8. 混乱・バベルの塔

8.
混 乱 ・ バ ベ ルの 塔
畠山
拓
黎明に は間 があっ た。黒から 濃い青 へ と上空の 色は 変わっ ていく 。国
会議事堂 の影 が次第 に輪郭 を現し た。 空 にそびえ る巨 大な建 造物だ 。
天にと どく ほどの 理想を 託され た建 造 物。国会の 周辺 は人の 影はな い。
一羽の 烏が 、暗 い街路 樹の枝 から路 上 に舞い降 りた 。こ んなに 暗いの
に。一羽 の雀 が居た 。まだ 薄暗い のに 。
烏Aは くぐ もった 声で鳴 いた。 雀B は 細い声で 鳴い た。
「ああ、 又せ わしな い、都 会の一 日が 始 まるな」 と、 雀Bが 言った 。
「まった くだ 。くそ 人間 ど も。群 れた が るのだ」 と、 烏Aは 言った 。
「あれを 造る 為だろ う」
「出来る もの か。あいつ らには 理想や 目 標など無 いの だ。群れて 騒ぎま
わってい るだ けだ」
「居心地 のい い椅子 で、首 を垂れ て居 眠 りか」
「儀式み たい なもの さ」
「それで も、 法律が 造り出 されて いく 。 悪法がね 」
「あ法 、律 がね 。あれ が作り 始めら れた ときの崇 高な 理想は 何処に 行っ
たのか」
「いや、初めか ら無 かった んだ。ただ、やたらに 高見 にのぼ りたか った
だけじゃ ない か」
「目的は 何な んだ」
「強い神 の国 さ」
「そんな もの を作っ てどう する積 りな ん だい」
「 ど う も 、コ ウノト リも無 いね。 唯、 天 を目指し たか ったの さ」
「数は力 だ。 カー閣 下、カ ーカー 赫赫 し かじか」
「血ュン 血ュ ン、チ ェンジ 、チャ ンス 、 チャンス でア リリン ス」
「意味わ かん ねー。 アホ- 、嗚呼 、あ ほ ー、法」
「ちんち く、 律。ち ゅん、 ちゅん 、ち ん にゅう」
烏Aと 雀B の話は 、何処 かおか しくな っていた 。旧約 聖書、バベル の
塔の話で は 、神が 言葉を 乱して 、天 まで とどこう と建 設され た塔の 完成
を阻んだ と言 う。神の 知恵 と言う わけか 。ちなみ に、
「 バベ ル」とは「混
乱」と いう 意味ら しい 。私の 好きな スイ ス の画家 、ボ ッシュ の絵画 に「 バ
ベ ルの塔 」が ある 。螺旋 階段の ついた 、巨大な構 造物 だ。歴 史は 螺旋階
段のよう だ、 という 思想も あるよ うだ 。