課題曲誌上レッスン

課題曲誌上レッスン
第27回ピアノ
・オーディション予選課題曲
【JI・JII・A部門より】
岸 邉 眞知子(東京音大専任講師)
課題曲記号と曲目
※誌面の都合上、一部の曲を除きます。
J11(P.31)クレメンティ:ソナチネ ト長調 Op.36-2 第3楽章
たけくに
J14(P.32)平吉毅州:「南の風」より 1.夕顔の花が咲いたよ
J22(P.32)ブルクミュラー:「25の練習曲」Op.100より 16.小さな嘆き、17.おしゃべり
誌
上
レ
ッ
ス
ン
J24(P.34)三善 晃:「音の栞」より 小さい舟唄、おはようヤマガラ
A2(P.35)ショパン:マズルカ 変ロ長調 Op.7-1
A3(P.36)シューマン:子供のための3つのソナタ 第1番 Op.118a
第2楽章 主題と変奏
みちお
A4(P.36)間宮芳生:「星の国から」より 3.マジャールの歌変奏
注:□内の数字は小節番号
音楽は、音を楽しむと書きますが、そのためには まず楽譜に書いてあることを正確に読んで表
現することを心がけ、次にあげる具体的な項目に分けて考えるとより良い仕上がりにつながると思
います。
1.テンポの設定・・・速度記号を確認し、その曲に必要な速度で演奏をする。
2.フレーズ・・・どこまで一息で弾きたいか、また弾いたら良いかを考える。
3.ブレス・・・フレーズとフレーズの間に少しのブレス、たくさんのブレス等どの位したら良いかを
考え、状況に応じた間を取る。
4.強弱・・・ピアノを小さく、フォルテを大きく表現することによって表情の幅を広げる。
5.バランス・・・伴奏を小さくして、メロディを響かせるのが大切なことと、ともにメロディを弾く
手が重音のとき、大切なメロディラインが響くように指先のコントロールをする。
にご
6.ペダル・・・ペダルを使うときはハーモニーを考え、
音が濁らないように足のコントロールをする。
7.聴く・・・どのラインが響くと美しいか、そして弾きたい音が出せているか良く音を聴きながら演
30
奏をする。また、そのときにハーモニーが立体的に響いているかを確認する。
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8.録音・・・自分の考えていることや思っていることが弾けているかを、録音をして楽譜を見ながら
わ
チェックをする。また、作曲者の生存時の社会背景等を考えると、音楽のイメージが沸
いてくると思います。
そして、いろいろな表現をしたつもりでも本番では80%くらいしか聴衆に伝わらないケースがあるの
で、考えているよりは、たくさん表現するように心がけてください。
J11
クレメンティ
(1752∼1832):ソナチネ ト長調 Op.36-2 第3楽章
明るく元気に、楽しく軽やかに演奏しましょう。
そろ
スタッカートがたくさん出てきますので、指先をしっかりさせ、粒を揃えて弾けるように練習してく
ださい。
スタッカートのところだけ取り出して練習してみるのも良い方法かと思います。
最初の4小節に対し、次の4小節は答えのように弾きましょう。
13 右手、弱拍のDが大きくならないように気をつけて、メロディをバスと一緒にハーモニーを感じな
□
がら歌ってください。
32 □
33 はフォルテでしっかりと少し威張った感じで、□
34 □
35 は少し表情を変えて、流れを感じてレガー
□
トで弾きましょう。
41 からは優しい感じで。そして左手は1拍目のスラーを大切に、2拍目3拍目のスタッカートはかす
□
れたりしないように、しかし大きくならないようにはねてください。
45 からは□
41 の形に対して少しおしゃれな感じで弾きましょう。
□
同じ形が少しずつ形を変えて出てきますのでいろいろと表情を変化させてください。
41 ∼□
56 と□
57 ∼□
74 )
(例:□
31
J14
平吉毅州(1936∼1998):「南の風」より 1. 夕顔の花が咲いたよ
この曲は声部により音符の長さが違うことが多いので気をつけましょう。
優しい感じで、2小節一つで会話をしているように。
4 左手FとCをのばしながらAからBへとレガートに弾けるように。
□
6 からのメッゾスタッカートは短すぎないように。そして書かれている<、>等の表情を□
8 まで
□
たっぷり表現しましょう。
13 4拍目の右手Gの音、2の指はのばしてFの1の指だけ上げ、次に□
14 のFとAの1と3を同時に弾
□
つな
くと、指で繋がりレガートになると思います。
次の小節も4拍目から4を残して1だけ上げましょう。
19 静かな感じで落ち着いた雰囲気を表現し、その後たっぷりブレスをしてからもとのテンポに戻りま
□
しょう。
J22
ブルクミュラー
(1806∼1874):「25の練習曲」Op.100より
16.小さな嘆き
最初は、少し悲しげに始め、左手の16分音符は大きくならないようにハーモニーを感じながら演奏し、
右のメロディを4小節一つに歌いましょう。
9 スタッカートは右手外声の指先をしっかりさせ、ソプラノのメロディを次の小節のDまで1拍目3
□
拍目の拍を感じながら、小さくからクレッシェンドしましょう。
9 、□
10 の1つの形が□
11 、□
12 へは少し希望が出てきたかのような表情で、□
13 に向か
小さくピアノで出た□
いましょう。
13 左手の2拍目4拍目は粒を揃えて、気持ちが繋がるように弾いてください。
□
32
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最後の小節、右から左にラインが移るときに繋ぎ目のところの粒が不揃いにならないように、気をつ
けてそっと終わりましょう。
17.おしゃべり
明るい感じで楽しそうに弾きましょう。
右手の和音のメロディをきれいに響かせて、出だしのE―Gのタイの音がすぐなくなってしまわない
ように響かせながら、左のスタッカートを次の小節に向かって歌い、6小節一つに弾きましょう。また、
2 の右手E、□
4 のFの4分音符の長さを正確にのばしてください。
□
7 からは楽しそうな感じで軽く、そして□
15 からはゆったりした感じでレガートに弾いてください。
□
連打音がたくさん出てきますが、かすれないように小さな音でも鍵盤の底までしっかりと打鍵しまし
ょう。
指を変える連打のときは 次の指の準備を早くするとミスが少なくなると思います。また、連打後に
音がとぶときも同様に、次の音の場所を予測して手の形の準備を早くしましょう。
最後の5小節は楽しげに、元気よく弾きましょう。
33
J24
三善 晃(1933∼ ):「音の栞」より
小さい舟唄
この曲は左手で舟唄の感じを表現し、ゆったりと流れを感じながら、右のメロディをたっぷり歌いま
しょう。
また、ペダルの使い方に気をつけて、濁らないように良く音を聴きながら演奏してください。
1 左手3拍目を切るときに乱暴にならないように、5の指にも気持ちを入れて4拍目との粒を揃えて
□
2小節一つに歌いましょう。
3 からのメロディはきれいな音で良く響かせて、テヌートを大事に表現しましょう。
□
4 タイの次の音Fisが強くならないように丁寧にレガートで、そして□
5 のテヌートがついている音も
□
大切にしてください。
11 から少し表情を変えてゆったりと、たっぷりめに歌いましょう。
□
14 の表情の変化をたっぷりと、そして□
16 の4拍目はハーモニーを立体的に感じ、次の小節のCisへと
□
解決させ、心から落ち着きましょう。
27 タイの後、弱拍からのスラー、アーティキュレーション、長さを正確に表現し、最後の小節の右手
□
はハーモニーを感じながらAをきれいに響かせましょう。
34
<特集>課題曲誌上レッスン
おはようヤマガラ
休止符、アクセントがたくさんあるので、正確に表現しましょう。
どこを強くしたら良いのか、スラー、休符をどのようにしたら正しい表現なのかを丁寧に整理しまし
ょう。ゆっくりめの数字でメトロノームをかけて練習すると理解し易いかと思います。
1 1拍目はテヌート気味に。2拍目はエネルギーを失わずに、しかし乱暴にならないように軽く弾き
□
ましょう。
2 左手が強くならないように。右手のアクセントを大事に8分音符の拍を感じて、小鳥がさえずって
□
3 の最後の音まで一息に弾きましょう。
いるかのような感じで□
13 から場面が変わったかのように、少し表情を変えて。そして□
18 クレッシェンドからフォルテの□
20 最
□
後の音まで一息に運びましょう。
最後2小節は一つに軽く、そして最後の音は丁寧にそっと終わりましょう。
A2
ショパン
(1810∼1849):マズルカ 変ロ長調 Op.7-1
ポーランドの民族舞踊(クヤヴィヤク、マズル、オベレク)に基づいて50曲以上作曲されたマズルカ。
1830∼1831に作曲されたOp.7-1 は、明るく華やかでお祭りの踊りという感じの曲です。
1段目の、次に休符があり切らなければならない8分音符とスタッカティッシモがついている8分音
符との奏法が同じになってしまわないように気をつけましょう。
3 のフォルテッシモから突然に□
4 へのピアノ、
□
そしてスケルツァンドの表情の変化を表現してください。
25 からは優しい感じで、そして左手はレガートから□
29 にはスタッカートになり、右手も2小節単位で
□
表情が変わる違いを表現しましょう。
32 3拍目のGesは大切に聴いてください。
□
45 からは東洋的な感じが出てきます。表情が変わる曲の雰囲気を、そしてルバート等、楽しんで演奏
□
してください。
35
A3
シューマン
(1810∼1856):子供のための3つのソナタ 第1番 Op.118a
第2楽章 主題と変奏
こぼんのう
子煩悩で、子供のための作品が比較的多いシューマンは、このソナタもシューマンの3人の娘のため
に1853年に作曲されました。
2楽章は主題と5つの変奏曲でできていますので、テーマがどのように発展していくのかを楽しんで
ください。
最初の6小節の付点8分音符が短くならないように長さを正確に演奏しましょう。
3 は色合いの変化を楽しみ、□
4 のフォルテの後ブレスを
2小節一つに歌い、同じメゾフォルテながら□
5 で落ち着いた表情にしてください。
し、突然のピアノの□
7 からのソプラノのメロディは内声とのバランスを考えながら、指が離れないようにレガートで弾き
□
ましょう。
このような形を練習するときは、まずメロディだけ弾いてみてラインを確認してください。
次に内声だけ練習して、最後に指の分離を意識しながら、内声が大きくなってしまわないように注意
して練習してください。
19 は右手5,4が残ってしまわないように、弾いた後きちんと上げてください。
□
右手4分音符の1,2,1は繋げて弾けるように。
3拍目のEは4拍目には上げて、4拍目のタイのHと左のGの音を聴いてください。
25 から転調しますので少しだけ気持ちを明るい感じに変えて、そして付点が出てきますので□
24 までの
□
3連符との変化を正確に弾いてください。
31 からも音符の長さがいろいろ出てきますのでメロディだけでなく伴奏も丁寧にアーティキュレーシ
□
ョン、スタッカート等、正確に弾きましょう。
A4
間宮芳生(1929∼ ):「星の国から」より 3. マジャールの歌変奏
この曲は速度記号が何度も変わるので、テンポ、表情に気をつけましょう。
最初の2小節のスタッカート、両手とも切るときに乱暴にならないように。そして次の音との間に音
楽があるように歌いましょう。
次の小節に向かって、少しだけクレッシェンドすると歌い易いかと思います。
9 左手、4分音符のスタッカートにテヌート(メッゾスタッカート)がついているので、十分に響か
□
せましょう。
19 Allegroの部分は□
20 に出てくる左のラインも意識して2人の人が会話をしているかのように歌って
□
ください。
36
<特集>課題曲誌上レッスン
43 poco stringendoのところは、2小節単位に少しずつ速くなるように、左手の和音変化も楽しみな
□
がら運ばせてください。
51 からはフォルテ、ピアノの変化がたくさん出てきますが、フォルテが乱暴にならないように。また
□
ピアノがかすれないように気をつけながら音楽の流れを大切にしてください。
74 からは16分音符がころばないように。
□
各指に同じ重みがかかるように、ゆっくりのテンポで丁寧に確認をし、その重みの移動によってレガ
ートになるように練習してみてください。リズム練習等も有効だと思います。
82 FisがDとくっついてしまわないように、Dの意志をはっきりさせ、テヌート気味に弾き、装飾音
□
をおしゃれに表現してください。
初めに装飾音なしで練習してから装飾音を入れると、両方の音に意識が出て、どのように装飾音を弾
こうかとイメージが沸くと思います。
84 2拍目の両手のスタッカートは丁寧に弾きましょう。
□
100 、□
102 、□
104 の和音は脱力して深い音でたっぷり響かせましょう。
□
37