公的研究費の不正使用に関する調査結果について

公的研究費の不正使用に関する調査結果について
【概
要】
本学は、学内通報を受け、公的研究費の不適切な執行に関する調査委員会を設置し、本学職
員の研究費の不正使用について調査を行った。
その結果、本学職員に研究費の不正な使用があったと認定し、停職 2 か月 15 日間の懲戒処
分とした。
【内
1
2
容】
調査対象者(被処分者)
山口大学教育学部 准教授
沖林 洋平
経 緯
本件は、本学内部監査室が平成 27 年 1 月から行った旅費に関する内部監査において、教
育学部所属の教員に係る旅費支給において、出張復命書の記載事実が確認できない事態が見
受けられるとの通報を受けた。このため、本学統括管理責任者(理事・副学長(財務施設担
当))は、「国立大学法人山口大学における公的研究費の不正防止に関する規則」(以下、「不
正防止規則」という。)に基づく部局責任者の予備調査を踏まえ、最高管理責任者(学長)
の指示により、平成 27 年 6 月 4 日に公的研究費不正対応委員会の下に学外委員(弁護士)1
名を含む 7 名からなる「国立大学法人山口大学公的研究費の不適切な執行に関する調査委
員会」(以下、「調査委員会」という。)を設置した。
調査委員会は、計 4 回開催し、調査対象者の研究費について、関係書類の調査、関係教
職員に対する聞き取り(調査対象者 3 回、関係者 8 回(延べ 16 人))及び関係機関等への
書面調査(宿泊先 47 施設(90 件)、用務先 99 件、兼業先 9 機関(24 件))等により事実確
認を行った。
調査委員会は、9 月 17 日に中間報告、11 月 12 日に最終的な調査結果を統括管理責任者
に報告、統括管理責任者は同日付で最高管理責任者に報告した。また、同日付で調査対象者
に最終的な調査結果を通知した。なお、調査結果に対する不服申立はなかった。
学長は、平成 27 年 10 月 13 日の教育研究評議会において懲戒処分の審査を決定、平成 28
年 2 月 9 日の評議会において懲戒処分(案)の審査を行った。教育研究評議会は同日付け
で懲戒処分審査対象者(被処分者)に審査説明書を交付(陳述する機会の請求期限:2 月 23
日)した。
懲戒処分審査対象者から陳述する機会の請求がなされなかったため、3 月 8 日の教育研究
評議会で停職 2 か月 15 日の懲戒処分を決定した。
なお、研究費の不正な使用に係る過払金について、調査対象者から全額返還させる。
3 調査の概要
(1)調査結果
調査の結果、平成 23 年度から平成 26 年度までの調査対象者の 151 件の出張について、
旅費の不正使用 57 件があると判断した。
旅費の不正な使用 57 件について、「旅行命令や出張復命書に記載された出張期間や宿泊
地等が異なる出張(30 件)」、「実際の行程が他の旅行命令(又は兼業)と重複する出張(3
件)」、「出張の取り止めや出張用務を達成できなかったにもかかわらず旅行命令の取消・変
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更を行わなかった出張(24 件)」において旅費の過払金と判断した。
本件は調査対象者が、旅行命令後に出張日程の変更や取り止め、出張用務を達成できなか
ったにもかかわらず旅行命令の取消・変更の手続きを怠ったことにより、旅費の不正使用が
行われた。
不正に使用されたと認められる公的研究費等の額
財
科学研究費補助金
運営費(大学経費)
合
23年度
源
計
24年度
25年度
26年度
合 計
件数
過払金(円)
件数
過払金(円)
件数
過払金(円)
件数
過払金(円)
件数
過払金(円)
7
268,487
11
386,515
14
484,463
9
254,300
41
1,393,765
3
10
37,500
305,987
4
15
63,420
449,935
5
19
156,500
640,963
4
13
91,060
345,360
16
57
348,480
1,742,245
「国立大学法人山口大学公的研究費不正対応委員会」
(委員構成)
委員長
吉岡 富雄 理事・副学長(財務施設担当)
副委員長 成富
敬 経済学部長
委 員
中山 修身 弁護士
須藤
馨 内部監査室長
佐藤 元則 学術研究部研究推進課長
湊
由己 財務部財務課長
三池 秀敏 理事・副学長(学術研究担当)
「国立大学法人山口大学公的研究費の不適切な執行に関する調査委員会」
(委員構成)
委員長
成富
敬 経済学部長
委 員
中山 修身 弁護士
佐藤 元則 学術研究部研究推進課長
湊
由己 財務部財務課長
古田 尚文 財務部財務課副課長
沖中 玲子 学術研究部研究推進課研究助成係長
戸部 敬博 財務部財務課財務企画係長
(2)結論と判断理由
本件は調査の結果、個人の利益を得るために計画的・意図的に行われたものとまでは断定
できないが、調査対象者は、手続きの煩わしさから、出張日程に変更等があった際も速やか
に手続きを行わず、後日、当初の計画どおりの報告を行っていたものと考えられること、本
事案が内部監査により発覚するまでの間、本人からの返還手続き(出張の取消・変更)もな
く、大学から調査対象者に旅費を入金している口座は普段、私的な生活のために使われてい
る口座であるため、結果的に私的流用があったと判断せざるを得ない。
当該行為は、研究費が公的資金であるという認識の欠如、規則に対する法令遵守意識の欠
如に基づくものであり、複数年にわたり継続して出張の取消や変更の手続きを怠り、過払い
金を発生させたことは重大な過失による研究費の不正使用と判断した。
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4 再発防止策
(1)出張事実を証明する必要な書類の確認
平成 23 年度から出張時における宿泊先を明らかにするため、宿泊したホテル名を出張
復命書に記載させているが、さらなる明確化を図るため、宿泊事実を証明する書類の提示
(領収書、宿泊証明書等)を求め、旅行命令担当部署において出張復命書に記載されたホ
テル名と宿泊日を確認し、出張復命書に確認印を押印する。
(2)研究費使用に関する意識改革
①旅行命令及び旅行命令の変更手続きについて
出張者と旅行命令担当部署において、用務内容及び日程等(宿泊の必要性、旅費の別途
支給等)の確認を行い、旅行命令簿を適切に記載するようさらなる徹底を図る。
また、業務上の必要、または天災その他やむを得ない事情により旅行命令等に従って旅
行することができない場合は、速やかに旅行命令権者に旅行命令等の変更又は取消の申請
を行う必要があることをあらためて周知する。
②出張復命書について
現在、出張復命書には、用務先、用務内容(面談者等を含む)、宿泊先等を記載するこ
ととしているが、用務内容については詳細に記載するよう注意書きを追加する。併せて、
面談者等の欄を設け確実に打合せ等の相手方の所属・氏名を記載することにより、事後確
認ができるように様式の変更を行う。
③事務職員の意識改革
事務職員は、不正使用や不適切な執行を未然に防止するために、学内外で実施する研修
等に積極的に参加し、知識の習得に努め、研究者からの使用ルールや事務手続きに関する
相談窓口としての機能強化を図り、日常における研究者とのコミュニケーションに努める
ことを徹底する。
④研究費の適正使用等に関する研修会
上記(1)∼(2)③について研修会において周知する。さらに各部局の会議等においても
徹底を図る。また、不正使用等を行った場合の大学及び資金交付元の処分、研究費返還等
についても再徹底を図る。
⑤教育・研究メンター制度等導入の検討
教育・研究活動においては、研究者や研究支援人材、学生、外国人といった研究活動を
行う人材の多様化や共同研究体制の複雑化の中で、教育・研究活動のアカウンタビリティ
の徹底がはかられるよう適切な支援・助言ができる環境(一定の職務経験のある教員等の
配置による教育研究活動等に係る相談ができる環境等)の整備を検討する。
5
公表までに行った措置の内容
学内通報を受けて以降の出張を取消(平成 26 年度)、平成 27 年度は当該教員に係る公的研
究費の執行を停止した。
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