セクハラ・パワハラ公開講座 ∼ 発生させないために ∼ カウンセリングストリート株式会社 < 本日の講座のねらい > ハラスメントの無い職場をつくるためには ◆セクハラ・パワハラとは何かを理解する。 ハラスメントに法的な定義があるのか、法的な罰則はあるのか ◆企業としては何をしなければいけないのか ・会社として取り組まなければならないことは何か ・義務なのか、しなかった時に罰則はあるのか ◆現場でのハラスメントを無くす為に何をすれば いいのか ・社員にハラスメントの定義を理解させるだけで無くなるのか ・社員に対してどのような啓発をすればいいのか まずは具体的事例を考える ◇これはハラスメント? 1 「馬鹿!」、「お前は駄目人間だ!」、などと 人格や尊厳を否定するような言葉で叱った。 2 お酒の席などで社内外関係者になんらか の性的な言動を行った。 3 他のメンバーと同じ事をしているにも関らず、 複数回に渡って、ある特定のメンバーだけ を叱った。 まずは具体的事例を考える ◇これはハラスメント? 4 5 食事に誘ったが、都合が悪いと言われた ので、少し時間をおいて何回か誘った。 結婚して1年くらい経った、比較的親しい 人がいたので、「子供は?」「まだ作らない の?」など、冗談半分で何回か聞いた。 法律で定義されるセクハラ、パワハラとは? 条文から考えられるセクハラとは? ◇ 男女雇用機会均等法第11条 事業主は、職場において行われる性的な言 動に対するその雇用する労働者の対応によ り当該労働者が①その労働条件につき不利 益を受け、又は当該性的な言動により当該 労働者の②就業環境が害されることのない よう、当該労働者からの相談に応じ、適切に 対応するために必要な体制の整備その他の 雇用管理上必要な措置を講じなければなら ない 条文から考えられるセクハラとは? 【対価型セクシュアルハラスメント】 職場において行われる性的な言動に対する その雇用する労働者の対応(拒否や抵抗等) により当該労働者が ①その労働条件につき不利益※を受けること ※解雇、降格、減給、その他、労働契約の更新拒否、昇進・ 昇格の対象からの除外、客観的に不利益な配置転換等 条文から考えられるセクハラとは? 【環境型セクシュアルハラスメント】 職場において行われる性的な言動により 当該労働者の②就業環境が害される※こと ※就業環境が不快なものとなったため、能力の発 揮に重大な悪影響が生じる等、当該労働者が就業 する上で看過できない程度の支障が生じること(就 業環境が害されたとする一定の客観的要件が必 要) パワハラとは? 職権(パワー)を背景に、本来の業務の範疇を超えて人格と 尊厳を侵害する言動を行い、部下の就労環境を悪化させたり 雇用不安を与えること。 ※中央労働災害防止協会実施「パワー・ハラスメントの 実態に関する調査研究報告書」(H17.8)内の定義より 裁判では言動「内容の程度」ではなく、「目的(意図)」を重視。 一つ一つの言動に因らず、一連の言動の目的(意図)が 業務の範疇を超えた私的なものはパワハラと認められる。 ※判例:A保険会社上司(損害賠償)事件より 業務の範疇を超える = 非パワハラ! 私的な嫌がらせ等の 目的(意図)が認められる = = 業務の範疇 問題のある 一連の言動に、、、 = 指導・叱咤激励等の 目的(意図)が認められる パワハラ! しかし「パワハラ」でなくとも、、、 = 指導・叱咤激励等の 目的(意図)が認められる 非パワハラであれど、、、 裁判で、表現そのものが 名誉毀損や不法行為、等であると認められると、 「加害者」及び「企業」に損害賠償命令、並びに 刑事罰が下る可能性がある。 (参考)ハラスメント適用法律 加害者に適用 民法 不法行為による損害賠償(709条) 企業(使用者)に適用 民法 財産以外の損害賠償(710条) 債務不履行による損害賠償(415条) 使用者等の責任(715条) 名誉毀損における原状回復(723条) 刑法 強制わいせつ(176条)※ 刑法 業務上過失致死罪(211条) 他 強姦(177条)※ 傷害(204条) 暴行(208条) 侮辱(第231条) 名誉毀損(230条) 他 ※セクハラの場合に適用 判断 社会通念 客観的状況 管理職・社員の認識に ずれはないか 教育・研修の必要性 ハラスメントを取り巻く社会動向 ハラスメントを取り巻く社会動向 ◆1999年◆ ◎改正男女雇用機会均等法施行 [性的嫌がらせへの配慮義務] ◎「事業主が配慮すべき事項についての指針」 施行 正式名称:事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理 上配慮すべき事項についての指針 ◎“パワーハラスメント”という言葉が初めて登場 ◆2006年◆ ◎ “パワー・ハラスメント”という言葉が裁判 で用いられる ◆2007年◆ ◎改正男女雇用機会均等法施行 ・配慮義務→措置義務 ・男性への性的嫌がらせも対象 ◎「事業主が講ずべき措置についての指針」 施行 正式名称:事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して 雇用管理上講ずべき措置についての指針 ◆近年◆ ◎先述と並行してセクハラ・パワハラに関する 裁判例が増加 企業のハラスメント防止に関する責任が明確に 最新のハラスメント関連の判例とは? セクハラ判例 ◇ 和歌山セクハラ事件 (H10:大阪高裁) 「青果卸売会社」に勤務していた女性Oさんに 対し、取締役Uら4名が日常的に、「おばん、 おばば、ばばあ、くそばば」などと呼び、すれ 違いざまにOさんのお尻や胸などを衣服の上 から触ったり、性的な言動で露骨にからかっ たり、バインダーで原告の頭部を叩いたりした 一連の行為は人格を侵害する行為として、U ら4名の共同不法行為と会社の使用者責任を 認め、それぞれに損害賠償の支払いを命じた。 パワハラ判例 ◇名古屋南労基署(中部電力)事件 (H19 名古屋高裁) 高裁は、Aさんが、主任昇格に関連して、上司で ある課長から業務の範疇を超えた指導を受け たことが原因でうつ病に罹患し、焼身自殺をし た事実を認め、その自殺は業務に起因するもの であるとして、遺族補償年金・葬祭料不支給処 分の取り消しを命じた。 ◇判決文より F(課長)は、Aに対して「主任失格」、「おまえな んか,いてもいなくても同じだ。」などの文言を用 いて感情的に叱責し、かつ、結婚指輪を身に着 けることが仕事に対する集中力低下の原因とな るという独自の見解に基づいて、Aに対しての み、8、9月ころと死亡の前週の複数回にわたっ て、結婚指輪を外すよう命じていたと認められる。 これらは、何ら合理的理由のない、単なる厳し い指導の範疇を超えた、いわゆるパワー・ハラ スメントとも評価されるものであり----- セクハラ・パワハラ判例 ◇ アイフル事件 (H18:京都地裁) 消費者金融大手「アイフル」の男性課長Oが、部 下Kさんに対して、居酒屋での食事会で体を 触ったり、「君の悪いうわさが出ているぞ。ここ にいられなくなるぞ」などと圧力をかけたりなど したことより、Kさんが不快な思いを募らせて体 調を壊したとして、同社と課長に慰謝料や未払 い賃金などの支払いを命じた。 パワハラに関連する判例 ◇ 静岡労基署長(日研化学)事件 (H19:東京地裁) 「日研化学」(現・興和創薬、東京都中央区)の静岡 営業所に勤務していた男性Hさん、当時(35)が自殺 したのは、上司の暴言などが原因になったとして、労 災を認めなかった静岡労働基準監督署に処分取り消 しを命じた。 裁判では、上司の言動を「男性の人格、キャリアを否 定する内容で過度に厳しい」と指摘。その上で「男性 の心理的負荷は、通常の上司とのトラブルから想定 されるものよりも重い」と判断し、「男性は仕事のため に鬱(うつ)病になり自殺した」と結論付けた。 ◇判決文より 〔1〕存在が目障りだ、居るだけでみんなが迷 惑している。おまえのカミさんも気がしれ ん、お願いだから消えてくれ。 〔2〕車のガソリン代がもったいない。 〔3〕何処へ飛ばされようと俺はHは仕事しない 奴だと言い触らしたる。 〔4〕お前は会社を食いものにしている、給料 泥棒。 〔5〕お前は対人恐怖症やろ。 ・・・・(略)・・・・ HとP係長の関係 ①担当の薬局長や医師に難しい人が多い(H) →至極普通の人であった。また、Hが5年担当して いたのに、医師の顔や名前を知らない、知った医 者がいないのに驚く(同行したP係長) ②P係長が新製品説明会を開く約束を取り付け、医 師らに出席の挨拶をするように指示(P係長) →1週間後に確認するものの訪問はしていない(H) ③一年中同じ背広を着て、夏など汗がにじんでいて も替えない。背広にフケがついている、口臭がする など、見かねて注意するも改善しない(P係長) 判決から P係長のことばは、10年以上の・・・ Hのキャリア・・・人格、存在自体を否定・・・。 P係長がHに対し嫌悪の感情を有していた・・・。 (中略) 上司の側から、表現の厳しさに一定の悪感情 を混じえた発言を、何らの遠慮、配慮なく 受けるのであるから、そこには、通常想定 されるような「上司とのトラブル」を 大きく超える心理的負荷があるといえる。 企業としてすべきこととは? 企業のセクハラ・パワハラ防止義務 民法第715条 使用者責任 企業は、社員が不法行為を起こさないよう 管理監督する義務を負っている。 男女雇用機会均等法第11条 前 述 ハラスメント防止に関し企業がすべきこと ◆事業主の方針の明確化及びその周知・啓発 ◆相談に応じ、適切に対処するために必要な 体制の整備 ◆職場におけるハラスメントに係る事後の迅 速かつ適切な対応 ◆併せて講ずべき措置 ハラスメント防止に関し企業がすべきこと ◆事業主の方針の明確化及びその周知・啓発 ①ハラスメントの内容及びハラスメントがあっては ならない旨の方針を明確化し、全労働者に周 知・啓発する 例: ・就業規則、その他の服務規律等を定めた文書 を整える ・社内報、パンフレット、社内ホームページに 掲載する ・研修、講習会等を実施する ハラスメント防止に関し企業がすべきこと ◆事業主の方針の明確化及びその周知・啓発 ②ハラスメントを行った者に対して、厳正に対処す る旨の方針及び対処内容を定め、全労働者に 周知・啓発する 例: ・就業規則、その他の服務規律等を定めた文 書でハラスメントの懲戒規定を定め、周知、 啓発する ・ハラスメントが、現行の就業規則、その他の 服務規律等において定めている懲戒規定の 対象となる旨を明確にし、周知、啓発する ハラスメント防止に関し企業がすべきこと ◆相談に応じ、適切に対処するために必要な 体制の整備 ③相談に応じ、適切に対処するために必要な体 制の整備 例: ・対応する担当者を定める ・対応するための制度を設ける ・外部の期間に相談へ対応を委託する ハラスメント防止に関し企業がすべきこと ◆相談に応じ、適切に対処するために必要な 体制の整備 ④対応者が、内容や状況に応じ、適切に対応でき るようにする。現実に生じているだけでなく、発 生の恐れがある場合、該当するか微妙な場合 でも相談、対応できるようにする 例: ・担当者と人事部門とが連携を図れる仕組みを 作る ・留意点などを記載したマニュアルをあらかじめ 作成し、それに基づき対応する ハラスメント防止に関し企業がすべきこと ◆職場におけるハラスメントに係る事後の迅 速かつ適切な対応 ⑤事実関係を迅速かつ正確に確認する 例: ・担当者、人事部門等が相談者及び行為者の 双方から事実関係の確認をする ・場合によって第3者からも事実関係を聴取する ・確認が困難な場合、調停の申請する ハラスメント防止に関し企業がすべきこと ◆職場におけるハラスメントに係る事後の迅 速かつ適切な対応 ⑥ハラスメントが確認できた場合、行為者・被害 者に対する措置を適切に行う 例: ・行為者に対して、規定等に基づき、必要な懲戒 その他の措置を講じる ・状況に応じ、被害者と行為者の関係改善の 援助をする ・中立な第三者機関を使った措置を講じる ハラスメント防止に関し企業がすべきこと ◆相談に応じ、適切に対処するために必要な 体制の整備 ⑦改めてハラスメントに関する方針を周知、啓発 する等の再発防止に向けた措置を講ずる 例: ・社内報、パンフレット、社内ホームページ等を 通して方針や懲罰について周知する ・研修、講習会を実施する ハラスメント防止に関し企業がすべきこと ◆併せて講ずべき措置 ⑧相談の対応、事後の対応において、相談者、行 為者等のプライバシーを保護するために必要 な措置を講じる。またその旨を周知する。 例: ・プライバシーの保護のためのマニュアルを作り それに基づき対応する ・担当者に、プライバシー保護の為の研修を行う ハラスメント防止に関し企業がすべきこと ◆併せて講ずべき措置 ⑨相談又は事実関係の確認に協力したことで、 不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め 周知、啓発する 例: ・就業規則、その他の職務規律等を定めた文書 に上記内容を記載し、周知、啓発する ・社内報、パンフレット、社内ホームページ等に 上記内容を記載し、周知、啓発する 管理職にハラスメントをさせないためには? 会社 ・ハラスメント防止の方針制定 ・相談、苦情に対する相談窓口の設置 管理職 管理職がそれらを十分に認知し、 具体的にどのような行為がセクハラ・パワハラと なり得るかを実際の現場場面に即して理解し、 防止に努めることが必要 管理職・社員教育が必須 まずは担当者として具体的該当事例を理解 ◇これはセクハラ?パワハラ? ー基礎編ー 1 「馬鹿!」、「お前は駄目人間だ!」、などと 人格や尊厳を否定するような言葉で叱った。 2 お酒の席などで社内外関係者になんらか の性的な言動を行った。 3 他のメンバーと同じ事をしているにも関らず、 複数回に渡って、ある特定のメンバーだけ を叱った。 4 5 食事に誘ったが、都合が悪いと言われた ので、少し時間をおいて何回か誘った。 結婚して1年くらい経った、比較的親しい 人がいたので、「子供は?」「まだ作らない の?」など、冗談半分で何回か聞いた。 相手は、、、 4 業務とは関係のない食事に誘われ、いや だから断わったにも関らず、その後も何回 もしつこく誘われた 5 それほど親密にしているわけではない人 から、会社の業務とは全く関係がないのに、 プライベートな結婚生活について、質問さ れ、それが執拗に何回も続いた と思っているかもしれない、、、 ◇これはセクハラ? 1 2 3 独身男性に対し、「結婚しないんです か?」としつこく聞いた。本人は嫌がって いるようだった。 妊娠した女性社員に対し、「頑張りました ね。」、「また育児休暇を取得するんです か。」と嫌味を言った。 ある女性社員に特段な意図もなく年齢を 聞いた。 6. 4 業務後のカラオケで異性の部下に嫌がる のにデュエットを強要する。 毎日のように、部下に対し、その日の服装 5 や髪型についてコメントする。嫌がられて いる感じはない。 6 「そういう態度は男らしくないだろう」と叱る。 再度確認!セクハラとは? 職場において行われる性的な言動に対するそ の雇用する労働者の対応(拒否や抵抗等)に より当該労働者が ①その労働条件につき不利益を受けること 又は当該性的な言動により当該労働者の ②就業環境が害されること 再度確認!パワハラとは? 職場において、 職務上の権力(パワー)を背景にして、 ①本来の業務の範疇を超えて、人格と尊厳を 侵害する言動を行い、結果としてその社員の ②働く環境を悪化させたり、雇用不安を与えた りする(身体的・心理的影響が出て、就業が困 難になったり辞めざるを得ない状況になったり する)こと。
© Copyright 2024 Paperzz