事務局 - 第 6回 NOTES研究会

第 6 回 NOTES 研究会
日
時/平成 24 年 12 月 5 日(水) 16:00~19:45
場
所/パシフィコ横浜
会議センター
第 1 会場 3F『303』 第 2 会場 3F『313+314』
〒220-0012 横浜市西区みなとみらい 1-1-1
当番世話人/斉田
芳久
東邦大学医療センター大橋病院
外科
事務局:第 6 回 NOTES 研究会事務局
東邦大学医療センター大橋病院 外科
担当 榎本俊行
〒153-8515 東京都目黒区大橋 2-17-6
Tel:03-3468-1251
Fax:03-3469-8506
第 6 回 NOTES 研究会プログラム
■開会の挨拶
第 1 会場
3F『303』 16:00~16:05
代表世話人 大分大学学長
■平成 24 年度研究費助成金受賞者表彰
第 1 会場
3F『303』 16:05~16:10
代表世話人 大分大学学長
■平成 23 年度研究助成課題報告
第 1 会場
北野正剛
北野正剛
3F『303』 16:10~16:30
座長:大分大学学長
北野正剛
1. 胃内における定圧環境の形成・維持機構の解明:多施設共同基礎研究
大阪大学大学院医学系研究科 消化器外科
宮嵜安晃
2. ESD 処置具の NOTES 臨床応用に向けた最適化
慶應義塾大学医学部一般・消化器外科
和田則仁
3. Trans-rectal NOTES 用瞬時大腸浄化システムの開発:オゾンナノバブル長時間殺菌水と
併用する固形便対策用マイクロバブルジェネレーターの臨床モデル開発と性能評価
九州大学先端医療イノベーションセンター
大平
猛
■一般演題①
第 1 会場 3F『303』 16:30~18:00
座長:がん研有明病院 消化器外科
東京慈恵会医科大学附属第三病院 内視鏡部
比企直樹
池田圭一
1. 当院における Reduced port surgery の現状について
がん研有明病院 消化器外科
千葉丈広
2. 科における腹腔鏡補助下経口内視鏡的胃全層切除術時の内視鏡医との連携
東邦大学医療センター大橋病院 外科
長尾さやか
3. LECS による胃 GIST の治療成績
がん研有明病院 消化器外科
本多通孝
4. 当院における胃粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡内視鏡合同胃局所切除術(LECS)導入の経験
虎の門病院 消化器内科
布袋屋修
5. LECS における胃壁吊り上げ法を用いた視野展開の工夫
総合南東北病院 外科
高野祥直
6. 胃粘膜下腫瘍に対する NOTES 関連手技としての腹腔鏡補助下内視鏡的胃全層切除の検討
愛知医科大学病院 消化器内科
土方康孝
7. SM 胃癌に対するセンチネルナビゲーション下EFTRの臨床経験
金沢医科大学 内視鏡科
8. Pure
北方秀一
NOTES(EFTR)の開発;Kagawa NOTES project での軟性内視鏡用全層縫合器
とカウンタートラクション器
香川大学医学部 消化器・神経内科
森
宏仁
9. Submucosal endoscopy 法を用いた消化管神経叢観察の臨床経験
東京慈恵会医科大学 内視鏡科
■一般演題②
炭山和毅
第 2 会場 3F『313+314』 16:30~18:00
座長:東海大学医学部 消化器内科
昭和大学横浜市北部病院学 消化器センター
峯
徹哉
田中淳一
1. 軟性鏡を用いた経横隔膜的腹腔アプローチの可能性(胸部外科領域への応用をめざして)
大阪大学 消化器外科
広田将司
杏林大学医学部学 外科
阿部展次
東京大学大学院医学系研究科 小児外科学
石丸哲也
2. 軟性内視鏡は腹腔内手術に有用か?
3. NOTES 下食道吻合法の開発
4. アカラシアに対する内視鏡的筋層切開術(POEM)280例の経験から
鬼丸
学
大阪大学医学部 消化器外科
高橋
剛
厚生連長岡中央綜合病院 消化器病センター 外科
西村
淳
昭和大学横浜市北部病院 消化器センター
5. 胃粘膜下腫瘍に対する経膣ハイブリッド NOTES 胃局所切除術 10 症例の検討
6. 経腟 NOSE による完全腹腔鏡下大腸癌手術
7. 臍内下半 12mm 縦切開・Single incision multi-trocar 法による単孔式腹腔鏡下胆嚢摘
出術の成績
福井大学 第一外科
飯田
敦
8. 左側結腸/直腸癌に対する TANKO+NOTES
熊本再春荘病院 外科
外山栄一郎
9. 経腟内視鏡を使用した hybrid NOTES による右半結腸切除術
立川総合病院 外科
蛭川浩史
10. 経膣的に胆嚢を摘出した腹腔鏡下手術の経験
獨協医科大学越谷病院 第一外科
多賀谷信美
■特別講演:世界の NOTES 研究
第 1 会場
3F『303』 18:00~18:45
座長:慶應義塾大学医学部 外科
北川雄光
東邦大学大森病院消化器センター 外科
片桐敏雄
東京慈恵会医科大学 内視鏡科
炭山和毅
1. アメリカ UCSD における NOTES の実際
2. Submucosal endoscopy の開発
3. マサチューセッツ総合病院における NOTES 研究の現状
大分大学 第一外科
■特別企画:NOTES 関連機器開発の最前線
第 1 会場
安田一弘
3F『303』 18:45~19:45
座長:東邦大学医療センター大橋病院 外科
斉田芳久
1. NOTES 関連機器開発の最前線
九州大学先端医療イノベーションセンター
大平
猛
2. 機器開発の現場から
大阪大学次世代内視鏡治療学
■閉会の挨拶
第 1 会場 3F『303』 19:45~
当番世話人:東邦大学医療センター大橋病院 外科
■懇親会
中島清一
斉田芳久
ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル
3F『エーゲ』 20:00~
■平成 23 年度研究助成課題報告
1.胃内における定圧環境の形成・維持機構の解明:多施設共同基礎研究
1)大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学
2)大阪警察病院外科
3)市立池田病院消化器内科
○宮嵜安晃1)、西田俊朗2)、中原征則3)、中島清一1)
【背景】NOTES を含む次世代内視鏡治療においては、術野が安定し、過送気によるコンパ
ートメント症候群等を回避できる定圧送気が主流になると考えられる。
【目的】我々は胃内
定圧炭酸ガス送気が安全に施行できることを報告してきたが、半開放系の胃内で定圧環境
が形成・維持されるメカニズムは不明である。
【目的】胃内に定圧環境が形成・維持される
メカニズムの解明を目的とした。【方法】3 ヶ月齢の 3 種混合ブタを定圧炭酸ガス送気群
(CO2 群)と定圧エア送気群(エア群)にわけ、各群 5 頭を対象に実験を行った。ブタは全身麻
酔下に気管内挿管を行い、小開腹下に、胃、十二指腸(幽門から 5cm)、空腸(十二指腸と
の移行部から 100cm、400cm)に圧測定用プローベを楔入固定し、デジタルマノメトリに
接続した。送気は定圧送気用に開発したオーバーチューブを胃内に留置し、定圧自動送気
装置(UHI-3)を接続し、送気圧 8mmHg、流量 35L/分、20 分間送気した。測定項目は、胃
内圧、十二指腸内圧、空腸内圧(2 カ所)を 1 秒毎に、Vital sign、EtCO2、血液ガスを 10
分毎に測定した。各送気毎に総ガス送気量を記録した。送気終了後、開腹し腸管の拡張の
程度を確認した。
【結果】CO2 群、エア群とも全例で、安全に胃内定圧環境の作成・維持が
可能であった。胃内圧は開始後すぐに設定圧に達し、以後安定して推移した。十二指腸圧
は緩徐に上昇し、約 5 分で胃内圧と等圧になり以後安定して推移した。近位空腸内圧、遠
位空腸内圧はほとんど変化しなかった。両群とも呼吸、循環への影響は小さく、総送気量
は CO2 群 1.2L(中央値)
、エア群 1.4L(中央値)と有意差を認めなかった。剖検で近位小
腸の拡張はわずかで、遠位小腸の拡張は認めなかった。【考察】胃内定圧環境の形成・維持
には、拡張した腸管による解剖学的構造が関与する可能性が示唆された。
2.経口軟性内視鏡による腹腔内臓器の硬さ診断
1)慶應義塾大学医学部一般・消化器外科
2)慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科
3)慶應義塾大学医学部腫瘍センター
○和田則仁 1)、大西公平 2)、小川健司 2)、石居公之 3)、矢作直久 3)、北川雄光 1)
【背景】NOTES は体壁破壊を回避して腹腔内へアプローチする画期的な手術方法であり、
その概念は治療目的だけではなく、低侵襲な腹腔内臓器診断としての意義も注目されてい
る。我々は触覚の伝送技術を利用し、経口軟性内視鏡を用いて、腹腔内臓器の硬さを定量
化し腹腔内臓器の診断的応用を検討したので報告する。【対象と方法】動物実験委員会の審
査を受けたプロトコールに従い全身麻酔下に雄性ベビー豚で実験を行った。経口的挿入し
た内視鏡を胃体部大弯より腹腔内に進めた。腹腔内で反転し肝を正面視した。リニアモー
ターに接続したアクチュエータを鉗子孔より挿入し測定を行った。また腹腔内に種々の硬
さを有する 6cm 大のハイパーゲルを留置し各々の硬さを測定した。まず対象物体に接触す
るまでのステップ 1 は1Nの力制御とした。ステップ2では、位置制御モードでは 5mm
アクチュエータを進める押し動作を、力制御モードでは反力が5Nとなるまで押し動作を
行った。ステップ3では接触位置まで引き動作を行い、その後内視鏡医により対象から遠
ざける操作を行った。
【結果】位置制御ではステップ2で押し過ぎによる滑りや臓器損傷が
みられた。力制御モードでは、内視鏡のブレや心拍による対象臓器の動きなどのノイズを
感知することも認められたが、比較的安定して測定可能であった。ハイパーゲル・モデル
では柔らかいモデルではアクチュエータの抵抗により柔らかさを測定することはできなか
った。一方適度な弾性を有するモデルでは、ステップ2の押し動作の初期に硬さを検出可
能であった。
【考察】測定モードは、安全性の観点から力制御が適切であると考えられた。
対象物が柔らかい場合、鉗子孔の径の制限や内視鏡の屈曲による摩擦の増大により硬度の
定量化は困難であり、スラストワイヤの性能向上が必要と考えられた。一方、中等度の硬
度は定量化可能であり、肝の線維化などの評価に応用可能であることが示唆された。
3.Trans-rectal NOTES 用瞬時大腸浄化システムの開発:オゾンナノバブル
長時間殺菌水と併用する固形便対策用マイクロバブルジェネレーターの臨
床モデル開発と性能評価
九州大学先端医療イノベーションセンター
○大平
猛
NOTES 補助下 Needlescopic Surgery (NS)である Multi piercing surgery (MPS)を経直腸
的に達成するため、Tans-rectal route の浄化装置の臨床モデルの開発を行った。最大の成
果は、世界市場にて MPS を達成するためドイツ第三者認証機関の審査を経て PMDA 認証
によるデバイスの上市に成功したことである。今回の開発を通して PMDA 通過のため確認
を要した項目は以下の多項目となる。大腸潅流装置 薬事法令規制;1.医用電気機器:安
全に関する一般要求事項)
;認証項目:電源入力・残留電圧・保護接地・漏れ電流・耐電圧・
機械的強度・安定性・過度の温度・漏れ、こぼれ、防水、湿度、消毒、清掃・単一故障・
絶縁距離。2.医用電気機器(副通則―電磁両立性―要求事項及び試験)認証項目:電源ポ
ート伝導妨害波測定・妨害波電界強度測定・静電気放電イミュニティ・放射無線周波電磁
界イミュニティ・バーストイミュニティ・サージイミュニティ。3.リスクマネジメント
の医療機器への適用;認証項目:リスク分析・リスク評価・リスクコンントロール。4.
医療機器の生物学的評価;認証項目:細胞毒性試験・感作性 ・刺激性又は皮内反応。本研
究成果であるデバイス上市により、MPS・Tans-rectal route の確保の他、CPA にて緊急入
院した傷病者の洗腸による bacterial trans-location の防止や、ストマケアとしての
など、大腸・直腸ケアの可能性が広がったことが大きな成果と考えている。
洗腸
■一般演題①
1.当院における Reduced port surgery の現状について
1)がん研有明病院 消化器センター 消化器外科
2)がん研有明病院 消化器センター 消化器内科
○千葉丈広1)、比企直樹1)、布部創也1)、平澤俊明2)、小菅敏幸1)、橋本佳和1)、
入野誠之1)、清川貴志1)、田中友里1)、本多通孝1)、石山晃世志2)、藤崎順子2)、
山本頼正2)、谷村慎哉1)、佐野
武1)、山口俊晴1)
【目的】近年、胃粘膜下腫瘍に対して、その優れた整容性から単孔式腹腔鏡手術や
Needlescopic Surgery などの Reduced port surgery による胃局所切除術が普及しつつある。
これまで我々は、胃壁の過剰切除を避ける目的で、腹腔鏡・内視鏡合同胃切除術
(Laparoscopic Endoscopic Cooperative Surgery:LECS)を行ってきたが、場合により
細径ポートを追加して行っているので、その手術手技を提示する。
【方法】臍を縦切開し、SILS port を挿入し気腹する。30 度硬性斜視鏡、ストレートの把
持鉗子、超音波凝固切開装置を用い、さらに右側腹部にポートの脇から把持鉗子を1本追
加挿入し、パラレル法で腹腔鏡下手術を施行している。場合により、細径鉗子を追加使用
している。腹腔鏡下に腫瘍周囲の血管処理を行った後、ESD テクニックを応用し、腫瘍周
囲 3/4 周の粘膜・粘膜下層切開を行う。内視鏡的に一部全層を穿孔させ、腹腔鏡下に粘膜切
除ラインに沿って漿膜・筋層切開を行う。腫瘍を漿膜側に反転させ、自動縫合器を用いて
切開孔を閉じるように、腫瘍を摘出し全層閉鎖する。
【結果】2009 年 10 月から 2012 年 9 月までに、8 例の胃粘膜下腫瘍に対する単孔式(細径
鉗子 1-2 本追加例を含む)腹腔鏡・内視鏡合同胃切除術(Single incision LECS:SiLECS)
を経験した。手術時間は平均 142.0 分、平均出血量 4.0ml、平均術後在院期間 7.6 日。縫合
不全や狭窄などの合併症は認められなかった。
【結語】単孔式内視鏡手術や Needlescopic Surgery は手術手技の向上に加え、整容性にも
優れており、早期胃癌などにも応用できる可能性がある。
2 . 当科 にお ける 腹腔 鏡補 助下 経 口 内 視鏡 的 胃全 層切 除術 時の 内視 鏡 医
との連携
1)東邦大学医療センター大橋病院 外科
2)東邦大学医療センター大橋病院 消化器内科
○長尾さやか1)、斉田芳久1)、中村陽一1)、榎本俊行1)、片桐美和1)、高林一浩1)、
渡邉良平1)、大辻絢子1)、髙橋亜紗子1)、佐藤浩一郎2)、伊藤紗代2)、北川智之2)、
長尾二郎1)、草地信也1)
胃粘膜下腫瘍に対して、腹腔鏡補助下経口内視鏡的胃全層切除術(以下 EFTR)が近年報
告され、当教室においても内視鏡医の協力のもと施行している。現在まで 7 例を経験し、
うち 2 例は胆嚢摘出術も同時に施行している。4 例で検体を経口ルートで摘出している。3
~5 ポートで施行し、手術平均時間は 243.5 分であった。当科ではより術後の変形を少なく
するため胃切開創を手縫いで縫合している。そのため、自動縫合器での縫合に比べ手術時
間は延長する。安全に手術時間を短縮するために、外科医・内視鏡医間の連携を密にし意
見交換を行っている。内視鏡医は通常の ESD 施行時、患者を左側臥位とし術者は患者と向
かい合う位置に立ち体側のモニターを使用、介助者は頭側に立って手技を行っている。
EFTR の際は清潔野が近く慣れない環境・体位で手技を行うこととなり、内視鏡医のスト
レスにつながり手術時間の延長の一因にもなると考えた。内視鏡医とカンファレンスを行
い、全身麻酔の後病変粘膜下全周切開までは通常の ESD 施行と同じ体位やセッティングの
内視鏡優先とし、その後に腹腔鏡観察下に全層切開とする方針とした。症例に応じて体位
やポートセッティングを行っている。それまでの症例の平均手術時間は 307.7 分、内視鏡
優先としてからの症例では 158 分と手術時間の短縮を認めた。腫瘍の局在やサイズ、内視
鏡医・腹腔鏡外科医・介助スタッフとも手技に慣れたためなど様々な要因が考えられるが、
内視鏡手技を本来の方法に近づけて行うことで手術時間の短縮が可能であった。また、前
壁病変などでは腹腔鏡観察下に内視鏡手技で腫瘍全周切開を施行し経口ルートで腫瘍を
摘出することでポート数を減らし、より整容性の高い手術が提供できる可能性がある。
今後も内視鏡医と連携し症例を重ねて行きたい。
3.LECS による胃 GIST の治療成績
1)がん研有明病院 消化器センター
消化器外科
2)がん研有明病院 消化器センター
消化器内科
○本多通孝1)、比企直樹1)、布部創也1)、谷村慎哉1)、千葉丈広1)、佐野
武1)、
山口俊晴1)、平澤俊明2)
【はじめに】Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery(LECS)は適切な断端の
確保と過剰な胃壁の切除による変形を予防し、術後の機能障害を軽減することを目的とし
ている.主に胃粘膜腫瘍、とくに小型の GIST に対して良い適応と考えられる。今回 GIST
に対する LECS の治療成績について後ろ向きに調査し、ケースシリーズ研究を行った。
【対
象・方法】2006 年 1 月から 2011 年 12 月までに LECS で切除した GIST 症例を対象とし、
患者背景、腫瘍径、リスク分類、手術時間、出血量、合併症発、予後について調査し記述
統計量を記載した.また手術時間を従属変数とし、患者背景の各因子、腫瘍径、手術時期
を説明変数としロジスティック回帰分析を行った.リスク分類は病理組織学的に核分裂像
10 以上(強拡大 50 視野)、MIB-1 index 10%以上、壊死像のいずれかを有するものを高リス
ク、核分裂像 5 未満を低リスク、それ以外を中リスクとした。
【結果】全対象は 41 例、男:
女=16:25、年齢中央値 64 歳、腫瘍径 32±4mm、リスク分類は低:中:高=37:3:1、
手術時間 166.2±13.5 分、出血量 18±3.9ml、合併症は縫合不全 2 例、開腹移行 1 例、術後
在院日数は 8.9±1.2 日、再発はなく、観察期間中央値は 522±39.8 日であった。手術時間が
180 分を超えた症例は 12 例(29.2%)あり、多変量解析では腫瘍部位、腫瘍径、BMI の順
でオッズが大きかったが有意差は認めなかった。ただし識別力は低くモデルはやや不安定
と考えられた。
【結語】GIST に対する LECS は有用な術式と考えられるが長期成績に関し
ては不明であり、今後慎重なフォローアップ、さらなる症例の集積を行う必要がある。
4.当院における胃粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡内視鏡合同胃局所切除術(LECS)
導入の経験
1)虎の門病院 消化器内科
2)虎の門病院 消化器外科
○布袋屋
修1)、貝瀬
満1)、春田周宇介 2)、篠原
尚 2)、宇田川春司 2)
【背景】近年、胃SMTに対する腹腔鏡内視鏡合同胃局所切除術(LECS)が開発され、
胃温存あるいは局所切除範囲を最小限にすることが可能となり、より低侵襲でより確実な
治療として導入する施設も増えつつある。
【目的】胃SMTに対して近年導入したLECSの経験と成績を考察した【対象と方法】
適応は、GIST診療ガイドラインの相対的手術適応のうち、筋層由来で
内腔発育型のため、腹腔側からのみでは切除境界が不明なものや、壁外発育型でも、噴門
側胃切除術の回避が可能となる病変をLECSの適応とした。噴門直下のSMTに対して
は噴門側胃切除を回避する工夫として、ESDを先行し、内視鏡下にEGJを確認、切除
マージンを図りながら口側断端の全層切離をESDにて行うことで噴門部の切除範囲を最
小限に留める工夫を行った。その後腹腔鏡下に残りの全層切離と体腔内縫合での手縫連続
縫合で単純閉鎖を行った。
【成績】2011年2月~2012年7月までに当院でLECSによる胃局所切除を施行
した症例は17例。腫瘍径は平均腫瘍径35.7mm(12-72mm)
、断端陰性一括
切除率100%、病理結果;GIST 10(low9
schwannoma
high1)、myoma
1海綿状血管腫1であった。噴門より2cm以内の症例5例は
5、
すべて噴
門側胃切除を回避できた。全例、鏡視下に手術を完遂し、術後合併症は縫合不全、
通過障害、stasisいずれも認めなかった。
【考察】胃SMTに対するLECSは内視鏡エキスパートと腹腔鏡エキスパートの協同に
より導入は容易であり、良好な成績が得られた。特に噴門直下のSMTの局所切除におい
ては、内視鏡下にEGJを確認することで切除範囲を最小限にし、従来は噴門側胃切除術
が施されたようなケースでも、局所切除により胃温存が可能であった。
5.LECS における胃壁吊り上げ法を用いた視野展開の工夫
総合南東北病院 外科
○高野祥直、濱田晃一、外舘幸敏、藁谷 暢、佐藤 直、鈴木伸康
当院では、2008 年より食道胃接合部(EGJ)付近や小弯側に発生した胃内発育型胃粘膜下
腫瘍に対し Laparoscopy endoscopy cooperative surgery (LECS)を導入し、これまでに 10
例を経験した。
【適応】
食道胃接合部近傍、
胃体中部から上部領域の小弯側や後壁に発生した 2cm から 5cm
未満の胃内発育型粘膜下腫瘍。当初は delle を伴う粘膜下腫瘍は適応外としていたが、2012
年 5 月より胃体部前壁病変に関しては適応を追加した。
【手技】まず腹腔鏡下に腫瘍周囲の血管を Liga Sure や EnSeal などで処理。その後、内
視鏡での処理に移行し、フラッシュナイフで腫瘍周囲を全周性にマーキング後に、IT ナイ
フで胃壁の一か所を意図的に穿孔させ、IT ナイフで胃壁の全層切開を行う。全層切開時に
は、腹腔鏡の鉗子で腫瘍周囲の正常粘膜を把持して切開をサポートすることで IT ナイフで
の切開が容易となる。切除標本はパウチで回収し、切除部は鏡視下に手縫い、または自動
縫合器で縫合する。
【手技上の工夫】後壁病変では、できる限り迷走神経の胃枝を温存する
よう留意し、大網を切開、胃壁を脱転し、エンドクロースを使用して胃壁を数か所吊り上
げてから LECS の手技を行っている。この手技により、内視鏡での切開が容易になる。ま
た、delle を伴う粘膜下腫瘍に対しても同様の手技を行うことにより胃内腔で腫瘍を回収す
ることが可能となり、腫瘍が腹腔内に露出し、腫瘍を散布する可能性が軽減できると考え
られる。
【結果】10 例の局在部位は、穹隆部後壁 1 例、体上部小弯 4 例、体上部前壁 3 例、体上部
後壁 1 例、体中部後壁 1 例であった。病理では GIST 9 例、好酸球性肉芽腫 1 例であった。
術後合併症は創感染を 1 例に認めたのみで縫合不全、狭窄や排泄遅延などの通過障害は認
めなかった。
6.胃粘膜下腫瘍に対する NOTES 関連手技としての腹腔鏡補助下内視鏡的胃
全層切除術の検討
愛知医科大学病院
消化器内科
○土方康孝、小笠原尚高、春日井邦夫
背景:腹腔鏡補助下に内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)技術を応用した内視鏡胃全層切
除術(LAEFR)は、胃内腔側から腫瘍周囲を直接確認しながら胃壁全層を切開する方
法で、胃粘膜下腫瘍に対する切除領域を最小限に抑え胃の変形を少なくすることが可能と
考えられる。今回、当院におけるLAEFRの有用性、安全性について検討した。
方法:2009年8月以降、胃粘膜下腫瘍と診断されLAEFRに同意された6例(男性
1例、女性6例、平均年齢70歳)を対象とした。胃粘膜下腫瘍は、全例EUS-FNA
を施行し、うち5例でGISTと診断された。ESDに準じて粘膜下層までの全周切開後、
筋層の一部を針状ナイフにて切開穿孔させ、穿孔部にIT
knifeを挿入し約半周の
全層切開を行う。残りは腹腔鏡下に胃壁外から切離し、腫瘍を回収後縫合を行った。
結果:全例、隣接臓器の損傷や術中合併症等を認めず安全にLAEFRが可能であった。
GISTの平均径は22.7mm(17-30mm)に対して、切除された胃組織の平均
径は34.7mm(25-50mm)であった。高リスクGISTは1例であった。腫瘍
はすべて断端陰性であり術後の内視鏡検査で胃変形はごく軽度で、胃内容物の排泄遅延等
を認めなかった。平均入院期間は11.3日間であった。
結語:
NOTES関連手技としてのLAEFRにより、術後胃変形を防止しうる必要最
小限の胃全層部分切除が可能であった。特に、腹腔鏡補助下手術のみでは切除範囲が大き
く術後機能障害をきたしやすい噴門部で有効が高いことが示唆された。本方法は消化管腫
瘍に対する治療として確立すれば、ESDと手術との隙間を埋める低侵襲治療として患者
への貢献度は高いものと考えられた。
7.SM 胃癌に対するセンチネルナビゲーション下EFTRの臨床経験
1)金沢医科大学
内視鏡科
2)金沢医科大学
消化器外科
○北方秀一1)、伊藤
透1)、木南
伸 2)、川浦健夫1)、濱田
和1)、表
和彦2)、
小坂健夫2)
【緒言】早期胃癌においてsentinel
SN(-)であればlymphatic
node
conseptが成り立ち、
basin以外の郭清は省略可能であることが
わかってきた。今回、腹腔鏡下センチネルリンパ節生検を行い転移陰性と診断されたSM
胃癌に対する、内視鏡的胃全層切除術に関するclinical
studyを開始した。
【方法】本studyの施行に際し、当院倫理委員会において十分な検討を行い、承認を
得た。手順は以下の通りである。
(1)前日に病変周囲粘膜下層に100倍希釈したICG
を0.2mlずつ4箇所に局注する。
(2)腹腔鏡下に胃大網・小網を切離し、上腹部の小
切開創より胃を挙上する。(3)赤外線蛍光カメラで、蛍光を発するSNの確認を行う。
(4)SNが含まれるlymphatic
basinを腹腔鏡下に一括郭清し、術中迅
速組織診を行う。
(5)転移陰性の場合、内視鏡下に全層切除を、転移陽性の場合、D2廓
清を伴う腹腔鏡下胃部分切除術を行う。
(6)洗浄細胞診を行い、術中操作による腹膜播種
がないことを確認する。
【結果】1例は前庭部小弯15mm大の0-IIa+IIc型SM胃癌で、lympha
tic
basinは右胃動脈流域に限られており、同部位を郭清した。転移陰性であり
EFTRを施行した。手術時間は、SNの同定・郭清に110min、EFTRに60m
in、全体で320minであった。術後の食事摂取量は術前と変わらず、体重の回復も
良好であった。1例はセンチネルリンパ節に転移を認めたため、D2郭清を伴うLADG
を施行した。
【結語】EFTRは、胃の変形を最小限に抑え、胃の容積・機能を温存でき、手術時間も
適切な範囲内であり、有用な治療法であると考えられた。
腹腔鏡下センチネルリンパ節生検により、縮小手術可能な症例を選別することができ、
より適切な治療法の選択が可能と考えられた。
8.Pure
NOTES(EFTR)の開発;Kagawa NOTES
project での軟性
内視鏡用全層縫合器とカウンタートラクション器
香川大学医学部 消化器・神経内科
○森
宏仁、小原英幹、藤原新太郎、西山典子、正木 勉
【目的】胃GISTに対する胃局所切除は腹腔鏡下胃局所切除、LECS、hybrid
NOTESなどがあり術式の違いを比較検討する。研究開発としてpure
EFTRを
安全に施行するための信頼性のある全層縫合器とカウンタートラクション器を用いた無送
気EFTRを検討する。
【方法】2009年から2012年までにhybrid
NOTESを施行した胃GIS
T患者13例を解析・検討した。研究開発ではブタ切除胃を用いて軟性内視鏡用・全層縫
合器Double
arm
echanical
Bar
Counter
Suturing
System(DBSS)とM
Traction
System(MCTS)を
用いて胃壁全層切除完遂率と術時間を無送気MCTS群20例と送気通常群20例で比較
した。40mmの全層切除穿孔創の10針全層縫合を外科手縫い単結節縫合群8例、
over
the
scope
clip
(OTSC)群8例とDBSS群8例の3群
で施行しleak testによる縫合力を比較検討した。
【結果】Hybrid
NOTES
13例で開腹移行例、合併症や再発は認めらなかっ
た。無送気MCTS群は20例全例施行可能であり通常フードを使用した送気通常群の完
遂例は6例で有意差を認めた(p<0.01)
。無送気MCTS群と送気通常群の術時間に
有意差を認めた(p=0.001)
。Leak testによる耐圧能は3群間に有意差を
認めた (p=0.002)が外科手縫いとDBSSでは有意差を認めなかった(p=0.
542)
【結論】Hybrid
NOTESは、詳細で正確な切開が病変の局在によらず可能であ
る点が他の術式を上回ると思われた。Pure
EFTRはMCTSを用いた小術野展開
による全層切除とDBSSを用いた全層縫合を施行すれば実現可能であり、現在動物実験
での安全性を検証している。
9.Submucosal endoscopy 法を用いた消化管神経叢観察の臨床経験
1)東京慈恵会医科大学
内視鏡科
2)Internal Medicine Department、 Johannes Gutenberg-University of Mainz
3)東京慈恵会医科大学
内科学講座消化器肝臓内科
○炭山和毅 1)、大谷友彦 1)、Ralf Kiesslich2)、田尻久雄 1)、
3)
我々は、粘膜下層に人工的な空間を作ることで内視鏡診断治療のワーキングスペースとし
て活用できることに着目し、submucosal endoscopy 法として、NOTES のアクセスルート
に応用するなど研究を進めてきた。特に、近年は粘膜下層内部に顕微内視鏡を挿入するこ
とで、生体内において固有筋層など消化管深層の組織学的解析が可能であることに着目し、
消化管運動機能の解析や消化管神経叢の組織学的観察法を確立できないか模索してきた。
今回、ドイツマインツ大学との共同研究により、共焦点内視鏡を用いた消化管神経叢の観
察が臨床例において実現可能であることを証明し得たので報告する。対象:既知の内視鏡
治療適応大腸粘膜病変症例 2 例
(盲腸 30mm 大 LST-G および 7mm の亜有茎性ポリープ)。
方法:本研究の参加者に対しては Johannes Gutenberg-University of Mainz 倫理員会承認
の元、書面による informed consent が実施された。各病変に対し ESD および polypectomy
による粘膜病変切除後、治療後潰瘍上に 0.05%アクリフラビン溶液を散布したのち、潰瘍
底をプローブ型(CellVisio Maunakea、 France)、および、スコープ一体型共焦点内視鏡
(Pentax、 Japan)を用い観察した。結果:アクリフラビンは神経叢を構成する細胞群に選
択的に取り込まれ、いずれの症例においても、粘膜下層および平滑筋層内にネットワーク
を形成するグリア細胞やガングリオン細胞(ニューロン)が明瞭に観察された。結語:ア
クリフラビン併用共焦点内視鏡観察によって、生体内で消化管神経叢がリアルタイムに観
察できることが証明された。今後は、消化管運動機能症例でも観察を行い、正常の消化管
神経叢に比べ、共焦点内視鏡観察による解剖学的、もしくは、機能的異常が認められるか
を検討する。
■一般演題②
1.軟性鏡を用いた経横隔膜的腹腔アプローチの可能性(胸部外科領域への応
用をめざして)
1) 大阪大学 消化器外科
2) 大阪大学 次世代内視鏡治療学
○広田 将 1)、宮崎 安 1)、
2)
、高橋
剛 1)、山崎 誠 1)、宮田博志 1)、黒川 幸 1)、
瀧口修司 1)、森 正樹 1)、 土岐祐一郎 1)、 中島清一 1)、
2)
【背景】大網拳上術は消化器外科疾患のみならず、縦隔炎、膿胸、気管断端瘻など胸部外
科領域での重篤な合併症に対しても広く選択される術式であるが、開胸操作と併せ行う場
合は開胸・開腹手術となるため、上記重症患者にとっては過大侵襲となる可能性がある。
我々は NOTES で培った軟性鏡手技を応用し、開胸創内から経横隔膜ルートで腹腔に到達
することにより大網拳上術の低侵襲化が図れると考えた。【目的】ブタを用いた軟性鏡によ
る経横隔膜的腹腔鏡(Trans-phrenic peritoneoscopy: 以下 TPP)及び大網拳上術の試み 6
例を報告する。
【方法】雌ブタ 6 頭(30kg)を全身麻酔・右片肺換気とし、左肋間開胸をお
いて次の 2 手技を試みた。
手技1:胸腔側から横隔膜へ 12mm 腹腔鏡用ポートを挿入する。
手技2:軟性鏡(GIF-Q260J、 オリンパス)を腹腔内へ導き、軟性鏡用把持鉗子にて大網
を胸腔内へ誘導する。手技1は、4 例で腹腔鏡を併用し(Hybrid 群)
、2 例で腹腔鏡を用い
ず経横隔膜的エコ-ガイド下に施行した(Pure 群)
。手技2は困難な場合、腹腔鏡補助を適
宜加えた。各手技の完遂度を確認した。
【結果】手技1:全例で完遂。ただし、Pure 群の 1
例で肝左葉の被膜損傷による出血を経験した。Hybrid 群では 4~8mmHg の低圧気腹下に
安全に手技が行えた。手技2:4 例で完遂。未完遂例は腹腔内大網の展開不良が主因で、軟
性鏡鉗子による把持のみ可能であったもの 1 例(Hybrid 群)、大網の把持自体が不可能で
あったもの 1 例(Pure 群)をそれぞれ経験した。いずれも腹腔鏡補助を加えることで大網
拳上は可能となった。
【まとめ】開胸手術時、TPP は有効な腹腔到達法と考えられた。軟性
鏡のみでの TPP 下大網挙上術には技術的な課題が残るものの、腹腔ポートとの Hybrid 手
術は臨床応用が可能な現実的手法と考えられた。
2.軟性内視鏡は腹腔内手術に有用か?
1) 杏林大学医学部 外科
2) 聖母病院 外科
3) 目白第 2 病院 外科
○ 阿 部 展 次 1 )、 竹 内弘 久 1 )、 大 木 亜津 子 1 )、山 口 高 史 2 )、 松 延 修一 郎 2 )、
柳田
修2)、水野英彰3)、森
俊幸1)、杉山政則1)
【背景と目的】そもそも消化管用軟性内視鏡は腹腔内手術に有用か?という議論が十分さ
れることなくNOTES研究が進行してきた。我々はショートタイプ軟性内視鏡(SFE)
を(単孔式)腹腔鏡下手術に使用しているので、動画と成績を供覧し、この命題に対する
解答を考えたい。
【SFE】有効長60cm、送水、吸引、Sチャンネル機構を有する.
【対象】胆嚢結石(n
=10)、胆嚢隆起性病変(n=3)
、総胆管結石(n=1)、虫垂炎(n=1)の計15例。
【手術】臍部EZアクセス留置、12mmポート留置。SFE反転観察下で5mmポート
2本留置.胆嚢管/動脈クリッピングまでは通常の単孔操作で行い(SFEは観察主体)、
胆嚢剥離は主としてSFE経由のESDデバイスで施行。総胆管結石はポート追加のうえ、
総胆管切開後にSFEを直接総胆管へ挿入、SFE経由バスケットカテにて切石を試みた。
虫垂切除ではSFEは観察のみに使用。
【結果】胆摘:flexibleな視野確保が可能
であり、critical
viewやクリップ留置を多角的に視認できた。SFE経由
のデバイスは第3の手として複数の局面で有用であった。胆嚢剥離は通常の単孔操作より
もSFE経由のESDデバイスで行った方が容易であった。能動的ガス吸引、レンズ自浄
機構によりクリアーな視野が得られ、前方送水機構は出血点確認や止血操作、腹腔内洗浄
に有用であった。総胆管切開:総胆管内の視野はクリアーで容易に結石を切石できた。虫
垂切除:間膜の奥行きの視野確保にSFEは有用であった。【結論】SFEは腹腔鏡下手術
に複数のpositiveな修飾を与えた。軟性内視鏡は腹腔内手術に極めて有用と結論
づけたい。現状ではSFE単独での腹腔内手術は様々なリスクを伴うが、周辺デバイスが
開発され、entry
hole作成/閉鎖にまつわる諸問題も解決されればNOTES
は十分に生き残れる可能性がある.
3.NOTES 下食道吻合法の開発
1)東京大学大学院医学系研究科 小児外科学
2)埼玉県立小児医療センター
外科
3)埼玉医科大学病院 小児外科
○石丸哲也 1)、畑中
藤代
準 1)、鈴木
玲 1)、川嶋
寛 2)、小室広昭 1)、杉山正彦 1)、寺脇
完 1)、小西健一郎 1)、竹添登志子 1)、岩中
幹 3)、
督 1)
【目的】A 型食道閉鎖症には上・下部食道盲端間の距離が長く一期的食道吻合が困難な症例
が多く、多段階手術となり入院が長期にわたる。また、術後に GERD を発症し逆流防止術
が追加されることもある。我々はこれらの課題を克服すべく、腹腔鏡と経口内視鏡による
アプローチのみを用い、噴門形成術後の胃を吊り上げて上部食道と吻合する一期的根治術
を開発してきた。今回、より簡便な NOTES 下食道吻合法を考案し、実現可能性を ex vivo
実験で検証した。
【方法】ブタから摘出した 7 検体(食道+胃)に以下の術式を行った。
1.
食道中部を離断して両断端を縫合閉鎖し、食道閉鎖モデルとする。
2.
上部食道に内視鏡を挿入し、軟性内視鏡用縫合デバイス(BraceBar™)を用いて上部
食道盲端に牽引用の糸を留置する。
3.
上部食道盲端を切開して内視鏡を食道外へ進め、下部食道盲端を切開してバルーンカ
テーテルを下部食道内へ留置する。
4.
内視鏡を上部食道内へ戻し、糸を把持する。
5.
オーバーチューブを上部食道盲端近傍まで進めた後、糸とバルーンカテーテルを牽引
して上部食道盲端を内反させ、下部食道を上部食道内へ重積させる。
6.
バルーンカテーテルを抜去後、シリコンチューブを経胃的に重積部へ挿入し、同部位
をエンドループで二重結紮する。
手技終了後、上部食道へ注水してリークテストを施行した.
【結果】全検体で手技に成功し、手技時間の中央値は 31 分(23-66 分)であった。リーク
テストにて上部食道へ注水すると、4 例で下部食道の拡張が観察され、吻合部の開存が確認
できた。さらに注水を続けると食道の重積が解除されるという現象が起き、その時の上部
食道内圧は中央値 122mmHg(82-142mmHg)であった。残る 3 例中 2 例ではシリコンチ
ューブがずれて正しい測定ができず、1 例では針穴からのリークが認められた。
【考察】本法は実現可能であり、手技時間、急性期の吻合強度ともに十分と思われた。長
期生存動物実験による吻合の信頼性評価が今後の課題である。
4.アカラシアに対する内視鏡的筋層切開術(POEM)280例の経験から
昭和大学横浜市北部病院
○鬼丸
消化器センター
学、井上晴洋、工藤進英
我々は2008年9月に当院倫理委員会承認のもと、食道アカラシアに対しPOEM経口
内視鏡的筋層切開術Per-Oral
ue
Hら、Endoscopy
Endoscopic
Myotomy(Ino
2010)の第1例を施行して以来、280例を経験
し、重篤な合併症なく良好な結果を得ている。2012年8月には先進医療として厚生労
働省から認定された。その手技、適応、治療成績について現況を報告する。手技は以前報
告の通り、全身麻酔、仰臥位、CO2挿気下に行い、完全内視鏡下に①粘膜下トンネルの
作成②食道内輪筋層の切開③粘膜切開部の閉鎖の手順で行う。年齢、病悩期間、拡張度、
型を問わず、また治療(バルーン拡張、外科手術)不応例に対しても、あらゆる背景の症
例に重篤な合併症なく手技を完遂した。平均筋層切開長14.0(食道側11.1、胃側
2.9)cm、短期合併症として空気送気による気胸1例、粘膜下血腫形成1例、小網炎
1例、粘膜損傷5例経験した。LES静止圧は28.0→13.1mmHg、症状(Ec
kardt)スコアは術前6.13→術後2ヶ月1.33→術後1年1.29と症状改善
と効果の持続を認めている。治療効果は、拡張度、型、シカゴ分類パターン、バルーン不
応例、外科手術再発例を問わず良好であった。また術後にGERD症状を有しPPI投与
を要したのは4.6%で、術後に重症GERDが問題となった症例は経験していない。長
期成績が待たれる段階ではあるが、今までの経験からPOEMは全てのアカラシアに対し
安定して安全で高い治療効果を得ている。また、POEM手技をSET内視鏡的粘膜下腫
瘍核出術Submucosal
n(Inoue
Hら.
Endoscopic
Endoscopy
Tumor
resectio
2012)にも応用しており、POEM
手技が今後、低侵襲治療およびNOTES臨床の発展への橋渡しとなり得ると考える。
5.胃粘膜下腫瘍に対する経膣ハイブリッド NOTES 胃局所切除術 10 症例の
検討
1) 大阪大学 消化器外科
2) 大阪大学 次世代内視鏡治療学
3) 大阪大学 消化器内科
4) 大阪大学 産婦人科
○ 高橋
剛
黒川幸典
1)
森
1)
、 中島清 一
、宮田博志
1)
1) 、 2)
、 山崎
、瀧口修司
1)
誠
1)
、 山田拓 哉
、筒井建紀
3)
3)
、辻井正彦
、 加藤元 彦
3)
3)
3)
、竹原徹郎
、
、
正樹 1)、土岐祐一郎 1)
【はじめに】我々は2008年より、胃粘膜下腫瘍に対し経皮経路補助下(ハイブリッド)
経腟NOTES胃局所切除術を行ってきた。現在までに経験した10例につき、手術手技
ならびにその臨床成績を報告する。
【手技】経皮的腹腔鏡によるガイド下、婦人科医師によ
り、後膣円蓋を展開、同部より軟性内視鏡を挿入後、ガイドとしてオーバーチューブを挿
入し経腟ルートを作成する。術中内視鏡検査を行い腫瘍の正確な位置を確認後、腹腔鏡か
らの補助下に、軟性エネルギーデバイスを用いて胃周囲間膜を切離し、授動を行う。経膣
的に挿入した自動縫合器で胃部分切除術を施行する。標本をisolation
bag
に収容して膣創より回収した後、直視下に膣ルートの縫合閉鎖を行う。
【成績】年齢中央値
(範囲)は55(47-68)才、最大腫瘍径中央値(範囲)は40(21-65)mm、
局在は5:3:1(U:M:L)であった。1症例で、子宮内膜症に伴う後膣円蓋の癒着
を認め、同部の展開が困難であった。癒着剥離を試みたが経腟ルートの安全な作成が不可
であると判断し断念、通常腹腔鏡下に手術を施行した。その際、子宮に挿入し展開するマ
ニュプレーターによる子宮の損傷を認め腹腔鏡下に修復した。その他9症例では、術中偶
発症なく、手術時間170(129-365)分、出血少量でNOTESを完遂した。全
例において術後合併症は認めず、鎮痛剤を要したのは10例中1例のみで、在院5日で退
院した。HistologyはGIST(6)、神経鞘腫(3)、脂肪腫(1)であった。
術後中央値で15ケ月(3-50ケ月)、全例再発なく経過しており、創の整容効果も良好
である。
【まとめ】外科、内科、婦人科による協調で腫瘍学的に受容しうる手技を安全に施
行できた。技術的な課題は多く残されているものの、経膣ハイブリッドNOTESは胃粘
膜下腫瘍に対する安全で現実的なアプローチとなる可能性が示唆された。
6.経腟 NOSE による完全腹腔鏡下大腸癌手術
厚生連長岡中央綜合病院
○西村
消化器病センター外科
淳、川原聖佳子
【目的】腹腔鏡下手術の低侵襲化の手法としてNatural
cimen
extraction
orifice
spe
(以下、NOSE)が挙げられる。当院では201
0年から経膣的標本摘出(以下、TVSE)を用いた大腸癌手術を行っており、その手技
と短・中期成績を報告する。
【方法】適応は大腸全領域の、漿膜浸潤のない比較的小さな腫瘍。経腟分娩歴のある、閉
経後の症例を対象としている。郭清・授動の後、腫瘍から適切な距離を計測して腸管を切
離。腫瘍の局在により、機能的端々吻合あるいはDouble
stapling
te
chniqueにて体内吻合を行う。経腟的に後膣円蓋を約3㎝横切開してAlexis
Wound Retractor (Applied
Medical社)で膣を保護し、
その中を通して標本を摘出。膣切開口は経腟的に縫合閉鎖する。現在はFreeAcce
ssをAlexisに装着して気密を保ち、経腟的に助手用鉗子を挿入し、局在S~RS
では、臍窩に2cmの小開腹と5mmポートのみで手術可能である。
【結果】10例に試み、全例完遂した。手術時間中央値234分(213-300分)、出
血量16ml(0-165ml)
。術後合併症なし。術後在院日数5.5日(4-10日)。
術後の疼痛をNRSで評価し、1~5病日の最悪スコア(中央値)はそれぞれ、3、 2、
2、
1、
0.5。4例は硬膜外麻酔終了後、全く鎮痛剤を使用しなかった。他の6例
では経静脈鎮痛剤を投与したが、2病日以降に投与したのは1例のみであった。現在まで
再発例はない。
【考察】本法は気腹下に観察しながら後腟円蓋切開を行うため、極めて安全である。臍窩
の小開腹創は開排した状態で2㎝以下であり、整容性と共に鎮痛効果が良好だった。経腟
操作の工夫によりさらなる低侵襲化が可能であり、症例を適切に選択すれば有望なオプシ
ョンの一つと考えられる。
7.臍内下半 12mm 縦切開・Single incision multi-trocar 法による単孔式
腹腔鏡下胆嚢摘出術の成績
1)福井大学 第一外科
2)がん診療推進センター
○飯田
敦
1)
、藤本大裕
1)
、澤井利次
1)
、森川充洋
1)
、小練研司
1)
、村上
真
1)
、
廣野靖夫 1)、五井孝憲 1)、片山寛次 2)、山口明夫 1)
腹壁破壊を最小にし、低侵襲性とともにより高い整容性の確保を目指して、臍内下半 12mm
縦切開創で単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術を行っている。我々の成績を報告する。
「対象」上腹部手術既往等広汎な癒着が予想される症例以外の胆嚢良性疾患。当初 5 ヶ月
間は原則として急性胆嚢炎を除いた。2009 年 5 月より 2012 年 5 月の 3 年間、計 104 例。
「方法」臍内下半皮膚を 12mm 縦切開し気腹針で気腹。創内の辺縁に 5mm trocar を 3 本
配置し、創内下縁に胆嚢把持用鉗子を直接穿刺。胆嚢炎症例では適宜 needle device を 1 本
追加。
「結果」非胆嚢炎 87 例、急性胆嚢炎 17 例。それぞれ手術時間 111±27min、 145±43min。
出血量 10±48g、53±121g。trocar 追加 1 例、1 例。開腹移行症例なし。臍変形なし、創感
染なし。
「考察」Single incision multi-trocar 法は trocar が外側へ向けて挿入できる点で皮膚切開
に対して大きな trocar 間隔が確保でき操作性が比較的良好に保てる。我々の方法は報告さ
れている中では最小の皮切で、独特の trocar 配置は air leakage もなく臍形成も容易で良好
な整容性も確保できた。
「結語」臍内下半 12mm 縦切開・Single incision multi-trocar 法により単孔式腹腔鏡下胆
嚢摘出術を大きな合併症なく良好な結果を得た。
8.左側結腸/直腸癌に対する TANKO+NOTES
熊本再春荘病院 外科
○外山栄一郎
腹壁破壊をできるだけ少なくするためのアプローチとして近年 needle や TANKO が一般に
も広く普及しつつある。しかし、標本を摘出する手術では一定の切開創が必要であり、こ
れを reduce するには自然管腔を用いた標本の摘出(NOSE)が有望である。一部の直腸癌
においては反転法により標本を腹壁を介さずに摘出が可能であり、この手技を応用し完全
腹腔強下に手術を完遂する手技が以前から報告されてきた。反転法は縫合不全も少なく有
用な方法ではあるが、占拠部位や腫瘍サイズに制限があり、広く応用できる手技とはいえ
ない、我々は直腸を左側結腸・直腸癌のより普遍的な摘出ルートとして活用する手技を考
案したので供覧する。
臍の下縁にオプティカル法で 5mm ポートを留置し、上縁に術者左手用 3mm ポートを挿入
し、臍は破壊しない。右下腹部に術者右手用 5mm ポートを留置し、3 ポートで手術を行う。
手術はカメラ助手と術者のみで行い、助手の牽引の代用としてエンドグラブを用いる。郭
清・腸管の授動・肛門側切離予定線の全周の剥離を型通り行った後に口側切離予定腸管を
体内で結紮した後に離断する。続いてエンドループで肛門側切離線を緊縛し、直腸内を十
分に洗浄し、ウンドリトラクターXS を肛門から鉗子を用いて切離予定線まで誘導する。次
に腸管を開放し、ウンドリトラクターを展開させることで肛門からの摘出ルートを確保す
る。標本を摘出し、口側腸管に体内でタバコ縫合を行い肛門から挿入した自動吻合機のア
ンビルを挿入・固定する。肛門側断端に支持糸をかけて肛門から挿入した鉗子を用いて反
転させて肛門のレベルで自動縫合機にて閉鎖する。吻合は通常の DST による再建が可能で
ある。
現在まで 7 例にこの手技を行い、いずれも合併症なく経過良好である。原則 12mm ポート
を使用しないため腹壁破壊は最小限に留められ、より NOTES に近い低侵襲性が得られた。
直腸ルートは性別を問わず使用可能であり、NOSE/NOTES のより普遍的ルートとして期
待される。
9.経腟内視鏡を使用した hybrid
NOTES による右半結腸切除術
立川総合病院 外科
○蛭川浩史
経膣的腹腔鏡を用いた結腸の切除、吻合を行い、経膣的に標本を摘出するhybrid N
OTESによる大結腸切除術行った。当院の倫理委員会およびNOTES研究会の承認を
得て施行した。また患者と家族に充分なinformed
consentを行い同意を
得た。
【手術手技】臍に12mmのポートを挿入。5mmないし10mmのフレキシブルカメラ
を挿入し、左上腹部に5mmポートを追加した。必要に応じ、助手の補助鉗子として、右
側腹部に2mmの細径鉗子を挿入した。腹腔鏡下に径12mm長さ15mmのポートを経
膣的に挿入。その後は、経腟内視鏡を使用して腹腔内の視野を得た。術者は臍と左上腹部
のportを利用して手術を施行。経膣的腹腔鏡下に、D3リンパ節郭清を伴う右側結腸
切除術を行った。吻合は経腟的に挿入したリニアステープラーで機能的端々吻合を行った。
切除標本はバックに回収し経膣的に摘出。摘出孔は、婦人科医師が、直視下に縫合閉鎖。
【結果】2011年11月から2012年10月の間に5例の女性に対し施行。平均年齢
は78歳。1例が卵巣膿腫を経腟的に同時切除。この症例は卵巣切除のために1ポート追
加した。1例は子宮脱を有し経腟的子宮全摘術を同時に施行した。開腹術への移行はなし。
平均手術時間は316分、平均出血量は42ml。残存結腸内の腸液の細胞診を4例に行
ったが、悪性細胞は検出されなかった。術後の合併症はなし。術後平均在院日数は8日。
【結語】経腟的腹腔鏡の視野は、臍から挿入した通常の腹腔鏡の視野と変わらなかった。
術者の両手は充分に離れた部位での操作となるため、単孔式内視鏡手術やNOTESでの
手技より安全で容易と考えられた。
技術的な容易さや早期の結果は満足すべきものだったが、今後は比較試験などにより証明
していく必要がある。
10.経膣的に胆嚢を摘出した腹腔鏡下手術の経験
獨協医科大学越谷病院 第一外科
○多賀谷信美、牧野奈々、斎藤一幸、奥山 隆、菅又嘉剛、大矢雅敏
体表面に一切、傷を付けずに体腔内あるいは表在臓器の手術を行う Natural orifice
translumenal endoscopic surgery (NOTES)が登場し、海外での臨床報告が散見されるなか、
本邦においても更なる低侵襲手術の発展に拍車がかかるかのように思われたが、実臨床へ
の導入にはクリアしなければならない種々の問題が存在する。それは既存の手術器具にて
実行可能で、従来の内視鏡下手術に比べ、より低侵襲性を提供できる Reduced port surgery
が台頭してきたこともその一因と思われる。そこで我々は、Natural orifice を利用した
Endoscopy-assisted laparoscopic surgery が最も導入しやすい方法と考え、腹腔鏡下に経
膣的な胆嚢摘出を試みたので報告する。方法は、1)通常の腹腔鏡下あるいは細径内視鏡
下に胆嚢摘出を行い、胆嚢を回収バッグに収納後、経膣的にポートを留置し、体外に取り
出すか、2)経膣的にポートを留置後、そこより挿入した 60cm の外経 5mm の 30°斜視型
硬性内視鏡観察下に腹部に挿入した臍部および心窩部のポートより胆嚢摘出を行い、経膣
的に胆嚢を体外に取り出すものである。経膣的に胆嚢を取り出すことで、腹部には臍部に
5mm、心窩部あるいは右肋弓下に 3mm が1あるいは 2 カ所の傷のみで、創痛の軽減およ
び整容面の向上につながると考えられた。この方法は、現在、閉経後の女性を対象として
おり、今後、閉経前の女性への対応も視野に入れなければならない。さらに男性の場合の
アプローチ方法など、考慮すべき点が多いものの、NOTES 関連手技を利用した検査法や手
術手技が徐々にではあるが、開発されて臨床応用されていくものと思われる。
■特別講演:世界の NOTES 研究
1.アメリカ UCSD における NOTES の実際
東邦大学大森病院消化器センター外科
○片桐敏雄
近年、natural
ic
orifice
translumenal
endoscop
surgery(NOTES)の臨床手術例が諸外国において増加してきている.
University
of
California、
D)はアメリカにおけるNOTESのHigh
San
volume
Diego校(UCS
centerであり、本
校で行われているNOTES症例数はすでに100例を超えている.我が国においては、
多くの施設でいまだに浸透しておらず、臨床例は微増に留まっている.
今回、UCSDにおけるNOTES手術症例を報告し、現在、実際に行われているNOT
ES手技のビデオを供覧し紹介する.UCSDでは、2006年の動物実験、カダバー実
験を経て2007年IRBの承認を受け、臨床での手術を開始している.NOTES手術
の方式は、Hybrid法を用いて行われており、胆嚢摘出術、虫垂切除術、Sleev
e状胃切除術、ヘルニア修復術などが中心に行われている.最近は、アカラシアにおける
Per-Oral
Endoscopic
submucosal
Myotomy(P
OEM)などのNOTES関連手技が増加の傾向にある.
NOTESに代表される経腟および経胃的Hybrid
NOTES胆嚢摘出術は、整容
性に優れた手術であり、UCSDでは定型化された手術となっている.その一方で、手術
の困難さや医療コストなどの面で課題が残る.これらの問題が、単孔式やNeedle s
copic
surgeryなどの低侵襲外科手技に比べ、全国的な症例数の増加につな
がらない要因と推察できる.しかしながら、NOTESは発展途上の手技であり、術式の
工夫や手術機器の開発により、さらなる改良が加えられ、より現実的な手技となる可能性
を秘めている.
2.Submucosal endoscopy の開発
東京慈恵会医科大学 内視鏡科
○炭山和毅
NOTES の実現には、前提として、1.消化管外への安全な出口を確保し、2.その出口を
確実に閉鎖することが求められる。Kalloo らによって NOTES のコンセプトが発表されて
以来、数多くの関連研究・開発が、この 2 大課題の克服を目標として実施されてきた。各
種内視鏡用縫合器の開発や、ロボティクス技術の応用など革新的技術も導入され、夢の実
現もそう遠くないかに思われたが、実際には、これら複雑かつ高額な技術への対価に見合
う NOTES に 対 する ニ ー ズ を 見 出 す こ と が 難し い の が 現 状 で あ ろ う 。 Submucosal
endoscopy 法(SE)は、特殊な道具を用いず、すぐに手に入る道具だけを用い、この 2 大課
題を克服するために開発された手技である。SE では、粘膜下層に人工的空間(トンネル)
を作り、それを介し消化管外への間接的な出口として用いることで、消化管内容の漏出を
最小限に抑え、また、被蓋粘膜を皮弁として活用することで、通常の止血用クリップを用
いた消化管壁穿孔部の閉鎖を行うことができる。動物実験では、SE 開発当時に留学してい
た Mayo Clinic の同僚らとともに、胆嚢摘出などの経胃的腹腔内 NOTES の実現に加え、
経食道的胸腔内 NOTES も技術的には実現可能であると報告してきた。さらに、我々は SE
が消化管深層へのアクセスルートとして応用できると考え、固有筋層の切除や観察などの
基礎実験を行い、現在では消化管神経叢の共焦点内視鏡観察や POEM、粘膜下腫瘍切除な
どの形で臨床応用された技術の基盤となる研究を実施してきた。今回の報告では、SE 開発
の経緯や、現状、今後の展望について概説する。
3.マサチューセッツ総合病院における NOTES 研究の現状
1)天心堂へつぎ病院外科
2)大分大学
○安田一弘 1)、北野正剛 2)
NOTES は臨床導入が開始されているが、専用機器が開発中であることからその臨床応
用は限られているのが現状である.その中で、 TEM デバイスをプラットホームとして用
いた経肛門的 NOTES 大腸切除術が注目されている.本法を世界に先駆けて行ってきたマ
サチューセッツ総合病院(MGH)に留学する機会を得たので、MGH での NOTES 研究の
現状について報告する.
臨床応用する前に動物モデルや Cadaver を用いて、十分な基礎的検討が行われている.
まず、20 頭のブタモデルを用いた survival study が行われ、TEM と腹腔鏡機器を用いた
肛門側からの直腸結腸剥離および自動吻合器による経肛門的大腸吻合の安全性と経胃的軟
性内視鏡によるアシストの有用性が検討された.胃の切開孔を閉鎖した T-tag の不具合によ
り 2 例に腹腔内膿瘍や血腫を認めたが、縫合不全など大腸切除に伴う合併症はなく 2 週間
の検討期間中に死亡例はなかった.経胃的内視鏡は口側の腸管の剥離に有用であった.そ
の後、32 例の Cadaver による追加検討で手技の実現性を確認後、術前化学放射線療法を行
った T2N1 の直腸がんに対して初めて臨床応用された.手術は 5 ㎜トロッカー1 本と 2 ㎜
トロッカー2 本による腹腔鏡アシストのもとに行われ、手術時間は 4 時間 30 分、術中・術
後合併症はなく、術後 1 日目から常食を開始し、4 日目に自宅退院した.トロッカー挿入部
は 5 ㎜をストーマ増設に、
2 ㎜をドレーン留置に利用した.これまでに 5 例に臨床応用され、
術後経過は良好である.
経肛門的アプローチによる直腸間膜切除は既存のデバイスを用いて十分な視野のもとで
行うことが可能である.さらに、NOTES において懸念される手術に関係のない臓器切開の
必要がないため、現時点では NOTES の最も良い適応手技のひとつと考えられ、今後の発
展が期待される.
■特別企画:NOTES 関連機器開発の最前線
1.NOTES 関連機器開発の最前線
九州大学先端医療イノベーションセンター
○大平猛
Trans-rectal NOTES・Trans-vaginal NOTES に関連する新たなデバイス紹介と創出され
るプラットフォームについてご紹介する。Pure trans-rectal NOTES 用として最も大きな
開発成果は micro-nano bubble generator を大腸・直腸洗浄用として Pharmaceuticals and
Medical Devices Agency (PMDA) を通 過さ せ上市 した こと であろ う。 来年 初旬 には
Trans-vaginal を含め全身の NOTES に対応する micro-nano bubble generator の PMDA
通過を目指している。このことは単に NOTES の適応を拡大させるだけでなく全身の
Natural Orifice の感染症対策として新たな手段が確立されることを意味している。今回は
この micro-nano bubble generator で route の浄化が容易となった NOTES と Needlescopic
Surgery (NS)および Single Port Surgery (SPS)とを hybrid 化させた新たなプラットフォー
ムとそれを達成するための新たなデバイスを使用上のメリットを含めてご紹介する。
NOTES 補助下 Needlescopic Surgery (NS)として Multi piercing surgery (MPS)というプ
ラットフォームを考案し検証している。この MPS で使用する NS 用デバイスでは、従来の
NS デバイスの欠点であった障害性を解決可能な多数のデバイスを提示させていただく。ま
た、今まで安易に設定されていた腹壁の切開創径についても less invasive を謳うにはその
厳格な設定も必要であり、意図した切開径を一瞬にして設定しうる新デバイスも市販化通
過モデルを含めご紹介させていただく予定である。
2.機器開発の現場から
大阪大学次世代内視鏡治療学
○中島清一
NOTES が抱える技術的課題の多くは、もともと消化管腔内で使用することを前提に開発さ
れた軟性内視鏡、軟性処置具類を、より大きく複雑な構造を有する腹腔内で使用しようと
したことに起因する。このバリアを克服するには、従前の軟性内視鏡の機能と構造を根本
から見直し(destruction)
、プラットフォームやアクセサリ等多くの機器をいちから開発・
整備していく必要がある。このフェーズは当面インダストリーからの積極的な支援を期待
しにくく、研究者らに多くの負担を強いることになるため忌避されがちであるが、我々は
逆に「将来の軟性内視鏡治療だけでなく、現行治療をも劇的に変化させうる」独創性の高
い機器開発のチャンス、と捉えて前向きに取り組んでいる。すなわち、NOTES を可能たら
しめる軟性内視鏡(および関連機器)には腹腔鏡(および関連機器)と同等レベルのクオ
リティが付与されるべきであり、それら高性能軟性内視鏡(および関連機器)は ESD に代
表される現行内視鏡治療の難度を確実に軽減し、治療成績を向上させるという考え方であ
る。本講演ではこのコンセプトに基づく我々の機器開発の一部を実例を挙げて紹介し、
NOTES が契機となって動き始めた軟性内視鏡治療の変革について私見を述べたい。