【TurningPoint を活用した授業】 キーパッドで神経分野の基礎を学ぶ レポート報告 日時: 場所: 授業科目: KEEPAD JAPAN 株式会社 松尾 2010 年 11 月 25 日(9:00~12:00) 東海大学 医学部「基礎医学(神経分野)」(大学 4 年生対象) 吉井 文均 先生 「おはようございます。今日は、神経の病気に 関する導入の授業です。来年から、神経疾患に関 する診断や治療法を細かく学びますが、今日の授 業内容はそれらのすべてに関係しますので、しっ かり受けて下さい。」 穏やかな吉井先生の、朝から身の引き締まるよ うな一言で授業がはじまった。 受講者数約 120 名、階段教室での授業である。 学生は教室に入ると、黒板の二つの表示を確認す る。一つ目は自分の席の位置、二つ目はキーパッ ドのナンバーである。この授業は、席とキーパッ ド(授業で問題にこたえるための端末)が指定さ れている。席の指定は学生に適度な緊張感を持っ て授業を受けてもらうため、キーパッドの指定は 授業直前の簡単な出席把握と授業参加意識を高め てもらうためだという。余談だが、キーパッドの ナンバーを指定すると、回収時の紛失防止にもつ ながるという。 この日の授業は、先生のお言葉にもあるように、 神経分野に関する基礎中の基礎の総まとめであっ た。今後医学を学んでいくために絶対覚えておか なければいけないことが、3 時間の授業中に、朝 の満員電車のようにぎゅうぎゅうと詰まっている。 授業の内容が今回のように重要な事柄ばかりで あると、学生は圧倒されてしまったり、だんだん 集中力が衰えてきたりするのが通常懸念されるパ ターンだが、それを解消するため取り入れて頂い たのが、キーパッドであった。 もともとキーパッドシステムが盛んに取り入ら れるようになったのはアメリカで、「大人数の、 さまざまなバックグラウンドを持った人々が、ど うやって同じ場所で同じトピックを効果的にシェ アしていくか?」という問題を解消するための手 段として使用されるようになったという背景があ る。 上記の集計結果から、やはり同じ学部内の学生 でも、興味や自己認識がばらばらであることがす ぐにわかる。このような状況下で、教員はある一 定の情報をすべての学生に理解してもらわなけれ ばならないという難題が立ちはだかる。その解決 手段の一つとして、今回キーパッドは役だったの ではないかと考えられる。 授業は、神経をつかさどる脳の構造から機能に ついて確認した後、さまざまな神経系の病気に関 することへと進んだ。 とにかく学生に多く学んでほしいことを願い、 「ここ重要だよ」と吉井先生は重要ポイントの度 ごとに学生に伝える。 まず授業の導入として、数問のアイスブレイク 的な質問を投げかけた。 「神経の病気に興味がありますか?」シンプルな 質問であるが教員側は必ず知っておきたい情報で ある。また、以下のような質問を同時に行った。 次々に現れる重要内容の度に、キーパッドで答え る質問が出題されていたほか、授業スライドのさ まざまな工夫も、先生の願いを映し出していた。 全体のスライドは、覚えてほしい言葉や事柄は、 必ずきれいでハッキリ物体が分かる写真やビデオ で示していたことが印象的であった。 又、病気やそれらの症状などに関して描かれてい る有名な著書や映画、それらに関連する著名人な ど、より学生に身近に分かってもらえるような工 夫がしばしば見受けられた。ちなみに私は医学に 関しては専門分野外ではあるが、先生の授業で取 り上げられた病気の一つ「パーキンソン病」には、 知人が長期にわたり苦しんでいた病気であったた め、食い入るように授業を聞いてしまった。授業 直後、授業で出てきた、元ボクサーのモハメド・ アリを web 検索し、「レナードの朝」(映画:監 督 ペニー・マーシャル)を家に帰って見入って しまい、この病気に関して全て理解した気になっ ているのは言うまでもない。 授業を終えて、医学部の学生は想像を絶するほ ど、いろいろなことを理解して覚えていかなけれ ばならないのだろうと感じた。教員は膨大な情報 量を短時間で学生に伝えなければいけないし、学 生は、それらをどんどん吸収していかなければな らない。その中でキーパッドは、教員にとって、 学生に簡単に活気を与えるチャンスであり、学生 にとってバランスの良い休息手段であり、集中力 を継続させるツールであり、適度な頭の体操であ ったと感じた。又、教員が学生の理解度をその場 で確認し、学生に対してフィードバックを兼ねた 授業をその場で提供することができる、すなわち 学生の理解をその場で定着させることも、大きな メリットの一つであろう。 授業終了後、ある学生から「みんなの意見が分 かって面白い」という嬉しいコメントを頂いた。 学生も、常に他の人の意見や考えていることを単 純に知りたいのである。意見や考えの共有はあら ゆる分野、世界で大切なのだとしみじみ感じる。 *このレポートの「キーパッド」とは、TurningPoint オーディエ ンス・レスポンス・システムで使用する ResponseCard RF と呼ば れるレスポンス用カードのことで、「クリッカー」や「アナライ ザー」などとも呼ばれている。
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