に対して
BORへ訴えを起こしました。
(ⅳ)月額賃貸収入90,000香港ドル及び毎月のローン返済額
192,000香港ドルの差額は、許氏が負担していたこと。
(v)許氏の投資収入は、年間数百万香港ドルにも上がってい
たため、必要な資金負担を行い、不動産を保有することには
何の問題もなかったこと。
(vi)納税者は、物件を市場で販売するためのエージェントを
起用していなかったこと。
(vii)物件は、1997年6月に納税者が一方的に受け取った「拒
否できないほど魅力的な」オファーの結果として売却されたこ
と。
BORは、BORの公聴会のための事実として、DCIRの決定の
中に「合意された事実」として記録されている関連する記述を
事実認定しました。
判例法の原則を踏まえ、BORが事実として確認した上記の全
てを含む、それ以前の証拠を検証し、BORは、納税者が不動
産購入の意図が投資または投資資産としての保有であり、不
動産売却益が非課税のキャピタルゲインの性質であることを
立証する責任を果たしたと判断しました。
このBORの決定を不服とし、CIRは初級法院(以下「CFI」)に訴
えを起こしました。
初級法院の決定
CIRからCFIに提起された法的質問は以下の通りです。
調停機関の決定
納税者の取締役である許氏は、BORの公聴会において
納税者の代表となっていました。しかしながら、証言提
出のためのBORからの招聘にも関わらず、許氏はこれ
を拒否しました。その代わり、許氏はBORでの調停のた
めの証拠資料としては、DCIRによる決定前に、過去の
内国歳入庁(以下「IRD」)とのやりとりの中で提供済の説
明や提出物に依拠する旨をBORに通知しました。
DCIRの決定によって、納税者の以下の主張が「合意さ
れた事実」として記録されました。
1) 以下の状況を踏まえると、事実認定の際に、BORが納税
者の代表者が作成した証拠の裏付けを持たない過去の
主張や表明を不適切に重要視し、依存したことは法的誤
謬であったかどうか。
(i) 納税者が口頭供述を行わず、CIRによる調査及び
BORによる質問を受けないことを選択したこと。
(ii) これらの主張や表明の真実性や正確性には、証拠
(口頭または他の方法で)による裏付けがないこと。
2)
(i)当初の意図が投資目的による不動産保有であったこ
と。
(ii)法律で賃借人の契約更新の権利が保護されている
ため、賃借人無の物件と比較して、賃借人付の不動産
は、実際は販売に適した市場性のある商品ではないこ
と。納税者が長期投資目的で不動産を保有する意図が
無いとしたら、賃借人付の物件を購入していたとは考え
られないこと。
(ⅲ)不動産の購入金額の一部は、信用ある銀行からの
1,848万香港ドルの長期ローンが用いられ、残額の約
1,300万香港ドルは、許氏から資金提供を受けていたこ
と。
法律問題やBORに提出した証拠に基づいて、真実で唯
一の合理的な結論は、納税者が物件をトレーディングの
ための在庫として購入したことであり、BORが納税者が資
本的資産として物件を購入したという結論付けたことは
法的誤謬であるかどうか。
質問(1)については、物件を市場で販売する措置を全く行って
いなかったことや、最終的な売却が一方的で拒否できないほ
どに魅力的な提案の結果として売却されたことを含めて、裁
判官は、納税者による従来の説明が明らかに合意された事
実ではなかったと述べました。
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DCIRの決定で合意されたことは、納税者の代表者が
IRD宛にこれらの表明または申立を行った事実のみでし
た。DCIRは、表明の内容が実際に真実で正確であった
ことに合意しませんでした。このように、裁判官は、BOR
が合意した事実や疑問を持たれなかった証拠の取扱い
を誤っており、IRDとのやり取りの中で納税者の代表者
が過去に行った説明は、その性質上、議論されるべきも
のと考えました。
更に裁判官は、事実は主張のみによって証明されること
はなく、口頭もしくは書面による証拠によって説明される
旨を指摘しました。従って、このような証言者としてでは
なく代弁者として立場で行われた、許氏によるBORの公
聴会における表明または口頭意見は証拠にはなりえま
せんでした。
従って、質問(1)については、裁判官の回答はCIRを支持
するものでした。
BORの意志決定の過程で重大な過失が判明したことで、
裁判官は当初、質問(2)に回答することなく、適切な証拠
に基づく決定のため、案件をBORに差し戻そうとしまし
た。
しかしながら、案件がBORに差し戻された際に更なる証
拠が得られるかどうかについての明確な懸案があり、
CIRの法廷弁護士の依頼があったことを踏まえ、裁判官
は2番目の質問の検討を開始しました。
DCIRの決定で事実として合意されなかった表明や主張
から離れて、裁判官はBOR以前に承認され提出された
この案件の他の状況や証拠書類に注目しました。この
点において裁判官は、納税者が長期投資として不動産
を取得した意図をサポートする証拠として、以下が含ま
れると述べています。
(i) 不動産が投資物件として購入された旨が記載されて
いる納税者の取締役会議事録。
BOR以前に適切に提出された上記の証拠に基づいて、裁判
官は、納税者がトレーディングのための在庫物件ではなく資
本性のある投資資産として物件を取得する意図があったとい
うBORの結論が不当ではなく、法的に支持可能なものである
という見解を表明しました。
その後裁判官は、裁決で表明した意見を付して、この案件を
BORに差し戻すよう命じました。
論評
質問(2)での裁判官の見解を考慮すると、BORに差し戻された
場合、適切な証拠に基づいて、BORが以前の決定を覆す可
能性は残っているものの、以前の決定を維持する可能性が
高いと考えられます。
特定の重要な事実が証明されていない範囲内ではあるもの
の、裁判官はこの案件において納税者を支持し、質問(2)の回
答において納税者に同情的であるようにも考えられます。同
情的な理由の一つが、納税者の代表者である許氏が、公聴
会での証言者を拒否した際、証拠に対する規則について、
BORから警告を受けていないことであることは明らかです。裁
判官は、DCIRの決定前にIRDとの間で行われたやり取りの過
程で書面により行われた説明がBORにも考慮に入れられて
いると、BORによって、許氏が惑わされた可能性が排除でき
ないと指摘しました。
この案件によれば、不動産に関するトレーディング目的 vs 投
資目的の議論をBORに訴える場合、BORの公聴会で納税者
の意図について証言することが強く勧められます。
不動産に関するトレーディング目的 vs 投資目的という案件に
おいて、納税者の意図を証明することは事実の特定となりま
す。また、不服申立とそのプロセスの各段階において必要と
される証拠の内容及びその表明方法は複雑な問題となりま
す。関連の事象がある場合は、貴社の税務担当者にご相談
下さい。
(ii) 物件が賃借人付きで購入されたこと。
(iii) 当時の法律に基づくと、市場家賃の支払を条件とし
て、賃借人の権利が保護されていた。
(iv) 納税者は、15年ローンを利用したが、そこには、物
件売却によって早期返済した場合には多額の違約金が
発生する条項が付いていた。
(v) 納税者は、物件の譲渡を受け、不動産売却契約以
前に印紙税及び法的費用の全てを支払った。
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