17 July 2014 2014 Issue No. 12 Hong Kong Tax alert 香港-韓国間の包括的二重課税防止協定の締結 2014年7月8日付で香港は韓国と包括的二重課税防止協定(以下「CDTA」)を調印し、香港 が他国と締結したCDTAは合計で30となりました。 韓国とのCDTAは、有利な条項がいくつか含まれており、香港と韓国間の経済・貿易関係 が更に促進されるものと予想されます。このタックス・アラートでは、香港居住者に適用され るCDTAの主な点について要約します。 別表1では、香港の現在のCDTAネットワークと現在交渉中または承認前のCDTAを要約し ています。 CDTAの適用範囲 このCDTAは、香港または韓国の居住者のみに適用されます。この点では、香港の法律 のもとで法人化、または設立された会社は、自動的に香港居住者としての資格を得てい ます。香港で法人化または設立されていない会社では、香港で「中心的に管理、制御」さ れている場合にのみ、香港居住者とみなされます。これは、香港が締結した他のCDTA にみられるような「通常の管理または制御」テストと比較して、より厳格な居住性テストを 採用した6番目のCDTA(ベルギー、イギリス、アイルランド、チェコ、カナダに続いて)となっ ています。 CDTAのもとで香港居住者に適用される税務優遇措置 ► 香港居住者の航空会社や船主会社は、その収益が 国際輸送によるものである場合、韓国で課税対象と はなりません。しかしながら、香港居住者の航空会社 がCDTAに基づいて韓国で免税が行われた収入に対 しては、香港税法での該当条項によって香港では課 税対象となります。 ► 香港居住者企業がその関連会社の韓国居住者企業 と取引業務を行い、韓国居住者企業の利益が独立企 業間価格の基準値より少ない場合、韓国税務当局は、 韓国居住者企業の利益を増やすため、独立企業間 価格の結果まで調整を行うことができます。このよう な場合、韓国居住者企業の利益に対して行われた調 整は、原則と金額の両方において正当性があると考 えられるため、香港税務当局は、CDTA第9条(関連企 業)に基づいて、香港居住者企業の利益に対する二 重課税防止のために、適切な対応的調整を行うこと でしょう。 事業活動による所得 ► 香港居住者企業の事業活動による所得が、香港企業が韓 国に有する恒久的施設(以下「PE」)に帰属しない場合、韓国 での納税義務はありません。香港企業が韓国にPEを有する 場合、PEに帰属する所得のみが韓国で課税対象となります。 ► 建築現場または建設・組立・据付作業または監督業務 に関連して、もしこのような現場・プロジェクト・活動が12 ケ月以上継続する場合、香港居住者企業は韓国でPEを 形成することになります。これは経済協力開発機構 (OECD)のモデル租税条約協定で規定されている6か月 の期間より有利となっています。 ► コンサルタント・サービスのような他の一般的なサービス について、香港居住者企業が、韓国においてPEを構成 するとみなされる従業員や他の人員を通して一定の日 数を超えて、単なるサービスを提供する条項に含まれて いない4番目のCDTA(日本・スペイン・カナダに続いて)と なっています。この結果、韓国で提供したサービスがか なり長い期間(183日以上)であっても、香港居住者企業 は、韓国における会社の存在が固定的なPEまたは代理 人を通したPEを構成していない限り、韓国で課税は行わ れません。 ► 香港居住者企業が韓国に購買事務所を有し、自社のた めに購買活動を行うだけである場合、韓国での納税義 務はありません。 受動所得 上記の取扱いは、韓国居住者企業の香港における事業 活動からの所得に対しても、相互的に適用されることに なります。 配当・利息・ロイヤルティ及び株式処分によるキャピタル ゲインへの免税または減税 以下の表は、特定の租税回避対策条項に基づいて、香 港居住者が受益者として韓国から受領した源泉徴収税 率をまとめたものです。 配当 利息 ロイヤルティ 20% 14/20%3 20% 20%6 10/15%2 0/10%4 10% 20%6 税率 通常の源泉税率1 CDTAによる低減税率 株式の処分によるキャピ タルゲイン5 1. 現地における収入に対する標準税率への10%の付加税を除きます。 2. 配当の受益者が配当する会社の資本の25%以上を直接保有する法人(パートナーシップを除く)である場合、10%が適用されます。その他の場合は15%となります。 3. 韓国の国内法に基づいて、韓国法人または政府団体が発行する債券から生じた利息に対しては、14%が適用されます。 4. 利息の受益者が香港政府、香港金融当局または香港政府によって100%またはそのほとんどが保有されている機関である場合、契約者の管轄官庁との間で適宜承認されて いるものと同様に0%が適用されます。 5. CDTAのキャピタルゲインに関する第13条の第4段落の内容に基づいて、韓国は資産価値の50%以上を直接的あるいは間接的に、韓国国内にある不動産から得ている会社 の株譲渡から派生した利益へ課税する権利を有しています。更に、同条第5段落に基づいて、韓国は株式の譲渡人が保有する会社の持株率に係わらず、韓国源泉のキャピ タルゲインに課税する権利も有しています。 6. 純利益に課された20%の税金は、売却代金の10%及び関連の現地付加税額へと減額することができます。 Hong Kong Tax Alert 2 二重課税の回避 CDTAの発効日 香港居住者の所得が香港と韓国の両国の課税対象となる 場合、香港居住者が韓国で支払った税額は、同一の所得に 対して香港で税額控除を行うことが可能です。しかしながら、 その控除額は、同一所得に対する香港税額までとなります。 このCDTAは、関連する批准手続が完了した暦年の次の税 務年度より有効となります。批准手続が2014年のうちに完了 する場合、CDTAは以下の年度から有効となります。 情報交換(EoI) a) 香港:2015年4月1日以降に開始する年度の査定 b) 韓国:源泉徴収税 2015年4月1日以降の支払に対して CDTAへの議定書では、情報が課税対象期間またはそれ以 降の事象に予測可能な範囲で関連している限り、CDTAの 有効日以前の情報であっても交換が可能であることが規定 されています。 その他:2015年1月1日以降に開始する税務年度 更にこの議定書では、2国間が書面にて合意した場合、交 換される情報は将来CDTA範囲外の他の税金情報にまでも 拡大される可能性があると規定しています。 議定書に含まれている上記の条項は、香港とのCDTAを交 渉する相手国を説得する手段として、香港がEoIの範囲を拡 大するという過去の政府の声明に沿うものとなっています。 反侵害条項 このCDTAは、CDTAの特定の条項を非合法的に利用しよう とする納税者に対抗する条項を含んでいます。これらの条 項のもとでは、配当、利息、ロイヤルティ、キャピタルゲイン や他の所得に対する優遇税務措置の利用が主目的である 場合、これらの優遇措置は否認されることになります。 更に当該条項では、契約当事者のいずれか一方がその国 内の租税回避対策条項を適用する権利を制限するものは ないと規定しています。 当該条項は、CDTAの第26条「優遇措置の制限」(以下 「LoB」)に含まれており、香港が締結した多くのCDTAに含ま れている条項と類似のものとなっています(様々な条項ある いは所得関連を統括する条項のいずれかに基づく)。この点 において、当該条項は、OECDモデルに基づくLoB条項のよ うな洗練された条項ではないようです。 Hong Kong Tax Alert 3 別表1- 香港の現在のCDTAネットワーク 現在交渉中または承認前のCDTA:28 国・地域 有効となった税務査定年度 (香港) 有効となった税務査定年度(相手国) 1. オーストリア 2012/13 2012年1月1日 2. ベルギー 2004/05 2004年1月1日 3. ブルネイ 2011/12 2011年1月1日 4. カナダ 2014/15 2014年1月1日 5. チェコ 2013/14 2013年1月1日 6. フランス 2012/13 2012年1月1日 7. ガーンジー 2014/15 2014年1月1日 8. ハンガリー 2012/13 2012年1月1日 9. インドネシア 2013/14 2013年1月1日 10. アイルランド 2012/13 2012年1月1日 11. 日本 2012/13 2012年1月1日 12. ジャージー 2014/15 2014年1月1日 13. クウェート 2014/15 2014年1月1日 14. リヒテンシュタイン 2012/13 2012年1月1日 15. ルクセンブルグ 2008/09 2008年1月1日 16. 中国 2007/08 2007年1月1日 17. マレーシア 2013/14 2013年1月1日 18. マルタ 2013/14 2013年1月1日 19. メキシコ 2014/15 2014年1月1日 20. オランダ 2012/13 2012年1月1日 21. ニュージーランド 2012/13 2012年4月1日 22. ポルトガル 2013/14 2013年1月1日 23. カタール 2014/15 2014年1月1日 24. スペイン 2013/14 2013年4月1日 25. スイス 2013/14 2013年1月1日 26. タイ 2006/07 2006年1月1日 27. イギリス 2011/12 2011年4月1日または4月6日 28. ベトナム 2010/11 2010年1月1日 調印後、未承認のCDTA:2 ► 韓国及びイタリア 交渉中のCDTA:14 ► バーレーン, バングラディシュ, フィンランド, ドイツ, インド, イスラエル, ラトビア, マカオ, モーリシャス, パキス タン, ロシア, サウジアラビア, 南アフリカ, アラブ首長国連邦 Hong Kong Tax Alert 4 Hong Kong office Agnes Chan, Managing Partner, Hong Kong & Macau 22/F, CITIC Tower, 1 Tim Mei Avenue, Central, Hong Kong Tel: +852 2846 9888 / Fax: +852 2868 4432 Principal tax contact Tracy Ho +852 2846 9065 [email protected] Hong Kong Tax partners Agnes Chan +852 2846 9921 [email protected] May Leung +852 2629 3089 [email protected] Joe Chan +852 2629 3092 [email protected] Grace Tang +852 2846 9889 [email protected] Owen Chan +852 2629 3388 [email protected] Karina Wong +852 2849 9175 [email protected] Wilson Cheng +852 2846 9066 [email protected] Jo An Yee +852 2846 9710 [email protected] Chee Weng Lee +852 2629 3803 [email protected] Rex Young +852 2629 3020 [email protected] EY | Assurance | Tax | Transactions | Advisory About EY EY is a global leader in assurance, tax, transaction and advisory services. The insights and quality services we deliver help build trust and confidence in the capital markets and in economies the world over. We develop outstanding leaders who team to deliver on our promises to all of our stakeholders. In so doing, we play a critical role in building a better working world for our people, for our clients and for our communities. EY refers to the global organization, and may refer to one or more, of the member firms of Ernst & Young Global Limited, each of which is a separate legal entity. Ernst & Young Global Limited, a UK company limited by guarantee, does not provide services to clients. For more information about our organization, please visit ey.com. © 2014 Ernst & Young Tax Services Limited. All Rights Reserved. APAC no. 03000900 ED None. This material has been prepared for general informational purposes only and is not intended to be relied upon as accounting, tax, or other professional advice. 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