佐藤陽一 先般の⽉例研究交流例会(2010.7.17)の報告「企業犯罪と特捜検察 井内顕策氏(前 横浜地検 検事正)」につき、個⼈メモをお届けします。丁度、6⽉ 17 ⽇法務省⼈事があり,検事総⻑以 下主要⾼検検事⻑の異動も公表され、今後の検察業務・管理等の運営にも⾼い関⼼が寄せられる 時期でした。間もなく、特捜部活動の諸問題が噴出する直前であり、「検察の歪んだ正義」が社 会問題化する直前の報告テーマでした。間もなく大阪地裁特捜部の内部告発、特捜検事逮捕事件 が顕在化するに及び、特捜部の正統性、検察の正義そのものが問われる事態になりました。小生 の私⾒メモは 7/17(土)の時点での個人的メモにすぎませんが、日本での「正義の味方」とし ての「検察の権威」を俎上にあげる絶好の機会となりました。 以下の「私⾒メモ」は個⼈的な偏⾒、独断も含んだものとの懸念もありますが、⼀つの視点、意 ⾒としてお届けします。 ⽇本経営倫理学会会員 佐藤陽一 ***** 研究交流例会(2010.7.17 土)における検察官 OB の講演を聞いてー私⾒メモ (2010.7.20)ー 講演テーマ:「企業犯罪と特捜検察」 講演者:井内顕策(前横浜地検検事正 10/4 退官、中央大学大学院教授/現在、八重洲公証人役 場 公証人) 講演を聴いての私⾒メモ(2010.7.21): 検察という世界は、組織内での問題提起、組織内での⾃由活達な討議、時に外部の有識者を意加 えた場での批判的意⾒を加えた討議(公式ないし⾮公式)が許されているのだろうか。はたまた、 検察という組織防衛のため、外部へ漏れる意⾒は、遮断し、専ら専守防衛に努め、自らを正当化 した正義の旗手として、 「上命下服」を堅持する組織体であることを自任しているのであろうか。 個々の事件処理の背景に就き公式⾒解以外は守秘義務を堅持し、専ら個⼈⾒解は公開できずに墓 場まで持ってゆくという…果たしてこのような保⾝的態度・姿勢で良いのであろうか?・・・ 顧みるに国家間の外交取り決めの公文書においてすら 30 年経過後は公開することが、了解事項 である。このことは取り決め時の採択の妥当性、時間経過後の検証、次の事態への新しい取り決 めへの選択肢への提供材料として活⽤されるべきものであるという、国際政治面での過去からの 贈り物である。 ⽇本の検察は⾏政の法務省を超える存在ともいわれ、強⼤な権⼒を確保している。その表徴的組 織存在が「特捜」である。全国の3地検(東京、大阪、名古屋)にのみ組織認可された「特別捜 査部」がある。特捜部の取り上げる案件は政・官・業の何れにも特定されていない。専ら特捜部 の選択・指定に委ねられている。ここに⼀つの検討すべき選択・問題がある。それは公⾦に関わ る不祥事案件に限定・特化すべしという意⾒である。公⾦の問題に限定するのは、⽇本の従来の ⽴法府、⾏政府に関わる不祥事案件の処理は極めて、不透明であり、しばしば権⼒者側に有利な 処分で終息させられている。所謂罰則規定が⽢い、形式的な罰⾦刑が多い。国会議員であれ、⾏ 政の実務管理責任者であれ、其の処罰は「⼀罰百戎」でなく「⼀罰⼀戎・百戎」をめざすべきで あろう。⽇本の検察制度が期待されているのは不祥事、特に政・官の巨⼤な権⼒の⾏使に関わる 監視・監督機能である。そのためには従来の権⼒構造から独⽴した第三者機関による「政・官公 正・公平・公開裁判所」ともいうべき機関を新設すべきである。ここでは裁定と同時に強⾏規定 を付与する。戦後新憲法のもとでの検察庁法等を再検討し、新しい公共に即応した司法体制に取 り掛かるべきである。すでに海外の事例も多くつたえられている(⽶国…独⽴検察官制度、連邦 選挙委員会(FEC)、フランス…腐敗防止中央局、イギリス…議会コミッショナー任命、基準・ 特権委員会、懲戒審判所)。 思うに⽇本の検察制度が国家権⼒を超えるというのは明らかに検察官僚の独善であり、改めて、 検察を「公正・公平・公開」の三原則のもとに⾒直し、再検討すべき時期にあるという認識が求 められている。これは検察のみの問題でなく、日本の司法の在り方の問題でもある。日本の司法 の問題は「司法試験制度」そのものの質の問題から取り掛からなければなるまい。司法試験が定 員制を固辞しているが、他方、点数制(75 点以上は無条件に合格)とする案もある。ここでは 採点の公正・公平・公開が求められよう。採点する側の質の問題も検討課題である。 思うに、今回、検察庁の OB(元東京地検特捜部⻑)の⽣の声を聞いたが、正直なところ、検察 という組織が「正義」にどう対応しているのか、「上命下服」を旨とする組織体制の中で、上下 の意志疎通、⾃由适達な意⾒交換が⾏われ、⾃⼰の組織を活性化する職場運営が⾏われているの だろうか等いささか疑念を感じていた。今⽇の講師(井内顕策⽒)の発⾔からは組織を守る姿勢 は感ぜられるが、改革・創造への姿勢は希薄であつた。果たして、正義の旗手として如何かとの 懸念が強かった。私⾒に独断と誤解がなければよいが…改めて検察の「正義」とは…を問いたい。
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