H27釧路江南「大雪原」しなやかな心を 北海道江南高等学校長 丸木

H27釧路江南「大雪原」しなやかな心を
北海道江南高等学校長
丸木
克朗
私が幼いときに、いつも体重を気にしている母が、体重計に乗り、増えた時
には斜め上から針と目盛りを読み取り、「大丈夫、増えてない」と言い張って
いたのを思い出します。今や体重計もアナログからデジタルに変わり、この「裏
技」は使えなくなりました。デジタルはどこから見ても容赦ありません。冷た
いです。私はアナログのどこかいい加減な「ゆるさ」が好きです。
河合隼夫の「中空構造日本の深層」では、古事記に登場する神について、互
いに対立する神の中間に、もう1人何もしない神がいることに触れ、日本独特
の文化や価値観は、中心が「空」である構造から成り立っているのではと述べ
てます。これに対し西洋文化は、善と悪を明確に分ける二項対立構造、良し悪
しは別として、自分ではどこかデジタル的に感じています。
日本人は「3」という数字が好きです。釈迦は「三尊像」、教育は知・徳・
体の「三位一体」、校訓は3つから成り立つ学校が多いです。
「2」でなく「3」
であることに、
「はっきりしない」とか「ゆるさ」があるのかも知れませんが、
そこに他を尊重して受け入れようとする奥深さ、「和」を大切にする日本の特
性を感じます。決めつけない柔軟性が衝突しても壊れない、曲げても折れない
強さにつながります。二脚では倒れやすいが、三脚は安定してます。
見学旅行で訪問した薬師寺のお坊さんが、講話の最後に「かたよらない心、
こだわらない心、とらわれない心、広く広く、もっと広く。これが「空」の心
です。」と教えていただきました。
「空」とは「からっぽ」という意味よりも「無」。
無であるから、先入観なく、無限に様々なものを取り込めるのだと感じました。
さて、卒業生の皆さん。行く手には、楽しいことだけでなく、嫌なこと、悲
しいこともあるでしょう。確率から考えて当然なのですが、実際に向き合って
いるときは余裕がありません。でも、決して絶望したり煮詰まることのないよ
うに。そんなときこそ、「空」の心です。全部放り出してみましょう。必要な
ものが自然と見えてきます。大丈夫、命まではとられません。
誰かと比べたり、他人の目を気にすることはありません。「自分らしく」そ
れだけで充分。私からの最後のエールです。人生、「明るく、楽しく、元気よ
く!」 そして「他人の痛みの分かる人」になってください。いつまでもお元
気で!
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