高等学校10年経験者研修「学習指導案(細案) 」様式 宮城県柴田農林高等学校川崎校 第1学年 地歴科(地理)学習指導案 指導日時:平成24年11月16日(金)5校時 指導学級:第1学年1組(男11名,女9名) 指導者 :宮城県柴田農林高等学校川崎校 教諭 千葉 啓 1 単元名 2 単元の目標 3 指導にあたって (1)単元について (2)生徒の実態 (3)指導について [地理A]生活と気候のかかわり (帝国書院「高等学校 新地理A 初訂版」 ) 地理Aでは,科目間の連携を重視するとともに,生活と結びついた身近にあるものを題材とした学習を 通して地理的見方考え方を身につけさせることを目標としている。 生活と気候のかかわりでは,大気・海洋の循環と気候区分・植生が深く関連していることに対して関心 を持つことができるようにするとともに,気候の分布と植生を地球規模で捉えさせたい。また,その中で 行われている農業の営みを理解させ,身近な地域で栽培できる農作物を考察させたい。 気候区分は中学校でも熱帯・乾燥帯などのおおまかな区分で学習をしてきているので,授業ではそれを 振り返らせながら,より細分化した内容を扱う。私たちが生活する宮城県は温暖湿潤気候に属し,降水量 は夏季の方が多いが, 大陸の反対側に位置するヨーロッパは地中海性気候・西岸海洋性気候に属しており, 降水量は冬季の方が多い。平均気温は似ているが,気温の年較差は日本の方が大きい。このような相違点 がなぜ生まれるのか,生徒には大気と海洋の循環をふまえたうえで,世界の気候区分のおおまかな分布を 把握させるとともに,身近な植物や生活を例として扱いながら理解を深めさせる。 さらに,資料やデータの読み取ることとまとめをとおして,分析力をつけることを目指す。 また,農作物の学習は,人びとの生活と気候から世界の諸地域の生活・文化へ移行する橋渡しの部分に 該当するため,今まで学んできた気候区分が農業にどのような影響を与えているか意識させながら扱う。 全体を通して,地理における学習が他の科目とつながりが深いことを意識させることで,学習に対する 関心を持たせるとともに,前向きに学習に取り組む姿勢を育みたい。 本校は普通科であるが農業高校であるため校地に農場があり,農業の授業が必修として行われている。 卒業後に農家を目指す生徒は少ないものの,実技が伴うだけでなく,今まで学んだことのない教科という こともあり農業に対して興味を示すだけでなく意欲的に取り組む姿勢がみられる。 地理に関しては,4月時点において,宮城県の位置を正しく認識している生徒は90%,日本の位置は 85%と自分と対象とする地域の位置関係を100%把握させて授業を進めることができていないだけで なく,他教科を学ぶ上でも大変困難が生じる場合がある。そのため,まずは同じ事でも数回繰り返し,地 図上で自分がいる位置を理解させ,同時に基礎・基本となる部分の定着を図る必要がある。 小学校・中学校での学習だけでなく日常生活においても感じることができる地理と関わりの深い「夏が 暑い理由」や「風が吹く理由」など内容についても,生徒は具体的に答えることができないため,より身 近に感じられる例を用いて具体的に説明することで実感させるとともに,分かるという自信を持たせなが ら基礎・基本の定着と思考の定着を図る授業を進める必要がある。 質問に対しては答えにたどり着こうとする姿勢が見られるだけでなく,周囲との意見交換もすることが できるため,必要に応じて個別だけでなく,ペアやグループを作らせ意見交換や意見の集約をさせること で自己の考える材料にさせたい。 上記の生徒の実態を受けて,生徒が理解を深めるだけでなく,今まで学習してきた内容や他教科とのつ ながりを深く認識できるようにし,知識や技術を次の学習に活かせるようにするために,理科・家庭・農 業・世界史・国語・数学など本単元が関連する教科の先生方と指導状況や用語の使用・意味の教え方,生 徒の反応,理解状況などの内容を確認しながら進めていく。 そして,今まで学んできた個々の学習内容にはつながりがあり,それらを結びつけることで新しい視点 を持つことができるようにするため,本単元においては生徒が興味を持っている農作物を用いることで気 候が私たちの生活に与える影響を理解させたい。 本時では,前時までに作成した複数の資料の読み取りを通して,農作物の生産には気候が大きな影響を 与えていることに気づかせるとともに,身近な地域の農業の今後あり方について考えさせたい。 また,考えを発表させる際には,複数の生徒に発表させることで様々な答えに共通点があることに気づ かせるだけでなく, 提示する図形を変化させることでより正確な分布の特徴を把握できるよう配慮したい。 4 単元の評価規準 関心・意欲・態度 思考・判断・表現 技能 知識・理解 気候区分が人びとの生活のさま ざまな部分に影響を及ぼしてい ることに対して関心を持ち,事 例で取り上げた地域の学習に意 欲的に取り組むことができる。 事例として取り上げた地域の 気候区分と人々の生活を比較 することで,気候区分の違いが 人々の生活に及ぼす影響を考 察することができる。その上 で,身近な地域においてどのよ うな農作物を栽培できるか,気 候と結びつけて表現すること ができる。 事例として取り上げた資料の 中から学習に必要な情報を適 切に選択することができる。ま た,複数の資料を比較・関連付 けることができる。 事例として取り上げた地域の 気候区分と人々の生活の特徴 や相違点を理解するとともに, 地球規模でとらえる視点や方 法を理解し,それらの知識を身 に付けることができる。 関心・意欲・態度 思考・判断・表現 技能 知識・理解 気候区分と人々の生活に大きな つながりがあることに関心を持 つことができる。配布した資料 や提示する画像・映像から必要 な情報を見つけようと積極的に 取り組むことができる。 気候区分や人々の生活の世界 的な分布に特徴があることに 気が付き,資料から人々の生活 と気候区分の関係を考察する とともに,身近な地域において どのような農作物が栽培でき るか自分の考えをまとめ発表 することができる。 気候区分や人々の生活に関わ る資料の中から適切なものを 選び,地図に正確に表すことが できる。また,異なる資料の中 から共通点や特徴的な分布を 見つけだすことができる。 取り上げた気候区分や人々の 生活の分布につながりがある ことを理解することができる。 作成した資料とつながりの深 い資料を見つけ出し,その原因 を理解することができる。 学習活動における具体の評価規準 5 単元の指導と評価の計画 第1時 第2時 第3時 第 4/5 時 第6時 第7時 第8時 (本時) 学習内容 学習活動における主な具体の評価規準 評価方法 大気・海洋の循環 熱帯の生活 乾燥帯の生活 温帯の生活 亜寒帯・寒帯の生活 気候のまとめと 農作物の生産 気候と農作物 大気と海洋が循環するシステムを正しく書けたか (技能) 熱帯の気候と生活を理解できたか (関心・意欲・態度) 乾燥帯の気候と生活を理解できたか (関心・意欲・態度) 温帯の気候と生活を理解できたか (思考・判断・表現) 亜寒帯・寒帯の気候と生活を理解できたか (関心・意欲・態度) 主な気候の分布を理解できたか (知識・理解) 農作物の資料をもとに階級区分図を作成できたか (技能) 世界や身近な地域における,気候と農作物の生産地域のつながりについて自 分の考えを発表できたか (思考・判断・表現) ノート ノート,プリント ノート,プリント ノート,プリント ノート,プリント 小テスト プリント 発表,プリント 6 本時の指導 (1)題材名「気候と農作物」 (2)本時のねらい ①自分が作成した農作物の生産地域の階級区分図と気候区分の関係性を発表することができる。 ②ミラー図法から正射方位図法に変えることで,農作物の生産地域についてより正確な判断を下すことができる。 ③今までに学習した気候区分をふまえた上で,身近な地域で栽培できる農作物について考え,その根拠をふまえて発表するこ とができる。 (3)本時の評価規準 評価の観点 具体の評価規準 農作物の生産地域を表した複数の地図から共通 性を見つけ出し,発表することができる。 思考・判断・表現 身近な地域で栽培されている農作物を発表する ことができる。 Aとする具体的な姿 地図に書き込んだ農作物の生産地域の特徴を気 候との共通性をふまえた上で,仲間の意見を参 考にしながら的確な答えにたどり着き,発表す ることができる。 身近な地域の気候を活かして栽培できる農作物 にはどのようなものがあるか,発表することが できる。 (4)学習指導上の工夫 ①生徒が作成した農作物生産上位の分布図(上位10ヶ国)があっているか事前に確認し,必要に応じて修正させておく。 ②生徒に自分で作成した農作物の分布図から,作物が生産されている地域の広がりを考えさせる。 ③生徒に見せたい分布図を「ミラー図法」で黒板に投影し,考えを発表させる。 ④黒板に投影する図法を, 「ミラー図法」から「正射方位図法」に変え回転させて見せることで,農作物の生産地域が点ではな く面の広がりを持っていることに気付かせ,考えが変わったようであれば改めて発表させる。 ⑤気候区分をふまえた上で身近な地域で栽培される農作物について考えさせ発表させる。 ⑥生徒が自分と他人の考えを比較できるよう,何人かの生徒に考えを発表させる。 ⑦気候と農作物に関する生徒の意見をまとめ,今後の授業で扱う「世界の諸地域の生活・文化」でも気候だけでなく今までの 授業で学んできたことをふまえて取り組むよう伝える。 (5)準備物 ①教員:教科書,地図帳,統計資料,ノート,プリント,色鉛筆, 新聞(平成24年11月15日) ,オマーンの紙幣 パソコン(地図作成ソフト「ハイマップマイスター」 ・ペイント) ,プロジェクター, マグネット式シート,ホワイトボードマーカー(複数の色を用意) ②生徒:教科書,地図帳,ノート,プリント(統計資料,農作物上位10ヶ国を色分けした地図) (6)本時の展開 学習活動と主な発問(●生徒の反応) 導 入 10 分 あいさつ,出席確認 形態 指導上の留意点 一斉 大きな声であいさつし,お辞儀を揃えら れるまで繰り返す 就職活動に向け,いろんなことに興味を 持ち,教室に配布されている新聞を毎日 読むように声がけをする アジア予選なので,アジアにある国とい うヒントを与え,分からなければ索引を 調べるよう指示する お札がアラビア語表記であるだけでな く,ターバンを巻いた人物や砂漠,ナツ メヤシが描かれていることから西アジ アに導かせ,分からない生徒は周囲に聞 くよう指示する 教室に配布されている新聞のスポーツ欄を見せ ながら,一昨日(14日)あったW杯サッカー アジア予選日本対オマーン戦の話しをし,オマ ーンの場所を探させる ●全く違う地域を調べる ●地図帳の後ろの索引で調べる オマーンのお札を見せヒントを与える ●分かった生徒が分からない生徒に教える 展 開 30 分 発問:事前に自分が作成した分布図から, ナツメヤシの栽培が可能と思われる地域を 囲ませる 個別 ●北アフリカ・中東のみを囲む 評価 自分の考えをプリントに記入させる 生徒の考えを見てまわる ここではミラー図法の地図を黒板に投 影し,そこに生徒の考えを描かせる できるだけ多くの意見を出させる 発問:農作物の分布を地図上に示したらどのような広がりを持つか,共通点はあるのか考えさせる これから順に挙げる農作物の栽培可能な範囲をそれぞれの地図上で囲むように指示をする 一斉 【 オリーブ → カカオ → コーヒー → ブドウ 】 ●地図上を1つまたは複数の○で囲む ●主要産地にとらわれることなく,農作物の産 地が東西に広がっているという答えにたどり 着くことができる シートに投影していたミラー図法を正射方位図 法に変え,地図を回転させる ま と め 10 分 一斉 主な産地が狭い地域に偏っている農作 物から広いものに変えていく 再度,ナツメヤシから順にどのような栽 培地域となっているか生徒に前に出て きて発表させる 複数の農作物の生産産 地が気候区分の分布と 同じように東西に広が りを持っていることに 気がつき,発表するこ とができる 発問:農作物の分布が東西に広がりを持つことをふまえ,身近な地域の気候で可能な農業はどのようなものか発表させる ●米,小麦,とうもろこしなど,熱帯に限られ る農作物以外をあげる まとめ あいさつ 生徒の回答で確実に間違えていないも のは正答として認める 身近な地域で実施されている農業以外 に,今まで作成した地図から生育が可能 な農作物をあげさせる 異なる地域であっても「気候」という条 件が同じであれば,そこに共通点が生ま れることを説明し,今後扱う,世界の諸 地域においても共通点があれば同じよ うな様式が存在することを伝え,異なる 部分には工夫があるので,そういった部 分も意識しながら授業に取り組むよう 伝える (7)板書計画 関連 ページ を記入 ―板書― 気候と農産物(最初に記入) 扱う農作物名をあげる 問に対する生徒の回答を記入する まとめ 投影用マグネットシート 投影する内容 1.農作物生産上位10ヶ国(ミラー図法) ↓ 2.農作物生産上位10ヶ国(正射方位図法) 色 分 け の 例
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