米国発信英文資料抄訳 情報提供資料 Market Perspective Series l 2012年10月 発行 CIO Update ジャナス・キャピタル・インターナショナル・リミテッド 概要 2012年第3四半期においても、世界経済の成長に減速の兆候がみられたことを受け て、9月には主要中央銀行が追加の金融緩和策を打ち出しました。ジャナス・キャピタ ル・マネジメント(以下「ジャナス」)は、これらの金融緩和策は世界経済の成長にとっ て必要不可欠であり、株式や社債などのリスク資産に対して強気の見方を維持して います。一方、欧州では根源的な問題が未解決のままであり、米国では「財政の崖」 が迫っており、さらに中国では経済成長が減速していることから、第4四半期の金融 市場は、変動幅の大きい不安定な状況が続くと予想されます。 要点 • ジョナサン・コールマン 共同最高運用責任者 (株式部門) 中央銀行の相次ぐ金融政策により危機は回避されたが、欧州の根源的な問題解 決には至っていない。 • 金融市場が現在直面している最大のリスクは、米国の「財政の崖」であり、歳出 削減と増税により、2013年上半期の経済成長が大きく減速する可能性がある。 • 低成長環境下にあっても、米国株式市場には依然として上昇余地が残されてい るとみられる。 • 債券市場のダイナミクスを踏まえて、ジャナスの債券ポートフォリオにおいては、 より慎重な対応をとっていく方針である。 当資料の見解は作成時点の筆者の見解であり、市場環境や経済状況の変化によって随時変更される可能性があります。また、記載 されている情報の正確性、完全性、適時性について保証するものではなく、それを使用したことによる結果について、何ら保証するもの ではありません。コメントは個別銘柄の保有や市場セクターの推奨を目的としたものではなく、広範なテーマの説明を目的としています。 過去の実績は将来の運用成果を保証するものではありません。 ギブソン・スミス 共同最高運用責任者 (債券部門) 米国経済 2012年第4四半期の世界の金融市場においては、 欧州債務問題の行方、米国の「財政の崖」、中国の 経済成長の減速、尖閣諸島を巡る日・中関係や中 東などの地政学的な緊張の高まりといった4つが、 主なリスク要因として挙げられます。 これらの中でも、米国の給与税減税、長期失業者向 け失業保険給付、ブッシュ減税(大型所得減税)など の失効と、歳出の強制削減が重なる2013年1月の す。金融危機後、大幅なコスト削減に踏み切ったこ とが奏功し、企業の利益率は過去最高に近い水準 まで回復しました。この2年間、拡大基調にあった企 業の利益率を、今後も維持していくことは難しくなる とみられます。ただし、この利益率の減速が株式市 場全体に悪影響を及ぼすとは考えていません。高い 競争力を備えた強い企業は、今後も現行の利益水 準を維持することが期待できると見ています。 米国株式市場 「財政の崖」は、最大の懸念材料と考えます。また、 2012年9月に欧米の中央銀行が打ち出した金融緩 米連邦政府の債務は2012年12月までに再び上限 和策を受けて、株式市場は上昇しました。しかし、主 額に達する見通しであり、2011年に起きた政治論争 要経済指標の悪化が積み重なり圧力が高まると、 が繰り返される可能性が高まっています。こうした政 中央銀行が景気刺激策を講じることは過去にもみら 治の混迷が、「財政の崖」への警戒感を高めざるを れました。株式市場はこうした金融政策を一旦好感 得ない一因と言えます。企業の経営陣は、足元の欧 するものの、さらにネガティブなマクロ経済要因が浮 州、中国、日本の経済成長の減速に加えて、「財政 上すると、再び下落するといった状況に陥っていま の崖」が米国経済の足かせになることを注視してお す。現実には、欧州と米国の政治が自国の経済問 り、企業が経済の先行きに確信が持てなければ、設 題に対して真の解決策を提示しない限り、経済成長 備投資と雇用という成長を促す2大分野への投資が の鈍化と不安定な株式市場は継続するでしょう。た 抑制されかねません。 だし、このような低成長環境下、株式市場には依然 米国大統領選挙では、「大きな政府」対「小さな政 府」が主な争点となっていることから、11月の選挙の 結果によっては、政府が「財政の崖」をどう対応して として上昇余地が残されており、先行き変動幅の大 きい局面があっても、株式市場は魅力的な投資機 会を提供していると見ています。 いくのかが、一部明らかになるかもしれません。しか 足元の株式のバリュエーションは、過去の平均値か し、人口統計上の傾向においても、医療費と社会保 ら大きく乖離しておらず、著しく割安あるいは割高の 障の負担増が示される中、長期的な財政展望は厳 いずれの状況にもなく、他の資産クラスと比較して、 しさを増しています。また、大統領選挙の勝者にとっ 魅力的な水準にあると見ています。配当利回りも米 ては、財政政策の健全性維持に必要な変革を実現 国長期国債に対して魅力的な水準にあることに加え するために、超党派議員と向き合っていかなければ て、長期的な収益獲得機会も期待できると考えま ならないという難しい課題が待ち受けています。 す。超低金利政策が少なくとも2015年半ばまで据え 現在、米国では、経済の二極化が進行しています。 高学歴(大卒)の消費者層の経済状況は依然として 良好です。大卒者の失業率は4%前後と相対的に低 く、消費動向に大きな落ち込みはみられません。一 方、雇用見通しが不安定な低所得者層は、厳しい経 済状況が続いています。こうした状況を背景に、ブラ ンド力のある強い企業はさらに強さを増し、ブランド 置きされる可能性が高い中、相対的に高い配当利 回りが期待できる株式が選好されたことは当然の動 きであると考えます。一方、マクロ経済の影響を受 けやすい企業の株式は過度に売り込まれています が、マクロ経済の回復見通しがより鮮明になれば、 こうした銘柄においても上昇が期待できると見てい ます。 力の弱い企業や、低所得者層を主な対象とする企 顧客のニーズや業界が置かれている環境を理解し 業は苦戦を強いられています。 ている企業は、現在の低成長環境下でも、市場シェ 第4四半期の企業の利益成長は、減速傾向にありま アの獲得や市場をとらえるべく革新的な商品やサー 当資料の見解は作成時点の筆者の見解であり、市場環境や経済状況の変化によって随時変更される可能性があります。また、記載されている情報の正確性、完全性、適時 性について保証するものではなく、それを使用したことによる結果について何ら保証するものではありません。コメントは個別銘柄の保有や市場セクターの推奨を目的としたもの ではなく、広範なテーマの説明を目的としています。過去の実績は将来の運用成果を保証するものではありません。 2 ビスの導入を通じて、戦略的にビジネスを成長させ 金融緩和策に加えて、米国の超低金利政策の継続 ています。また、この3年間蓄えてきた潤沢な手元 期間延長により、投資家のリスク許容度が高まって 資金を有効活用し、競争力をさらに強化すべく戦略 いることや、高利回り志向が根強いことなどから、 的企業買収に打って出る企業も散見されます。こう 社債やMBSなどへの需要は短期的に堅調であると した投資環境下、ジャナスは各業界に変革をもたら 見ています。QE3は、歴史的にも大胆な金融緩和 すダイナミクスに対応している企業に注目していま 政策の一つであり、今後数カ月にわたり金融市場 す。 に影響を与え続けるものと見ています。 エネルギー・セクターにおいては、水平掘削など技 一方、ジャナスでは、金利上昇リスクの可能性を注 術革新によって、米国内の石油生産量がここ数十 視しています。また、ハイイールド債券と投資適格 年で初めて増加に転じています。この掘削技術の 社債の両市場においては、利回り水準の低下か 導入に伴い、石油サービス企業に対する需要も急 ら、より慎重な対応をとっていく方針ですが、このよ 増しています。情報技術セクターでは、デスクトップ うな投資環境下では、綿密な企業調査・分析に基 からモバイル端末のインターネット利用への移行 づく銘柄の見極めが、一層重要になると考えます。 が、予想を上回るペースで進行しています。また、 ノートPCやスマートフォン、 タブレットといったモバ 展望 イル端末の普及に加えて、これらの端末からの動 昨今、主要中央銀行が打ち出した一連の金融緩和 画共有・配信サービスの利用増加により、無線デー 策は、正しい方向に進んでおり、脆弱な世界経済の タ通信量が急増しており、各通信事業者はこうした 現状を勘案すると、必要不可欠であったと考えま 拡大に対応するための設備投資を迫られていま す。こうした投資環境下、ジャナスは、株式、社債、 す。この動きは、携帯事業者のインフラ設備の構築 MBSをはじめとするリスク資産に対して、短期的に や回線容量の拡大をサポートする機器メーカーにも 強気の見方を維持しています。 収益機会をもたらすと考えます。ヘルスケア・セク ただし、世界的な経済成長が重要な鍵を握ってい ターにおいては、医療費の大幅な削減に貢献す ます。流動性の供給を背景にバリュエーションが押 る、あるいは高度な医療ニーズに対応する、画期的 し上げられてきましたが、これを維持するにはファン な治療薬を持つ企業に投資妙味があると見ていま ダメンタルズの改善が必要と言えます。欧州は債務 す。 問題の解決に向けて前進し、第4四半期の最大の 米国債券市場 焦点は米国に移っています。米国政府による財政 米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長 は、米国経済が改善した場合もFRBは金融緩和策 を継続する意向であることを表明しました。量的緩 政策と税政策が明確になれば、企業の整備投資や 雇用が促進され、力強い経済成長がもたらされると 考えます。 和第3弾(QE3)により、実際に景気が刺激される可 能性は低いものの、回復力の鈍さから、FRBは金 融緩和策を当面継続せざるを得ないと考えます。 QE3は、FRBにとって「財政の崖」、欧州債務問題、 中国の経済成長の減速などの差し迫ったリスク要 因に対する保険でもあると言えるでしょう。また、 FRBは、米国国債から、株式や社債などリスク資産 への資金流入を後押しすべく、超低金利政策の継 続期間について、少なくとも2015年半ばまで延長す る可能性が高いことを示唆しました。 当資料の見解は作成時点の筆者の見解であり、市場環境や経済状況の変化によって随時変更される可能性があります。また、記載されている情報の正確性、完全性、適時 性について保証するものではなく、それを使用したことによる結果について何ら保証するものではありません。コメントは個別銘柄の保有や市場セクターの推奨を目的としたもの ではなく、広範なテーマの説明を目的としています。過去の実績は将来の運用成果を保証するものではありません。 3 米国株式と企業収益の推移 (1990年1月末~2012年9月末*) (ポイント) 1,200 (10億米ドル) 2,400 米国企業収益(四半期) 米国株価(ラッセル3000)(左軸) 1,000 2,000 800 1,600 600 1,200 400 800 200 400 0 0 90年 92年 94年 96年 98年 00年 02年 04年 06年 08年 10年 12年 *米国企業収益は2012年第2四半期まで。 米国企業のキャッシュフローと設備投資の推移 (2000年第4四半期~2012年第2四半期) (10億米ドル) 2,200 米国企業キャッシュフロー 2,000 米国実質民間設備投資額 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800 00年12月 02年6月 03年12月 05年6月 06年12月 08年6月 09年12月 11年6月 米国国債とハイイールド債券市場の動向 (1997年9月末~2012年9月末) 25% 20% 信用スプレッド 米国ハイイールド債券利回り デフォルト率 期間平均デフォルト率 米国10年国債利回り 15% 10% 5% 0% 97年9月 99年9月 01年9月 03年9月 05年9月 07年9月 09年9月 11年9月 米国ハイイールド債券:BofAメリルリンチ・USハイイールド・マスターII・インデック ス、信用スプレッド: BofAメリルリンチ・USハイイールド・マスターII・インデックス、 デフォルト率: Moody’s(発行体数ベース) 。すべて米ドルベース。 出所:ブルームバーグのデータに基づきジャナス・キャピタル・インターナショナル・ リミテッド作成。 上記は過去の実績であり、将来の傾向、数値などを保証もしくは示唆するものでは ありません。 4 ジョナサン・コールマン (CFA) 共同最高運用責任者 (株式部門) 1994年7月、リサーチ・アナリストとしてジャナスに入社。2006年1月からジャナスの共同最高運用責任者(Co-CIO)として、株式運用部門を 統括。リサーチ・ダイレクター、チーフ・リスク・オフィサーおよびクライアント・ポートフォリオ・マネジメント・グループを直属に持つ。ジャナス 執行委員会の一員。 クラッシック・グロース戦略およびプロテクテッド・シリーズ・グロース戦略の共同ポートフォリオ・マネージャーのほか、ジャナス・ファンドの 共同ポートフォリオ・マネージャー兼エグゼクティブ・バイス・プレジデントも務める。ジャナス入社以前は、コスタリカにて中米経済統合の 研究に従事。 ウイリアムズ大学政治経済学部卒業。米国公認証券アナリスト(CFA)。運用経験18年。 ギブソン・スミス 共同最高運用責任者 (債券部門) 2001年1月、債券アナリストとしてジャナスに入社。2006年1月からジャナスの共同最高運用責任者(Co-CIO)として、債券運用部門を 統括。また、リサーチ・ダイレクター、チーフ・リスク・オフィサーおよびクライアント・ポートフォリオ・マネジメント・グループを直属に持つ。 ジャナス執行委員会の一員。 ハイイールド・ボンド戦略、コア・プラス・ボンド戦略、ショート・デュレーション・ボンド戦略、グローバル投資適格債券戦略、グローバル・ ハイイールド・ボンド戦略、グローバル・コア・プラス・ボンド戦略などの共同ポートフォリオ・マネージャー並びに、当該戦略関連ファンドの エグゼクティブ・バイス・プレジデントを務める。ジャナス入社以前は、モルガン・スタンレー社の債券部門に所属。 コロラド大学経済学部卒業。業界経験21年。 ご留意事項 当資料の見解は作成時点の筆者の見解であり、市場環境や経済状況の変化によって随時変更される可能性があります。コメントは個別銘柄の保有や市場セ クターの推奨を目的としたものではなく、広範なテーマの説明を目的としています。 ジャナス・キャピタル・グループは、提供された情報の正確性、完全性、時宜性、また当資料の利用による成果を保証するものではありません。当資料を作成す るにあたり、一般的に公開されている情報は全て正確かつ完全であるとみなし、独立した検証を受けておりません。 当資料のコメントは、各市場における今後の金融または経済動向の一般的な予測または期待を反映した、見通しに関するものです。実際の成果またはイベン トは当資料に記載された見通しと大きく異なる可能性があります。このような差異が生じる場合の要因は、見通しに関するコメントに記載した要因に加え、インフ レ、景気後退そして金利のような一般的な経済情勢などがあります。 当資料中で説明・例示された銘柄がジャナスの運用するポートフォリオに現在組み入れられているまたは過去に組み入れられていたかどうかを明言するもの ではありません。資料中の説明・例示は、市場全般または経済条件を分析すること、または調査プロセスの特定要素を紹介することを唯一の目的としており、 有価証券の売買の推奨または保有銘柄の示唆を行うものではありません。 過去の実績は将来の結果を約束するものではありません。 ハイイールド証券は、投資適格証券に比べてリスクプロファイルが高いことがあります。ハイイールド債は、「ジャンク債」とも呼ばれ、デフォルト・リスクが高い 等、より多くのリスクがあります。 当資料は、ジャナス・キャピタル・インターナショナル・リミテッド(以下「JCIL」)により作成されたものです。JCILは、英国金融サービス機構により認可・監督を受 けています。日本では金融庁の監督の下、関東財務局に投資運用業および投資助言・代理業を行う金融商品取引業者として登録されています。当資料は、投 資助言を意図するものまたは有価証券の売買の勧誘または推奨を行うものではありません。ジャナス・キャピタル・グループ及びその関連会社は、当資料の一 部または全部、または当資料を基に作成された情報の、第三者に対する違法な配布がなされた場合には責任を負うものではありません。また、提供された情 報の正確性、完全性、適時性について保証するものではなく、それを使用したことによる結果について何ら保証するものではありません。全ての投資と同様、 固有のリスクがあることにご留意ください。当資料中の情報は、示された日付現在までのみ更新されたものです。いかなる分析、意見、試算、または予測につ いても、予告なくこれを変更することがあります。 当資料または当資料に含まれる情報の配布は法律で規制されていることがあり、その使用が違法となるいかなる地域または状況では、使用することができま せん。 当資料は情報の提供を唯一の目的として作成されたものであり、一般の閲覧または配布には使用できません。 ジャナス・キャピタル・グループの運用子会社であるジャナス・キャピタル・マネジメント・エルエルシーまたはインテック・インベストメント・マネジメント・エルエル シー、パーキンス・インベストメント・マネジメント・エルエルシーは、日本において金融商品取引業者として登録されていないため、日本の投資家に対して投資 助言または投資一任サービス等を提供することはできません。ただし、適用される法令に則って認められる範囲での契約についてはこの限りではありません。 ジャナス・キャピタル・インターナショナル・リミテッド 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第782号 加入協会:一般社団法人日本投資顧問業協会 NS-1012(101)1013 Japan Inst/BD 5
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