岩手の自然保護を考える

岩手の自然保護を考える
藤澤冨治(森林部門)
今年の冬季オリンピックはカナダのバンクーバーで開催された。二十数年前にも同国の
カルガリーで開催されたが、その翌年に近くにあるバンフ国立公園に自然保護の研修生と
して参加できたので、懐かしい思い出としてよみがえった。バンフ国立公園の素晴らしい
自然景観については、すでにご承知の方々も多いと思われるが、ここではどのような自然
保護対策が行われているかを勉強することが目的であった。
現地で国立公園を管理する担当官から説明を受け、それらについて質疑応答を行った。
まずバンフ国立公園の広さについてであるが、我が国では長野県に相当する面積と記憶し
ている。また。係官から同国国立公園の基本的保護対策としてどのように考えているかを
聞いたところ、答えは「この公園を半永久的に今の状態で維持すること」が目標であると
のことであった。
そのためにはかっこ1これ以上の開発は認めない。かっこ2外来種の動植物はできるだ
け持ち込まず、入った場合は駆除に努める。さらには日本では考えられないことであるが、
かっこ3人為的に山火事を発生させ植生の更新を図るほか、動物の餌場とするように計画
的に行うとのことであった。
特に自然保護を図るためには、かっこ2の外来種の持ち込み禁止と、導入されたものは
できるだけ駆除に努めるとのことであった。当国立公園でも、年間百種類以上の外来種の
植生が見られ、その駆除対策に困っているとのことであった。植物の種子は鳥や動物など
によって持ち込まれるほか、空から風によって運び込まれるものなども多く、対策はお手
上げの状態とのことであった。
このような現状を聞き、翻って我が国や本県の自然保護について考えたとき、かなりの
落差があるように思われた。我が国の国立公園の中には厳しい規制を行っている個所もあ
るが、本県では特に認められない。
特にも外来種の持ち込みなどにおいては、余りにもルーズであり規制も少ない。
本県における自然保護を考えたとき、心配されることは、外来種の導入によってこれま
で維持されてきた自然の生態系に変化を与える恐れがあることである。一つの例として、
本県の淡水魚に外来種が導入され、生態系の維持を図るため積極的に駆除に努めるべきと
の話題も聞かれる。動物だけでなく植物でも同様である。広い県土を有し、手付かずの自
然が局所的に多く残っている本県においては、皆さんの力で次世代に引き継ぐ責務を有し
ていると思う。特に貴重なものなどについては天然記念物の指定を行い、厳しい規制と維
持管理により自然保護を図る方法もあるが、自然環境保全に対するより多くの県民の方々
の理解と協力が大切と考える。