熊本県 松島温泉・牛深鉱泉(2)

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新泉地紀行
その二十四
熊本県松島温泉・牛深鉱泉(2)
湯老人・佐藤哲治
牛深は天草の中でも一段と遠い、下島の中心地・本渡(ほんど)市からでも車で 1 時間弱かかる。まして筆
者のように路線バスを利用する者は一層大変である、本渡から快速バスで 1 時間 20 分、西海岸或いは東海岸経
由のバスでは何と約 2 時間もかかる。おまけに道はお世辞にも整備されているとは言い難く、スプリングが余り
利かない古い九州産交バスに乗車していると振動で腹具合がおかしくなる。従い、牛深の人が熊本市に行く場
合、フェリーに 1 時間程度乗船、水俣に出て九州本島を北上して熊本に向うルートを取る事が多い。車で天草下島・
上島を陸路熊本に向えば、少なくとも 3 時間は要するであろう。
遠い、不便だと色々文句ばかり言ったが西海岸経由のバスの車窓は素晴らしい、後半 1 時間は飽きる事がない。
複雑に屈曲した海が陸地奥深くまで入り込み、池なのか川なのかはたまた海なのか、判断に迷う独特の景観
を提供してくれる。そして牛深市魚貫(おにき)町に入るとバスは魚貫湾・茂串湾の海岸線に沿って走り、右
手の海が穏やかで美しい。このように苦労して漸く辿り着く牛深市の人口は 19,000 人弱、水産業が市の主要
産業である。最近本州日本海側での鰯の不漁が話題になったように、牛深でも同じく鰯が獲れなくなった。
そのせいか景気はぱっとしないそうだ。又、一般的な地方の町の例に漏れず、若年層の流出が一向に止らな
いので市の人口は減少傾向にある。つまり活気に乏しい。
バスの終点は牛深港、ここには「うしぶか海彩館」という立派な施設がある。牛深の全てが分る海の情報文化
館という触込みで、牛深を紹介する展示室等が揃い、牛深特産の蒲鉾や海産物を売る店もある。中でもひと
きわ目を引くのは「イケス広場」で、海水を引いた大規模な回流型水槽が設置され、鯛を始め牛深で獲れる様々
な魚が元気に泳いでいる。覆いがないので中には水槽に手を出す人もいるらしく、「手を出さないで下さい、
手を出すと魚が指に食いつきます」と警告が表示されている。あんな大きな鯛にかまれたら指先を食いちぎ
られるかもしれない、臆病な筆者は一切手出ししない事にした。又、別の小さなイケスには伊勢海老やヒラメ等が
魚種毎に入居している。ここでは魚を見るだけではなく、注文すればその場で捕え調理してもらう事ができ
るそうだ。
「海彩館」にフェリー乗場が隣接しており水俣便が出ている、そしてここに来るといやでも目につくのが「牛深
*ハイヤ大橋」である。関西国際空港を手がけたイタリアの建築家レンゾ・ピアノ氏が設計、全長 833M.・幅員 16M.のカー
ブした橋が牛深港の上にかけられている。対岸の魚市場から魚を運び出すトラックが市内に渋滞を引起さぬよう
迂回路として建設されたが、鰯の不漁でトラックの数も減少、本来の目的より今や牛深観光のシンボルとしての価値
が高い。橋の建設費は相当な額に上るだろう。国が 6 割、県が 3 割拠出して市が 1 割負担したそうだがそれ
だけの意味があったかどうか、翌朝遠回りして橋を渡ってもらったタクシーの運転手は笑いながら確答を避けた。
*ハイヤ:江戸時代から酒盛りの唄として歌われたのがハイヤ節である。ハイヤは南の風=ハエという意味で、名前の通
り南国のビートのきいた軽快なリズムに特徴がある。牛深のハイヤ節は阿波踊り等全国に点在しているハイヤ節のルー
ツとも言われている。
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【写真(左から)】
1.産交本渡バスセンター、中は古いが外見はまあまあ
2.牛深港行きバス、どこかの中学校前で時間調整
3.牛深港にフェリー入港
*続く*
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MLG CARGO WEEKLY DIGEST VOL. 233
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