01 財産罪の基礎

刑法各論の基礎
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memo/notes
個人的法益に対する罪
財産に対する罪
01 財産罪の基礎
到 達 目 標
□財産罪の客体である「財物」の性質(限界)を整理して、理解する。
□財物に対する事実上の支配であるとされる「占有」概念を、死者の占有においてどのように扱うかを理解する。
□「使用窃盗と窃盗罪」と「毀棄罪と窃盗罪」を、どのように区別するか(または、しないのか)を理解する。
法益主体 = 個 人 ⇒ 人の生命・身体に対する罪
人の自由に対する罪
生活の平穏に対する罪(プライバシー
に対する罪)
名誉・信用に対する罪
財産に対する罪
1.財産罪の構造
財産罪┬領得罪┬直接領得罪┬奪取罪(占有移転)┬意思に反する┬窃盗罪(235条)
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└強盗罪(236条)
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└瑕疵ある意思┬詐欺罪(246条)
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└恐喝罪(249条)
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├広義の横領罪(占有不移転)───┬横領罪(252・253条)
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└遺失物横領罪(254条)
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└─────────────────背任罪(247条)
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※財物を客体としない
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└間接領得罪──────────────────盗品関与罪(256条)
│
(贓物罪)
│
└毀棄罪────────────────────────毀棄罪(258条以下)
2.財産罪の保護法益
【設例 01】甲組の組長Aは、配下の組員らが宝石店から強奪してきた貴金属(時価約 5000 万円相当)と覚せい剤 2kg
(末端価格約1 億5000 万円相当)を、売却するために組事務所の金庫に保管していた。このことを知ったXは、
某日深夜、甲組事務所に侵入して、これらの貴金属と覚せい剤を奪って逃走した。
Xの刑事責任を論じなさい(なお、特別法違反の関係を除く。)。
2.1.問題の所在
①禁制品に対する財産罪の成否
禁制品(法禁物)を奪取する場合。
②盗品に対する財産罪の成否
窃盗等の財産罪の犯人等から盗品を奪取する場合。
③窃盗等の財産罪の犯人から被害者が自己の財物を取り返す場合。
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9 月 18 日(土)朝刊 14 版 35 面
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2.2.判例
(1)本権説(旧判例)
【01-01】大判大正 7 年 9 月 25 日・刑録 24 輯 1219 頁(債権担保のため
に交付した恩給年金証書の騙取)
(2)占有説
【01-02】最二小判昭和 24 年 2 月 8 日・刑集 3 巻 2 号 83 頁(窃盗犯人か
らの盗品の喝取)
【01-03】最二小判昭和 24 年 2 月 15 日・刑集 3 巻 2 号 175 頁(元軍用ア
ルコールの騙取)
「刑法における財物取罪の規定は人の財物に対する事実
上の所持を保護せんとするもの」
【01-04】最三小判昭和 26 年 8 月 9 日・裁判集刑 51 巻 363 頁(禁制品で
ある濁酒の窃取)
。
【01-05】最二小判昭和 34 年 8 月 28 日・刑集 13 巻 10 号 2906 頁(借金
の担保に差し入れた国鉄公傷年金証書の騙取)
「大審院判例(…)は、変
更を免れない」
【01-06】最三小判昭和 35 年 4 月 26 日・刑集 14 巻 6 号 748 頁(譲渡担
保である貨物自動車の持ち去り)
【01-07】最三小決平成元年 7 月 7 日・刑集 43 巻 7 号 607 頁(買戻約款
付自動車売買契約の客体である自動車の引き上げ)
【01-08】東京高判昭和 29 年 5 月 24 日・高刑判特 40 巻 118 頁・判タ 40
号 30 頁(窃盗犯人が窃取した財物を窃取する行為)
2.3.学説
:財物に対する他人の所有権その他の本権
(a)本権説(小野清一郎・瀧川幸辰など)
が保護法益である。
∵不法な占有を保護する必要はない。
民法との法秩序の統一性。
⇒盗品や禁制品などの奪取行為は不可罰?
(b)修正本権説(大塚仁・曽根威彦など)
:所有権その他の本権が保護法益だが、
その前提として、一見適法な占有とみられる財物の占有を保護する
(大塚
。本権と占有の両方が保護法益だが、両者が衝突した場合には適
仁 )
法な占有のみが保護され、禁制品については例外的に単なる占有が保
護される(曽根
。
威彦)
:財物に対す
(c)占有説(所持説)
(判例:牧野英一・木村亀二・斎藤信治・前田雅英など)
る事実上の占有それ自体が保護法益である。民事上の権利関係、占有
の法的根拠を問わない。
∵財物の利用関係を保護する必要がある。
適法な手続きによらなければ占有は保護される。
⇒窃盗犯人からの財物の取戻し行為も可罰的?
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(d)平穏占有説(平穏所持説)
(小野清一郎・平野龍一など)
:正当な権原が推定さ
れるような占有。一応理由のある占有(小野清
、平穏な占有(平野龍一・
。
一 郎)
西 原 春 夫)
3.財産罪の客体
235 条、236 条
物」⇒財物罪(刑法
1 項、246 条1 項など)
「財
236 条 2 項、246 条 2
「財産上の利益」⇒利得罪(刑法
項、249 条2 項、247 条のみ)
【01-09】大判昭和 6 年 5 月 8 日・刑集 10 巻 205 頁(2 項強盗)
(1)被害者に一定の財産上の処分をさせる場合(債務負担・債務免脱[債務の履行期を
延期させる]など)
。
(2)被害者に一定の役務の提供をさせる場合(タクシーへの無賃乗車・キセル乗車[争い
あり]など)
。
4.財物性(財物の意義)
4.1.有体性の要否(財物は有体物に限られるか)
【設例 02】製薬会社Aの研究所に勤務する研究員Yは、自社があらゆる種類の癌細胞を破壊するが副作用が極めて少な
い根治薬の開発に成功したことを知り、この新薬の情報をライバル会社Bに売って大もうけをしようと企んで、正
当に借出したこの新薬のレポートを全頁にわたって、所携の自己所有のデジタル・カメラで写し取り、後日この画
像データをライバル会社Bに 1 億円で売却した。購入した新薬のデータに基づいて、B社はA社よりも半年早く
この新薬の承認をとって売り出すことができたために、莫大な利益を得ることができた。
Yの刑事責任を検討せよ(なお、特別法違反の関係を除く。)。
(東京地判昭和59 年6 月28 日・刑月16 巻5=6 号76 頁、東京地判昭和60 年3 月6 日・判時1147 号162 頁参
照)
情報窃盗:現代社会においては情報(Data)それ自体を保護する必要性があ
る。なお、不正競争防止法における営業秘密の保護。
⇒「価値の高い情報を化体した紙・フィルム」に財物性を認める。
(a)有体性説(平野龍一・中山研一)
財物とは、個体・液体・気体など、空間の一部を占める物理的な存在
である有体物である。
∵民法との法秩序の統一性(民法 85 条参照)
。
(b)管理可能性説(判例・通説:藤木英雄・西原春夫・大塚仁ほか)
財物とは、
(物理的手段により)管理可能な存在をいう。
∵目的物の利用可能性を保護する必要。
【01-10】大判明治 36 年 5 月 21 日・刑録 9 輯 874 頁(電気窃盗事件―旧
法事件)
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1 月 11 日(日)朝刊 14 版 31 面
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(c)事務的管理可能性説(牧野英一)
財物とは、管理可能な存在をいい、牛馬の牽引力・債権・電波などま
で含まれる。
大判明治 36 年 5 月 21 日・刑録 9 輯 874 頁(電気窃盗事件)
事件当時非常に高価なものであった電気を無断で不正使用した事案について、盗電行為の当罰性の高さに着目して、以下のように
判示した。窃取可能な物は窃盗罪の客体たり得ると解すべきであるから、財物とは、有体物である必要はなく、可動性と管理可能
性を有し、これを所持し、その所持を継続、移転することを得るものであればよい。電流も容器に収容して、これを所持し移転す
ることができる以上財物に当たる(旧法事件)。
4.2.価値性の要否(経済的価値は必要か)
【設例 03】Zは、煙草の葉を栽培して専売公社に納品していたものだが、納品予定の煙草の葉から、金額にして七分相
当の葉を、政府に納入せずに、自分で吸ってしまった。
Zの罪責はどうか(なお、特別法違反の関係を除く。)。
(大判明治43 年10 月11 日・刑録16 揖1620 頁「一厘事件」…旧煙草専売法違反・不納付罪が問題となった事
件)
刑法的保護に値する社会的価値が認められなければならない。
(1)客観的価値(=経済的価値)…交換価値(金銭的価値)と使用価値。
(2)規範的価値…他の法令により保護されている物、消極的価値(悪用の
危険)
、禁制品など。
(3)主観的価値…所有者・占有者の主観的・感情的な価値が存在するにす
ぎず、客観的・経済的価値が認められないもの。
⇒交換価値がなくても、客観的に使用価値が認められるものは財物である。
他人にとって使用価値がある限りで、財産的価値は認められる。
【01-11】石塊(大判大正元年 11 月 25 日・刑録 18 輯 1421 頁)
【01-12】某政党の中央指令綴一冊(最三小判昭和 25 年 8 月 29 日・刑集 4
巻 9 号 1585 頁)
。
【01-13】消印済みの収入印紙(最二小決昭和 30 年 8 月 9 日・刑集 9 巻 9
号 2008 頁)
【01-14】汚れたちり紙 13 枚(東京高判昭和 45 年 4 月 6 日・東高刑時報
21 巻 4 号 152 頁・判タ 255 号 235 頁)
なお、財産的価値が軽微な場合には、財物性が否定される(可罰的違法性
に関する絶対的軽微性)
。
【01-15】大判明治 43 年 10 月 11 日・刑録 16 輯 1620 頁(一厘事件)
4.他人性
自己以外の者の所有物であること。
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5.占有概念
【設例 04】A子は、駅前公園内のベンチにポシェットを置いて友人B女と話をするなどした後に、B女を駅改札口まで
送ろうとして、ポシェットを置き忘れたまま公園を出た。約 2 分歩いて、約 200 メートル離れた駅改札口付近ま
で来たところでポシェットを置き忘れたことに気付いたA子が、走って取りに戻ったのだが、既にポシェットはな
くなっていた。Yは、A子等がポシェットをベンチに置いたまま話しこんでいるのを見掛けて、A子等がこれを置
き忘れたら持ち去ろうと考えて様子をうかがっていたところ、A子等がポシェットを置き忘れ、約27 メートルの
距離にある歩道橋の階段踊り場まで離れたとき、周囲に誰もいなかったことから、ポシェットを奪取して、公園内
の公衆トイレに入り、ポシェットの中から現金を抜き取った。
Yの罪責を論じなさい。
(最三小決平成16 年8 月25 日 ・刑集58 巻6 号515 頁参照)
5.1.占有の意義と要素
奪取罪⇒(被害者の意思に反する)財物の占有侵害
占有:財物に対する事実上の支配をいう。
①占有の意思(主観的要素)+②占有の事実(客観的要素)
。
5.2.占有の意思(主観的要素)
占有の意思とは、財物を事実的に支配管理する意思である(最一小決昭和
32 年 1 月 24 日・刑集 11 巻 1 号 270 頁)
。自己の支配領域内に存在する財物
に対する包括的・抽象的な意思で足りる(大塚仁 185 頁、山中敬一 244 頁)
。
5.3.占有の事実(客観的要素)
占有の事実とは、客観的にみて財物を事実上支配していることをいう。
(1)排他的に支配する場所(排他的支配領域)に存在する場合。
(2)排他的支配領域内に存在しなくても、保護に値する利用可能性が認め
られること。
ⓐ他人の事実的支配内に存在することを推認できる客観的状況にある場
合。必ずしも財物の現実的握持・監視は必要ではない。
自宅前の路上に置かれた自転車。
【01-16】最二小判昭和 32 年 11 月 8 日・刑集 11 巻 12 号 3061 頁(カメ
ラ置き忘れ事件)――積極
【01-17】最三小決平成 16 年 8 月 25 日・刑集 58 巻 6 号 515 頁(ポシェ
ット置き忘れ事件)――積極
【01-18】東京高判平成 3 年 4 月 1 日・判時 1400 号 128 頁(スーパーの 6
階ベンチへの財布の置き忘れ事件)――消極
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ⓑ占有の継続を推知させる客観的状況にある場合。
リサイクルに提供するためにごみ集積所に出されていた古紙や空き缶
などの資源ごみ?
ⓒ排他的支配者である施設の管理者へ占有が移行した場合。
ゴルフのプレー中に林や池などに打ち込んで、ゴルフコース内で紛失
したボール(ロストボール)?
【01-19】最三小決昭和 62 年 4 月 10 日・刑集 41 巻 3 号 221 頁(ロスト
ボール回収事件)
5.4.死者の占有(死体からの財物奪取)
【設例 05】Xは、A女との痴情のもつれから、A女を山中に連れ出して、所持していたナイフでA女の右下腹部を刺し
て死亡させた。その後、犯行を隠蔽するためにA女の死体を土中に埋めるにあたって、A女の所持品を検めたとこ
ろ、ネックレスと指輪、腕時計を認め、これらを売却しようと考えた 。そこで、A女の死体から右ネックレスと
指輪、腕時計を奪取したうえで、A女の死体を約1 メートル50 センチの深さに埋めた。
Xの罪責を論じなさい(なお、特別法違反の関係を除く。)。
(1)第三者によって殺害された被害者から財物を奪取する場合
●遺失物等横領罪(刑法 254 条)
。
(2)最初から財物を奪うつもりで被害者を殺害した場合
●強盗殺人罪(刑法 240 条後段)
。
(a)判例 財物を現実に取得しなくても強盗殺人罪は成立。
【01-20】大判大正 2 年 10 月 21 日・刑録 19 揖 982 頁
:
(b)死者の占有説(小野清一郎)
(c)相続人の占有説:
【01-21】大判明治 39 年 4 月 16 日・刑録 12 揖 472 頁
(d)占有移転説(植松正)
:
(e)全体的観察説(通説:団藤重光・大塚仁・曽根威彦など)
:
(3)被害者の殺害後に初めて財物を奪う意思が生じた場合
●遺失物等横領罪の成立を認める見解
:
(f)遺失物等横領罪説(平野龍一・曽根威彦・大谷實など)
殺人罪(刑法 199 条)+遺失物等横領罪(刑法 254 条)
。
●窃盗罪の成立を認める見解(多数説)
殺人罪(刑法 199 条)+窃盗罪(刑法 235 条)
。
(b)死者の占有説(小野清一郎)
:
(e)全体的観察説(判例・多数説:団藤重光・大塚仁ほか)
:
【01-22】最二小判昭和 41 年 4 月 8 日・刑集 20 巻 4 号 207 頁(犯行隠蔽
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目的での腕時計の奪取)
。
①被害者を死亡させた行為者との関係では、②被害者の死亡と時間的・
場所的に近接した範囲内にある限り、なお刑法的保護に値する。
●強盗罪の成立を認める見解
(g)強盗罪説(藤木英雄)
:
殺人罪(刑法 199 条)+強盗罪(刑法 236 条)
。
自己の殺害行為によって生じた被害者の抵抗不能状態を利用。
6.不法領得の意思
6.1.問題の所在
客観面
財物の奪取
├————————┤
├————————┼——————————┤
主観面
財物の奪取の認識
不法領得の意思
∥
∥
故意
主観的超過要素
①窃盗罪と可罰性を欠く使用窃盗(一時使用窃盗)
、または②領得罪と毀棄
罪(刑法 259 条以下)とは、客観的に(外形上は)区別できない。
6.2.不法領得の意思の内容
①権利者排除意思 ←使用窃盗との区別。
②利用・処分意思 ←毀棄罪との区別。
6.3.不法領得の意思の要否
【設例 06】Yは、試験問題を隠してしまえば期末試験を実施することはできないと軽薄にも考えて、某日深夜、教員B
の研究室に立ち入って期末試験の問題用紙と模範解答の各 1 通を持ち出し、自宅アパートの押入れに隠しておい
た。このことに気付いたZが、試験問題を売りに出せば 大もうけができると考え、コピーした後に戻しておく意
図のもと、Yの留守中にYの居室に立ち入り、隠してあった問題用紙と模範解答を持ち出して近くのコンビニでコ
ピーし、約 2 時間後に元の場所に戻しておいた。後日、友人Cから、高額の対価を提示されて、期末試験の問題
用紙と模範解答を譲るよう懇願されたので、考えを変えたYは、右問題用紙と模範解答を友人Cに売却した。
YとZの刑事責任を論じなさい(なお、特別法違反の関係を除く。)。
(1)使用窃盗との区別(排除意思の要否)
否定 (a)必要説・排除意思説:
【01-23】大判大正 9 年 2 月 4 日・刑録 26 輯 26 頁(自転車の無断使用)
【01-24】最二小決昭和 55 年 10 月 30 日・刑集 34 巻 5 号 357 頁(自動車
の乗り廻し事件)
肯定 (b)不要説・処分意思説:
:
(c)一時的排除意思説(小野清一郎・団藤重光)
【01-25】最二小判昭和 26 年 7 月 13 日・刑集 5 巻 8 号 1437 頁(船舶の
無断使用)
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(d)可罰的占有侵害説(前田雅英)
:
(2)毀棄・隠匿罪との区別(利用・処分意思の要否)
否定 (e)毀棄・隠匿罪説(必要説・処分意思説)
:
【01-26】大判大正 4 年 5 月 21 日・刑録 21 輯 663 頁(教育勅語隠匿事件)
⇒棄隠匿目的で財物を奪取した後で財物を売却した場合の罪責?
肯定 (f)窃盗罪説(不要説・排除意思説)
:
7.親族相盗例(刑法 244 条)
【設例 07】Xは、伯父(父母の兄)Aが所有する自動車の車内から、AがB(第三者)から預かっていたB所有の現金
200 万円を奪取した。
Xの罪責を論じなさい(なお、特別法違反の関係を除く。)。
7.1.免除の根拠
配偶者、直系血族、同居の親族間における行為については刑が免除され、
その他の親族間における行為については親告罪とされている(刑法 244 条)
。
(a)違法性減少説:
(b)責任減少説:
(c)政策説:
「法は家庭に入らず」
(法諺)という思想。
⇒第一次的には親族間の処分に委ねる方が適当。一身的処罰阻却事由。
7.2.親族関係の範囲
親族相盗例の適用が認められる親族関係を、所有権者その他の本権者、占
有者のいずれとの間に要求するか。
【01-27】最二小決平成 6 年 7 月 19 日・刑集 48 巻 5 号 190 頁(同居して
いない親族からの他人の現金の奪取)
参考文献(より詳しく学びたい人の為に)
□佐伯仁志「(刑法各論の考え方・楽しみ方9)財産犯の保護法益」『法学教室』364 号(2011.01)102-110 頁。
□松原芳博「(ロー・クラス 刑法各論の考え方12)財産罪の保護法益」『法学セミナー』57 巻10 号(2012.10)118-124 頁。
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