15 Budget insights

26 February 2014
Hong Kong
2014 – 15
Budget insights
社会に選択を要求する予算案
主なポイント
►
►
2013/14年度における給与
所得税及びその他所得税
の75%、上限10,000香港ド
ルまで減税。
扶養父母/祖父母控除が
38,000香港ドルから40,000
香港ドル( 60 歳以上) 、
19,000香港ドルから20,000
香港ドル(55歳から59歳ま
で)に増加。父母/祖父母と
同居している納税者への税
額控除も同上の金額で増
加。
►
高齢者介護控除の上限が
76,000香港ドルから80,000
香港ドルに増加。
►
上場投資証券(ETF)におけ
る印紙税を免税。
►
電動自動車の初期登録税
が2017年3月まで免税。
►
煙草税が一本あたり20セン
トの増税が即時実施。
►
2014/15年度の不動産税が
課税対象となる不動産ごと
に、四半期ごとに最大1,500
香港ドル免除。
►
公営住宅の賃貸料1ヶ月分
が支給。
►
総合社会保障支援計画とし
て、高齢者手当、高齢者生
活手当、および障害者手当
が一か月分補填。
►
インフレ連動型債券である
“iBond” が 10億香港ドル
まで公募で発行。
2014/15年度の財政予算演説にて、曾俊華財政長官は、香港の人々に「運命」ではなく、「機会」を
信じるよう求めました。
財政規律が欠如した場合、財政長官は、香港が待っている不安な将来図である「運命」を描写しつ
つ、構造的な赤字が最初に現れるであろう時期について予測しています。曾氏は、政府の収益が
継続して年間4.5%で増大し、教育制度、社会保障及び医療制度への政府費用が年間7.5%で増
大するという想定では、わずか7年後で深刻な赤字に陥ると予測しています。政府費用を増大しな
かったとしても、赤字に陥るをわずか15年後に遅らせるだけであるとしています。
批評家の間では、次の12ヶ月間の正確な政府予算を作成することさえ毎年苦労している財政長官
が、7年から15年後を予想する気構えを中傷する者もいる一方で、曾氏は、香港が構造的な赤字
の危機に直面しており、重要な懸念の一つであることに疑いはないとしています。
2014/15年度の財政予算案で、財政長官は、財政規律への順守に関するよく知られたテーマを取
り入れ、公的費用がGDPの20%以下に制限できるのであれば、赤字に陥らないという考えを示し
ています。曾氏は、公的費用がGDPの20%を超過する支出を要望し、赤字の可能性に直面するか
どうか選択するのは世論に任せると示唆しているように見えました。
一方で、彼自身が、税基盤の拡大を必要とする堅信な信望者であることを示し、租税収入の増加
のための手段をいかなる意味でも除外するものではないと述べながら、曾氏は、新しい租税を熟
慮と世論の判断を通さずに提案することは議論の余地があるとして受け入れています。この政策
には、少なくとも、しばらくの間は消費税の悪影響や類似した間接税の導入が議題とはされていな
いということが示唆されています。
財政長官は、その代わりに、政府が香港経済の発展を促進させることで、政府収入が間接的に増
加するよう努めることを多様な方法で概説することを優先しました。曾氏は、新しい優遇税制を提
言せず、土地と労働力を用いて生産性を高めることを目的とした政策を概説しました。彼は、公的
機関が充実し、公平な競争の場が維持され、施行されている法令が維持されることを確立させるこ
とが重要であるとしています。
計画されている公務員人数の増加について、曾氏は、政府機関による明確な非効率性や過度な
経費支出を懸念した最近の報道を挙げ、政府機関の経費削減へのさらなる健全な態度が、公的
サービスへの支出増加を可能とする一方で、構造的赤字の可能性に対する訓示となればと説明し
ています。
その他の事項としては、毎年恒例となりつつある一時的な減税
政策、いわゆる「懐柔策」の規模縮小への懸念が挙げられました。
納税者個人や貧困層に与えられたこれらの「懐柔策」は、給与所
得税の還付、不動産税の免除、電気使用料金の政府補填、社
会保障手当の補填や公営住宅賃貸料の免除が含まれます。過
去6年間において、この「懐柔策」は政府に合計約2,000億香港ド
ルを支出させています。
曾氏が実施したこれらの一時的な減税政策の背景は、予想され
た赤字よりも、過去6年間、毎年平均400億香港ドル以上の財政
準備金を計上した政府と、世論との融和を要望する財政長官に
よるものでした。長期的な経費増大計画や、長期的な減税を確
約しない過去の政策で、曾氏には、2008年の全世界的な金融危
機にさらされた香港において、これらの「懐柔策」を提供する以外
に世論をなだめるのは限界があったと思われます。
2012年以降、梁振英氏の政権は、貧困層の高齢者支援のため
の長期的な経費増大計画を掲げていました。これらの優遇に関
する方針として、長期的に毎年100億香港ドルから200億香港ド
ルの年間費用を概算していました。しかしながら、今期の財政長
官による予算案は中産階級向けの緩和策が含まれ、この増大す
るグループはこのような政策にもかかわらず軽視されたように感
じるかもしれません。この点に関して、2013/14年度の予算案で
の一時的な減税の概算が、330億香港ドルであったことに比較し
て、2014/15年度の予算案は一時的な減税による概算は、200億
香港ドルに留まります。一時的な減税から削減された予算がど
のように有益に使われ、世論を満足させるものとなるかは現在の
ところ不明となっています。
全体的に、今回の予算案で財政長官は「壊れていないものは修
理しない」の姿勢と同時に、公的費用が十分に管理されず、GDP
の20%を超過すれば、現状のシステムがどのように崩壊するか
を示す姿勢をとっているように見えます。毎年の「懐柔策」を削減
するとした予算案以前の彼の発言に最後まで従う一方で、曾氏
は、 中産階級の希望である2014/15年度での「懐柔策」の提案を
組むことで、少なくとも多少の信頼を獲得し、彼の「運命」でなく
「機会である」という信条に同意してもらえるとの考えに疑いがな
いようです。
弊事務所は予算案にて提出された、セントラルとランタオ島の間
の人工島に「メトロポリス」を構築する提案が、本当に「機会」とな
り、波間の下に沈んだ失われた都市アトランティスの「運命」のよ
うな苦しみとならないように望みます。
香港とシンガポール-優遇税制を利用した経済の促進と多様化
2014年に提案された予算案では、行政長官は発明と技術の分野
が香港の経済発展の鍵となると断定しています。行政長官はそ
のような産業分野が香港の経済発展に多大に貢献し、香港の若
い世代への雇用の機会を広げるとしています。行政長官は、政
府が香港での発明と技術分野の発達を目的かつ方針として掲げ
た、多用な分野と事業提携するための、発明と技術革新に関連
した部署を再開設することを公言しています。
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行政長官が彼の政策で、発明と技術革新の事業を行なう企業
に対して財政的支援とハードならびにソフト面での支援を公約
している一方で、曾氏は、各産業分野と専門家が、このような
産業を促進させるために研究&開発(以下「R&D」)の活動に
関する費用について特別な減税政策や税額控除を認めるよう
呼びかけていることに対しては、反応がありませんでした。
対象的に、シンガポール政府は、2013年の政府予算案で提案
された生産性・技術革新控除/ Productivity and Innovation
Credit (以下「PIC」)を含む、多様な優遇税制を通じて発明と技
術革新の産業分野を活発的に奨励しています。
PICスキームの下で、査定年度にR&D活動の費用を含むPIC
所定の投資活動を最低5,000シンガポールドル支出したシンガ
ポール企業は、その額面の現金支給が与えられます。2013年
の査定年度より3年間に渡り、上限15,000シンガポールドルで
の現金支給が保障されています。この現金支給は、現状の
PICに対する優遇である400,000シンガポールドルを上限とした
PIC所定の投資活動への支出に対する400%を限度とする税
額控除あるいは特別減税措置に加えて、一定額提供されるも
のです。PICスキームは先週金曜日に提案されたシンガポー
ル政府による2014年の予算案で、さらに拡大され、内容が充
実されました。
発明と技術革新に関する業界に加え、香港の多様なその他の
業界や専門家は、香港の経済的発展の促進と拡大のための
シンガポールスタイルの税務優遇政策を政府が採用するよう
に数年に渡り呼びかけています。それらの提案には航空機
リース拠点や、多国籍企業グループの地域統括会社及び一
定の香港国外での活動に従事する国際貿易業の運営拠点に
対する優遇税制の導入が含まれています。曾氏は、今回の予
算案では上述のいずれに対しても何の意向も示しませんでし
た。
1週間前の彼のブログでは、シンガポールと香港を比較し、曾
氏は、シンガポールの大規模な労働力の輸入と海面開拓が
高品質で早期な経済の発展に貢献すると述べていましたが、
曾氏は、シンガポールが上述した事業を含む特定の産業に対
して、どのように多様な優遇税制を適用させているかについて
考察することもできたのではないかと考えます。
税源浸食と利益移転(Base Erosion and Profit shifting、以下
「BEPS」)時代での優遇税制
香港政府は、特定の産業分野へのインセンティブが周辺国に
否定的に受け入れられる懸念を最近示していました。特別な
懸念事項として、経済協力開発機構/ Organization for
Economic Co-operation and Development (以下「OECD」)の
最近のプロジェクトであるBEPSが当該優遇税制をどのように
捉えるかについて挙げられています。
Hong Kong 2014-15
Budget insights
BEPSは、国により異なる税法を過剰に使用し、自己の課税
ベースを減らすための節税対策に利用したり、移転価格税制や
租税協定を利用し税率の低いまたは免税となる国に利益を移
行する多国籍企業を主な対象としています。しかしながら、
BEPSは、政府が外国資本を誘致するために税制を優遇するの
みでなく、他国に有害となる場合に認識されます。
香港政府がBEPSプロジェクトの進展に留意していると見られる
一方で、そのプロジェクト自体が優遇税制の起用を否定する理
由とされるべきではありません。OECDの目的は、優遇税制を
起用している国を排除するものではなく、むしろ有害とされる税
慣行へのさらなる有効な解決策や、透明性の向上及び優遇税
制を支援するための実態のある活動を発展させることにありま
す。このようなことから、香港がOECDの必然的な懸念事項に対
処する場合、優遇税制の導入を否定的に捉えるべきではありま
せん。
財務統括会社の利子収益への減税制度の検証
多国籍企業グループは、現金資源を、財務統括会社がある特定
の地域に集中させる傾向にあります。そのようなアレンジメントの
下では、現金による剰余金がある会社がグループの財務統括会
社に貸付け、その財務統括会社がグループ内で資金を必要とす
る会社に貸付けています。
現状では、多国籍企業グループは香港が地域の税務統括を行な
う会社を設立する場所として好ましい場所ではないと考えていま
す。これは現行の香港税法(以下「IRO」)では、そのような税務統
括会社の受取利子が香港にて課税され、財務統括会社が海外に
あるグループ会社から借入れた支払利子は、金融機関ではない
ことから、税務上で損金不算入とされるためです。
この点について、曾氏が今回の予算案にて、香港に財務統括会
社を誘致することを目的に、1)現行のIROを財務統括会社の活動
での支払利子の損金算入について検討すること、2)そのような損
金算入の条件を明確にすることを行なう委員会を設置する意向を
示したことを歓迎します。
主要な予算案作成上の仮定、予測及び基準
2014-15年度から2018-19年度の中期予測(MRF)における仮定
►
予測期間の実質GDP成長率は、2014 年度で3% から4% 、 2015 年から2018年の成長率の趨勢は3.5% 。
►
投資利益率は2014年度において3.6% 、その後は年間4.8%から6%の範囲と仮定。
►
2015-16年度以降の土地売却収入はGDPの2.5%と仮定。
►
2018年3月31日時点の財政準備金の予測残高は8,503億香港ドルだったがこれを7,578億香港ドルに修正、これは当該年度の
GDPの29.1%に相当する。2019年3月31日までに財政準備金残高は7,992億香港ドルに達し、これは当該年度のGDPの29.1%に相
当すると見積もられている。
予算案作成基準
►
予算収支
総合収支と一般収支の均衡を維持。長期的には一般会計の剰余金を部分的に財政資本支出の財源に充当。
►
歳出方針
公共支出をGDPの20%以下に維持。
►
財政準備金
長期的に適切な準備金を維持。
中期予測と財政準備金(単位:10億香港ドル)
2013-14
(改訂後)
2014-15
2015-16
2016-17
2017-18
2018-19
一般会計歳入
347.9
348.9
392.2
405.6
431.4
467.5
一般会計歳出
(338.8)
(325.0)
(388.8)
(357.4)
(377.1)
(397.8)
一般会計収支
9.1
23.9
3.4
48.2
54.3
69.7
資本会計歳入
99.9
81.2
70.1
70.3
74.1
78.7
資本会計歳出
(97.0)
(86.2)
(101.8)
(108.7)
(107.2)
(107.0)
-
(9.7)
-
-
-
-
2.9
(14.7)
(31.7)
(38.4)
(33.1)
(28.3)
12.0
9.2
(28.3)
9.8
21.2
41.4
745.9
755.1
726.8
736.6
757.8
799.2
年度
政庁債及び証券の返済
政庁債返済後の資本会計収支
総合収支
3月31日時点の財政準備金
Source: Budget 2014-15
Hong Kong 2014-15
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