住まいあれこれ⑭ 「Good Surprise!」 にっち 2005 年 5 月号 ’ Good surprise’ これが正式な英語として 通用するかどうか、それはちょっとさておき、 今、結構心に留めている言葉の一つである。意 味は要するに、驚き、それも良い驚き、うれし い驚きということである。 例えば、あまり期待してなかったお店の料 理が、想像を超えてとてもおいしかった場合、 それはひとつの’Good surprise’。あるいは、 休日に一足早く起き て、家族のためにコー ヒーを入れる。する と、家族は、なにかい い香りの中で目覚め、 そしてそれがモーニン グ コ ー ヒ ー と 知 り、’Good surprise’。 また、もう逢えないと 半ばあきらめていた人 に 突 然 出 会 え て’Good surprise’。 ちなみに、英語 の 辞 書 を 調 べ る と、’surprise ’には 「驚き、びっくり」とい う以外にも「思いがけ ない贈り物」というの もあり、ことばの中に いい意味での意外性 (による驚き) が含まれ ているようだ。誰しも思いがけない贈り物は うれしいものであり、うれしい驚きは、その瞬 間、幸せな気持ちが何倍にもふくらむような 気がする。 私は、建物もまさにこの’Good surprise’が 大切だと思う。 「これくらいのものをこんな感 じで建ててください。」と依頼される。すると その依頼以上に’Good surprise’な建物を提 供したいと思うのだ。 「この敷地にここまでの ものが建つとは」とか「こんな風景が見えるよ うになるとは」など、思っていた以上のことで 驚きを感じてもらえたらと思う。もちそんそ の前提として、基本的なところは満足しても らっていることが必要であるが。 以前設計を手がけたS邸では、騒音や視線 から生活を守るために道路に対して閉じたデ ザインを要望され、それを基本に設計を進め た。ただ、そのことによって、室内が暗くなっ たり、通風が悪くなった りでは住宅としては問 題である。 そこで、各所に中庭的 なスペースやトップラ イト、ガラスブロック床 を取り入れ、またリビン グでは天井の高さを4 mとし、部屋の角に床か ら天井までのスリット 状の窓を設けた。これら のことにより、外観から は想像もできないほど、 明るくそして風通しの よい住宅ができあがっ た。 また、敷地の傾斜と建 物の基礎を利用し、効率 的で広い地下収納を 作った。これらは、設計 の際にも施主の方に説 明したが、実際に出来上がってみると、想像超 えたものだったようで、非常に驚かれ、そして 大変に喜ばれた。もちろんこのことは、同時に 私にとっても大きな喜びとなった。 様 々 な 出 会 い の 中 で 、 そ の 人 に’Good surprise’を感じてもらえるよう、そ してその人の喜びが自分の喜びにもなること が本当に幸せなことだと思う。
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