MLG CARGO WEEKLY DIGEST

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新泉地紀行
その十二
熊本県田の原温泉(1)
湯老人・佐藤哲治
ハンセン病元患者に対する宿泊拒否で大揺れに揺れた黒川温泉のすぐ近くに、今回ご紹介する田の原(たのは
る)温泉がある。以前から述べているように、由布院や黒川温泉は筆者の好みではない、理由は色々あるが
これは本稿と関係ない話なので省略させて頂く。田の原川沿いに民家に混じって旅館が 3 軒立並ぶ田の原温
泉は、川のせせらぎだけを耳にする、黒川とは打って変わって静かで素朴な温泉場である。素朴と言っても、
無論昔の湯治場の雰囲気がそのまま残っているわけではなく、どの旅館も昨今かなりきれいになり設備も新
しくなった、同時に料金もそれに応じて立派に(=高く)なった。筆者にとってそのへんがやや不満ではある
ものの、田の原温泉はのんびり心を休めるには今尚格好の場所であろう。
記録を調べると、平成 5(1993)年 9 月 5 日に筆者は黒川温泉を訪れている。確かその日の午後 3 時前後、
小国から黒川温泉へ向うバスの車窓に田の原温泉を見て、その佇まいに心惹かれた。それから 10 年、バスの時
刻は当時とほとんど変っていないようだ、やはり午後 3 時過ぎ田の原温泉に到着。ところがバス停付近に何か
くさい臭いが漂っている、これは何だとあたりを探索、暫し原因追究に努める。正体判明、バス停を田の原川
即ち田の原温泉方向へ少し下ると昔懐かしい牛小屋があったのだ。それほど大きくない牛舎に子牛も含め 10
頭前後はいただろう、これが異臭のもとであった。多分肉牛と思うが子牛の可愛いこと、いずれ食べられて
しまう運命を考えると心が痛む(本当ですか?)
。
更に牛小屋のそばに粗末な犬小屋が一つ、黒のラブラドールレトリバーがつながれていた。まだ年少なのかむやみ
に人懐っこく、盛んに吠えかつ尻尾を振って汚れた前足を上げて筆者に跳びかかろうとする。泥まみれの足
を避ける為後ずさりすると、一層狂おしく吠え立てる、そうこうしている内に牛小屋の異臭が一段と強まる。
「クロ」とは翌朝別れを惜しむことになるのだが、牛と犬にかかずらわっているといつまでも話が先に進まぬ。
このへんで橋を渡り、田の原温泉に足を踏み入れよう。
“大朗(たいろう)館”の創業は明治 33(1900)年、現在のご主人は 3 代目にあたる。他 2 軒の旅館はいず
れも創業が平成 2(1990)年と新しいので、
“大朗館”の歴史が田の原温泉の歴史ということになろうか、
『飾
らない… 背伸びしない… 素朴なもてなしとあるがままの寛ぎを大切にしたい。自然に一番近い、心休ま
る場所「大朗館」。
』と旅館のパンフレット
に記されている。玄関を入ると小柄な 3 代目のご主人が出迎えてくれた、どこか飄々とした感じの御仁であ
る。宿帳に 60 歳・無職と記入して「今年首になりました」と話した所、「まだお若いのに…」とご主人。3
階の部屋に案内されて種々説明を受けた後、「トイレは広く快適ですからゆっくりお使い下さい」の一言に早速
トイレを確認。なるほど立派だ、しかしトイレを自慢する宿は珍しい、能書き通り確かに飾らない宿のようだ。
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1.牛舎、子牛が可愛い
2.人恋しい「クロ」
3.田の原川
4.大朗館
*続く*
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◆訂正◆ モンテレー支店の電話番号
先週号の本紙(Vol.198)にて、弊社米国現地法人モンテレー支店開設のご案内を
致しましたが、その中で、同店の電話・FAX 番号の市外局番に誤りがございました。
ここにお詫び方々訂正いたします。
【正】
TEL: 52-81-8134-2400
FAX: 52-81-8134-2200
【誤】
TEL: 52-86-8134-2400
FAX: 52-86-8134-2200
MLG CARGO WEEKLY DIGEST vol.199
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