11.身体化障害を合併した境界性人格障害症例への

日本心身医学会北海道支部
第29回例会
日時:平成 16 年 2 月 29 日(日)
13:00∼
場所:北海道大学医学部臨床大講堂
11.身体化障害を合併した境界性人格障害症例への内観療法
札幌太田病院
○太田健介、太田秀造、響
徹、阿部一九夫、池田明穂、太田耕平
始めに:身体化障害を合併した境界性人格障害症例に対し病棟内・内観療法を施行し
(薬物療法併用)、良好な結果を得たので報告する。
症例:30歳代、女性、同胞2人。両親の離婚、肥満によるいじめられ等の幼少時心
的外傷体験あり。20歳前後より過食、多量服薬、リストカット、衝動買いや性的逸
脱行為等を認めたが、20歳代後半からは比較的安定。
経過:X年某月に胆石手術目的で某病院に入院。術後合併症のため入院は数ヶ月に及
んだ。退院決定後より不安、不眠及び嘔気嘔吐が出現。本人は入院継続を希望したが、
身体検索上異常なく、半強制退院となった。退院後一ヶ月経過しても症状は続き、当
院へ紹介入院。当初は終日床上で苦痛を訴えて大声で泣き叫び、欲求不満耐性低下も
あり、著しく退行した状態であった。病棟内・内観療法も中途で止め、第9病日に退
院。しかし、退院後一回目の外来では身体化症状は消失しており、
「内観にて前医職員
に心にケアを含め大変世話になっていた事実の想起から“甘えていた”自分に気付い
た」と本人は話す。退院 11 ヶ月後迄身体化症状の再発なく経過している。
考察:身体化症状は孤独や葛藤の表れと言われるが、本症例は内観療法にて主に前医
職員との関係を客観的視点で再認識した結果、孤独や葛藤が軽減し、症状が軽快した
と考えられる。内観療法のヒステリーへの有効性はよく言われているが、身体化障害
に対しても短期間で有効であると思われる。