北海道のトリカブト属植物(キンポウゲ科)について

北方山草 20 (2003)
北海道のトリカブト属植物(キンポウゲ科)について
つくば市
門間俗ー
北海道に分布するトリカプト属植物件
線)を残しているわけだから一般的な意味
ンポウゲ科)についてはすでに報告したが
での一年草ではない。そうかといって、栄
(Kadota,1
9
8
7
)、そこではレイジンソウヨE
養繁航体(嬢桜)はやはり ー年しか生きら
属について言及されておらず、また、その
れないのだから多年草でもない。このよう
後若干の新しい知見がもたらされているた
に、母植物が栄養繁殖体を残して一年で枯
め、ここで道内のトリカブト属について改
れる植物を擬似一年草 p
seudoa
n
n
u
a
lと
めて概観してみたい。
いう。 トリカプト亜属植物は擬似一年草で
司
あると定義付けることができる。
最初に特徴を記述するための学術用語に
2.花梗の有毛性
ついて、若干の解説を行う。
花梗とは花の柄のことで、花柄とも表現
1,多年草と擬似一年草
される。
1
E
梗の有毛性
(
p
e
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e
lp
u
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s
c
e
n
.
図鑑や解説書では、 トリカプト属植物を
c
e
) はトリカプト属の分類において最も重
キンポウゲ科の『多年草』と紹介している
要な形質の一つである。花梗の有毛性には、
ことが多い。トリカブト属のうちでレイジ
花梗が無毛の場合と有毛の場合の二つの状
ンソウ亜属のものは毎年肥大していく貯蔵
態がある。さらに、花梗が有毛の場合、下
根をもっているので、多年草と呼んで何ら
l
句きに曲がった毛(原毛)と剥I(花梗)に
問題はない。しかし、 トリカブト亜属では
対して直角の方向に伸びた毛(開出毛)の
どうだろうか?
2種類の毛がある o 走査型電子顕微鏡ある
トリ力プト亜属では、時半艮は春先に葉を
いは生物顕微鏡でこれらの毛を観察する
展開させるのと同時に短い(カラフトプシ
と、周毛の表面には低いイボ状の突起があ
とエゾ}リカブトではやや長い)地下茶を
るのに対して、関市毛の表面は平滑である
伸ばし、その先に嬢線の形成を始める。茎
ことが分かる。つまり、同ーの毛が曲がっ
の伸長と業の展開に伴って嬢根は肥大し、
たり、真っ直ぐだったりするのではなく、
秋、花の時Jil
j
に嬢根は完成される。やがて
元々異なる種類の毛なのである。
間出毛が生える場合、多少なりとも腺毛
果実は熟して種子は散布され、茎や葉は枯
れていき、母根は跡形もなく消えてしまう。
が混在するが、ここでは簡単にするため、
母根に着目すると ~íf.生(越年生)という
「周毛 vs開出毛」の対比で説明する。後述
ことになるが、種子以外に栄養繁殖体(嬢
するように、 1本の花綬に屈毛と開出毛が
9~